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二郎系モダン【ケシスコンボ】デッキガイド―濃厚コンボを”完飲”せよ―

割引あり


フレンチモダン/二郎モダン

先日,モダンで【ケシスコンボ】を使用し,大会で優勝した。

【ケシスコンボ】,かつてはスタンダードで栄華を極め,近年はヒストリックの世界でトップメタとなったアーキタイプ。これをモダン用にアレンジしたもの。今回の記事では,そのデッキガイドをお届けしよう。

もちろんこの【ケシスコンボ】,モダンにおいては完全なローグデッキ。小規模の休日大会で勝った程度なものであり,これをもって「今のモダン環境を塗り替える」なんていうつもりもない。

現在,国内ではチャンピオンズカップファイナルに向けたエリア予選が進行中。フォーマットはモダンだ。競技大会の常として,よく見かけるTier1のデッキ達が,より洗練され結果を出している。時には予想だにしなかったカードで,時には一切の無駄を排除した古典的なリストで。
集合知によってデッキがブラッシュアップされ,リストや記事などでその思考の過程を見るのは,個人的にはとても楽しく,美しいと感じる。

だがそんなスタイリッシュさとは真逆,ローグデッキ特有の「1つのデッキを擦り続け,仕上げていく」「会場で自分1人だけのアーキタイプ」という楽しさは,今のモダンにはもっと溢れてよいと思っている。デッキ構築とはいつだって自由だし,デッキ構築を以て自己表現としたい考えだって,個人的にはとても好みだ。

この【ケシスコンボ】で優勝した際,「構築が気持ち悪い(誉め言葉でしょう,多分)」「カロリーの高いカード全部乗せか」「濃ゆい」「Sick」等,おおよそMTGのデッキに向けたとは思えない感想が散見され,楽しんでいただけたようでうれしい限りである。

現行モダンのTier1デッキ達はいわば,洗練された高級フレンチや懐石料理。全く隙が無く,ただひたすらに美味い。だが人を虜にして離さないグルメは,時にそんな高級・スタイリッシュとは縁遠くも,混沌とした,アンダーグラウンドな世界にこそ存在するのではなかろうか。そう,それはかの二郎系ラーメンのように。

今回はこの【ケシスコンボ】のデッキガイドを通して,ローグデッキを工夫して勝つことの楽しさが少しでも伝われば幸いです。

本記事は,一部を有料設定としております。無料部分ではデッキの基本的な動きに始まり,メインデッキの採用カードや説明など,この【ケシスコンボ】の概観を掴めるように記載しております。
有料部分では,サイドボード構成から細かなプレイング・TIPSをはじめ,採用候補カードや主要マッチアップにおけるサイドボーディングを記載しています。この【ケシスコンボ】の沼に足を踏み入れたい方は,より楽しんで頂けることでしょう。

以下に,過去に執筆した記事の一部を紹介しております。ご購入の際の判断材料になれば幸いです。

直近で執筆した記事です。Legacyの大型大会で優勝した【Thought Lash】コンボという,これまたローグデッキについて書いています。

こちらはパイオニアの【ドロスの魔神コンボ】,通称”変態魔神”について。これもローグデッキですが,自分なりの調整を施し,権利獲得まであと一歩というところでした。今回の記事と似たテイストで書いてます。読み物としてどうぞ。

それでは参りましょう,一度食べたらもう止められない,二郎系ラーメンデッキ【ケシスコンボ】。是非ご賞味あれ。

初見での注文(リスト・デッキの動き)

今回のリストは,こちら

クリックすると,リストに飛びます

原型は,ヒストリックの【ケシスコンボ】。元々はAkioProsの方々を中心に調整されていたものです。

基本的なデッキの概要については上記の記事でも触れられています。どちらも非常に充実した内容で大変参考になったので,ぜひ本記事と合わせてお読みください。

基本的なコンボパーツは《隠された手,ケシス》《完成化した精神,ジェイス》,そして2枚の《モックス・アンバ―》だ。

ラーメン三銃士

戦場に《隠された手,ケシス》がいる状態で《完成化した精神,ジェイス》を唱え,[-X(だいたいX=5)]を自分に向けて起動。9~15枚切削した中に《モックス・アンバー》があれば,《ケシス》の能力を起動して墓地から《アンバー》を唱えます。

手札・墓地で《モックス・アンバ―》が2枚揃えば,伝説ルールを利用することで2枚の《アンバー》を墓地の伝説カード(=《ケシス》の起動コスト)の枚数だけ,交互に唱え続けることができます。

《アンバ―》から青マナを含めて3マナ出せれば,再び《完成化ジェイス》を《ケシス》から唱え,再度自分に切削。デッキの大半が伝説カードで構成されているため,《ケシス》の起動コストは基本的に尽きることなくこの手順を繰り返しことができます。この過程で3枚目以降の《アンバー》が墓地に落ちればマナも増えていき,そのままデッキは0枚になるまで切削することが可能です。

最後は再び《ケシス》で《アンバー》を再利用し,大量の青マナを捻出。最後は《完成化ジェイス》の切削能力を相手に向け続けてライブラリーアウトを起こすか,《神秘ジェイス》による特殊勝利によるコンボ”完飲”を狙うデッキとなります。デッキを全部飲み干したんだから,勝利は当然。

基本の動き

《ハーフリング 》が絡めば最速3ターンキル,安定して4キルを狙えるコンボデッキです。《ケシス》を運用する都合,デッキ内は伝説カードで占める必要がありますが,伝説でありさえすれば,デッキ内の制約はそれだけ。自由枠も多く取れるため,こちらのコンボへの妨害耐性も豊富に揃えつつ,サイド後は《ケシス》の単体性能を活かしたミッドレンジプランという味変も用意できる。
十分な速度と妨害への耐性,そしてサイド後の多角的なミッドレンジプランと,強いコンボデッキの必要条件を満たしていると言えるでしょう。

店員と麺(主要コンボパーツ)

ラーメンにあって,やはり麵は命。そしてそれを扱うヒトもまた,味の生命線だ。そんな代えが効かない存在たちを紹介しよう。

《隠された手、ケシス》4枚

この道40年の店長

デッキ名を冠する,本デッキの最重要パーツ。伝説カードでデッキを埋めることで,かの《ヨーグモスの意志》に匹敵するパワーを持つカード。コンボ仕掛けをちらつかせて相手に対処を迫り,相手がリソースを使い切ったところで登場させれば,それだけで勝利です。

コンボ以外にも,そのコスト軽減とリソース回復機能により,単純に伝説のカードをテンポよく唱え続け,ミッドレンジ風に戦うゲームプランも示してくれます。モダン環境においてタフネス4は《稲妻》をかわせる点で,最低限の場持ちの良さも○です。

墓地の伝説カードを唱える起動型能力は,「起動した時点での墓地」を参照します。そのため,起動後に後から墓地に行ったカードを唱えるには,再度《ケシス》の能力を起動する必要があります。

もちろん,この道40年の店主。フレーバーテキストでは「ペンは王冠より強い」なんて書いているが,実際はペンよりも麺の方が強いのは言うまでもない。

《モックス・アンバー》4枚

グルグルしているのが,麵の生地

コンボの核であることはもちろん,序盤での手数を増やし,コンボ完飲の速度を速めます。《エムリ―》の早期着地にも貢献するため,当然4枚。

その実体は中心の金属などではなく,グルグルと周囲を囲む麺の生地(極太麺)。中心に鎮座する《モックス》にMTGの歴史が流れているのなら,その周囲には華麗なるラーメンの歴史が麺となって渦巻いている。そう,これはまさしくMTG界とラーメン界が織りなす《渦まく知識》の結晶だ。最強じゃないか。

《完成化した精神、ジェイス》4枚

麺を打つ人に見えてくる まだ見習い

コンボパーツにして,勝利手段その1。【ケシスコンボ】は全身墓地コンボデッキなため,とにかく相手の墓地対策が厳しいです。特にモダンでよく遭遇する《ダウスィーの虚空歩き》は,対処しないと必敗です。

その中で, 《完成化ジェイス》は先置きしても[+1]能力で自身を守れます。対策カードを引くまでは忠誠度能力を上げて時間を稼ぎ,墓地対策を引き次第,一気に切削してコンボ完飲が可能。いわば待機していつでも唱えられる大量墓地肥やしスペル,というわけです。

パンツ?いいえ「丼」です

この道に足を踏み入れた見習い職人。熱意は一人前だが,自分で「完成化した」と称しているようでは,まだ洗練された腕前とは言い難い。今後に期待だ。

《神秘を操る者、ジェイス》1枚

麺が踊って見える 達人

《完成化ジェイス》のライブラリアウトで勝ちに行く場合,相手に《一つの指輪》を出されると,プロテクションによって守られてしまいます。《神秘ジェイス》であれば,自分の山札を0にして勝利です。

《完成化ジェイス》のライブラリアウトで勝つ場合,自分に《完成化ジェイス》を向けて山札を0にした後に,相手に《完成化ジェイス》の[-5]を3~4回起動する必要があります。
それに伴い《ケシス》の起動回数や《完成化ジェイス》のキャストのために,墓地に十分な伝説カードやマナが必要になります。

メインデッキの時点で伝説カードが36/60枚なので,《ケシス》の起動コストが足りなくなることはありません。ですがマナに関しては,①切削の落ち方次第で《ケシス》の起動コストで一度《アンバー》を追放せざるをえない,②戦場に出した《アンバー》が《虹色の終焉》で追放される,③途中で墓地追放を受ける,等により《アンバー》の枚数が不足することはあります。
最小限のマナでコンボ完飲を目指すためには,何度か唱える必要のある《完成化ジェイス》よりも《神秘ジェイス》1回で勝つ方が省エネになります。

以上から,勝利手段として採用しておくと安全ではありますが,唯一の欠点は《湧き出る源,ジェガンサ》の相棒条件から外れてしまうこと。【ラクドス想起】【URマークタイド】等,妨害が苛烈でコンボ勝ちが狙いにくいマッチではサイド後,この《神秘ジェイス》をアウトすれば《ジェガンサ》を相棒にすることが可能です。《指輪》が入るデッキ相手には《神秘ジェイス》は続投,それ以外は《ジェガンサ》を使い,伝説カード達によるミッドレンジ攻勢を狙います。

二郎系ラーメンの人を引き付けて離さない味は,まさに食の「神秘」。それを「操る者」とあっては,達人という他ないだろう。そりゃゲームにも勝つ。

ヤサイ(コンボに貢献するカード)

麺だけのラーメンが旨いことなんてあるか?否。
良いラーメンには良い付け合わせあり。メインを張るわけではないが,コンボ完飲にはぜひとも欲しい一品たちを紹介しよう。

《湖に潜む者、エムリー》4枚

ヤサイ(蓮の花)

このデッキのアーティファクトは4枚の《アンバー》と2枚の《アガサ》のみ。少なく感じるかもしれませんが,このデッキでは「4枚切削する」という一文だけでも非常に大きな役割があります。

《ケシス》と《完成化ジェイス》が揃えば概ねコンボ完飲は可能ですが,序盤では同一ターンにこれらを唱えることは難しく,ターンを跨ぐことになります。

《ケシス》がいる状態で,墓地の《アンバー》や《エムリー》が複数落ちていれば,1マナで《エムリー》を唱え,伝説ルールを利用して4枚切削を続けることができます。この過程でもう一枚の《アンバー》が落ちた時点でマナが増え始めれば,《完成化ジェイス》にバトンタッチしてコンボ完飲です。

こうしたループの運用もあることから,アーティファクトの枚数が少なくても4枚採用したカードです。一方,相手の除去や墓地対策をもろに受けやすく,《アガサ》はアーティファクト破壊で対処されることが想定されるマッチで減らすこともあるため,頻繁にサイドアウトします。

MTGではおなじみ,蓮の花。食用でありながら,一部には毒性もあるとのこと。まあ,魅惑の食とは大体そういうものである。

《アガサの魂の大釜》2枚

秘伝の鍋

【ケシスコンボ】が得た新たな調理器具。キーカードである《ケシス》が除去やカウンターされても,《アガサ》で追放すれば人類皆《ケシス》状態。《真髄の針》で《ケシス》を指定されても問題なしです。本来《ケシス》が持つコスト軽減能力は付与されないことは注意しましょう。

【ヨーグモス医院】での《スランの医師,ヨーグモス》追放と似たような運用ですが,このデッキでは《アガサ》へのアクセスと,墓地に《ケシス》を埋める手段である《エムリー》を擁しています。早いターンで《ケシス》にアクセスできることは,そのままコンボ完飲に繋がります。もちろん,このカード自体も《ケシス》によって1マナ。コンボ完飲の速度を大幅に引き上げてくれます。

最優先は《ケシス》の作成ですが,《ハーフリング》を煮込んでマナを増やしたり,《ローナ》を具材としてデッキをさらに掘ることも可能です。このデッキだと,あれこれと楽しいシナジーを探したくなりますが,純粋に墓地対策として優秀な他,+1カウンターの付与はビートダウンプランの後押しにもなります。

《侵攻の伝令、ローナ》2枚

潤滑油(背脂)

《ケシス》でのコンボに直接は寄与しませんが,出してターンが返ればそのルーター能力により,手札の交換と墓地肥やしが急速に進みます。

《アガサ》によって《エムリー》の能力をつけた状態で《アンバー》が2枚揃うと,《ローナ》はアンタップを繰り返して無限に《アンバー》を唱えることができるため,無限マナとなります。
その後は無限ルーターに切り替えてデッキを掘りきれば,《神秘ジェイス》で勝利。これなら,《ケシス》無しでもコンボ完飲です。

そのほか,《ハーフリング》を煮込んで《ローナ》をマナクリ化することで,手札のカードをテンポよく戦場に送り込んでくれます。

便利な《アガサ》

変身後の《トレイリアの抹消者、ローナ》は非常に攻撃性能が高く,《ハーフリング》《アンバー》でややフラッドしがちな中盤以降のマナを打点に変換してくれます。特に《血染めの月》下でも変身が可能な点が大きく,サイド後のミッドレンジプランを後押ししてくれる一枚です。

戦場に出したターンに仕事をしない点や,《オークの弓使い》に弱いのが玉に瑕なため2枚と抑えていますが,濃厚すぎる本デッキを軽やかに回し,他の食材同士のつなぎも兼ねる,無くてはならない存在です。

ニンニク(脇を固めるカード達)

ただ旨いだけのラーメンなどいくらでもある。人を惹きつけてやまないラーメンは,一癖も二癖もあるものだ。そんな脇を固めるカード達も忘れてはならない。

《ニッサの誓い》4枚

「伝説の」の一文がついたドロースペル。ヒストリックになかった,最強のドローソースでもあります。このデッキでは《定業》など霞んで見えるほど。《ケシス 》《完成化ジェイス》はもちろん,状況に応じて《テフェリー》《母聖樹》などを取って,相手の妨害や対策カードを触ることも容易になります。単純に《ケシス》から一度再利用するだけでも,十分な仕事ぶりです。

PWの色マナを無視する能力も,以下の2点でこのデッキでは非常に強く働きます。

①《完成化ジェイス》の青マナ供給源になる
ケシスコンボは,《アンバー》を用いて《完成化ジェイス》を使いまわすわけですが,最初に《完成化ジェイス》を出すためには,当然青マナが必要です。ターンやマナに余裕があり,土地から一度青マナが出せれば,以降は《完成化ジェイス》の下で《アンバー》が青マナを供給してくれますが,それではモダンの速度感にはついていけません。

その最たる例が,《アンバー》を2枚引いた状況です。

先手3キルしたい

上記の場面,《完成化ジェイス》を完成化して2マナで唱えて[-X(=3]で9枚切削すれば,概ね《ケシス》の起動コストが補充され,《アンバー》をループしてコンボに突入できます。画像では最初から《アンバー》が2枚ありますが,1枚はその切削で落ちてもコンボスタートは可能です。

そしてこの時の《アンバー》は本来,《ケシス》を参照した白・黒・緑マナしか出ません。もちろん,ターンを返してもOKならそれに越したことはありませんが,モダン環境にあって《ケシス》が生き残る保証もないです。
《アンバー》が青マナを出すには本来,戦場に青の伝説パーマネントが必要。《ローナ》《エムリー》《テフェリー》がそれを担いますが,常に出せているとも限らないし,これらが除去される可能性も大です。

そこで《誓い》の出番。これが出ていれば,《完成化ジェイス》の色マナを気にする必要がなくなります。《アンバー》からの単純なマナ量のみでコンボに向かえるわけです。

②《血染めの月》《月の大魔術師》への回答
《誓い》があれば,これら《月》の影響を受けずにPWを唱えることができます。既に《ケシス》が出ている状態なら,コンボルートには《完成化ジェイス》と《アンバー》,《神秘ジェイス》しか使わないため,《月》を無視してのコンボ完飲が可能。その他《テフェリー》を無理矢理出して《月》をどけてのコンボ成立や,後述する《ゴルガリの女王,ヴラスカ》で破壊することもできます。

コンボを支える常在型能力がありながら,戦場に出た時点での仕事も最高級。いつまでも味のするカードだ。《ケシス》のために生まれてきた食材と言えよう。ニンニクは信仰,そして誓いだ。

《喜ぶハーフリング》4枚

説明不要,モダン最強のマナクリーチャー。デッキの大半が伝説である以上,入らない理由はないでしょう。3マナ域がやや多いこのデッキにおいて,モダンの速度感についていくためにも,これ以上ない滑り出しである。可能なら7~8枚までマシマシにしたい

一方で,ヒストリックの【ケシスコンボ】においては,必要不可欠ではなかったようです。

冒頭の記事からの引用リスト

ここに上述のハーフリングを入れればキナンとシナジーして、1パス率が下がりつつカウンター耐性もついて3キル率も上がって最強デッキや!……とはならないのがMTGの難しいところ。

 難点は2つ、マナベースの圧迫と単体で何もしないカードになってしまう点だ。
(中略)
ケシスデッキは無限にカードを拾い出すのでアドバンテージを取りまくるように見えるが、実は直接的に手札を増やす手段はエムリー・ジェイスの起動かザーダを手札に加える部分しかない。(キナンの起動はフラッドの最終手段、ケシス起動は基本勝っているときなので省く)

 すなわちウィザードのような早くて骨太のビートでない、いわゆる受けてくるデッキを相手にした時に1:1交換の選択肢のある手札が枯れるまでひたすらに交換させ続けるのが勝ち筋であるが、交換させられない札を引いていてはこちらのマスカンさせるカードが足りなくなるのだ。

ヒストリックが世界一上手かった男たち-ArenaCS4参戦記 より引用

とても理にかなった考えだと思います。当該記事内で検討されていた点の内,マナベースはモダン環境ではフェッチランドを使用できるため,ヒストリックよりは改善が見込めます。
一方,単体で機能しないという点は,マナクリーチャーの全般に言える欠点でもあります。特に【ラクドス想起】のように,手札破壊を擁するマッチアップなどではそれが顕著です。

ですが,ここはヒストリックではなく,モダン。この魔境には次に紹介する”彼”がいます。残念ながら,そんな理屈は全て水泡に帰します。

《時を解す者、テフェリー》3枚

ヒストリックでは4マナ

というわけで,《ハーフリング》を受ける最強のカード。どれだけ現代モダンが進化を遂げようと,1T《ハーフリング》→2T《テフェリー》の動きで,多くのデッキは泡を吹いて倒れます
続昌デッキのシェアは約15%。単体で機能しないだとか,マナフラッドがどうとか言っても,出すだけで2ターン目にイージーウィンできるなら問題なしです。コンボを完飲しなくとも,ニンニクだけで満足する人だってきっといるでしょう?それと同じです。

単なる常在型能力はもちろん,《アンバー》を戻してマナとドローを進めたり,《誓い》をバウンスして再利用と,コンボサポートの目線でも非常に器用なカードです。《ケシス》への除去を構えていそうな盤面なら,《テフェリー》から入るだけで十分な圧を掛けられます。

また,《ケシス》の天敵である《ティシャーナの潮縛り》にも有効です。

あまりにもケシスキラーその1

常在型と起動型能力を持つ《ケシス》にとって,これほど直撃するカードもないでしょう。そんな《潮縛り》に対して,《テフェリー》は単体で完全な回答にはならなくとも,《潮縛り》をつり出し,戦場から取り除き,封じるカードとして有効です。

コンボに直接関わらないカードなので3枚と抑えていますが,常に4枚目の採用を考える強力なカードです。

《致命的な一押し》1枚

迷惑な客はお断り

《ケシス》第2の天敵,《ダウスィーの虚空歩き》大丈夫かこのデッキ)。《潮縛り》以上に,こいつへの対処は必須です。

あまりにもケシスキラーその2。出禁レベル

墓地を使い倒すデッキである以上,これが出ていると一切コンボには迎えず,《エムリー》もろくに出せません。単なる墓地対策とは異なり,メインボードからの遭遇率も高いため,触れるカードはある程度必要です。

同じ対処札という点では,墓地対策の置物にも触れる《虹色の終焉》も選択肢に入ります。ですが《誓い》《ハーフリング》のための緑マナと,《見捨てられたぬかるみ,竹沼》を運用するための黒マナの関係で,最初にフェッチするのは《草むした墓》としたい所。
そのため,非伝説のスペル等はできるだけ白よりも黒に寄せたいです。《ケシス》《テフェリー》の白マナ自体は《英雄の公有地》《城塞の大広間》で賄うことが多いです。

確かに除去としては万能でも,伝説以外のカードを入れて初手付近に重なると,コンボ完飲の大きな妨げになります。欲しい状況で確実に引き込みたいのに《ニッサの誓い》で持ってこれないことが減点要素だったので,最小限の1枚としました。

このカード以下4枚の《グリスト》《ヴラスカ》《アーテイ》《イツキンス》はいずれも,①《ダウスィー》を処理し,《誓い》で探せる伝説のカード,②サイド後の《ロキーリク》と噛み合う多色のカード,の二点を評価して採用しています。

《飢餓の潮流、グリスト》1枚

隠し味 昆虫食

厄介なクリーチャーの処理はもちろん,《敏捷なこそ泥,ラガバン》を擁するフェアデッキ相手には,[+1]連打でそれなりの圧があります。1枚分の切削能力も地味ながら墓地肥やしとなり,ケシスを引いた時の最大値を高めてくれますね。

[-5]の能力も《完成化ジェイス》と組み合わせることで,ライフを削る飛び道具になります。もちろん,【ヨーグモス医院】でおなじみ《アガサ》とのコンボは言うに及ばず。

ゴルガリの女王、ヴラスカ》1枚

こいつもまた達人の風貌

基本的にはパーマネント除去要因としての採用。《誓い》下で《月》を破壊する点は触れた通り。サイド後は,墓地対策の置物を破壊する手段としても便利です。
盤面によっては,《誓い》も戦場では意味をなさないこともあるため,[+2]でリソースに変えてしまいましょう。《アンバー》も,コンボルートでは戦場/墓地のどちらにあっても大差はないので,ドローに変換可能です。

忠誠度能力の上がり方が早く,マナ加速から早期に出すと,奥義も現実的。文字通り勝利手段になるので,《ケシス》《アンバー》が《石の脳》で抜かれた時等に役立ちます。

《復活したアーテイ》1枚

皿洗いに欲しいかも

こちらも厄介なクリーチャーへの対処の他,【リビングエンド】【緑トロン】をはじめとする《指輪》デッキのような、一発が大きいデッキに疑似的なカウンターとして差し込み,1ターン差を作ることができます。先ほどの《ヴラスカ》もそうですが,4マナだとやや重い一方,《ケシス》下3マナで運用できると,途端に高いパフォーマンスを見せてくれます。

コンボルートとしても,《完成化ジェイス》で相手のライブラリを0枚にした際,このカードで強制ドローをさせれば,ターンを渡さずに勝利できます。これは,「対【バーン】において,アップキープに本体火力を打たれたら負け」「ピッチコストがない状態の《忍耐》をアップキープに出され,山札を修復される(ピッチできるなら,《ケシス》の起動時に投げられてる)」など,ターンを返せない状況を回避できます。

それだけだといささか限定的ですが,単体で《ダウスィー》の除去が可能である等,役割を持てるカードとしても運用できるので,取っていて損のないカードです。

《ギシャスの初子、イツキンス》1枚

誰?

【アミュレットタイタン】のサイドボードに取られていたアイデアからの流用。他のカードとは異なり,《誓い》がない状態でも《森》さえフェッチしておけば,《月の大魔術師》を処理できます。本来はこの枠を《四肢切断》に譲りたいですが,サイド後の《ジェガンサ》との兼ね合いが悪いため,こちらに。
《ラガバン》を適当に受け止めるほか,《ティシャーナ》も最低限の処理はできます。単体で特段強いカードではないですが,伝説というだけでこのデッキでは一定の評価ができますね。基本的には,《ダウスィー》《月の大魔術師》を要する相手に対して運用します。

地味ながら見逃せない点として,速攻を持っています。そのため,《アガサ》で《エムリー》《ローナ》の能力を付与した際,即起動できます。忘れずに。

スープ(マナベース)

どれだけ麺や具材を整えても,肝心のスープがなっていなければ,全てが台無しだ。1つずつ条件を確認していこう。

色マナの計算

1ターン目に緑1

スタートはニンニクから

《ニッサの誓い》《ハーフリング》のためのマナ。《ハーフリング》を唱えるための緑マナなので,《英雄の公有地》《城塞の大広間》はここではカウントしません。最低14枚は必要です。

2ターン目に青1,緑1,黒1,白1

既に欲張り

《エムリー》《ローナ》を唱えるために必要。サイド後に《ラヴィニア》《暗殺者の戦利品》を取っているため,白1黒1緑1も欲しい。《暗殺者の戦利品》は本来早いターンで唱えたいカードではないですが,対【緑トロン】のように,2ターン目に打つ必要があるマッチアップもあります。《ラヴィニア》も同様です。

青と白マナは《大田原》の魂力以外は全て伝説の呪文なので,《英雄の公有地》《城塞の大広間》で補正が効きます。反対に黒は《戦利品》《竹沼》の存在から,純粋な黒マナ源として12枚は取りたいところ。

3ターン目に白1,青1,黒,赤1,緑1

豪勢に5色

むろん,《ケシス》のキャストに必要な色マナ。サイド後は,ミッドレンジプランの一つである《ロキーリク》のキャストも狙いたい。青と緑と白,黒はそのままに,赤を9枚以上。《血の墓所》を採用しているのは,非伝説で最も需要のある黒マナと,この《ロキーリク》の赤マナを兼ねるためです。

色マナ以外の要件

本来なら,これらの条件から色マナの総数を計算し,その分の土地を取ればよいはず。幸いモダンはフェッチランドがあるため,比較的簡単…とはなりません。さらに以下の条件が加わります。

このデッキの屋台(骨)
  • 【ケシスコンボ】ならではの特徴として,伝説の土地を多く採用し,起動コストの材料にできる点があります。特に《見捨てられたぬかるみ,竹沼》は,墓地肥やしと《ケスシ》を探す役割を兼ねます。伝説のクリーチャーが並びやすく,《母聖樹》《大田原》もほぼスペルとして運用が可能です。今回のリストでは合計5枚となっていますが,《母聖樹》《竹沼》は3枚目をとりたいところ。《大田原》は《ケシス》を優先して唱える都合,非伝説の青マナを置くタイミングがない時もあるのですが,《ダウスィー》を触れる手段として1枚は取っておきたいです。

  • 基本地形は,《血染めの月》に対して《母聖樹》を機能させるために《森》を一枚採用。《ニッサの誓い》もあるため,思い切って基本土地0枚にするとマナベース上は楽ですが,【黒単貴重品室】から《廃墟の地》を連打されることを考えると,やはり1枚は欲しいところ。これにより,フェッチランドは《森》を持ってこれるものに統一。

  • 早いターンでのコンボ完飲を望む以上,色が増えたとしても,トライオームでのタップインは許容できないと判断しました。

眩しいマナベース

《英雄の公有地》《城塞の大広間》抜きで緑14枚,黒12枚。緑がらみの土地と《血の墓所》を兼用するために,フェッチランドの組み合わせは赤緑・緑黒で固定されます。青・白・赤の用途はほぼ伝説のカードなので,《英雄の公有地》《城塞の大広間》込みで勘定に入れてOK。フェッチランド→ショックランドのコンビネーションは単純な枚数計算がしづらいですが,一応青15枚,白14枚,赤14枚。

土地の総枚数は23枚。《ハーフリング》や《アンバー》もある都合,やや多めの枚数ではありますが,これ以上土地の総数を削ると,色マナのどこかで不足分が生じます。計5枚が魂力土地ということもあり,多少土地は多めでもOKだろうという考えです。

3枚,2枚

やはり,単色の色しか出ない魂力土地を多くとる点は,マナベースでネックとなりやすいです。デッキ全体では緑と青のカードが多い関係で,《ケシス》《テフェリー》《ロキーリク》のための白・黒・赤マナは複数入れたくはありません。そんなマナ事情から,魂力土地とのタッグでもマナベースを支えられる《城塞の大広間》は非常に助かるカードですね。

反対に《英雄の公有地》は一見便利なようで,手札に来た魂力土地との組み合わせによっては色事故を起こしやすく,安易に複数枚は取れません。もちろん,呪禁と破壊不能付与は有用ではあります。特にサイドのミッドレンジプランで《トレイリアの抹消者、ローナ》《ジェガンサ》を守るのに重宝するので,2枚採用しています。

常連の注文(プレイング・マリガン基準)

マリガン基準

コンボデッキではありますが,基本はゆるふわキープ。理想はもちろん《ハーフリング》からのスタートですが,2ターン目《ローナ》でも十分です。これは【ケシスコンボ】が,《ケシス》+《完成化ジェイス》+《アンバー》2枚と,コンボに必要なカードの種類と枚数が多く,厳しいマリガンに耐えにくいためです。《ケシス》があるなら,概ねキープでよいでしょう。

《ケシス》自体が単体でコンボパーツを拾い上げる能力を持つため,《エムリー》《竹沼 》による切削も基本的にはドローとほぼ等価です。《アガサ》も貢献しますね。《誓い》《ローナ》等のデッキを掘る手段自体も豊富なため,緩い初手でゲームを始めてもコンボパーツは揃いやすいです。対面が【リビングエンド】と分かっているので《テフェリー》を求めてマリガンする等はありますが,基本的には1マリガン以内で妥協しましょう。

土地の並べ方

セットランドは,成り行き次第な時もある

最初は青マナが無ければ《繁殖池》から。青マナに問題が無ければ《草むした墓》から置いて,《竹沼》を受けましょう。

各色を賄うショックランドは緑を除けば1~2枚ずつしかありません。《エムリー》《完成化ジェイス》の存在から切削の枚数が多く,望んだ土地が落ちてしまう状況はままあります。フェッチランドはできるだけ前もって切りましょう。

魂力土地は本来,できるだけスペルとしての運用したいところですが,他に土地がなければもちろん置かざるを得ません。重なると不便な一方,《ケシス》のコストがギリギリの時には,重ねて墓地に送ることでコストを調達できます。忘れずに。

コンボを仕掛けるタイミング

最速でコンボ勝ちを狙える場合はもちろん狙ってOK。判断に悩むポイントの一つに,「《ケシス》+《完成化ジェイス》は揃うものの《アンバー》がない」,という状況。
メイン戦においては,できるだけ《完成化ジェイス》の切削は[-X]を最大値で使い捨てましょう。45~50枚前後のデッキにおいて4枚の《アンバー》を見つけるわけですが,15枚の切削なら《アンバー》期待値上1枚は見込めます。その際《エムリー》とセットで切削されれば,切削を連鎖させることも望めるので,見切り発車で仕掛けても,コンボ完飲率は高いです。

ソーサリーのような運用。残ればラッキー程度

このデッキは《ケシス》の能力の都合,墓地さえ溜まっていれば,それは手札と同義です。PWであっても場に維持することにあまり固執せず,対処を迫って《ケシス》で再利用しながらプレッシャーを掛けましょう。《ケシス》自体は伝説のカードですが,あればあるだけ仕掛けや逆転の機会を作れます。《誓い》等で見つかった際は,積極的に2枚目以降の《ケシス》を確保しておきましょう。

味変(サイドボード解説)

如何に濃厚で人を引き付ける味であっても,毎回同じでは飽きるというもの。味変の選択肢があるのは,常連店の必須条件だ。

《湧き出る源、ジェガンサ》1枚(サイド後より相棒)

サイド後から味変(鹿肉)

《神秘ジェイス》の項で触れましたが,《一つの指輪》が入っていない相手など,《神秘ジェイス》が不要なマッチアップではサイドアウトし,《ジェガンサ》が相棒となります。【ラクドス想起】や【URマークタイド】等,大量の妨害によってコンボ完飲が難しいマッチアップでは,この《ジェガンサ》や《ロキーリク》《ウルザの殲滅破》を軸としたミッドレンジプランで勝ちを狙います。

単純なアタッカーとしてのサイズが優秀な他,《アガサ》に放り込むといきなりマナの数が膨れ上がります。鹿肉は本当にすごいんだ。

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