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TENCAを取ろう! -田嶋会長の野望!?日本サッカー協会100年史を飾るのは……?【サポーター激論】


サポーター激論!!

そんな企画を思いついて実施したのは、ワールドカップが始まる前のことでした。手探りながら話してみたところ、非常に興味深い話に辿り着きました。

それが、「田嶋会長の野望は、アレなのではないか」というお話です。

他に、サッカー協会のビジョンの提示と、それをどうやって実現していくかについての議論をしています。

そして「アレ」の話ですね。最初は「オールジャパン(すべて日本)」と言っていましたが、今は「ジャパンズウェイ(日本のやり方)」という言い方になりました。

日本人中心の組閣にした真の理由はもしかしたら……?

この記事はワールドカップ前に話した内容なのですが、記事化が遅れたこともあり、ワールドカップ本戦が迫る中、状況が刻一刻と変わっていて、いつ出したものかとなっていたのですが、「さっさと出せや!やらなきゃ意味ないよ」というぺこさんからの猛プッシュがあったので慌てて出そうと思う次第です。

本当は前篇と後篇があって、こちらは後篇にあたります。前篇は、ハリルホジッチ解任以降を振り返ったものなので、もしかしたらこのままお蔵入りにするかもしれませんし、やっぱり資料として残そうと思った時には残すかもしれません。

というわけでメンバーはこちら!

中村慎太郎:このnoteの人。ざっくりとサッカーを見ているニワカだけど、時々記事がバズる。FC東京のゆるサポ。W杯期間中は、ニコ生の実況解説を務め、すべての生体エネルギーを吸い込まれ、ポンコツ化して今に至る。

ぺこ:経営コンサルタントのインテリサポーター。ワールドカップは現地参戦派。何をどこまで書いていいかわからないくらいまともな社会人だけど、何かが壊れている。ツイッターを見ると状況がわかる。もっと炎上したらいいのに。@pecojpn

石井和裕:Jリーグ開幕前のJSL時代からのサッカーファンで、横浜F・マリノスのサポーター。サポーター史の研究をマッドサイエンティストばりに進めている。著書『横浜F・マリノスあるある』、『日本のサポーター史@ece_malicia

ぺこさんは、W杯現地派であり、経営コンサルタント目線でJFAを見る人。

石井さんは、日本サッカー史を踏まえた上で、サポーター目線で考える人。

中村は、ぺこさんと石井さんの話を聞くのが好きな人。

※この記事は議論の「後篇」として収録したものですが、タイミング的に今かなと思います。やらなきゃ意味ないよ(ぺこさんの口癖)。

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中村慎太郎(以下、中村):さて、後篇です(前篇はまだ公開していませんが)。石井さん、これだけは言っておきたいということがあるというお話でしたが。

石井和裕(以下、石井):はい。ハリルホジッチ監督の解任劇で重要なのは、日本サッカー協会、もしくはその会長が提示している日本サッカーのビジョンだと思っています。このビジョンは今までずっと日本中に提示されてきました。

中村:なるほど。そのビジョンとはどういったものでしょうか。

石井:はい、サッカー協会が掲げるビジョンのベースにはJリーグがあります。少し回りくどいですがそこから始めます。

1990年代初期に、バブルが崩壊するタイミングで、日本サッカーの存在感が出てきました。バブル崩壊によって、日本全体がうまくいかなくなるんじゃないかという気配がある中で、今まで認められてこなかった日本サッカーが勃興したわけです。

中村:子供だったので意識していませんでしたが、確かに日本中が暗くなった時代でしたね。

石井:そう。そこでサッカーが、日本はみんなで頑張ればこんなにすごいんだよ、と示し続けてきました。そして、その先のビジョンとしてW杯優勝とかベスト8以上を掲げました。このようなビジョンを出し続けることはとても大切だと思っています。

ところで、この本を買いました。東京読売巨人軍50年史というタイトルですが、古本屋で500円くらいで買ったんですよ。この本、創立50周年記念パーティの内容から始まります。


そもそも、野球が日本国民に熱狂的に支持されるスポーツエンターテイメントの王様になった理由は、読売巨人軍のビジョンにあると思っています。というのも、冒頭でこんなことが語られています。

太平洋戦争でぼろぼろになった日本をどのように復興させていこうか、そのためにプロ野球がどうやって日本国民を奮い立たせていくか、そして、それらをどうやって実現させてきたかが延々と書かれています。

一方で、プロ野球は世界と戦う機会があまりありませんでした。そこがサッカーとの違いです。そのせいもあって、スポーツに求められるものが、「国内」から「世界」へと移っていくと同時に、サッカーと野球の役割がクロスオーバーしました。世界と戦っていく日本人というビジョンは、サッカーが担うようになったわけです。しかし、今回の田嶋会長の発言から、この先のビジョンが見えない点が不安に感じています。

中村:日本サッカーのビジョンが喪失している懸念ですね。Jリーグができたときは「Jリーグ100年構想」というビジョンがあった。そして、JFAのビジョンについても代表を強化し、世界と戦っていくというビジョンがあったわけですね。そして今になって、ビジョンが失われているのではないかというご指摘ですね。石井さんは、Jリーグ以前のJSL(日本サッカーリーグ)からも見てきているわけですが、そう感じられたのは今回が初めてですか?

石井:初めてですね。これまでは必ず何かしらの目標がありました。スポーツの力で、日本社会に良い影響を与えていきたいという発言も頻繁に発信されていました。

中村:サッカーには夢や希望が似合いますね。今回は裸踊りになってしまいましたが(参照:サッカー協会会長の発言を解読してみた【NHK生出演】)。「日本社会の駄目なところが見える」とか「戦争のときの日本軍と似てる」なんていう、なかなか出ないワードが乱舞していましたね。田嶋会長が、サッカーに対して夢を見ているタイプであれば共感する人も出たかもしれません。つまり、ビジョンを掲げていたら、です。

石井:そうだと思います。人柄への共感がなくても、ビジョンが共有されていて、そこに感じられるものがあれば、賛成・反対の議論が出たと思います。今はそのビジョンがふわっとして見えていません。いわゆるサッカーファンは解任に反対の意見が多いです。一方で、賛成の声もあるにはあるんだけど、声が小さいし、意見を交換する場が作れないのは日本サッカー全体にとって不幸だと思います。

ペコ:2005年宣言って今どうなっていましたっけ。たしか2015年に中間目標を置いていたはずです。コンサル目線での発言ですが、経営組織としては達成できていないビジョンは見直す必要があります。という文脈で、そろそろ2005年宣言を見直したほうがいいですね。

参考 JFA 2005年宣言 
・2015年に世界トップ10のチームに入る(JFAの約束2015より)
・2050年にW杯を自国開催し優勝(JFAの約束2050より)
代表強化に関する

もし今も2005年宣言が生きていて、そのまま目指すというんですと言うならいいのですが、石井さんが指摘したようにビジョンがぼやけてきています。

経営コンサルタントには、バランススコアカードという概念があります。ビジョンを達成するためには、現状との差分を把握しないといけない。

中村:つまり、ビジョンがどの程度達成されたのかをチェックする必要があるということですか。

ペコ:その通りです。さらに言うと、ビジョンと現状の間に差がある場合、どんな問題があるために差が生じているのか、そして、その問題を解決するためにどんなアクションを取る必要があり、そのアクションをどれくらいの量でやるとゴールに到達するかを検討する必要があります。

例えば、ベスト8が目標であれば、ベスト16で止まっている理由を書き出していきます。それを1個ずつ解決するためには、こんなスタイルのサッカーをしなくてはいけないとか、こんな概念を取り入れなきゃいけないとか、審判を育てなきゃいけないとか、そういった要素を全部書き出していきます。ぼんやりと、何かをやらなきゃいけないというだけだと実現できません。

そして、やることになったアクションをいつまでにどれくらいのボリュームで達成するのかを数値目標に落とし込みます。具体的に言うと、審判の育成が必要ということになったとしたら、海外に行く審判を何年以内に何人送り出すかいう具体的な数字を出します。そうすると、どのくらい実施できているのかが定量化出来ます。

中村:サッカー協会では、えっと、バランススコアシートでしたよね。そういった経営コンサルタントが指摘するような手法を用いている形跡はないのですか?

ペコ:そうですね。トップがぼんやりとしたビジョンを掲げるだけになっているように見えます。サッカー協会の内部ではあるのかもしれないけど、どうもないような気がしています。というのも、バランススコアカードでビジョンとアクションを定義できているかどうかというのは、実は簡単ではありません。コンサルをしているとわかるのですが、サッカー協会に限った話ではなく、官公庁から企業までできているところは少ないです。逆に言うと、これが出来ている企業はうまく改革ができています。

中村:何がどのくらいの量足りないのか、後で振り返ることが出来るわけなので、やるべきことがぶれないわけですね。

ペコ:定量化できるからこそ、村上アシシさんがよく使うPDCAにつながります。しかし、PDCAは最後の手法です。もっと大事なのはバランススコアカードと言ってもいいです。

PDCAとは、Plan(計画する)、Do(実行する)、Check(評価する)、Act(改善する)という4段階のプロセスを経て、プロジェクトを進めていくことで、改善したあとを受けて新たにPlan(計画)することで精度を高めていく方法。

中村:PDCAのPlanをする前に、どこに向かってどの程度いくかという地図を作っていからやるべきということですね。

ペコ:というよりPlanというのは、バランススコアカードを作ることと言い換えられます。ビジョンがあり、差分分析をして、やらなきゃいけないアクションを出したうえで、定量化するという4階層があります。その4階層構造を全部出すことが大事です。

中村:なかなかややこしい話ですが、合理的ですね。トップの思いつきや個人的な信条やしがらみに左右されずに済むのでフェアだと思います。それがしっかりしている会社ほど伸びる余地があるわけですね。例えば、社員の仲がいいことを強調する会社などもありますが、それだけでは駄目なわけですね。

ペコ:どういう理由で、仲がよくなきゃいけないのか規定する必要があるし、その指標として何を使うのか、それがどの程度あればいいのかを数値目標にする必要があります。

中村:社員による自発的なバーベキュー大会の開催数みたいなことですね(笑)。その指標はどうかと思いますが、具体的な数値目標があって、実際に何回開催されたかで評価できるという意味では検討しやすいですね。

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石井:日本サッカー協会75年史が1996年に出てる。

――突然石井さんが口を開いた。

中村:うお。唐突ですね。どれどれ、この本ですか、これも分厚い本ですね。96年というと、Jリーグ開幕から3年なので、一つのピークが来ていた時期ですね。

ペコ:75年と聞くと歴史を感じますね。巨人軍とそんなに変わらないわけですよね。

石井:はい、これは25年ごとに出る本です。96年は長沼健会長です。最初の挨拶で「次の25年を日本サッカーがアジアを、さらに世界をリードするような輝かしい存在となることを心から願っています」と綴っています。

アジアのトップとして、日本サッカー協会がアジアを牽引していく意味合いのことが書かれていますね。読んで行くと、サポーターが日本代表、Jリーグを熱狂的に支持して応援してきたムードと見事にシンクロしていることがわかります。

ところが今、ワールドカップの出場枠が増え、アジア枠も広がるため、切磋琢磨が必要なくなり、アジアの国もいきなり世界とやるよという時代になりつつあります。そののなかで田嶋会長が考えていることは何なのか。サッカー協会としてはどうしていくべきなのか。あらためて定義していく必要があります。ビジョンがふわっとしていたら、我々サポーターが熱狂するポイント、共感するポイントが見えてきません。

ペコ:サッカー協会史の編纂が25年ごとなら次は2020年ですね。ということは……。



キバヤシ(石井):そう、2020年!!

『日本サッカー協会100年史』は田嶋会長の代に出る可能性が高い!!


中村&ペコ:な、なんだってー!!!


※これの100年版に田嶋幸三会長の写真が載るということです。


中村:「ノストラダムスの1999年地球滅亡」以来の衝撃ですね。そうか、田島会長は、100周年時の会長でありたいというのはありそうですね。そうすると……、100年史に田嶋会長の言葉が載る可能性があるわけですね……。

ペコ:これは……。すごい話ですね……。少し陰謀論じみてきますが、100年史に外国人監督が載るのは嫌だし、ましてやハリルホジッチならもっと嫌だという思考があるのではないかと勘ぐりたくなりますね。日本サッカー史をオールジャパンに舵を切った功労者は俺だと……。

石井:そうですね。陰謀論はきりがないので一旦置いておくとしましょう。『75年史』で長沼会長が書いていることは、その時には既にサポーターやサッカー関係者に共感されていることで、それが改めて書かれています。その文脈でいうと、『100年史』に書かれることは、その2年くらい前から共感されている必要があります。そう考えると、ビジョンが喪失している今の状態は非常によろしくないですね。

中村:ワールドカップ前の段階でいうと、日本人らしいサッカーを追求することで世界に通用するようにしましょうみたいな話ですよね(※この座談はW杯開催前に行っています)。

石井:そうですね。今だとオールジャパンが出てきますね。

中村:そんな言葉は、流石に編集者が許さないんじゃないですかね。差別コードに引っかかってもおかしくないような言葉だし、国家・国民の壁を飛び越えられるサッカーという文化の性質を否定しているようにも見えますよね。

石井:そこの不安がものすごく大きいです。明文化して発表したときに今まで応援してきたサポーターが共感して、「よし!日本らしくいこう!」と言うどうかですよね。

中村:国と国の事情はあるにせよ、チャン・ヒョンス(韓国籍、FC東京の選手)は俺たちの仲間だし、チョン・テセ(北朝鮮代表、清水エスパルスの選手)も、愛すべきJリーグの一員です。隣国との摩擦は摩擦であるにせよ、それを超えた友好を感じられるのがサッカーの最大の長所なのに対して、「日本らしく」「オールジャパン」というのは、字義通りに取ると少し怖いですね。薄っぺらいナショナリズムに乗っかられてしまうかもしれない。

ペコ:表現が曖昧すぎますよね。日本人らしいサッカーということ自体は悪くないとは思っていますが、悪いイメージが付いているのは、それが今まで具体化されてこなかったからですね。あまりにも唐突です。繰り返しになりますが、バランススコアカードを作って、具体化・定量化するプロセスが欠けています。

中村:何となく日本らしいサッカーをということでいうと、小野伸二選手が挙げていた「理想のイレブン」が、そのイメージに近いのかなという気がしました。ワントップに高原、MFが6人で、中村俊輔、中田、小笠原、名波、ラモス、稲本、DFに中田浩二、闘莉王、福西ですね。あと、GKに川口能活です。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180511-00040191-sdigestw-socc

華やかなパスサッカーができそうですね。今のサッカーだともう少し守備が得意な選手で布陣を組みますよね。

石井:この10年くらいでJリーグのガラパゴス化を感じています。マリノスを見ていても。視点を変えていかないと。みんなわからないまま曖昧な方向に進んでいる気がします。サッカーファンとして強く思うのは、メディアがきちんと言語化して伝えて欲しいということです。日本サッカー協会も、今後の軌道修正には、わかる言葉できちんと説明することが必要だと思います。

中村:Jリーグ監督の回転寿司という言い方がありますね。同じ人がグルグルと回っています。FC東京にいた城福監督の皿は広島に行って、ガンバ大阪から長谷川健太監督の皿が来ました。マリノスは、回転寿司とは違うところから雇用していますね。

石井:そうなんですよ。ヨーロッパのオーソドックスなやり方をJリーグに持ってくると、適応できる選手、できない選手、評価できるサポーターとできないサポーターに分かれます。

中村:ポステコグルー監督が来たときに「これはわからない監督が来た」と石井さんツイートしていたのを覚えています。

石井:はい、そういうことが起きるわけです。それこそが、ガラパゴス化が進んでいることです。学んでみるとヨーロッパではこうなっているのかと理解できるし、そっちに視点を合わせると見えてくることもあります。しかし、学ばずにいると「日本に合わない」ということで拒絶反応が起こることもあります。そこが今の日本サッカーの脆いところかもしれません。

中村:日本独自のものができていくとしたら、ガラパゴス化という批判は常にあるだろうし、時代遅れになるフェーズもあるかもしれません。けど、日本に適したモデルであれば、長期的視野を持ってさえいれば、うまく機能することもあるように思います。

でも、絶対に忘れちゃいけないのは、サッカーは日本だけでやっているわけではないということです。海外のサッカーについて学ばずに、日本独自の価値観しか持たないのは、あまりにも薄いし、脆弱です。海外に適応できずに苦労するケースもあるかもしれません。

柴崎岳選手が「海外に行ってハリルホジッチ監督(当時)の言ってた事が分かった」と言っていました。ハリルホジッチ監督のモデルは、ある程度ヨーロッパのスタンダードを踏まえたものであったのは間違いないわけで、日本独自と言い過ぎると、日本人が海外に出て行く際に障壁が高くなっていく可能性はありますよね。

石井: そういう視点でファンも今まで見てなかったところはあるなと自分を含めて思います。

中村:Jリーグサポーターの中には、海外サッカーを見るなとか語るなというような意見の人もいます。これは、海外サッカーファンがJリーグを見下すのと、構図としては同じ事をしているように思います。

ぼくは、プレミアリーグを見ることは大事だと思うようになりました。レベルが高いということ以上に、サッカーに求めるものが異なっているのかなと思います。サッカーの試合に現象するものを見比べながら、楽しんでいくことも大事なのかな、と。

石井:そうですね。感覚的な表現に止まらず、どのような差があるかについて、明確に言語化してくれると理解が急速に進みますよね。ポジショナルプレーはその典型です。一度腑に落ちると、その後迷うことはなくなります。そういうことが今、必要だと感じています。

中村:僕も、ヨーロッパの戦術、サッカーの潮流を追うことをさぼっていました。Jリーグをぼんやり見ていたら楽しいからそれでいいかな。ハリル監督のサッカーを理解するのが、めんどくさいと正直思っていました。色々な選手を試しながら実験していくスタイルは、それがW杯で勝つためには必要なプロセスなんだろうとは理解していましたが、見ていて面白いとは思わなかったわけです。

その怠惰がハリルホジッチを殺したのではないか。

ぼくはそう考えるようになりました。日本サッカーを強くしたいと望むならば、サポーターもより多くを学ぼうとする必要があります。実際に、ハリルホジッチの戦術的な引き出しから学びを得たいと思っていた人は、みんな解任を残念がっていますね。

ペコ:ぼくは、現ジュビロ磐田監督の名波浩氏のように、海外経験もW杯経験もある人がトップに入ってくると変わるのかなと期待しています。

中村:経験していない人には出来ないという意見は根強いわけですが、裏を返せば経験者であることによって支持が集まるというのはありそうですね。

ペコ:そうそう。そして、具体的には、中国経済のやり方をオマージュするという方法があります。「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」は基本的にはgoogle、Facebookの真似事ですが、アメリカのやり方を経験した人が中国に帰ってきて同じ事をやっています。

その結果、世界一のドローン会社が生まれたり、シェアサイクルの会社が生まれたりしています。つまり、最初は模倣から始まるわけですが、オリジナルスタンダードを生み出すことが出来つつあるわけです。中国は外から取り込みながら、ドメスティックでぐるぐる回して新しいもの創り出します。日本サッカーもそのスタイルでやるべきなんじゃないかな、と。

中村:そうするべきだとしたら、どれだけ苦々しいことを言われても、日本サッカー史に嫌な奴の名前が載ってしまうとしても、W杯前にハリルホジッチを変えてはいけなかったわけですね。

ペコ:海外のモノマネをしようということではなくて、最終的には日本で判断することが重要です。ハリルホジッチでいうならば、彼の持っているものを取り込みながら、それらをドメスティックに回していく考え方を持つ必要がありました。

中村:それは、日本社会がなかなか出来ていないことなわけですね。だからこそ、その日本にとって苦手なことをサッカーではやれているということに価値があったし、夢や憧れを生むことが出来たというのはありますね。

石井:そう思います。サッカーのグローバルな取り組みが、バブル後の日本社会の閉塞感を壊してくれるんじゃないかという期待をみんな心の隅に持っていたわけです。そこがなくなってしまうんじゃないかという危機感を感じるんです。

中村:おお、最初と繋がりましたね!!そうなると、コンテンツとしての求心力が失われてしまうわけで非常にもったいないことですね。

ペコ:イビチャ・オシムが2006年に監督就任したとき、「日本サッカーを日本化しよう」と言ったわけですが、あの時の感覚は、外国人の目線から見て日本に足りないことを教えてもらって、自分たちで考えなおそうというものだったように思います。

ハリルホジッチに関しては、「ハリルホジッチは日本のことがわかっていない」というような文脈で拒絶されてしまって、「もういい日本人だけで考えるよ」という風になってしまったところはあるかもしれません。そうであれば不幸なことですね。だからってJリーグの監督経験がある外国人に代表監督になってもらうのも違うと思っています。我々は今、外の人から言われたこと、学んだことを、咀嚼しながら前に進んでいくフェーズにいると思っています。

中村:オールジャパンとか言って拒絶している場合じゃないわけですね。

石井:せいぜいニュージャパンにしてほしかったね。

ペコ:火災が起きそうですね。

石井:そっちか(笑)

ペコ:炎上しちゃう(笑)

中村:(ニュージャパンって何だろう……)。

(終)

最後のニュージャパンというのは、1982年にホテルニュージャパンが火災を起こしたことに由来しているそうです。ぼくは1歳で、ぺこさんは幼稚園とか小学校かな?石井さんはもっと上のはずです。こういう不意の会話に世代の差は出ますね。

記事の締めがクソ真面目になってしまうのと、もしかしたら、ここでニュージャパンという名前を出したことに何らかの意味が生まれるかもしれないので、このまま残します!

というわけで、記事はここまでです。

完全に無料版で出しましたが、取材経費がそこそこかかっているので、記事が面白かった方、このメンバーでの座談がまた見たい方などは、是非サポートをお願いします。

経費は、文字起こし外注が主でおおむね1Fukuzawaくらいです。

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