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おすすめ作品:『みっちゃんの皮膚』

▼概要
公開:2024年
作者:胃下舌ミィ
SHUROにて掲載(読み切り)

あらすじ

主人公ヨーコの幼馴染みっちゃんは、いつも自作の着ぐるみを着ている。いつか人間ではなくなって本当のキャラクターになりたいのだそう。
ある日、ひょんなことからテレビに出演するみっちゃん。あっという間に人気が爆発し、世間はみっちゃんフィーバーとなるが……

みっちゃんがなぜ着ぐるみを気続けるのか。早々に言ってしまうと、他人の定規で測られるのにうんざりしているからだ。
私たちは年齢、性別、職業といったもので多かれ少なかれ他人に判断される世界で生きている。
だがみっちゃんはそんな世界にうんざりし、そういった属性を持たないキャラクターとして生きる。しかしそれでも、世間の興味はキャラクターそのものではなく「着ぐるみの中にいるであろう誰か」に向けられていく。

「正しく愛されたいからキャラクターになったのに」

みっちゃんの言うこのセリフが全てだろう。

現実にも、ずかずかと人の心に入り込み、くだらない物差しで他人を測り、勝手に市場に乗せ、笑いものにしたりバカにしたりする輩は多い。本当に嫌になる。
だからこそこの作品を読んだ時に、「よくぞ言ってくれた!」と思った。
かわいそうに、こいつらはそういう世界でしか生きていけないんだな。どうぞお好きに。私はお気に入りの公園で楽しくやるから。

ヨーコの「ソトガワがみっちゃんだよ」という言葉も、見えない、見てはいけない、見せようとしていない部分を勝手にジャッジするな、というメッセージだろう。

着ぐるみというのは自分を守る殻ともとらえることができる。これを破ることが成長だ、と。
時代や作者によっては、外の世界と正しくコミュニケーションのとれないみっちゃんがいて、中身の魅力を知っているヨーコにみっちゃん自身も感化され、着ぐるみから出てきてハッピーエンド、という描き方がされていたかも知れない。

しかしこれはみっちゃん自身にコンプレックスがある場合の話だ。本作ではみっちゃん自身に問題(破るべき殻)はなく、社会の方がおかしいだろうという提起がなされている。
その社会に対抗するための鎧として着ぐるみが設定されている。だからこそ最後のシーンでも、みっちゃんは着ぐるみを脱ぐことなく、これまで通り着ぐるみを着て現れる。
ヒーローも不正を働くこの世界で、これからもみっちゃんは戦い続けるのだろう。

みっちゃんの皮膚

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