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THE LAST SUN2022 入賞レポート  ―情が理を覆す楽しさを―


はじめに


本記事は、先日晴れる屋TC東京で開催された、THE LAST SUN2022 の大会レポートになります。

国内のトッププロ数名に加え、各地域の予選を抜けたプレイヤー144名で行われる競技イベントでした。

スタンダード+モダンによる2フォーマット制の今大会、スタンダードは白単ミッドレンジという比較的無難なデッキ選択だったのに対して、モダンはディミーアインバーターという、100%情のデッキ選択を行いました。

結果は、バブルマッチで敗北し、Top8を逃して13位。あと一歩でしたが、ハイレベルなトーナメントで入賞できた点は満足いくものでした。

特にディミーアインバーターは、モダンの中では所謂ローグデッキという位置づけでありながら、私が長い期間愛用し、トーナメントシーンに持ち込み続けた思い入れのあるデッキでもありました。本記事では、大会レポートに加えて、それまでに至った経緯、ひいては本記事のテーマである、“好きなデッキを組み,それで戦う楽しさ“を、少しでもお届けできればと思います。大会レポートの形式中心ですが,競技中心の方だけでなく,普段カジュアルにマジックをされている方々にこそ,読んでいただきたい内容となっております。全文無料ですが、良かったと思った方は、ご支援いただける大変嬉しいです。

なお、本大会で使用したディミーアインバーターのデッキガイドについても、別記事にて執筆中です。デッキそのものにご興味のある方は、そちらもぜひよろしくお願いします。

自己紹介


ハット、と言います。関西在住で、普段は晴れる屋TC大阪を中心にプレイしています。スタンからEDH,果てはヴィンテージまで,フォーマットは様々です。

目立った実績はなく、平日大会で時々3-0し、休日大会ではまれにSEに残り、年に一回優勝できれば御の字,という程度のプレイヤーだと思います。要はどこにでもいる,MTGが好きな1プレイヤーです。

マジックへの基本スタンスは、「自分が好きなデッキを作り、好きなカードを使う」こと。ありきたりな表現ですが,人と同じデッキは使いたくないですし,何より自分でデッキを作ること,そしてそれを大会に持ち込んで少しでも勝てることが,何より楽しいと感じています。

2ターン目《カーン》《戦車》

当時のヒストリックを真似て,パイオニアで,パラドックスコンボで遊んだり,

レガシーで,《繁栄の狐》が入ったジェスカイサイクリングを作ったり,

レガシーでも,インバーター(パラダイムシフト)

《タッサの神託者》と《引き裂かれし永劫,エムラクール》が4枚ずつ入ったデッキを組んだり。

デッキ構成のオリジナリティはもちろん、それできちんと「勝つ」ことを念頭に置き、デッキをスクラップ&ビルドしていました。

デッキとの出会いと,自分にとってのTHE LAST SUN

 さて,ディミーアインバーターと言えば、パイオニア環境での活躍を,真っ先に思い浮かべる人も多いだろう。私自身も,プレイヤーズツアー名古屋2020での八十岡翔太氏の活躍を目の当たりにし、すぐさま構築を決意。

特に以下の第9回戦、Alexander Hayne選手との試合は,ファンも多いのではないだろうか。


その使用感に惚れ込んだのもつかの間、あえなく《真実を覆すもの》はパイオニアで(購入して一度大会に出ただけで)禁止に。以来、モダンで活躍の場が作れないかと、0から構築を始めることに。

デッキの顔

パイオニア時代からそうだったが,《真実を覆すもの》(以下,《覆すもの》)は,出すと大方ライブラリーが吹き飛ぶため,”(ある程度)後戻りできない。失敗すると即死”という,これまでのマジック人生で経験しなかったスリルが得られるカードであった。言うまでもなく、その多くは「ミスって取り返しがつかず,負け」であるが,それは「ミスしたら,(敗北を以って)デッキがすぐ教えてくれる」と言い換えられる。カードゲームでは,「ミスをしても,その後の引きに恵まれ、それに気づかず勝ってしまう」ことが往々にしてあるが,このデッキはそれを許さない。何せミスをカバーできるだけの山札が残っていないのだから。細かなゲームプランの切り替えやマリガン基準に至るまで,デッキはすぐ教えてくれた。デッキでありながら,良き師匠のようなものである。

使用する中で数限りないミス(=即敗北)を重ねるも、使い続けるうちに,それなりには扱えるようになった。



THE LAST SUNへの参加は,今回で3回目。前回(2021)、前々回(2020)とも、モダンでこのディミーアインバーターを使い、本戦の権利を獲得。2020年大会は本選がモダンでなかったこともあり(パイオニア+レガシー)、活躍の場がなかったが、2021年大会(スタンダード+モダン)では初日をそこそこに折り返す。しかし、2日目で惨敗。その後も,以前のように結果を出すことは難しくなっていた。

理由は明白で、「モダンホライゾン2(以下,MH2)」である。モダンを愛好するプレイヤーの誰もが感じるように、MH2を境に環境は激変。カードパワーの変化についていけないデッキは皆、自然と淘汰されていった。

全部きつい

ディミーアインバーター目線でも、厳しいカードが増える一方。単なるサイドボード要員ならまだしも,これらのカードがデッキの軸となって環境を席巻している以上,敗北は理であると言えた。

MH2がモダン環境に与えた影響の是非は様々だろうが,愛用しているデッキが通用しなくなるのは,息苦しいものである。フルタップの相手に《忍耐》での即死を恐れて《覆すもの》を出すのをためらったり,《敏捷なこそ泥,ラガバン》で《思考囲い》を盗られてボロボロにされる等,窮屈なゲームを強いられていた。

試しに,友人にカウンターモンキーを借りた際,あまりのカードパワーに驚愕した。先行《ラガバン》から,4ターン目には《ドラゴンの怒りの媒介者》が昂揚,8/8の《濁浪の執政》から《対抗呪文》を構える展開をした際は,”何かテキストを読み間違えていないのか?”と思ったものである。全く別次元のマジックであり、多少ミスっても勝ってしまうこともしばしば。

マジックへの取り組み方や姿勢は人それぞれであるものの,競技のシーンはやはり結果が物を言う世界。理で結果を求めるなら,ローグデッキではなく、カウンターモンキーや《不屈の独創力》デッキを使うべきだっただろう。今大会の結果を見ても,それは明らかだ。

しかし,このディミーアインバーターというデッキは,私にとって単なるローグデッキではない。

誰とも違うアーキタイプと構築で幾ばくかの結果を出し,THE LAST SUNというハイレベルなトーナメントに毎年,私を連れて行ってくれたデッキであった。そして何より,デッキ自身がプレイヤーである私を鍛え、MTGのスキル自体を、僅かながら高みへと押し上げてくれた

オカルトな発想,と言えばそれまでだが,どうしても,感謝という情を以って,このデッキに応えたかった。

私とディミーアインバーターにとって、このTHE LAST SUNという舞台は,大会そのものだけではなく,いわば、モダンという環境それ自体へのリベンジを果たしたい場でもあったのである。

情で理を超える道を、選んだ。

権利獲得へ


 とは言え、2022年大会の予選が始まった時期は、奇しくもプレイヤーズツアーコンベンション名古屋が間近に控えた時期。パイオニアに専念していたため、THE LAST SUNのデッキの用意もままならず。

結局、ロータスコンボで参加した名古屋では2日目には進出するも,その後良いところなく敗退。12月からのわずかな期間で、THE LAST SUNの権利獲得を狙うために、デッキ選定を開始することに。

元リスト。非常によくできている。

スタンダードは当時全くプレイしていなかったので、スタンスに反しつつも,新たなデッキを0から作ることは断念。(シェオルドレッドを3枚も買いたくなかったので)直近の関西帝王戦(晴れる屋TC東京の「神」の関西版)を優勝した白単ミッドレンジを参考に。

元がプロツアー殿堂顕彰者,Willy EdelによってStandard Challengeを優勝したリスト,ということもあり、デッキの強度は折り紙付き。一発で権利獲得に至る。トップメタであるグリクシスに有利、という触れ込みは半ば確信的であり、マナカーブ順にカードをプレイできれば,自然と勝っている展開が多発。それは本選でも同様だった。

何はともあれ、権利を取得。この時点で本選の2週間前である。

デッキ選択と調整

スタンダード


時間もないので、権利獲得時の白単ミッドレンジを微調整して持ち込むことに。前述したグリクシスへの優位性に加え、エスパーや赤単へも五分以上。世間的には過小評価されていると言ってよいだろう。

なお,大会の直前週には、Standard Challengeにて新たなアーキタイプであるイゼットコントロールが入賞しており、これには明確に不利。

カウンター+ランプ。ミッドレンジを狩りに来てる。


 本大会でも数名の使用者がおり、当たらなかったのは幸運だった。今後流行るデッキの筆頭であり、白単にとって有利なフィールドも,時期的にはぎりぎりだったと言える。

本戦リスト

そんな中,少ない実践からのフィードバックを基に微調整。元のリストからの変更点は主に以下の3点。

  1. 対グリクシスでのゲームの焦点である《鏡割りの寓話》を確実に対処するため,《第3の道のロラン》をメインにも追加。

  2. 《漆月魁渡》が増えたため,PWへの対処に生物を増量。《ミシュラの鋳造所》や,サイドに《救出専門家》を投入。《ミシュラの鋳造所》は、《軍備放棄》のと兼ね合いが懸念されるも、実践で得たフィードバックからは問題なしと判断。また、アーティファクトカウントが増えて《道路脇の聖遺》がリソースとして数えやすく、いざという時《絶望招来》の受けにもなる。

  3. エスパーや青白兵士,ミラーなどのクリーチャーデッキへの優位性を強めるために,《粗暴な聖戦士》をサイドへ。《放浪皇》との嚙み合いが良く、相手の生物を抑えやすくなる。

いずれの変更も,本戦でよい方向に機能し,マッチを勝利。通算6-1と,十分すぎる活躍であった。

モダン

本戦リスト(モダン)

そして,モダンである。

現モダン環境を一言で表せば,「《敏捷なこそ泥,ラガバン》,《レンと六番》,《断片無き工作員》,《ウルザの物語》デッキの4皇」である。

4皇(モダホラ海出身)

モダンというフィールドは多様なデッキが存在しているが,デッキパワーの観点では、この4つのアーキタイプに概ね集約されるといってよいだろう。それを前提に,調整の照準を合わせることに。

調整するうちに,《レンと六番》デッキに対しては多少与しやすいことが分かった。+1能力の土地回収から《鏡割りの寓話》でのリソース対決や,-1能力の1点ダメージが刺さるデッキ相手には無類の強さを誇る一方,短期にゲームを決めるコンボデッキ相手には、脅威にならない。ディミーアインバーターは間違いなく後者だ。

《断片無き工作員》デッキについてだが,カスケードクラッシュは《力戦の束縛》の採用で多色化した結果,苦手な《血染めの月》が抜けるリストが主流に。この点はディミーアインバーターには有利に働く。

多色化のガン

リビングエンドに関しては、墓地コンボデッキの性質上,元々メイン戦は厳しく、サイド後の墓地対策の増量で手を打つことに。
《悲嘆》《否定の力》《忍耐》の全てがきついので,マッチ単位で当たりたくないデッキの1つである。とはいえ,環境全体の《呪文貫き》の枚数が増えている状況を鑑みれば,大会での使用者は多くはないだろうと予想した。

《ウルザの物語》デッキでは,特にハンマータイムに対して,サイズを無視した黒の除去が有効に機能する点や,《真実を覆すもの》の6/6というサイズが構築物トークンを受け止めやすく,有利にゲームを進めやすい。最近は青をタッチし,《呪文貫き》を採用する構成が主流になっているが,《真実を覆すもの》+《タッサの神託者》の組み合わせは有効だ。

今のモダンのメタを語る上で、外せない1枚

また、目の敵にしたMH2だが、インバーター目線での強化もあった。

地味だが、デッキを引き上げてくれた

《火/氷》は、《断片無き工作員》や《不屈の独創力》といったソーサリータイミングのアクションや《ウルザの物語》の妨害として有用であり、コンボにとって1ターン差をずらせることの恩恵は計り知れない。《火》は苦手は《月の大魔術師》を無理なく対処もできる。
《不敬な教示者》は、コンボデッキにとってこれほど強力なカードもない。コンボパーツはもちろんのこと、《魂の洞窟》《寺院》に始まり、サイドボードのシルバーバレットにも便利である。このデッキを回してから、15~20種類ほどのカードをサーチした。

《レンと6番》《断片無き工作員》《ウルザの物語》を強く意識したカード選択し、実践でもそれなりの結果に手ごたえを感じる。

問題はおそらく最多であろう,《ラガバン》デッキ(カウンターモンキー,赤黒想起)。純然たるコンボデッキにとって,クロックパーミッションや手札破壊は劇的であり,《ラガバン》はたやすくそれを可能にする。加えてカウンターや手札破壊からの《血染めの月》の効果は絶大であり,ついぞ有効なプランは見つけられずにいた。

当初の構築では《魂の洞窟》や手札破壊、PW等のアドバンテージ源を増量し,コンボへのアプローチを強めるプランも描いていた。しかし、前述した《血染めの月》だけでなく,《激しい叱責》、《緻密》、《戦慄の朗詠者、トーラック》といったカードにより,文字通り完封された。一体どこまで強いんだMH2。

ラガバン?同期です

そんな折,先に紹介した八十岡翔太氏とAlexander Hayne選手の対戦を思い出した。試合を見れば分かるように,八十岡氏は,1本目を《スカラベの神》,《真実を覆すもの》によるビートダウン、2本目を《ヴリンの神童,ジェイス》,《夢を引き裂くもの,アショク》によるコントロールと,いずれもコンボではない軸で勝利している。それをモダンで実現できないかを考えた。

この内,後者のコントロールプランは,《対抗呪文》《悲嘆》《血染めの月》に対して無力なことが多く,《神秘の論争》《狼狽の嵐》も厳しい。今のモダンに青白コントロールが少ないことが,純然なコントロールへの風当たりの強さを物語っている。

でかすぎんだろ

消去法で,ビートダウンプランを選択。特に,《真実を覆すもの》はコンボだけでなく,それ自体が6/6飛行というボディを兼ね備えており,相手目線ではコンボとの両面の対処を迫ることができる。

便利屋3兄弟

元々,コンボのバックアップとして搭載されている除去やハンデスは、ビートダウンでも十分に運用できると考えた。

ビートダウンプラン要員

検討の結果,生物の枠には上記のカード達を採用し,《真実を覆すもの》とのビートダウンを描くことに。本選ではほとんどのマッチで,サイド後には《神託者》《ジェイス》は大幅に削り,軸をずらすサイドボーディングを行った。

《厚かましい借り手》は,《濁浪の執政》《血染めの月》への必要最小限の対処を兼ねつつ,ビートダウンでの露払いに有効。

《ダウスィーの虚空歩き》は,リビングエンドへの墓地対策ができつつ,アタッカーをこなせる。継続的な追放は,《邪悪な熱気》から《真実を覆すもの》を守れる。これが《大祖始の遺産》ではゲームに勝てない。《未認可霊柩車》も悪くはないが,本来効きづらいはずである相手の墓地対策に引っかかりやすく,アタッカーとしての運用は不十分と判断した。

《海と空のシヴィエルン》は,《魂の洞窟》を《タッサの神託者》と共有でき,継続的にカードを供給してくれる。経験上,《激情》はサイド後減る(inされない)ことが多く,タフネス4は触られにくい。

《ゲトの裏切り者、カリタス》は,赤黒想起,ヨーグモスなど,幅広くinできる性能を見込んでの採用。《不敬な教示者》の存在から,1枚はこういったカードが欲しいと判断。

皮肉なことに,そのビートダウンを完遂するプランのために採用した《ダウスィーの虚空歩き》,《海と空のシヴィエルン》もまたMH2であったが,利用できるカードは貪欲に取り込み、デッキの強化を図っていくことができた。オリジナルでデッキを調整する都合上、文字通り0からカードを探し、その都度試行錯誤していく感覚は最高に楽しい。

用いられているカードは違えど、根本にあるゲームプランは、ハンデスと除去からのコンボと、サイド後のビートダウン。それを、パイオニアからモダンへ、そしてMH2モダンへと適応すべく、アップデートできた。

いざ、本選へ。

本選レポート

DAY1

スタンダード4回戦+モダン4回戦。5勝した時点でDAY1突破が確定するルール。

①ラクドスミッドレンジ○○
グリクシスと比べて,《墓地の侵入者》が多めに採用されている等,アグロ要素が強め。こちらが重いアクションを叩きつけつつ,相手の《絶望招来》は機能しにくい状態を作り続け、2ゲーム連取して勝利。カウンターがない分,裏目が発生せず与しやすい。

②マルドゥミッドレンジ○○
相手の《放浪皇》が透けている展開が続き,《婚礼》で地上を止め,《鋼の熾天使》で警戒+飛行でライフを詰める流れに。後半に《怒りの大天使》を連打されるが,既に《婚礼》が裏返っており,そのまま押し切る。

2本目は,《強迫》で《婚礼》抜かれた後に《告別》をトップ。《華やいだエルズペス》の処理に《ギックスの命令》を使わせ,見えていない点を利用した《告別》のクリーンヒットからミシュラで詰めて勝ち。

③グリクシス○○
《婚礼》連打で勝ち。このカード簡単すぎる。

2本目は相手のスクリューに《選定された平和の番人》出すと,除去札が《削剥》が2枚と偏っており,そのまま止めて勝ち。

④グリクシス×○○
1本目,1マリガンで後手《婚礼》スタートのキープ。《税血》→《かき消し》→《死体鑑定人》→《かき消し》と動かれ負け。

2本目ダブマリ,《婚礼》《神憑く相棒》土地3キープすると,犬が2枚目の《婚礼》を連れて来る。《絶望招来》もうまく吸ってくれ,そのまま《婚礼》連打で勝利。

3本目もダブマリ。2ターン目に割り切って《神憑く相棒》をプレイすると,悩みながら《かき消し》。返しの《強迫》がたまたまハズれ,《救出専門家》から犬を釣ると、今度はお供に《放浪皇》。リソースを戻して勝利。ツイてた。

スタン4-0。あまり難しい展開もなく,ただただデッキの立ち位置の良さに驚くばかりである。モダンラウンドへ。

⑤独創力コンボ(今大会準優勝者)××
後手のハンデスで《独創力》を抜き,《テフェリー》を《呪文貫き》と良い滑り出し。T1のハンデスで他に脅威がなく,後手T3に《エルドラージの寺院》から《覆すもの》を仕掛けたところ,《プリズマリの命令》でLOさせられて負け。

2本目,相手《虚空の力戦》スタート。1本目と同様,ハンデスで有効牌を0にし,《神秘を操るもの,ジェイス》から仕掛ける算段だったが,《選択》2枚で4枚目の土地が見つからず。
先に《寓話》とドワーフトークンで5点分のクロックをつくられ,《ジェイス》を残せない展開に。
止む無く《殻船着》のプランに切り替えると,運よく《神託者》を一発で秘匿。返しで何もなければ,というところで《独創力》を引かれ,X=3で《執政官》3体出て負け。

⑥赤黒想起〇×〇
こちら先手《コジレックの審問》で不死スペルを抜く。《悲嘆》が2枚に《寓話》もあったので,後手なら即死だった。《殻船着》で《神託者》を秘匿できたので,《氷》で相手の《寓話》着地をずらし,《覆すもの》仕掛け。返しに《悲嘆》で手の《神託者》が抜かれ,月があると負けだったが,無くて秘匿を解除してコンボ勝ち。

LO、じゃないよ

《殻船着の島》はモダンでディミーアインバーターを使う強みの一つである。土地を置くだけで、ノーコスト+瞬速で使用できるカードが一枚手に入ると思えば、破格の性能と言えよう。


相手《ダウスィー》スタート。《囲い》で《月》を抜き,《寓話》を《真実の抽出》で処理。相手《屍呆症》で《信託者》を指定するもサイド後は減らしたため,影響は最小限。しかし除去がなく,肝心の《ダウスィー》クロックが止まらず。
《覆すもの》を出し,《借り手》で何とかレースができそうになったところで《クロクサ》を引かれ,押し切られる。

ニューカペナドラフト13手目。けど便利

こちら《ダウスィー》スタート。土地2で止まるが,ハンデスで相手の手札が不死スペルのみに。お互いの《ダウスィー》を交換し合ったところで4枚目の土地が引け,《カリタス》が着地。相手の不死スペルを腐らせ,すぐサイズを上げて《激情》圏外に。
《稲妻》2枚で処理されるが,《覆すもの》が2枚駆け付け,連打でビードダウン完遂。不利マッチだっただけに,素直に嬉しい。

初日抜け。最後はギャラリーも多く,興奮でしばらく落ち着けなかった。

DAY1.5(夕飯)

ゲン担ぎではないが,昨年のTHE LAST SUNで来た時と全く同じところで夕食に。去年のリベンジを果たすためにも,この場所以外に選択肢はなかった。去年とは違うのだ,という決意を込めて。

別に食通でもないですが,美味かったです。関西や九州の人好みの味かと。知らんけど。おすすめ。

DAY2

DAY2は,モダン3回戦+スタン3回戦。初日の戦績とオポはリセットされるので、単に4-1-1以上が求められる。

①カウンターモンキー××
相手《媒介者》スタート。すぐ除去するも2,3枚目と連打され,6点クロックで詰められる。《神託者》が2枚あったので,カウンターが少ないことを祈り,《教示者》から《洞窟》でエルドラージ指定→《覆すもの》と通して自ターンに賭けるも,《邪悪な熱気》で《覆すもの》がどけられ《稲妻》で詰められて負け。

初手《ダウスィー》2枚と《覆すもの》,ハンデスと、当初描いたプランに必要なカードは揃っているが,黒黒が出ないハンド。覚悟してキープすると,ゲーム終わるまで2枚目の黒マナ引かず,負け。気を強くマリガンすべきだった。

②ヨーグモス医院×○○
マナクリを除去し,《囲い》を打つと,《召喚の調べ》2枚と《下賤の教主》で,場に土地2と《絡み根の霊》の状況。止む無く《教主》を抜くと,トップが土地→《グリスト》。その間、こちらは除去が重なった上に《神託者》が3枚寄ってきてしまい,ビートダウンで押し切られて負け。

相手ダブマリに対して,《ダウスィー》→《シヴィエルン》と展開してそのまま押し切る。

後手だが,マナクリを除去した返しに,同様に《ダウスィー》→《シヴィエルン》と展開でき,相手の土地が2で止まる。《覆すもの》も出してライフを詰めたところで《ヨーグモス》を出されるも,起動できるだけのライフがなく,勝ち。ツイてた。

③ボロスバーン〇×〇
火力4枚でキープの相手に,《呪文貫き》《審問》を挟んで《ジェイス》着地に成功。ハンデスで火力を削ぎつつ、《神託者》も出して《覆すもの》を探し,コンボ勝ち。

《ヴェクの聖別者》スタートに対し,《不敬な教示者》待機すると,返しで《乱動する渦》を置かれ,余計に5点食らって負け。分かってはいても,通った際のリターンを考えると,抜くに抜けない。

1マリガン後,《広がりゆく海》で赤白ファストランドを対処。火力を抱えているところに,《寺院》から《覆すもの》+《神託者》で1ターン差で間に合い,勝ち。

《力線》《濁浪》《ハンマー》に弱い

メタゲームの変遷から、最近のボロスバーンのリストからは《大歓楽の幻霊》が不採用なことが多く、無理にクリーチャー除去を探す必要がないのがポイント。代わりに採用した《呪文貫き》はここでも有効。それでも噛み合いはあったが、最近のリストを追いかけた甲斐あって拾えた勝利だ。

肝心のURには負けてしまったが,2-1は僥倖。スタンを2-0出来れば概ねTop8。

④ジャンド〇×〇
相手が土地2枚で止まり,《血・トークン》のルーターをメインで起動し続ける苦しい展開。こちらもいったん土地3で止まるも,ミシュラランドも使って早めに詰め切って勝ち。

減らした《銀行破り》が後手で重なってしまい,序盤からライフを詰められる展開に。《告別》でいったん流すも間に合わず、返しに《ジアトラの特使》に突っ込まれて負け。

先手で《平和の番人》を出すと,《寓話》と《削剥》がポーカーのハンド。《削剥》を止めてライフを詰め,《夜明けの空、猗旺》で蓋をしにかかる。除去札がなく,最後は《ジアトラの特使》を《キキジキの鏡像》でコピーされ突っ込まれるも,相打った《猗旺》が《放浪皇》を連れて来て勝利。

⑤エスパー××(高橋 優太さん)
バブルマッチで世界王者。

互いに《婚礼》《放浪皇》《猗旺》を出し合うも,こちらの《放浪皇》と《猗旺》は《かき消し》にあたってしまい,《婚礼》は《邪悪を打ち倒す》で互いに適切に処理され,、相手の《放浪皇》が残る展開に。
フラッド気味な中,《猗旺》と後続の《ラフィーン》には《軍備放棄》を当てるも,最後は《放浪皇》に押し切られ負け。
後で確認すると,高橋さんのリストは《かき消し》が4枚にメインから《否認》。サイドもカウンターが厚く取ってあり,かなり意識されている印象。

《平和の番人》を出すと《放浪皇》《否認》《告別》と生物がなく,完全なコントロールのハンド。
《放浪皇》を指定してライフを詰めるが,手札に除去札が溜まって後続が出せず。それでも残りライフ1までは追い詰めるも、後から《銀行破り》《眼識の収集》でリソースを広げられ,《告別》でのリセットから,さながらコントロールのように立ち回られて捲られ負け。
サイド後はきれいに軸をずらされ,いいようにやられた,という感想。手も足も出ず,Top8は水泡に帰した。

⑥エスパー○○(増田 勝仁さん)

高橋さんと異なり,《先兵の飛行士、ハービン》,《ヨーグモスの法務官、ギックス》が採用されており,積極的に殴る方向性のエスパー。
互いに《婚礼》《放浪皇》を出して場が硬直した中で,こちらだけが《銀行破り》を重ねてリソースを広げる展開。
耐えかねて《ヨーグモスの法務官、ギックス》のドロー狙いで無理なアタックを仕掛けてきたところで,ダブっていた《放浪皇》がうまく使えて勝ち。

先手で《先兵の飛行士、ハービン》→《ヨーグモスの法務官、ギックス》と動かれ,リソース差で先行されるも,《粗暴な聖戦士》が昼と夜を1往復して盤面を支える。
それでも《眼識の収集》で《婚礼》を盗られ、相手には《婚礼》3枚と厳しい場。《軍備放棄》と《銀行破り》で何とか《否認》を吊り出して、ギリギリで《告別》でリセットするも,《眼識》のフラッシュバックで《聖域の番人》を盗られ,こちらライフ5,手札は0。と絶対絶命。
しかしそこから,《猗旺》トップ→除去される→デッキに残り1枚の《粗暴な聖戦士》がめくれて《聖域の番人》を対処→2枚目の《聖域の番人》をトップ,という奇跡。

スタンのMVP


それでも,その《聖戦士》を除去されるとほぼ敗北だったが,何もなく勝利。今大会一番のバカヅキであった。

2日目4-2で,総合13位。

デッキへの”感謝”

結局,top8には残れなかった。もっと言えば,今回の成績はスタンダードが6-1なのに対し,モダンは3-2。
DAY1は途中で打ち切ったので直接比較はできないが,モダンの戦績はスタンダードほどではなかったのは間違いない。当初掲げた目標である,「感謝という情を以って,このデッキに応える」という点は、果たしきれなかった。

加えて,モダンラウンドで落とした2敗は,カウンターモンキーと《独創力》コンボ。どちらも正真正銘モダンのTier1であり,今大会の結果からもそれは明らか。モダンという環境それ自体へのリベンジも,結局はMH2という厚い壁に阻まれたと言って,差し支えないのだろう。

しかし,

高橋優太さんとのバブルマッチ,試合前にデッキチェックが入った。その時、


「珍しいデッキだったので、ついガン見してしまっていました」


少なくとも私の目には、どこか高揚した様子で、そう語ってくれた。


初日最終戦、高橋さんはすぐ隣でずっと試合を観ており、私のことを認識してくれていた。そしてバブルマッチ前の場で簡潔に、デッキの問題点・改善点を指摘もしてくれた。それらは、長く使用して私がたどり着いた結論に一致した点ばかりで、改めて別次元の選手なのだと気づかされた

世界王者が、自分のデッキに興味を持ってくれ、意見をくれた。デッキビルダーとして、言い表せないほどの喜びだった。そしてその時に、気づいたのである。このデッキへの”感謝”の気持ちに。こんな機会が得られたこと自体が、このデッキのおかげなのだ、と。このデッキは、MTGのスキルだけでなく、偉大な人との貴重な出会いまで、恵んでくれたのだ。




ディミーアインバーターが自分に告げていた、「まだ高みを目指せ」と。




どうやら感謝だけでなく、勝利への”信心”が、足りなかったようである。




最後に

長文になりましたが、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

このデッキを使いだしてからというもの、多くの方に声をかけられ、晴れる屋TC大阪では一種のアイコン(?)のように覚えてくれました。今回のTHE LAST SUNへの参加が決まった時も、「インバーターで頑張ってほしい!」といくつもの方から、応援していただきました。この場を借りて、御礼申し上げます。

そして、本記事のテーマである、“好きなデッキを組み,それで戦う楽しさ“が、一人でも多くのプレイヤーに伝われば、この上なく嬉しい限りです。

これを読んだあなたも、ぜひ好きなカードやデッキで試行錯誤し、挑戦し続けることを、どうか諦めないでほしい。


あなたのデッキへの情が理を、”覆す”、瞬間を見てみたい、から。


またどこかで戦いましょう。良いお年を。


全文無料ですが、良かったと思われた方、ご支援いただけると大変うれしいです。《真実を覆すもの》をFoilにします。


(本記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.")

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