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にわかファンが叩かれるのではなく、にわかとして叩かれるのだ。


ラグビーW杯2019において、ラグビーのにわかファンが好意的に受け止められたということが、Twitter界隈で流通しているのだが、ここに一言付け加えたく思い、書き散らす次第。

にわかファンとは、突然現れたファンのことを指す。にわか雨と同じ言葉の用法のようだ。

にわかを許すか許さないかという議論が稀にあるが、にわかを許さないといっている人を見たことがない。どのジャンルも深刻なにわか不足であり、喉から手が出るほどにわかが欲しいのだ。

従ってにわかは歓迎される方向になる。バブル期は、大卒の学生は金の卵と呼ばれどこへいってもチヤホヤされたそうなのだが、その感じに似ている。

「はじめてサッカー見に来ました」というファンには例外なくみんな優しい。かくいうぼくもにわかサッカー記事から出てきた人間なので、ザ・にわかの人間である。

そんなぼくがにわか観戦記を本にしたのだが、その反応がこちら。作家の高野秀明さんをはじめ、頑固どころで有名な河童さんなども含めた多方面のJサポ界隈から賞賛して頂いている。

逆に8年間プレーしてきたバスケのほうが世知辛い。多分サッカーよりもバスケのほうが悪いところを身をもって知っているからなんだろうと思う。

いや、というよりも、バスケの場合はちょっと上から目線なんだな。バスケはある程度わかってるし、底を知っているよなという気分がある。といっても、アマチュアとして7,8年プレーしたところで、何10年来のプロのレベルからいうとにわかといっても差し支えのない知識レベルだろう。

にわか問題の本質は「にわかかどうか」ではない。


知識が多いとか少ないとか、観戦歴が短いとか長いとかはまったく問題がない。だから、にわか議論は「当然にわかは歓迎される」に落ち着くし、「にわかを歓迎しない一部の奴は頭がおかしい」ということになる。

一方で、スポーツ界隈ではにわかの書き込みによる炎上事件が度々起こる。ぼくも「バスケは暗記だよね」と言って、バスケ大好きキッズたちを随分と怒らせたことがあった。これについては意見は変わらないのだが、「サッカーと比較してバスケの練習は同型のものを反復するものが多く、それが活きるような試合展開になりがち」という風に修正しておく。

さておき、にわかは常に歓迎される。そのはずなのに「にわかは帰れ」という事案は起こる。だって、ぼくがバスケの時にあれこれ言われたものは「バスケをやったことがなさそう」「下手そう」「知らないくせに知ったようなことを言うな」「バスケを貶めるな」という意見だった。つまり、にわかとして叩かれたのである。

これは、バスケだからということではない。

にわかが叩かれるのではなく、にわかとして叩かれるのだ。

実際の所、ぼくよりバスケ観戦数が多くない人もいたと思う。大事なのは本当ににわかかどうかではなく、にわかとして叩きたいかどうかなのだ。

そこで重要なのが目線である。

上から目線か、下から目線かである。

この度のラグビーW杯は、みんなまったくラグビーがわかっていない状態で入ったので、全員下から目線だった。だから、選手達はみんな頑張っているという目線以外持ちようがなかった。

サッカーの場合にはもう少しみんな自分の知識に自信があるので、森保監督を叩いたり、香川を叩いたり、長友のリア充ぶりを叩いたり、本田を叩いたり、乾の守備を叩いたりする。そしてほぼ全員が田嶋幸三を叩く。

つまり、サッカーはある程度みんな長年見ていることから、上から目線的になりやすい。またサッカーは身体接触がすくなく、俯瞰で見ると運動量も大きくなさそうに見えるので、「自分でも出来そう」という気分になりやすいのだろう。逆にラグビーは自分では絶対にやろうとは思わない。クビが折れる。

だから目線が上になりやすい。

目線が上になると叩かれる。目線が下からのうちは叩かれない。

そして、叩かれる時は「にわかが口を出すな」という論調も生まれる。要するに上から目線であり、かつ、自分とは意見が違うものに対して貼り付けるレッテルが「にわか」なのである。

従って、今回のラグビーW杯では、経験者と未経験者の間に驚くべきほど知識レベルがあったからこそにわか叩きは行われなかった。

しかし、段々と目が肥えていく、特に中途半端に目が肥えていくうちに、「スクラムをすぐに崩されるから日本のフォワードは駄目ね」というような意見も出るようになるだろう。「モール対策を組んでいなかった監督は怠慢だ」とかも出るかもしれない。

そうなってくると、にわか論争が生じる。つまり、にわか論争は、もう少し知識レベル進んできて、上から目線も生まれ、他人の意見が鼻につくようになった時に生じるのだ。

だから、ラグビーではにわか叩きがなかったのではなく、まだ生まれていないだけなのだ。だから、サッカーほど口うるさいことはないかもしれないけど、今後は十分に出てくることだろう。

要するに、「知ったつもりになっている人がにわか」なのであり、「知らない人はにわかではない」のだ。


ちなみに、にわか論争に巻き込まれて炎上してしまったらどうするかについても軽く書く。みんながよってたかって「ざまー!炎上しやがった!」と言ってくるかもしれないが、放置でよい。炎上の定義など、見ている人が決めるもので、その人が炎上しているということにしたければ炎上だし、自分にとってどうでもいいなら炎上はしていない。

概ね3日で誰も話題にしなくなり、熱心なアンチがいたとしても3ヶ月で完全に消滅する。人に対するヘイトはそこまで長持ちしないのだ。1年もすれば誰も覚えてはいない。許さないとか言っている人は本当に許さないかもしれないのだが、何を許さないと思ったのかについては忘れてしまう。そういうものである。

頑張って匿名掲示板などで何度も話題にしようとしても新しい燃料がない限りは「粘着うざい」と言われて、却下されてしまう。ただ、他人の尊厳を傷つけるような表現などがあった場合には早々に謝罪したほうがよい。

というわけで、中島イシレリのようにガチムチマッチョなPFになりたかった元バスケプレイヤー、サッカー旅系エッセイストのにわかラグビーファンの雑記であった。

追記 PF = パワーフォワード 桜木花道のポジション
ガチムチマッチョがPFやると、ガチムチマッチョに吹き飛ばしながらリバウンドを取る不思議生物になる。ギリシャのスコルツォニータスがぼくの中の理想。

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中村慎太郎 旅とサッカーを紡ぐOWL magazine

作家・Youtuber。偏差値30からの大学受験を経て東京大学文科Ⅱ類(経済系)→文学部に進学(宮沢賢治の生命観)→大学院は理転して農学系(アワビ類の行動生態および繁殖生態の比較)→自主退学しスポーツ系の物書きに。著書『サポーターをめぐる冒険』がサッカー本大賞2015を受賞。

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