時を駆けるハマグリと14番目の戦士【ヴィアティン三重観戦記】 Part1


設問1:三重県の特徴をあげよ。

解答例:鈴鹿サーキット、松阪牛、四日市の工場、忍者(伊賀)、伊勢神宮(伊勢志摩)。


ここまで答えられたら偏差値65である。ただ、今回訪れた土地の特徴が入っていない。ではもう一つ問題。

設問2:三重県桑名市の特徴をあげよ。

回答例:その手は桑名の焼き蛤。


これが答えられたら偏差値68だ!何の話かというと、桑名というのは東海道の宿場町として有名だ。東海道というのは江戸時代の日本の大動脈であった。いやいや、よく考えてみると、現在も東名高速と名前を変えて、大動脈としての役割を保ったままであった。

かつては、桑名の宿場町を訪れた時は、名物の焼き蛤を食べるのが定番であったらしい。今で言うと海老名サービスエリアでメロンパンを食べるようなものだろうか。

十返舎一九の『東海道中膝栗毛』でも、弥次さん、喜多さんのコンビが焼き蛤を肴に酒を飲むシーンが登場する。その手は桑名の焼き蛤という言葉は江戸時代からあったようで、150〜200年以上もの歴史がある古きジャパニーズジョークと言える。


というわけで、2019年6月。梅雨の始まりの時期に三重県桑名市を訪れた。「旅とサッカーを綴るWEB雑誌OWL magazine」に記事を書いていることからお察し頂けるように、もちろんサッカー観戦が目的である。

お目当てはヴィアティン三重というサッカークラブである。サッカー界隈でもまだマイナーなクラブなのだが、親しくしているサッカー仲間のむぎちゃさん(@kazumilove222)から、猛烈なプッシュを受けたので脳に名前が刻み込まれていた。

そして、会う度に「いつ桑名に来れますか?」と聞かれ続けた。そういう質問をされると「いついつなら行ける」と答えざるを得ない。結果、桑名という土地やヴィアティン三重というチームについての特別な興味を持っていない状態で行くことになった。

これは珍しいパターンだ。わざわざ行くからには行く理由があるものなのだが、今回は何もなかった。ただ、約束だから行った。それだけであった。

そのため、桑名に何があるのかはよく知らなかった。地図を見ていたら国道一号(旧東海道)が通っていることを知り、ああそうか、ここはかつての宿場町かと気づいたくらいのものであった。

また、桑名藩と言えば、江戸時代の佐幕派(幕府派)として有名で、新撰組などと共に、京都の治安を取り締まっていたというのも有名なのだが、同じ役割をしていた会津藩に比べると逸話は少ない。

そもそも桑名とはどこにあるのか。地図上で指し示すことが出来る人が、日本にどれだけいるだろうか。東海地方に住んでいる人なら何とかわかるかもしれないが、それ以外だとなかなか難しいのではないだろうか。

現在の桑名市を言い表すもっとも適切な言葉はこれだろう。

名古屋駅から電車で20分——。


そう、わず20分で到着するのだ(特急16分。快速で21分。普通で27分)。三重県は、以下の8つに分類されるという面白おかしいネットのまとめを見たことがある。すなわち、山、神、牛、工場、サーキット、忍者、名古屋の支配地、未開の地である。その中で、桑名は「名古屋の支配地」ということになる。名古屋と隣接しており、名古屋で仕事をしている人が多く、ベッドタウンとなっているようだ。

そういえば、岐阜へ向かう新潟サポが前に座っていた。


さて「こだま」に揺られて名古屋を目指す。3時間ほどで到着した後、在来線に乗り換えて桑名へ。



ぼくが乗った電車には快速みえと書かれていた。

この電車に乗っていくと伊勢志摩のほうまで行けるようだ。桑名、四日市、鈴鹿、津、松阪、伊勢市、鳥羽など、三重県の主要な駅にはたどり着けるようだ。

サッカークラブも増えてきていて活発化していて、Jリーグ入りを目指しているクラブが、知りうる限りではこれだけある。

JFL
ヴィアティン三重、鈴鹿アンリミテッド

東海リーグ1部
FC.ISE-SHIMA

三重県リーグ 1部 
TSV1973四日市 ISE YAMATO FC(Jを目指しているかは不明)

ヴィアティン三重と鈴鹿アンリミテッドが所属するJFLの上にあるのがJ3、すなわちJリーグである。JFLで4位以内に入ると昇格できることから、三重県初のJリーグクラブという名誉を勝ち取るため、両クラブはしのぎを削っているという状況のようだ。

そして、東海リーグにはISE-SHIMAが、三重県リーグにもTSV1973四日市があり、上を目指している。ISE YAMATOについては、2013年から2017年まで現京都サンガの監督である中田一三氏が指揮を執っていたとwikipediaに書いてあった。


というわけで、快速みえにに乗るとあっという間に桑名駅へと着いた。




駅の構内には観光名所が書かれた看板があった。

長島温泉、石取祭、桑名城跡、七里の渡し、多度神社。

そういえば長島温泉といえば長島スパーランドがあるところだ。名前は聞いたことがある。居心地の良さそうなスパもあるようだ。平日に時間が作れることを悪用して、空いているスパに行くのが人生の楽しみなのだ。次回はトライしてみたい。

石取祭りは、「天下の奇祭」と書いてある。後で聞いてみるととにかくうるさい祭りで、家の中にいたとしても、うるさくてうるさくて仕方がないのだそうだ。是非見に来て欲しいと言われたが、さてどうしたものか……。

さて、桑名駅について最初にするべき事は薬局を探すことであった。その日までが期限の処方箋があり、薬を入手しなければならなかったのだ。要するに東京で薬を買うのを忘れたのだ。

そして、駅を降りてみて、最初に目に入ったのが薬局であった。



昭和である。


平成を飛び越えてカエルさんが迎えてくれるのだ。お店に入るときに引き戸がカラカラ空くのも、雑多で生活感のあるレイアウトも、洗練された洋風の香りが一切しないところも、すべてが懐かしい。店内は静かで、気の利いたBGMが流れていることもなく、店員さんの声がとてもよく聞こえる。

人の声が粒立って聞こえる場所。そうか、そういえば昭和というのはそういう時代だったかもしれない。SONYがウォークマンを出したのは昭和54年のこと。今となっては不思議な話だが、それまでの日本人は歩いている時に音楽を聴く方法がなかった。

自宅に行けばステレオはあったかもしれないが、来客時にステレオでBGMを流すという習慣は、少なくともぼくに周りにはなかった。音楽とは、音楽を聴くための時間に聴くものであって、「ながら」状態で常に流れているものではなかった。

だから、空間は音で満ちていなかった。世界はもっと静かだったのだ。そんなことを思い出した。

桑名の駅前は、まるで真空パックにして保存されていたかのような、とても静かで懐かしい場所であった。その感想が決定づけられたのが薬局の隣にあったビルであった。その名を桑栄メイトという。

どうしてこのビルに向かったのかというと、そこに餃子があったからだ。

三重サポの方に教えてもらった……、と思っていたのだが、よく見たらこの人は、ブラジルワールドカップの時に座席が前後ろだったピカチュウのコスプレ娘!!(この記事に出てくる人)

なんでピカチュウ娘が桑名の餃子屋に詳しいのかはよくわからないのだが、薬局の隣にあるようなので、桑栄メイトへと向かう。

ビルの中は、まさしく昭和であった。初めて来た場所だけど、初めて来た気がしない。どこか懐かしい。昔見たことがある風景。

そういえば近所のイオンはかつてジャスコという名前で、その近くに競合する「ナコス」というスーパーがあった。その中がこんな感じだったような記憶がある。

もはやネット上に記録が残っていない時代なのだが、地元のナコスは1985年、ぼくが4歳の時に潰れてしまったようだ。

桑栄メイトビルが出来たのが1973年なので、同じ時代の産物だと言える。だから、ぼくの中に微かに残った記憶は間違っていないようだ。

ちなみに、ナコス後は「エクセル」とく名前の高級マンションになった。名前を付けた時は、まさか「表計算ソフト」の名前とかぶるとは思わなかったのかもしれない。エクセルの1Fのテナントが「Tsutaya」になって、そこで洋楽CDを大量にレンタルし、MDに録音してストックしていくことになるのだが、それはまた別のお話。


桑名にいると何だか懐かしい気持ちになるし、懐かしいことを思い出す。古き良き時代。もちろん、古いからと言って良いわけではない。

電車の中で煙草を吸うおじさんがいた時代には戻りたいとは思わない。今のほうがずっと快適なはずだ。しかし、懐かしさとは、強力な感情なのだ。ノスタルジー。かつて過ごした時間に対する、あるいはかつての未熟だった自分に対する、無限の愛着がそこにはある。

というわけで餃子屋、新味覚。

この餃子屋から、もう一つの物語が始まることになる。ヴィアティン三重をめぐる旅ではなく、三重県にまつわる一つの謎を解いていくことになったのだが、それはまたちょっと後のお話。



新味覚はカウンターだけで10席程度の餃子屋さんで、メニューは餃子だけ。席に着き、何を注文しようかとキョロキョロしていたのだが、自動的に餃子を一皿注文したことになるシステムのようだ。

後はビールなどの飲み物を注文するかどうかなのだが、 ぼくは瓶ビールを注文することにした。

店内には横一線におじさんたちが並び、カウンター内には愛想が良いとは言えないご主人がひたすら餃子を焼いている。そのおじさんを取り囲むように、愛想の良いおばさま達がせっせと配膳やドリンクの準備をしている。なかなか良いバランスのお店だ。

時間は2時過ぎ。梅雨時だというのに心地良い陽気の昼下がり。移動の疲れもある上での餃子とビールである。どんなものが出てきても美味しかったことだろう。

ただ、新味覚の餃子はひと味違っていた。


ただ、どう違ったかというとなかなか表現が難しい。書こうと思ってみて気づいたのだが、餃子の味というのは総合的な表現であって、何がどう美味しいというのはなかなか難しい。まずパリッとした食感であるが、これは当たり前といえば当たり前の話だ。ちょっと気の利いた餃子店ならば、必ず皮はパリッとしている。

問題は中身である。餃子の中身が、美味しいのだ。どうしてだろうか。不思議と美味しい。餃子の中に包まれている実の部分が、普段食べている餃子よりもひときわ強く主張してくる。しかし、邪魔になることはないのが、特性のニンニクたれをつけるせいだろうか。

あまりにも美味しかったので一皿お代わりしてしまった。人によっては3皿も4皿も食べながらビールを飲むらしい。新味覚は、昭和の雰囲気が漂うビルの2階にある、とても幸せなお店であった。


さて、この記事は桑名について餃子を食べたところで一段落させようと思う。この後、桑名の街を4時間くらいかけて歩き回ることになるのだが、街の風景を写真を紹介しながら語っていく部分は、この記事の後半部分の有料コンテンツとさせて頂く。(ここまでPart1)

その後、ヴィアティン三重サポーターとフットサルをし、すずやんという名物サポーターを含めた飲み会、そしてコールリーダーRYUJIさんの家に突撃して一泊。(ここまでPart2)

最後に朝のマルシェ(朝市)からのFC今治戦を観戦し、伝説のラーメン屋EAGLEへと突入する。そして、EAGLEとニンジンによって桑名の謎が一つ解けるのであった。(ここまでPart3)

このように三部構成の記事としたい。

さて、ここから先の桑名の街レビューは有料記事なので、OWL magazineを月額購読して頂く必要があります。月額700円で、旅とサッカーをテーマとした15〜20本の記事を毎月読むことが出来ます。中村の記事がなくても十分に面白い、むしろやる気ないならやめちまってもよいいよという流れが出来てしまいそうなくらい執筆陣も充実してきました。

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中村慎太郎

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