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みちのくプロレスへ愛をこめて

私はみちのくプロレスが好きで、それはもう好きで好きでしかたなくて、基本的にみちのくプロレスのスケジュール優先で動いている。これは健全な成人女性としては少し問題がある気がする。いや、かなり問題がある。一応自覚はある。でも、なぜそこまでしてみちのくプロレスが好きになってしまったんだろう。ちょっと考えてみよう。



そもそもみちのくプロレスとの出会いはいつだったんだろう。生観戦のきっかけは、姉に誘われて着いて行った、2013年のゴールデンウイークシリーズ。当時の記憶といえば、聖地と呼ばれる矢巾体育館の天井の高さと、ざわついた空気。第一試合は郡司選手がいた気がする。テクニカルなレスリングの攻防は、初めてプロレスを観た私には新鮮だったし、会場の静けさがやけに恐かった。どう観戦するのかが普通なのか知らないし、どこで盛り上がるのかも、どう応援するのかも分からない。パンフレットを眺めながら、これがあの選手か、と名前を確認することだけで精一杯だった。
それと、試合前に売店に行ったことも覚えてる。売店に並んでいたラッセ選手と剣舞選手は、私が想像していたよりも小さく見えた。小さいけれど厚みがあって、これがプロレスラーの肉体か!と思ったことをよく覚えている。売店での対応も私にとっては衝撃的だった。それには、プロレス観戦を始める前の私の趣味がお笑いだったことに関係があるわけだ。
その昔、お笑いライブは会場で売店(=物販)に芸人がいる、ということがなくて、DVDや雑誌の発売イベントくらいでしか交流を持つことができなかった。長く話したり、ツーショットを撮ってもらうには入り待ちか出待ちしか手段がないわりに、それらは迷惑行為として認識される。漫才やコントを観るだけでは満足できない若かりし頃の私は、駅で芸人の出入り待ちをしてファンサービスを受けていた。改札を抜けていく芸人に並走しながらサインをもらった、なんてこともあった。でも、みちのくプロレスは違う。売店に選手がいて、グッズを買えば合法で写真や握手のファンサービスがもらえる。これには衝撃を受けた。
それに当時のみちのくプロレスと言えば、BADBOYと阿修羅の激しいユニット戦がストーリーのメインで、リーダーのハヤト選手と拳王選手の激しい戦いは、プロレス初心者の私にとっても圧倒的な迫力だった。な、なんだこの二人は!色白金髪と色黒黒髪で間逆の見た目!バッチバチの蹴りあい!仲悪そう!ふーん。いいじゃん…。とまあ、こんな感じにまんまと好きになった。オタクはライバル関係が好き。これはハッキリと言い切れる。
初観戦でまんまとみちのくプロレスにハマった私は、ここから人生が狂い始めた。2014年には、居住している岩手を離れて東北を遠征をするようになった。青森、秋田、山形、福島、宮城、すごい早さで東北を制覇した。移動距離がおかしい。運転が大の苦手で、運転なんてしたくない!と思っていたはずの私が、200キロの道のりを車で向かう。いやあ、好きという感情は恐ろしい。

不動のエース


ここからは、プロレス団体がいくつもあるのになぜみちのくプロレスが好きになったのか、というところを考えていこうかと思う。

一番大きな理由は、私が岩手に住んでいるということ。
みちのくプロレスの本拠地が岩手なだけあって、圧倒的に東北での興行数が多いから、観に行くなら東北在住だと都合がいい。たいていの場所は車で日帰りできる。交通費という面で考えると、ガソリン代や高速代、車の整備代なども含まれるので、格安!とまではいかないけど、公共交通機関よりはずっと時間の融通が効くから、通いやすい。
それに、団体のマナーの高さも、通い続けている要因のひとつだ。
某団体を観に行くのを止めた理由のひとつに、選手を殴ろうとした観客に、退場処置を取らなかった、ということがあった。この観客は団体関係者の知り合いだったみたいで、そういう理由での運営側の甘さにウンザリした。別の団体では、団体のスポンサーと思われる観客が動画撮影をしていたことがある。もちろん動画撮影禁止の興業だったから団体に報告したけど、そのスポンサーは注意されても止めなかった。関係者やスポンサーが堂々とルール違反をしていると、すごくストレスが溜まる。これ分かってくれるひといる?あれ、本当に百害あって一利なしだと思うんだよね。スポンサーにとっても団体にとってもファンにとってもいいことがない。み~んな嫌な気分になって終わり。マジであれどうにかしてほしい。でも、ルール違反をする、マナーが悪いなどの無法者がいる中で、みちのくプロレスはそういったひとたちに厳正な態度を取ってくれるからめっちゃ好き。
選手にペットボトルを投げつけた人は会場からすぐ退場。選手に襲い掛かろうとした人がいたらセコンドの若手選手が腰払い。動画を撮っているファンを見つけたら即注意。選手を貶すようなクソヤジを飛ばす観客がいたら出禁勧告。(ぜんぶマジ)
ルールを守って楽しんでいるお客さんを絶対に嫌な気持ちにさせない。そういった姿勢って、実は簡単なようで難しい。でも、私が見た限りだと、みちのくプロレスはそれをちゃんとやってくれてる。そこが安心して団体を好きでいられるひとつの要因。
それに、やっぱり試合が好きだ。というか、みちのくプロレスの興行自体が好きだ。会場やお客さんの雰囲気も含めて好き。
誰が来るんだと言いたくなるような辺鄙な体育館。お客さんの過半数がおじいちゃんおばあちゃんしかいないなんちゃらセンター。最寄り駅が遠すぎて、車が無ければ詰むこと間違いなしのうんちゃらホール。こういうところで見るプロレスは最高だ。きっと、年一回のみちのくプロレスを楽しみにしてるんだろうなあ、というお客さんの嬉しそうな顔を見ると、なんだかこっちまで嬉しくなってくる。かと思えば、荒吐ロックフェス、岩山パークランド、ショッピングモールの屋上、ホームセンターの駐車場、のような、マジでなんなん?という場所の興行もたまらない。プロレスってだけで非日常のはずなのに、それがとんでもないシチュエーションで開催されるとマジで楽しい。


最高の会場の内のひとつである岩山パークランド


それに、道場プロレスも最高だ。ローカルのプロレス団体としての良さが出ていると思う。基本的には岩手県在住の選手しか出ないけど、それがまたいい。若手選手育成の場のための道場プロレスだから、選手の着実な成長を一番近くで感じられる場所だと断言していいんじゃないかな。コロナ禍になってからはほぼ毎週開催されてるし、ミニマムな会場であるからこそ、選手の息遣いや打撃の音、表情、感情を間近で体感することができる。また、あのアットホームな感じはみちのくならではという気がする。これこそ地域密着型ローカル団体のよさだと思う。
何回でも言うけど、みちのくプロレスは、試合自体も本当に素晴らしい。ぶっちゃけ、団体や選手によっては、地方大会だからって明らかに手を抜いてるな、と感じることもある。選手からしたら数ある興行のうちの一試合なんだろうけど、客からしたらその一試合が全てなんだぞ分かってんのか。私たちファンがこの試合をどれだけ楽しみにして期待してたのか教えてやるからそこ座れ!と説教したくなるときがある。
でも、みちのくプロレスにはそれがない。選手側からしたらどうか知らないけど、少なくとも私からしたら、手を抜いてるなと思うときはない。一桁の人数しかいないミニマムな会場から、数百人のお客さんの前でのビックマッチでも、いつだって選手は熱く、楽しい、テクニカルな、パワー溢れる、そんな試合を観せてくれる。好きにならない理由がない。マジで好き。
色々な魅力があるみちのくプロレスだけど、参戦してる選手も最高だと思う。サスケ選手、人生選手、東郷選手などのいわゆる『レジェンド』も、バリバリ現役。自分より十も、下手すると二十も年下の選手とバッチバチな試合をしてくれる。それに、MUSASHI選手や塁選手、若手のOSO11選手などの生え抜きの選手も基礎がしっかりしてるし、観るたびに新鮮に成長を感じられるのもたまらない。あと、闘龍門からの流れでみちのくに出ている選手も多いから、テクニカルなプロレスで観客を楽しませてくれる。
それに、みちのくは歴史が長いおかげで、選手と選手の関係性が観客にも伝わってくるところもいい。いわゆる『エモ』さがある。オタクはエモい関係性が大好物。これに異論は認めない。元々は同じユニット、憧れていた選手、親と子ほど離れた歳、同期、とかの関係性を持った選手が組んで、闘って、背中を預けていたと思えば、裏切られる。どのプロレス団体にも共通する魅力だけど、長く見れば見る程、点と点が線になる楽しみを味わえる。これから先の未来のことをこの目で確かめたいと思うから、ずっと観たくなる魅力があるんだと思う。


仲良しさが浮き出てる

とまあ、ここまで書いてきたけど、別にみちのくプロレスこそ完璧!至高!他の団体は総じてクソ!と言いたいわけじゃない。みちのくプロレスのファンだけど、選手の言ってることに納得がいかなかったり、試合に幻滅したり、興行の流れが好みじゃないときとか、クソみたいなお客さんがいたりして、マジで来なきゃよかったなって思うときもある。
それでも、不完全でも、完璧じゃないけど、それを上回る好きでいられる魅力がある。だからみちのくプロレスに足を運ぶし、多くのひとに魅力を分かってほしいから、たくさんの写真をツイートしたり激デカ感情お気持ちnoteを書いたりする。そういう魅力のある団体に出会えて幸せだ。

と、つらつらとここまで書いてきたけど、みちのくプロレスを好きな理由を全て書ききれてはいない気がする。好きという感情を言葉にするのはとても難しい。それでも、私はみちのくプロレスが好きだってことを書き残しておきたかった。だって、これから数十年あるはずの人生で、ずっとみちのくプロレスを好きでいられるかは分からないから。みちのくプロレスが30年間続いてきたように、私も末永くみちのくプロレスのことを好きでいたいし、観戦にも通いたいとは思う。でも、色んな理由で嫌いになったり、観にいけなくなったりすることもある、かもしれない。そのときに「無駄な時間過ごしたな~!」とかじゃなくて、「あのときめちゃくちゃ楽しかったな~!」って思ってお別れするのが目標。今のこの情熱のままでこの先も観ていられたら最高だけど、体力や時間は有限だからさ……。さよならだけが人生じゃないけど、いつかその時が来るための下準備だ。もしいつか離れることがあっても、あの時間はかけがえのない尊い時間だったなあ、と思い出せるように、こうやって書き記しておきたかった。


聖地


『なぜプロレスが好きなのか?』という質問は、プロレスファンなら一度はされたことがあるんじゃないだろうか。いい意味でも悪い意味でも『なんでプロレスなの?』って。なぜなのか、と考えると、きりがない。
会場の空気感や、団体のアットホームな感じも好きだし、プロレスオタクの友だちと話したりするのも楽しい。試合中に思いっきり声を出すのもすっきりするし、好きな選手が勝てば嬉しくて泣くし、負ければ悔しく泣く。ユニット闘争も熱いし、人間ドラマを目の前で観られるのも魅力的だ。
『なぜ』という答えには、プロレスファンが100人いたら100通りの答えが出てくるはず。楽しいと思うところや、プロレスに対する価値観は人それぞれでいいと思う。高尚な考えを持ってなきゃいけないわけでもない。だって趣味だし。でも、されど趣味だから、好きでありたいし、色々考えちゃう。

そして、私が大好きなみちのくプロレスは、今年で30周年を迎える。30年続けるって本当にすごい。私自身は、みちのくが紡いできた30年の歴史の中の、ほんのちょっとしか見てないし、寄り添ってないけど、それでも30年続けてくれたことが嬉しい。50ケ年計画に到達するまであと20年あるわけだけど、その頃まで歴史が途切れることなく、続いてくれればなあと思う。


30周年なんだから帰ってこいよな!な!

みちのくプロレスが30年もの、間活動を続けてくれたおかげで、私もみちのくプロレスに出会えた。色んなタイミングが重なって、色んな条件が整って、私もひとりのファンとしてその歴史に立ち会えたことに感謝したい。あと何年好きでいられるのか。あと何十年続くのか。それこそ神のみぞ知るところだけど、しばらくはみちのくプロレスを好きでいさせてもらいたい。30周年おめでとうみちのくプロレス。30周年ありがとうみちのくプロレス。あとまだしばらく、好きでいさせてね。

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