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独立国町田へと潜入せよ!!【スポーツイザカヤストリート FLAGONE】


【指令
東京都から独立した町田国へと潜入し、その状況を報告せよ。具体的なターゲットについては改めて連絡する。なお、このメールは自動的に消滅する。


朝目覚めると、特殊なセキュリティが施されたアプリを開くのが日課になっている。メッセージを読むと、目を閉じて息をゆっくりと吐き出した。うんざりした気持ちを、少しでも和らげようとしたのだが、憂鬱な気持ちは消えない。

今日は任務ありだ。

しかも独立国町田への潜入という厄介な任務であった。

独立国町田は最近まで、東京都町田市であった。しかし、突如武装し、独立を宣言した。首都東京は、日本における特権階級として、平和をむさぼって来た。だから、まさか東京から寝返る市区町村が存在するとは思わなかったのだ。それだけ、東京はあらゆる面で優遇されてきた。町田の独立は東京都民に衝撃を与えた。

町田は、独立を宣言するとともに、東京都との交通網を遮断し始めた。まず、JR横浜線の相原ー八王子みなみ野間の線路を破壊した。これによって八王子方面から町田への侵入が不可能になった。さらに、JRの隣を走っている国道16号線にも関所を設けたため、八王子方面からは東京都民が侵入するのは難しい。

町田国は、小田急小田原線の和泉多摩川駅と登戸駅の間にも関所を設けた。町田へと向かう人間は全員念入りなセキュリティチェックを受けることになる。独立国となったといえども、東京都心部へと通じるラインは完全に遮断するわけにはいかなかったようだ。

このように東京からの移動については厳重な警戒をしているにもかかわらず、横浜方面からの人の移動は制限されていなかった。

町田は、独立国を名乗りつつも神奈川県の強い影響下に置かれていることは明白だった。

東京から寝返ってまで神奈川につくだけの動機はどこにあったのだろうか。内情はわからないが、一説にはFC町田ゼルビアが主導したとも言われている。同時に、東京町田FCという別の勢力も生まれているという噂も立っていた。名前から類推すると、独立反対派による組織だろうか。このレベルのこともわかっていないのだ。

情報が横浜経由で東京へと伝わってくるため精度が低い。町田への潜入操作が任務として設定されるのは適切だ。誰かが行ってみないことにはわからないこともあるだろう。理屈はわかるのだが、憂鬱な気持ちは収まらない。

独立国町田に潜入して生きて帰ってこれる保証がないからだ。最悪の状態を想像して、最善の準備をする必要がある。二重構造になっているクローゼットから仕事道具を取り出す。

人的資源に対する町田の警備状況が明瞭ではないため、場合によっては自殺行為になってしまう可能性もある。まぁ仕方がない。誰かが行かねばならないのだ。

八王子からのルートが遮断されている以上、町田に潜入するためには神奈川を経由する必要がある。しかし、神奈川は恐ろしい地域だ。横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、湘南ベルマーレというJ1クラスの大きなクラブが3つもある。そして、J2クラスの横浜FC、J3クラスのSC相模原、Y.S.C.C.横浜と続く。

これほど大きなクラブが密集している都道府県は神奈川県だけであり、J1クラスのFC東京、J2クラスの東京ヴェルディを擁する首都東京よりもはるかに危険な地域であった。東京都にも地域リーグに所属するクラブは増えている。南葛SC、武蔵野シティフットボールクラブ、東京23FC、TOKYO UNITED FOOTBALL CLUBなどである。しかし、Jリーグクラスのクラブとの戦力差は明瞭であった。

また、武力紛争になった場合に、全線に立つことになるサポーターの数でも完敗している。ユース組織なども充実し、その保護者までを戦力と考えると、世界的にも有数の武装地帯と言えるだろう。

そんな状況で、町田が東京都から神奈川県に寝返ったとした場合、意味することは2つである。神奈川県の戦力が東京を大きく上回ったことと、その結果として東京に対して宣戦布告する可能性があるということだ。

そこまで考えたところで、もう1通の指令が届いた。

【指令2
町田国に新設されたスポーツイザカヤストリートFLAGONEに潜入し、元プロサッカー選手であり社長でもある丸山龍也の活動を妨害せよ。対象の生死は問わない。なお、このメールは自動的に消滅する。

「よりにもよって丸山龍也か……」

吐き捨てるように呟いた。丸山龍也は、かつては海外を流浪しながらサッカーキャリアを積んでいたのだが、若くして引退した。少なくともスリランカ、リトアニアでは選手としてもプレーしており、トライアウトのための海渡航歴も多い。この経歴から導き出される結論は、丸山龍也は何らかの組織に所属する国際スパイであるということだ。

その活動のダイナミックさから、背後には大きな組織が潜んでいることは類推されたのだが、それは神奈川県だったのかもしれない。いや、あまり事前に考えすぎないほうがいい。もしかしたら、町田に雇われた工作員かもしれないし、東京のスパイであったのだが、寝返ったために始末されようとしているのかもしれない。末端の人間が考えすぎても仕方がない。町田へ向かおう。

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オフィスのある東京都江戸川区から町田は非常に遠い。小田急線を避けてJRで潜入する場合には横浜を経由する必要があるが、考えると頭が痛くなる。川崎を通過した上で、横浜の3クラブもかわしていくのは狂気の沙汰だ。どこでサポーターと遭遇するかわからない。

その上順調にいっても1時間半以上かかる上、交通費も1000円を超える。小田急線を使うことも検討してみよう。

小田急線を使う場合は、東京メトロを乗り継ぎ代々木上原から乗り換えればいい。交通費はありがたいことに500円強である。どちらが安全かわからない以上、少しでも交通費が安いほうを選ぶべきだろう。

代々木上原から、急行唐木田行きの電車に乗り込む。東京と神奈川を繋ぐ小田急線の情報は、東側にはあまり届かない。なので、よほど気をつけないと地元民ではないと感づかれてしまう。

急行唐木田行きの電車に揺られながら、多摩川を渡ったところで電車が止められ、神奈川県のサッカーファンが乗り込んできてセキュリティチェックを始める。少し緊張するが、何でもない振りをして、スマートフォンをのぞき込み、口を半開きにする。

セキュリティが現れる。良かった、マリノスサポーターのようだ。一番人数の多いマリノスサポーターに当たることを祈って、トリコロールカラーのシャツを着てきたのだ。マリノスサポーターは、トリコロールの色合いを見て、満足そうに笑みを浮かべて去って行った。

我々は、青赤に白が入るだけで、日常着にも使えるお洒落な色合いになることをよく知っている。

さておき、小田急線は順調に町田へと向かっている。新百合ヶ丘、小田急永山、小田急多摩センター。そして、終点の唐木田についた。

終点だと?!

しまった!!油断した!!これは町田側が仕掛けたトラップに違いない。間抜けなことに引っかかってしまった。小田急小田原線に乗り込んで町田に向かっていたはずが、小田急多摩線に入り込んでしまったらしい。

心拍数が高鳴るのを感じるが、ゆっくり呼吸をして気持ちを落ち着ける。いつ俺はトラップにはまり込んだのだ。唐木田駅で降車させられた後、運が良ければ死刑、運が悪いとどこかのサポーター団体の下働きとしてシート貼りや横断幕張りなどを永久に手伝わされる羽目になる。

いや、落ち着け。これはトラップではないかもしれない。そうだ、単に乗り間違えただけだ。唐木田行きの電車はそもそも町田へは行かないのだ。

落ちついて反対側のホームへと移動しようとするとこんな表示が目に付く。

「唐木田駅まで乗り越した方は、一度降車して改めて乗車券をお求め下さい」


ODAKYUUUUUUUUU!!!!!!!



これは……。町田の仕掛けた罠ではなく、小田急が仕掛けた罠であった。敵は町田だけではなかった。命は助かったが小銭は余計に失われた。

小田急、西武、東武、京急などは、東側の人間にとって地獄を駆け抜ける魔窟列車なのである。もちろん住めば都とはなるだろう。しかし、あまりにも情報が少なすぎるのだ。

なので、試合の度に飛田給まで辿り着くのも命がけである。私自身も何度か京王稲田堤に迷い込み、命を落としかけた。

そうこうしているうちに柿生、鶴川、玉川学園を通過し、小田急線は町田駅へと到着した。

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小田急線を降りて、改札を抜けると、商店街は既に町田ゼルビアに占拠されていた。よくみると商店街は町田ゼルビアの旗がたなびいている。

街を注意深く探っていく。

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歩行者天国になっている道がメインストリートであろう。ここを歩いてみることにした。

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住む象くんもいた。

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ドンキホーテもあった。

歩いてみてすぐに感じたことなのだが、町田という街は非常に住みやすそうだ。街の中心部にお店が集まっていて、飲食店などは一通り揃っている。多数派とはいえないが、お洒落なお店や、こだわりのありそうなお店も散見される。丁寧に探せばある程度コアな需要を満たすお店も見つかることだろう。

まるで池袋を歩いているような錯覚をする。しかし、よくよく見てみると、専門的なお店の少ないことにも気づく。町田には虎の穴や水族館はない。立川のような都心近郊のベッドタウンであり、その中での盟主のような立ち位置の街なのかもしれない。


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ある地点から駅側を向いて写真を撮るとLUMINEなども見つかり、都会らしさが漂う。一方で、逆方向を撮影すると……。

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左側は繁華街が細々と続いているが、右側は背の高い建物がなく普通の住宅地になっている。

そういう意味ではとても住みやすい街なのだろう。繁華街もあるが、基本的には人が暮らし、眠るための街なのだ。

そんなことを考えていると3つめの指令が届いていた。

【指令3】
スポーツイザカヤストリートFLAGONEで丸山龍也が活動しているという情報が入った。至急向かえ。

調べてみるとここからかなり近いらしい。緊張が高まる。

そして、歩行者天国になっていた道を直進していくとJR町田駅と併走する道路へと突き当たった。そこを少し行くと……。

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何ともインパクトのある看板が現れた。赤牛肉次郎。今回の重要潜入ポイントの一つだ。この焼き肉屋は、元サッカー選手の丸山龍也が突如として設立したものだ。

丸山龍也氏は、テレビ朝日で放映されていた『激レアさんを連れてきた』という番組で芸能界へと殴り込みをかけた。そして、芸能界との太いパイプを共に、ワンディエゴ丸出版社を設立し、サッカー漫画を作り始めたのだ。

字面を追うだけでは意味がわからないかもしれないが事実である。もっとも、ただし、芸能界とのパイプの太さについては疑問視もされている。一説にはオードリー若林氏のお気に入りになったとも言われているが、それは単なる番組上の演出である可能性も指摘されている。

閑話休題。

その隣にあるのが、スポーツイザカヤストリートFLAGONEだ。

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入り口の前には看板も置いてあった。

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今日はどうやら日本代表対ミャンマー代表の試合があるらしい。チャンスだ。代表戦ともなれば、多くのサポーターが入り乱れるはずだ。となれば、丸山龍也に隙も出来るだろう。

日本代表のサポーターを装って店内への侵入を開始する。

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壁際に、日本スポーツ史の情報を網羅した秘密資料が並んでいる。どうやら、この場所が町田独立の鍵となっているという予測は間違っていなかったようだ。

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店内はギラついていた。
GIRAGIRA。

事情を聞こうと思い白いシャツを着たアルバイトスタッフに聞いてみたところ、元々ヒップホップ系のクラブであったらしい。なので店内にその名残が多く残っているとのことであった。

アルバイトにしては妙に詳しすぎると思って聞いてみると、こりさという名前の幹部スタッフであることがわかった。まずい……。正体が悟られてしまったかもしれない。しかし、どうやら取材に来た記者か誰かと勘違いしているようなので、適当に話を合わせて誤魔化すことが出来た。

近づきすぎは禁物だ。ここはアウェー中のアウェーであることを忘れてはいけない。


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中央の巨大スクリーンの前にはステージがある。クラブ営業時代は踊るためのステージであったのであろうが、スポーツイザカヤとなった後は何に使うべきなのか。

このスペースは今まで見たことがないような変わったところで、典型的な居酒屋とは言いがたいし、スポーツバーとしてもあまり見ない形だ。

よく言うとカオス空間であり、悪く言うとまとまりがない。とはいえ、自分にとってカオス空間は馴染みのある場所なので、あまり違和感は感じなかった。

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お勧めのメニューがすべて肉というところに、元サッカー選手の男性が作ったお店であることがよくわかる。世間は今、タピオカとか、ヘルシーとかそういう言葉で満たされているのである。

ちなみにスペアリブ(480円)を頼んでみたところ、単品だけで十分に腹が膨れるほどのボリュームであった。ガッツリ系である。


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何だかわからない彫像もあったので記録しておく。この写真を撮っているときに、空気がぞっとするほど重くなった。

何かいる。

この空間には何か恐ろしい存在がいる。



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丸山龍也だ。

この男が町田を独立させたというのか。それだけの深謀遠慮があるとは思えないほど、丸山龍也は忙しく動き回っていた。DJブースにいったと思えば、はしごを出してきてPAの調整をし、メニューやオペーレーションを指示し、バイトの子を和ませ、来客を接待していた。

席に座り少し待っていると次第に客が増えてきた。気づくと合計50名ほどにはなっていただろうか。ユニフォームを着たサポーターから、どう見てもクラブに遊びに来ただけにしか見えないけだるそうなギャルなど、多様な人が揃っている。

私が座った席の隣には、金属加工を生業とする社長がいて、部品類の輸出などについて話を聞かせてくれた。また、その社長はサッカーへの造詣が非常に深く、聞いてみるとお子さんが小さい頃、久保建英選手と共にプレーをしていて、横浜FCを経由して、今はアメリカに留学しているのだという。

トイレに行くことを装って、事実関係を調べてみた。するといくつか記事が見つかった。


高円宮杯決勝の記事では、U-15の大会とされているにも関わらず吉澤選手は25歳と表記されている。誤植とは思うが、神奈川県民にだけしか通じない何かの符丁なのかもしれない。

結局社長と一緒にサッカーを見たのだが、サッカーへの造詣が深く、時折呟く言葉が非常にハイレベルであった。恐らくプレイヤーとしてもかなりのレベルまで行っていたのだろう。

これが町田か……。丸山龍也だけではなく大物がゴロゴロいる。会場には、日本サッカー界を裏で牛耳っているとも言われるスーパーパワーMCタツや、ジェフ千葉のサポーター芸人いぬゆないてっどなどの大物も見つかった。MCタツは湘南ベルマーレのシンパシーであるため、神奈川県側へと移った町田でのイベントにいることに違和感がない。

しかし、ジェフ千葉からもサポーターが駆けつけているのは意外であった。神奈川と千葉がタッグを組んで東京を包囲したとしたら、東京が制圧される可能性が高い。ただでさえ東京の北には、浦和帝国と大宮帝国があり、良好な関係とはいえないのだ。また、東の果てからは鹿島王国が牛すじ煮込みなどで武装した上で覇権を狙っているというのも周知の事実である。

幸いにも大宮、浦和、鹿島などのユニフォームを見かけることはなかったのだが、ベガルタ仙台のサポーターはいた。まさか伊達政宗は神奈川ー千葉同盟側に付くというのだろうか。

となれば東京としては栃木SCを味方に付けて宇都宮を守ってもらうべきかもしれない。しかしながら、栃木SCにはジェフ千葉サポーターが内部まで食い込んでいると言われている。そして、スナックえとみほなる謎の組織が台頭しているという噂もあり、こちらも潜入調査が必要だ。

ええい……。

頭を抱えたくなるが、これは自分が考えることではない。私がやるべきことは丸山龍也の身柄確保である。

その時である。会場に日本代表クラスの選手がいることに気づいた。まさか……。町田は日本代表まで取り込んでいるというのか!!

選手の名は、長友佑都、槙野智章、酒井宏樹である。何度も何度もテレビで見かけた顔なので見間違えるわけがない。日本代表クラスの3選手がいることはにわかには信じられなかったのだが、事実である。


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槙野がツボである。

そうしていると、日本代表級三選手が、丸山龍也へと接近をし始めた。これはチャンスだ。

今しかない。

やるぞ……。


行け!!!!




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丸山龍也 確保!!!

中央の丸山龍也はこのお店の主役であるにも関わらず、私の後ろに隠れて存在感を失っている。そのため顔は苦悶に歪み、白い歯が出ている。隣の酒井宏樹の目は果たして見えているのだろうかと少し心配になりながらも、身柄を確保することが出来た。

ついでながら、試合は2−0で日本が勝った。

試合結果や内容について特に言及することはなかったのだが、スポーツイザカヤストリートFLAGONEに集ったサポーター陣については言及しておく必要がある。

アルビレックス新潟の太鼓叩きである……、名前はなんだっけ……、思い出せない。そうだ、この男だ。新宿ゴールデン街で深夜の2時頃に飲んでいたことがある。序盤は彼が太鼓を叩いていた。そして、恐るべき事にバモまで来ていた。

バモは現代では数少なくなった本格的なフーリガンの一人であり、プライドが高い内向家であると同時に、とんでもない寂しがり屋で、かつ自意識過剰の可愛いやつである。

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この写真は、私が撮影したものではなく、FIFAによる国際指名手配写真である。

店内の様子はサポーターの活動によって非常に危険な状態になっていた。またサポーターたちは試合がグダグダになった後半は、ブルーノメンデスチャント、ヴェルディ川崎チャントなどを歌っていた。心の底からケイオスティックな瞬間であった。

ただ、それぞれが本物のサポーターであったため、照れずに声を出していたこともあり、町田市民の動揺は小さかったようだ。


試合後は、赤牛肉次郎で二次会が行われるというので、移動して一人焼き肉を楽しんだ。イベント参加者はビールを一杯無料にしてもらえるのである。

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店員の愛想が非常に良く、また積極的に話しかけてきてくれる。店長とも話したのだが鋭く優秀そうながら柔らかい人柄で、非常に好感がもてた。

とりあえず「赤次郎盛り 半人前」600円を注文する。


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ロース、カルビ、ハラミ、牛タンの四種が入っていて600円という値段は少し安すぎるのではないだろうか。しかも炭火焼きである。

ここまで安いと原価計算が成立しているのかどうかすら心配になってくる。気になって少し高い肉を頼んでみることにした。

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上ロース半人前 640円。
脂の少ないさっぱりとした肉であった。まるでマグロステーキやささみのような印象である。かといって味気ないわけではなく、肉自体の旨味は濃くて美味しい。半生で食べるか、よく焼くか悩ましいところであったが、いずれにしても非常に美味しかった。


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調子に乗って特上カルビ半人前900円を注文。

こちらは特上というだけあって流石の良い味であった。脂がよく乗っているのだが、さらりと上品で、ギトギトした感じが一切しなかった。精肉については詳しくないのだが、もしかしたら健康な牛の肉なのかもしれない。

この脂の後味が気に入った。三枚を食べ終わる頃には、脂の甘みがまるで飴のように感じられ、噛みしめるほどに幸福感が広がっていった。

とんでもない破壊兵器が町田に誕生したものである。


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アパホテルの近くには、外からの侵入者の体重を増加させることをもくろんだブービートラップも設置されていたが、これを軽やかにかわす。

アパホテルのふかふかのベッドに寝転んでストロングゼロを飲みながら、T・クランシーの小説『米中開戦』の続きを読んだ。

そう、このレポートは、米中のスパイが暗躍する小説を前後に読んでいたせいでこのような仕上がりとなった。本ばかり読んでいると馬鹿になってしまうので注意が必要だ。

なお、言うまでもないが、この記事はフィクションである。出来れば怒られたくないが、ここまで遊びきって書いた以上、誰かに怒られても仕方がないと思っている。反省はしていない。


以上を持って、独立国町田への潜入レポートを終了とする。

なお、MCタツ氏、丸山龍也氏、いぬゆな氏などは文脈上敬称を略させて頂いた。


指令4
町田の情報を本部で報告してから帰宅せよ

私は、町田を出発すると、池袋東口をおり、本部であるスポーツ居酒屋バッカスで今回の件について報告し、ビール中生2杯と、茄子の揚げ浸し、しめさばの刺身を食した。

どうしてバッカスのしめさばはこんなにも美味しいのだろうか。よくわからないが、知らない方が良いこともあるのだ。

馬刺しをつまみにもう一杯やりたくなったが何とかこらえて帰宅した。いや、帰宅しようと思ったのだが、足はゴールデン街へと向いていた。東京、東京、眠らない街。夜はこれからだ。


お読み頂きありがとうございました。この記事は、月額700円の有料マガジンOWL magazine9月号に掲載されていますが、丸山龍也氏への事業に対する支援の意味も込めて全文無料で公開します。

以下、購読者向けに丸山龍也という人物に感じるある種の感情について書きます。

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