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苦手なデッキで成長する―エリア予選で鹿になった話―

はじめに

先日,国内最後のエリア予選が終了した。最後はバブルマッチで無念の敗退。チャンピオンズカップファイナルの道は絶たれた。

とはいえ,特に遠征をしたわけでもなく,関西圏で参加できるエリア予選を3か所回っただけ。それで抜けようと思うこと自体,都合がよい話ではあっただろう。権利獲得者達の努力と熱量が素晴らしかった,の一言に尽きる。

今回の店舗予選~エリア予選(スタンダード)では,一貫して白単ミッドレンジを使用し続けた。後述するが,私はミッドレンジというアーキタイプを競技レベルで選択したことはほぼなく,苦手なアーキタイプと言ってよい。

しかし,現行のスタンダードは多様性はあるものの,ミッドレンジが占める割合という視点では支配的だといえる。ならばそれをよい機会ととらえ,自身のMTGのスキルアップのために,苦手なデッキに取り組もうと決めた。

結果はあと一歩だったが,この店舗予選~エリア予選に至るまで,中長期的な成長を目指して,調整に取り組み続けた。今回は単なるデッキ解説やサイドボードガイドではなく,そうした取り組みの過程を残しておこうと思う。全文無料ですが、良かったと思った方は、ご支援いただける大変嬉しいです。

今回のテーマは,「苦手なデッキで成長する」である。

自分の得意なデッキ/苦手なデッキ

皆さんは,自分の得意なデッキはあるだろうか?

「青が好き」「アグロ専門」「どの環境もミッドレンジ一択」「《タッサの神託者》は絶対使う」など,色やゲームレンジで個人の好みがあり,それが自然とデッキ選択に影響を与えているのではないだろうか。

もちろん競技的な視点では,メタゲームを分析し,選り好みせず適切なデッキをチョイスすべきであろう。しかし、である。

好みが分かれる

例えば,Guillaume Wafo-Tapa選手は何があろうと青いコントロールを使うだろうし,佐藤レイ選手は白系アグロの名手として知られる。両者の使用デッキを逆にすればどうだろう?
プレイヤースキルからすれば一定以上の出力はあるにしても,得意とするアーキタイプ以上の成果は出ないのではないだろうか?プレイヤーのスタイルとデッキの相性,合う合わないは確かにある。

青単テンポや,《オーコ》時代の青白コン,好きでした

私自身,これまでのMTG歴では,構築フォーマットのほとんどでアグロやクロックパーミッション,コントロールやコンボデッキを選択していた。その理由は,ゲームの焦点がはっきりしている,という点を好んでいたからである。ゲームの早い/遅い,ライフを詰める/コンボで勝つ等,過程は違えど,何をすれば勝つデッキなのかがはっきりしており,その点で分かりやすい。

対して,ミッドレンジはゲームの焦点を自分で決定しなければならない。そうした自由度の高さ・対応力の高さから,競技プロではよく好まれている印象を受ける。私にとっては苦手な,しかしながら必要なスキルのように感じていた。

プロツアー殿堂顕彰者Gabriel Nassif選手は,かつてはコントロールの名手として,世界で活躍した。それが半ばアイコニックな存在として認識されていたように思うし,今でも大筋では変わらないだろう。それがMPLに所属して以降,ゲームレンジの早いデッキも積極的に選択するシーンが見られた。

Nassif選手の真意は分からないが,慣れ親しんだアーキタイプ以外のデッキを使うことの重要性を示してくれているように感じた。
昨年にヨーロッパで行われたチャンピオンズカップファイナルで、彼はイメージ通りの青白コントロールで見事プロツアーへの権利を獲得。その中には,様々なデッキを扱って経験も活きていたのではないかと思う。

苦手なデッキに取り組む。
そうした過程で見えてくる新たなMTGがあるのだ,と。

サイドボードを0からつくる

随分昔、BIGMAGICの黒田正城さんが何かの配信で,このように言っていた。

「今は,ネットで強いデッキリストがメニューのように選べる。それでも,サイドボードは自分で作った方が良い。人のサイドは分からん」

マジック全般において,サイドボードの重要性は言うまでもないが,ことミッドレンジではその重要性はさらに増す。ミッドレンジの本質は,相手がアグロだろうとコントロールだろうと,サイドボーディングにより相手に合わせた適切な構成にアジャストできることにあるからだ。

これがアグロやコントロールのように,偏ったゲームレンジを想定していると,こうはいかない。メインボードが柔軟に構成されているからこそ,サイドボーディングが活きやすいものだ。ミッドレンジの勝率が,”メイン4割,サイド7割”と言われる所以である。

にもかかわらず,巷にあふれる白単ミッドレンジリストのサイドボードを見ても,in/outは明確に分からないものばかりだった。エリア予選中,サイドボードガイドは思ったより参考にできるものがなかった。ミッドレンジを扱ううえで,致命的である。

私は,サイドボードガイド(=カードの入れ替え方ではなく,「何故そうしたか」のガイド)がない状態で勝っているリストをコピーしても,その力の半分の発揮できないだろうと考えた。自分でサイドボードを作らないと,満足に扱えない。それならばと,0から取り組むことにした。

MTGアリーナを中心とした調整の中で私がとった方法は,サイドは作らず,2本目以降もメインボードのまま2ゲーム目以降を行う,というものである。メインボードからサイドアウトすべきカードと,真にサイド後に用意し,投入すべきカードを見極めるためである。0からのサイドボードづくりのための,情報を集める工程だ。以下はその中で得られた知見である。

(例1)《邪悪を打ち砕く》

メインでも対象には困らない

《邪悪を打ち砕く》は,《黙示録,シェオルドレッド》《ラフィーン》《婚礼》《寓話》といった環境の中心にあるカードを除去できる。トップメタであるエスパーとグリクシスの双方に有効で,多くのリストでメインから投入されているのも頷ける。対エスパーでは,サイド後も引き続き有効なカードだ。

ロングゲーム?上等

一方,対グリクシスではサイド後に各種カウンターや《眼式の収集》,《刃とぐろの石蛇》といったロングゲームを見越したカードが増える。こうなると,単なる単体除去は,仮に当たる対象があったとしても,大きく価値を落とす。
最初は,サイド後のマッチで,「《邪悪》がシェオルにきっちり当てられているのに,なぜゲームを落とすのか」と疑問だった。その点を振り返った結果,《邪悪》はグリクシスにはサイドアウト(もしくは減らす)すべきカードだろう,と気づけた。


《寓話》は任せろ

その結果,一見すると役割がかぶる(何なら狭い)《第3の道のロラン》を《邪悪》と差し替え先として用意。相手の想定するロングゲームを見越した際,ゲームの焦点となる《寓話》《銀行破り》を対処する必要がある。特に《寓話》の処理という観点で見れば,《ロラン》は《邪悪》に勝るわけだ。また,ロングゲームを見越すのであれば,《告別》も一枚程度は有効だろうと考えた。

また反対に,よく見かけるリストのサイドボードにとられていても,実際には不要だと感じるケースも多かった。

(例2)《一時的封鎖》

効くことは効く,が・・

《一時的封鎖》はカードの性質上,対アグロで輝くカードであることは間違いない。現行の上位tierで言えば,赤単や青白兵士がそれに該当する。流行っているリストにはよく採用されていた。

本当に息切れする?

しかし調整の結果,青白兵士は《徴兵士官》《天空射の士官》の存在から実はロングゲームに強く,実際は持久戦を仕掛けると,こちらが不利であることが分かった。特に《天空射の士官》は《一時的封鎖》で触れず,根本的な解決になっていない。このマッチアップは,こちらがライフを詰める展開が求められる,と結論付けられた。これは,メインボードの状態のまま,サイド後の勝ち筋を試行錯誤したからこそ,気づけた点だ。

除去と言っても色々

もちろん,相手の方が手数の多いデッキなので,除去が必要だという点で異論はない。だが,「こちらが攻める側」という視点でサイドボードの枠を考えると,ここで求められる除去が全体除去でないことは明らかだろう。そこでサイドに用意したのが《粗暴な聖戦士》,というわけだ。

もちろん,これらは対戦相手のサイドボードによってその有効性が変化する。対戦相手が上記の事情を知っていれば,裏をかくサイドボードも考えられるため,随時更新される必要がある。

対策カードが過激

私は近年,モダンやレガシーといった,所謂下環境をよくプレイしていた。下環境であればあるほど,勝ち筋の多様化に伴い,半ば専用のサイドボードが必要になることも多い。そうした対策カードや,対策の対策カードの入れ替えに終始していると,気づきにくい視点だったと言えよう。

マリガン基準を作る

ロンドンマリガンが採用されてはや3年半。以降のマジックではその恩恵を受け,キーカードを求めて厳しくマリガンすることが求められる傾向にあった。特に下環境で顕著である。

反面,スタンダードではそうした原則は一概には当てはまらないだろうと考えていた。カードパワーもそれなりに抑えられている環境,厳しいマリガンをすれば,絶対的な枚数差がものをいうはず。いわゆる「ふんわり」キープも致し方なし,といった程度の認識だった。

それ・・なり・・?

調整の初期,土地が3~4枚あれば,よほどマナカーブが偏っていない限りキープしていた。その結果,勝つときもあれば,さくっと負ける時もある,といういわば何も得られない状態が続いた。プレイ中の判断ももちろんだが,キープ/マリガンがうまくできていないことも要因の一つと考えた。

私自身はデッキを作ることが好きで,フォーマットを問わず,よく色んなデッキを作っては没にしている。デッキを作る際に1番念頭に置いているのは,「このデッキのマリガン基準は何か?」ということである。これがはっきりさせられれば,50%は完成したと言ってもよい。

なぜなら,マリガン基準を考えることは,そのデッキは何をして勝つデッキなのか,を理解することに他ならないからである。アグロやコンボを好んでいたからこその視点だ。ミッドレンジデッキだとプレイできるカードは多数あるため,一見するとゲームが「できているように見える」のである。しかしそれは,カードをプレイしているだけ,勝つためのプレイではない。

これは明確な修正点で,「ゲームができるためのキープ/マリガン」ではなく,「勝つためのキープ/マリガン」を考えるようにした。

そこで,MTGアリーナで調整する際,わざとダブルマリガンしてからゲームを始める,という方法を考えた。もちろん,多くは流石に勝てない。だが何回かに一回は拾える試合がある。そうした経験を通して,「このキーカードがあれば,このマッチはカード枚数の勝負ではない」「このマッチはリソース勝負で,質より枚数が大事」ということが学べた。

また,ダブルマリガンしても勝てるゲームがある,ということを体感的に理解しておかないと,微妙なハンドを勇気をもってマリガンできない

キープorマリガン(1マリガン後)

グリクシスミッドレンジとの対戦。1マリガン後の初手。以前の私の感覚では,これはキープだった。しかし練習の結果,このマッチの要点は《婚礼の発表》に集約され,除去や《放浪皇》は強く機能する場面が少ないと認識を改めることができた。

その経験を以って,即ダブルマリガン。結果,無事《婚礼》を見つけられ,勝利できた。リスクを取った判断ではあるが,「勝つためにはどうすべきか」に重きを置けた結果だ。

これが,気楽なフリープレイなら特に言うことはないかもしれない。だが大事な権利がかかった試合であれば,どうだろう?
極度のプレッシャー下での適切なマリガンを可能にするのは,安っぽい根性論やオカルトなどではなく,論理的な思考と経験に基づく理性的な判断であるべきだ。

思考を簡略化する

今回のエリア予選を回っていたプレイヤーであれば,白単ミッドレンジのミラー戦がどういった様相を呈していたか,よくおわかりだろう。悲惨そのものである。

例えば以下の盤面,あなたのメインフェイズ中だとして,どう動くのが正解だろうか?
(画像は大変荒いですが,実際に紙でプレーした際の視覚的な印象をお伝えしたいので,ご容赦を)。

聖域の番人には盾がのっています。


正直なところ,「いや,よくわからんが」である。写真の盤面は誇張でもなんでもなく,もっとパーマネント数が増えていることもざら。

この状態で,「《銀行破り》の起動」「《道路脇の聖遺》の起動」「《放浪皇》の起動」「エンド時に《婚礼の発表》のカウンターを進める処理」は確実に起こる。相手側もエンドには「《銀行破り》の起動」「《道路脇の聖遺》の起動」「《農場経営者》の変身」は確実だ。

ダイス管理や両面の処理等,これを機械的にこなしても,30秒~1分はかかる。そんな膠着状態が続く中,ベストなコンバットを考えるには複雑すぎた。とてもではないが,自分のターンでドローを見た後に,プラン変更のために思案する時間はなかった。

エリア予選中には何度かミラーが発生したが,どちらかが《平地》を置いた瞬間,互いに落胆と焦りの色が見えた。私はプレイスピードが特段早いとは思わないが,MTG歴でも引き分けたこともあまり記憶にない。先述した通り,ゲームレンジの短いデッキを愛用していたこともあっただろう。それが,この白単を使用してから驚くほど延長や引き分けを経験するようになった。

トーナメントにおける引き分けは,限りなく負けに近い。しかも,引き分けた先は高確率で次もミラーである。まさに地獄。初めて,構築やサイドボード以外での対処を検討する必要に迫られた。

白単ミラーに求められるカード。10マナでも使う。

当然ではあるが,プレイスピードを速めることに努めた。トークンはもちろん正規のものを使用。スリーブで色ごとに管理し,一瞬で出せるように工夫。相手ターンでも思考するのは当たり前。タップ動作や土地の選り分けも丁寧すぎず,スピーディさを重視した。

中でも重視したのは思考の部分で,「これは考える必要のある場面なのか」「考えるにしても、そのための情報・リソースを正しく認識しているか」ということである。「考える」というフレーズはよく使われるが,正しい手順で考えられているかが大切である。

(例1)3ターン目のプレイ

どっちから行く?

グリクシスミッドレンジ戦の先手3ターン目。相手が2マナ立てている状態。《婚礼の発表》と《鋼の熾天使》のどちらからプレイすべきか?

《婚礼》の方がリターンは大きいが,《かき消し》を打たれるかもしれない。無難に《熾天使》から出して様子を見てもよいが,《削剥》から《死体鑑定人》と動かれるかもしれない。リストにもよるが,《かき消し》と《削剥》の枚数は,後者の方が1枚程度多い。

マリガンの項でも触れたが,対グリクシスの要点は《婚礼》である。仮に《削剥》がなく《熾天使》が定着したとして,それが果たして《婚礼》よりもゲームの決定因となっているのだろうか。否である。その視点があれば,プレイ指針は明確だ。

以降,同様の場面では《婚礼の発表》を迷わず出すと決め,実践。これは手なりではなく,リスクとリターンを正しく「事前に」考慮したこと,思考を短縮できた結果である。

(もちろん,これがT4であれば,1ターン待って《かき消し》をケアする選択肢は検討すべきである。T4にプレイした《婚礼》が《かき消し》されたとして,それが手なりなら,愚の骨頂である)

(例2)《銀行破り》を構えるべきか

引くor構える?

対エスパーミッドレンジのメイン戦。場にカウンターが2つの《銀行破り》と土地が4枚のみ。手札には《放浪皇》と《聖域の番人》があるが,5枚目の土地がない。

相手の場には《敬虔な新米、デニック》のみで,4マナ立っている。《英雄の公有地》もあるが,手札に《復活したアーテイ》を持っているかもしれない。

メインで《銀行破り》を起動し,5枚目の土地を探すか,我慢して《銀行破り》と《放浪皇》を構えるべきか?

持ってるかも?

慣れるまでは,「どっちも裏目があるなぁ」ぐらいの低次元で考えていた。だがそもそも「5枚目の土地を引く確率は,現状で何%なのか(この状況だと約42%)」「このマッチで《放浪皇》と《聖域の番人》のどちらが重要なゲームなのか」という,判断材料となる根本的な視点が抜けていた。

対エスパーミッドレンジでは,こちらが序盤にライフを詰められる展開が多い。押されている盤面での《聖域の番人》は攻撃に移る機会がなく,いずれ《大田原》で対処されてしまい,価値は低い。《復活したアーテイ》も考慮するなら,なおのことである。

「対エスパーはライフを守り,長引かせる」。ゲームの焦点を理解することで,プレイの指針を明確化し,不要に迷う時間を短縮できた。この場合,私は構えてターンを返す。

もちろん,どちらも明確な正解があるわけではなく,裏目も存在する。相手のプレー如何で,いかようにも選択肢があるだろう。だがそれでも,セオリーとゲームプランをあらかじめ固めておくことで,「迷わないで判断できる状況」と,「立ち止まって考えるべき状況」とを区別できるはずである。

その原則に立つことで,細かい部分で無数に発生する無駄な思考時間を省くことができた。その結果,それでも終わらない試合はあったが,始めたころと比べると,随分と引き分けは減った。

誤算

エリア予選の最終週は,「ファイレクシア:完全なる統一」のリリース直後。今回はMTGアリーナやMOも未実装なために試行回数は少なく,環境に与える影響は不明であった。

参加者の共通認識として,「未知のアーキタイプが勝つためには,リストを洗練させるだけの時間が足りない。既存のデッキに組み込まれるカードを想定するに留まるはず」といったものがあったのではないだろうか。
少なくとも,私はそうだった。

どちらも強い

幸い,白単目線では分かりやすい強化がもらえていた。《骨化》は単色のみで許される準確定除去。《ゴブリントークン》を除去しつつ,《絶望招来》の受けになる点が非常に強く,グリクシスでの負け筋である「リソースはあるが,《ゴブリントークン》から早いタイミングで《絶望招来》を連打されて負け」を止められる。

《永遠の放浪者》は白単ミラーを劇的に楽にしてくれる存在で,ほぼ《サンダーボルト》である。10マナでもよかったけど,まさか6マナとは。最終エリア予選でも,ミラーで膠着状態から一瞬で場を蹂躙し,勝利できた。

当日のリスト

最後のエリア予選,私はそのままバブルマッチまでこぎつけることができた。最後の相手はグリクシスミッドレンジ。相性的には有利だが,《寓話》からのブン回りは,多少の相性さなどものともしない。臆せず行きたい。

相手の先手。《寓話》スタートからこちらの《婚礼》を《かき消し》。嫌な流れではあるが,《骨化》で《ゴブリントークン》は除去。手札には《夜明けの空,猗旺》《放浪皇》《聖域の番人》と潤沢。土地も十分にある。相手も手札はあるが,ここまでの展開を考えれば単体除去が多めに溜まっていそうだ。

油断はできないが,盤石。このままいけばメインは取れるだろう。


と,私の心を見透かし,あざ笑うように登場したのは



ファイレクシアの油に毒された



《王冠泥棒,オーコ》だった。

現代のオーコ

(見ての通り《裏切りの棘,ヴラスカ》ですが,以下では便宜上《オーコ》と称します。異論は認めません。)

目を疑った。《オーコ》の-2能力の前では《猗旺》《聖域の番人》は全て3/3の鹿宝物。もちろんスポイラーでテキストは見ていたが,採用されるデッキをイメージできておらず,まったく意識の外だった。グリクシスが本来苦手とする《猗旺》《聖域の番人》をあまりにも見事に対処可能。まさに手も足も出なかった,鹿じゃなくて宝物だしね。やかましいわ。

結果,瞬く間にそのゲームを落とし,何とか2本目は取り返すも,3本目はダブルマリガンから土地1ストップであえなく敗北。最後は不運だったが,メイン戦を落としたことが全てだった。その後対戦相手のリストを確認すると,メインから《オーコ》が2枚。見事という他なく,敗北は理だった。

Utsunomiya Takumi さんのリスト

また,当の白単ミッドレンジについても,《骨化》が採用されること自体はよかったものの,そのために何を抜くかについては,うまくリストを調整しきれなかった。権利獲得者のリストではそれを見事に昇華させている。《骨化》を投入したことで,2マナ域とエンチャントの枚数を確保できた結果,《神憑く相棒》を排している。今までのリストの固定概念を崩した格好だ。

エリア予選終了後,そのUtsunomiya Takumi選手により,デッキガイドが発表された。もちろん,エリア予選前に知っておきたい知見は山のようにあったが,それでも私にとっては待望の内容だった。苦手なデッキに取り組み続け,0からサイドを作った私にとって,これは最上の答え合わせに他ならない。思想が重なる部分は大いに感動し,異なる部分ではその差を見せつけられた。この経験は間違いなく,今後の糧になるだろう。

成長と情熱

冒頭にも記した通り,今回のエリア予選ではチャンピオンズカップファイナルの権利を獲得することはできなかった。最後のマッチで負けたことは悔しいが,自然とすがすがしい気持ちにもなれた。

それはこの数か月,今までに無かった視点や練習方法,構築やプレイングの方針を考えることで,成長を感じることができたから,だと思っている。苦手なデッキだったからこそ,だ。

不思議なことに,この期間に息抜きで他のフォーマットの大会に出ると,普段よりすんなり勝つことができた。うまく言語化できないが,MTGの見え方が違ってきた,という感覚である。エリア予選という強者が集う環境から,新たな取り組みをしたことから,ほんの少し,良い影響をもらえていたのかもしれない。

とはいえ,終わりはない。プレイヤーズコンベンション横浜には参加する予定だ。併設されるスタンダードオープンでは,今回の取り組みを糧に,結果を残してみせる。

また,この記事の推敲をしている最中,ラストチャンストライアルの詳細も発表された。まだ戦いは続く。


最終スタンディング発表前。バブルマッチで負けた私は,下位のプライズがもらえる順位かを確認するだけだった。

最後のエリア予選,参加者の権利獲得に懸ける想いは並々ならぬものだったはず。先に紹介した Utsunomiya Takumi選手も始め, 関東の有名なプレイヤーも多く参加していた。遠征を重ね,参加したエリア予選の数は2桁はあったのだろう。

私が最後にバブルマッチで負けた相手も,関東から参加されていた。土地が止まり,最後に投了する際も,ごく自然に手を差し出し,「頑張ってくださいね」と声をかけることができた。泣きたいほどの悔しさはあったが,相手の勝利をたたえ,ここまでの戦いに応えたいというのが,正直な気持ちだった。

順位が発表される。よく名前を聞く人もいる。知人の名前もある。オポネント次第で権利が決まった人もいた。権利を獲得した人の中には,涙目になっている人もいた。

マジックは残酷である。どれだけ努力をしても,報われないこともあるだろう。それでも戦いの場に立ち続け,勝利をつかみ取った人の姿を見ると,このゲームを続けていてよかったと思う。

こんな気持ちで大会を後にできたのも,今回の取り組みで得られた成長の1つなのかもしれない。


デッキに感謝。
そして,戦ってくれたすべての参加者に,最大限の賛辞と感謝を。

だが次は,負けない。



以上になります。最後までお読みいただき,ありがとうございました。

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(本記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.")

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