見出し画像

コミケットで電子決済を導入した話 

 今年の冬コミケットでは, 電子決済を導入してみました。導入方法はそこまで難しくなかったので, 何かの参考になれば幸いです。

結論

・手続き自体はさほどややこしくはない。
・即売会当日の3週間前を目処に導入開始くらいを行うと安心感がある。
・即売会当日の通信問題については必ず一考するべき。
・導入する上でのデメリットはそこまでないけれど, メリットがあるかは正直不明。
・楽しいから1度やってみてよ。

導入目的・理由

○ノリで導入できそうだったから

 正直に言えば, 「なんとなくやってみたかった」「なんかカッコよさそう」というのが導入背景の1番の理由です。その程度のノリで導入することが出来たので, 導入のハードルは相当低いと思います。それこそ, 導入から当日までの流れは以下の通りです。

 ・ 決済機材の購入。
 ・ アカウント登録や振込先の諸手続き。
 ・ 利用開始までの承認を待つ。
 ・ 導入機材の到着と, 利用開始の承認が降りたら, テストを行う。
 ・ 当日を迎える。

 以上の5行程で導入が出来ました。

○デザインフェスタでの導入例を見て

 もう1つの理由を述べるなら, デザインフェスタ(以下DF)での導入事例があります。筆者は毎年, DFに一般参加を行っていますが, こちらは電子決済の導入が圧倒的に多い印象を受けました。(※所感。明確な統計はありません。)
 特に取り扱っている品々が数千円〜数万円の出展では, 電子決済の方が便利なのかもしれません。

 ★ 多額の金銭を持ち歩く必要が無い。
 ・ 会計が混乱しにくい。
 ・ 窓口が一本化出来る。

 他にもメリットは多く感じましたが, 即売会にも応用出来そうなメリットを抜き出しました。特に★の「多額の金銭を持ち歩く必要が無い」という点は非常に大きな利点であると痛感しました。
 金銭を持ち歩くこと自体, 多くの人が入り乱れる即売会において悩みの種ですし, 多額の金銭を持ち歩くのは非常に重たい点も挙げられます。例えば100円玉を100枚持つと, 大体500g程度なので, それなりに重たいです。

 また, 頒布側も一般参加側もタッチ1つで処理が出来ることで, 会計が混乱しにくくなる点や, 会計と頒布数の処理を一括で行うことで, 窓口の一本化が出来るのではないかと思いました。

 そして, 仮定だけでは面白くないと思い, 「なら自分のサークルスペースでやってみようか」と思いました。その上で結論などをまとめてみたら, 何かに役立てるのではないかと思ったため, 今回の導入に至ります。

 以上の理由から, コミケットでの電子決済を決意しました。

導入事例

 導入に際し, 以下のサイトを参考とさせて頂きました。ありがとうございます。他にも「即売会 電子決済」でインターネットエンジン上で検索を行うと, いくつか参考になるものが出てくるので, 併せて閲覧することを強く推奨します。


導入手順

○決済機材の購入

 今回購入したものは, 「Squareターミナル」という機材です。

 こちらを導入した理由は以下の通りです。

 ★   現実的に導入可能であったから。
 ・ 導入の初期費用が他の2種に比べて安価である。(4980円税込)
 ・ 見た目がスタイリッシュでカッコいい。

 ポイントになるのが「現実的に導入可能であったから」という理由が大きいです。この点を軸に, 他の機材の2種と比較してみましょう。

 当初はこちらの「Squareスタンド」を導入する予定でしたが……

 × 導入に必要である該当のiPadを所持していない。
  →所持しているのはiPad Pro 第四世代のみ。
 × そのためにiPadを導入する理由がない。
  →Appleの認定中古品等を検討したが, iPad+Squareスタンドの資金で, 後述のSquareターミナルを導入可能。

 という2点が, 導入しない理由として大きすぎたため断念しました。

 次にこちらの「Squareターミナル」ですが, 単純に導入コストが高いため, 導入を断念しました。ただし, レシートが出ることや, クレジットカードの決済(暗証番号入力)が比較的容易な気がしたので, それだけでも導入する理由になるかもしれません。ここは好みですね。

 以上の理由から, 消去法という形にはなりましたが, Squareリーダーの導入を行いました。

○アカウント登録や振込先の諸手続き

 これは先述の記事が詳しいため, 省略出来るところは省略していきます。少なくとも, 自分でCircle.msのアカウント登録とコミケットに申し込みを行えるならば, そこまでストレスなく導入出来ると思いました。

 登録の際に求められたのは以下の通りです。

・メールアドレスとパスワード
・住所氏名
★店舗の名前
・電話番号
・口座の情報

 ★の「店舗の名前」について少し補足します。ここでは企業名や法人名を登録することだと考えました。つまり, 法人登録されている店舗はこちらに記入すれば良いと考えられますが, あくまで同人誌即売会は趣味の一環として活動するため, ここでは筆者のペンネームをそのまま店舗名としました。振込先は普段使いしている口座を指定しました。

 この入力自体はそこまで時間を要さないと思います。メロンブックスのサークル登録と似ている点は多かったです。

○ 利用開始までの承認を待つ

 アカウントの登録と振込先の手続きが終わると, 次に各決済方法の有効化が始まります。他の方々が述べている通り, 交通系ICは自分で有効化をしなければならないのがポイントです。(クレジットカード類は上記の申し込みが終われば自動で承認されますが, 銀行との紐付けが必要だそうです。)

 そこで自分も交通系ICの有効化を行おうとしましたが……

必要情報の入力がすべてされているのにも関わらず, 有効化のチェックボックスが現れないという問題が現れました。

 先に断っておくと, これはその後解決しました。アカウント登録などを行った5〜6時間後に「交通系ICの有効化を行ってください」というメールが届き, そこから有効化を行えました。
 とはいえ, 即座に自分で有効化出来ると思っていた自分にとっては焦りました。もしも導入を検討している人は, 有効化までに多少の時間がかかる可能性についても, 一応念頭に入れて置いてください。

即座に完了するものと審査中のものがあります
このメールが来てから自分は有効化が出来ました。

 その後, 4〜7日程度で交通系ICとQUICPayの利用が可能になりました。これが冒頭でお話しした, 即売会の3週間前には導入の準備を行っておこうという理由になります。
 機材は購入してから4日ほどで到着, 各決済の承認と銀行の有効化が出来たのは4〜7日ほどであったため, 最短で見積もっても7〜10日前には準備をしておかなければなりません。他テストや準備などを考えると, やはり2〜3週間くらいは余裕を持っておきたいところです。特に即売会前は色々とあたふたするので, 特に金銭関係のものは余裕を持たせたいところです。

○テストを行う

 諸手続きが終わったら, 必ずテストを行ってください。今回は当日お手伝いを引き受けて頂いた方にもお願いをして交通系ICとQUICPay, Apple Payの支払いテストを行いました。具体的な操作手順は, Squareのアプリケーションをダウンロード(必須です)すると, チュートリアルが始まるので, そちらで確認をしてください。

 そしてテストをしている段階で気がついたことは, 売り上げの項目がログとして残る点は非常に即売会と親和性が高いと感じました。

テストの結果。具体的な売り上げの数が可視化されるのは非常にありがたい。

 今回はICでのみの売り上げを区分けするために, わざと分けましたが, 現金の売り上げの際もこちらでまとめることで, 当日の頒布数の記録も電子化できるかもしれません。便利ですね。

○当日を迎える

 ここまでこれば, 後は当日を迎えるだけです。存分にお店感を出していきましょう。

本音を言うならもう少しこなれた感を出したかった。

導入結果・課題

○即売会を終えて

 先の結論でも述べた通り, 時間の確保とコミケットの申し込みが出来れば, 電子決済の導入はそこまで難しくはありません。興味があれば, 是非導入を検討してみてもいいと考えられます。

 今回感じた1番の収穫は, 電子決済を導入することで, 即売会当日の記録と支払いを一本化出来る可能性が見えてきた。と言う点です。

図.1
図.2

 まず, 図1のように新刊手渡しの欄を設け, 次に図2のように頒布額を0円にして, 顧客名を手渡した人にすることで, 本来手の記録で行っていた手渡しの記録を取ることが出来そうです。正直, これは紙で正の字を記録していくやり方が素早いのは言うまでもないことですが, スペースの上にこういう紙を置きたくない自分にとっては, 非常に可能性があると感じました。

 これにより, ペーパーレスの即売会の可能性も少し見えてきたように考えられました。

 また, 1円単位で単価を決められるのも地味に嬉しいポイントです。30円や50円といった, 本来即売会では敬遠される額であっても, キャッシュレスならやりやすいですね。

○課題①「通信環境の整備」

 テストの時から感じていましたが, この通信環境の整備をどのようにするかが最大の問題になりそうです。こと通信にのみ焦点を当てるなら, デザリングやポケットWi-Fiで解決が可能です。

 ただ, 最大の問題は, Squareリーダーの活用には専用のアプリケーションの起動が必須になります。
 
 ① 通信環境(4G, 5GもしくはWi-Fi機能を持つもの)
 ② Squareのアプリケーションを起動できる端末

 この①②を両方解決出来るのはキャリアを持つスマートフォンですが, サークル主(回線契約者本人)以外は会計出来ない問題があります。サークルを自分1人で切り盛りする上では問題ありませんが, お手伝いをお願いする場合, この問題をどうするか一考しなければなりません。サークル主が会計を全部担当するなど, お手伝いとのある程度の棲み分けや相談が必要になりそうです。

 また, 今回はありませんでしたが, 回線がダウンした時にどうするかについても考えると, 即売会という性質上, 完全にキャッシュレスに踏み切るのは相当難しいと考えられます。やはりこういう問題に対しては, 紙と現金が強いという事実を改めて実感しました。

○課題②「果たしてメリットはあるのか」

 明確な統計も取っていませんし, 質問紙法に基づくアンケートを取っているわけでもないので, 電子決済を導入することがそのままメリットに直結するかどうかまでは, 流石に分かりませんでした。通信が落ちた時の問題が現状大きすぎるため, やはり紙と現金による伝統的なやり方が1番確実かつ1番安全かもしれません
 それこそ電子決済に頼るメリットが大きいDFでのお金のやり取りに比べれば, 即売会でやり取りするお金の量はそこまで大きくはないため, 現状導入したところで, 本当に劇的にメリットであると思えるものが現れるかどうかが微妙なところです。

 ただ, 導入する上でデメリットだと感じることもなかったので, ロマンや目新しいことをやってみたい目的で導入するのはアリだと思います。

○課題3「委託を受ける場合」

 もしも他の人から頒布物の委託を受ける際, これも棲み分けが大変になります。自分のサークルの分は電子決済が可能でも, 委託先が電子決済を受け入れていなかった場合, 会計の手間が少し大変になります。また, 電子決済を委託先が受け入れた場合, 手数料で本来の頒布額から多少の減少がある問題をどうするかを決めなければなりません。

今後の展望について

 今後ですが, 自分がサークル参加する場合の即売会では電子決済を毎回導入してみたいと思います。そこで気づいたことや課題が見つかれば, 追記や別記事に出来たらと考えています。

 また, この記事を書いている途中でこんなものがあることに気づきました。


 元々iPad miniを購入しようとしていた&Squareスタンドを導入したかった自分にとってはかなり魅力的です。iPad miniのCellularモデルを導入して, いつもカーナビに使っているSIMを入れたら, 課題の①②の両方を解決出来そうです。機会があれば導入してみたい。

 かなりの長文でしたが, 何かの参考になれば幸いです。もしも疑問点や質問やご指摘などあればコメント頂けると嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?