FC今治とは誰の夢なのか Part3 イマバリレボリューション


FC今治とは誰の夢なのか。


寝ぼけまなこで思い出すような夢なのか。あるいは、本当の夢なのか。その二つの違いとは何だ。

そして、FC今治とは誰の夢なのか。

そんなテーマで綴ってきたのだが、最終稿となるPart3がなかなか出せずにいた。どうしてかというと内容が圧倒的にケイオスティックであるため、なかなかまとまらないためだ。

試合を観て、ワカメ漁をして、鯛釣りをしたという内容なのである意味ではシンプルなのだが、一つの記事にまとめるのがなかなか難しい。というか不可能なのである。だから、整合性などを無視して、最初から突っ走って書くことにした。たまには、野趣溢れる味付けも良いだろう。

(と思って書いていたら、試合だけで字数がいっぱいになってしまったので今日は試合だけにして、続編としてワカメ、釣りを書こうと思う。いつ終わるんだ、今治シリーズ。通常の4倍くらいのスケールでお届けしています)。

というわけで、新宿のサンマルクカフェで突っ走るように書く。

何故なら締め切りは2週間前だからだ(澤野編集長ごめんなさい)。


というわけで、目をつぶり、深く呼吸をする。

そして、思い浮かべる。

何もなかった今治の街を歩き続けた時のことを。

イオンモールが見えてきて、坂道になる。

登っていくと観戦客と合流する。

安堵と共に胸が高鳴る。

そして、夢スタジアムの前の広場に溢れる無限の希望に接する。

不覚にも涙する。

サッカーの音がする。

サッカーが呼吸をしている。

まだ試合が始まっていないのに。

サッカーを愛するものならわかるはずだ。

普通のお祭りと、サッカーの前のお祭りは、似ているようでまったく違うことを。

匂いが違う。

サッカーの匂いがするのだ。

そしてその、我々が大好きな「匂い」は、刻一刻と濃厚なものになっていく——。

試合開始直前の広場は、みんなが時間を気にしてそわそわしている。不思議の国のアリスの白ウサギみたいに、時計をずっと気にしている。そんな空気が伝わるからなのだろう。普通のお祭りとは一見すると似ているのだが、本質的にまったく別のものなのだ。

さて、ぼくも何かスタジアムグルメを買おうと思っていたのだが、想像以上に行列していたので諦めた。そりゃそうだろう。地元の人にとっても、この賑わいは楽しいに違いない。今治中を探してもこんな場所はなかなかないだろう。

入場ゲートへと向かう。


中島啓太くん(なかじー)から連絡があって、ゲートで仕事をしているのだそうだ。遠目に眺めると、確かに何か仕事をしているようだ。近づいていくと、インカムで何かを話しているのが見える。

そして、小走りで立ち去った。

なかじー!!!!

入場ゲートで待っててくれるんじゃなかったのか!!!

ぼくとハイタッチしてくれるんじゃなかったのか!!!

それを目標に頑張って歩いたのに!!!

なかじーの薄情者!!


と、呪いの言葉を吐きそうになった時、ぬっと目の前に現れたのが、釣り好きのタカハシさんであった。初日の宇都宮徹壱さんとのイベントで知り合ったボランティアスタッフである。

何やら雑談をしているうちに夜の飲み会に誘ってもらった。ありがたいお話なのだが、断らざるを得なかった。

「行きたいのは山々ですが、試合の後はワカメを採りに行くことになってるんです」

「ワカメ?!あ、矢野先生か。そしたら、サバまで誰かに迎えに行ってもらいますよ」


サバ?


鯖?


何のことかわからないかお任せすることにした。地元の人が言うなら間違いないだろう(後で砂場港のことだとわかった)。

この日は、なかじーには会えずじまいであったのだが、ゴール裏の前を通ると、二宮かまぼこの看板娘をはじめ、昨日の飲み会のメンバーと再会することが出来た。

意図したわけではないと思うが、夢スタジアムは色んな人に会いやすい構造になっている。というのもゴール裏の一番前の通路を通らないとメインスタンドに行けないようになっているからだ。

そして、メインスタンド前のコンコースをみんな通るので、知り合いにすれ違う確率がとても高い。面白いのが、コンコースの人の流れを警備のスタッフがさえぎって、そこを選手などの関係者が横切ることだ。

動線が滅茶苦茶といえば滅茶苦茶なのだが、ここでしか見れない光景という意味では貴重である。ぼくが警備スタッフに止められると、メインスタンドの控え室からFC今治の選手が緊張した面持ちで現れた。

怖い顔をして歩いてくる駒野友一選手を見ると、なかなかすごい選手を取ったものだと感心する。

ところでぼくはサッカーには詳しくない。

親しくしているサッカー関係者のノーミルク佐藤さん(@Twitter)は、信じがたいまでのデータマンで、海外の主要リーグ、J1、J2、J3はおろか、JFL、地域リーグ、果ては学生サッカーまで尋常ではない数の選手を把握している。

詳しいことはこちらまで(MilkサッカーアカデミーのTwitter)。

すべての知識を集積するいわゆる辞書学派(アンサイクロペディア派)としては、佐藤さんは頂点にいる人の一人だと考えている(もっとも辞書だけには止まらないのが佐藤さんなのだが)。ここでぼくがいいたいのは、ぼくは辞書学派から最も遠いところにいる。

ぼくはあまり選手についても、戦術についても詳しくないので、基本的に試合を観る場合は知識ゼロで見ることになるのだ。かろうじてわかるのは応援しているFC東京くらいで、他のクラブはほとんど知らない選手ばかりなのだ。見ていて自然と覚えることも多いので、流石にJ1はある程度わかるのだが、海外サッカーやJ2以下はほとんどわからない。

ただ、ここでぼくがいいたいのは、わからないからといって楽しめないわけではないということだ。というよりもむしろ、誰も選手を知らない状態でサッカーを見る方が楽しめるのだ。

予習した結果、サッカーが面白くなったということは実はそれほど多くない。何も知らずに見てもかなり楽しめるのだ。

というわけで、元代表選手のサイドバック、駒野友一選手だけしか知らない状態での観戦記をお届けしたい。ちなみに駒野選手は37歳。ぼくと同年齢である。そして、身長も体重も同じくらいである。

言うまでもなく体脂肪率は大きく異なるのだが。

というわけで試合が始まった。


2019年 3月24日 13:00
FC今治vsHonda FC


Kick Off!

ぼくが座ったのはメインスタンドのアウェーよりであった。上段のほうで、ピッチを見渡すと全体が俯瞰できる。その上、距離が近い。アルウィン、日立台、三ツ沢などに匹敵する非常にサッカーが観やすいスタジアムである。屋根がなく、バックスタンドが存在しないため音はあまり反響しないので臨場感では一歩劣るが、そこまで求めるのは贅沢というものだろう。

ビールを片手ににピッチを眺めると、やはり駒野はすごい。左サイドの(そう右ではなく左をやっていた)かなり高い位置まで攻め上がる。ちょうどぼくの目の前の辺りでプレーしていた。

ぼくはこういうタイプの運を持っていて、たまたま座った席の目の前で重要なプレーが起こることが多い。前半駒野に高い位置を取らせて、クロスを中心に崩していく戦術を取っていたこともあり、ぼくの目の前は常に激戦区となっていた。

駒野のドリブルで素晴らしいのは、いつでもロングクロスが蹴れる姿勢でドリブルをしていることだ。クロスの精度が高いことは誰でも知っている選手なので、Hondaのディフェンダーは常に気が抜けない。もっとも右サイドでどんなプレーをするのかはわからなかったのだが、ひょいっと蹴ったたまがそのままゴール前まで飛んでいく。流石だ。クロスだけでお客さんを呼べるレベルの選手。文句なしのレジェンドである。

そして、ディフェンスでも魅せた。競り合いになった際に、くるりと体を入れ替えてボールをキープする。魔術師のような素晴らしいプレーで、ぼくは歓声を上げて、手を叩いた。

と思ったら、喜んでいるのはぼくだけだった。周囲の観客は、レジェンド級のクロスにも、信じがたい体裁きにも気づいていないようだった。これが甲府や磐田、あるいは浦和だったら、大きな拍手が降ってきたはずだ。サッカーが根付いているかどうかの一番の試金石が、細かいプレーへの歓声だと思っている。

そういう意味で、FC今治はいくら大きなスポンサーがついたとしても、まだよちよち歩きのクラブなのだろう。ぼくはそう判断した。もちろん、ぼくの判断軸での、ぼく個人の判断なので、誰かが違う視点から見た場合には違う結論が出ることもあるだろう。

左側の前線まであがった駒野を中心として今治の攻撃は展開していたのだが、クロスを待ち構えていたのは13番の内村選手であった。身体が大きく、あまり足下がうまくはないのだが、ディフェンス時のチェイシングは常に全力という好選手であった。足があまり速くはないのだが、どんな状況でも必ずチェイスに行くという判断の速さから、高確率で縦パスを切っていた。

駒野の周辺には常に10番の有間選手が衛生のように付いていた。この選手、非常にうまう!!足下の技術が高く、判断も速い。視野も広い。そして何よりも素晴らしいのが、常に前に向かう姿勢を持っていることだった。

足下がうまくて消極的な選手は日本中に腐るほどいる。しかし、足下がうまい上に、ガンガン前に行く選手はそれほど多くない。ぼくの大好きなタイプだ。結論を言うと、この試合を通して、ぼくは有間選手のファンになった。

有間選手は、愛媛県の南部にある宇和島出身なのだそうだ。いわゆる南予地域である。愛媛県は、東予(今治など)、中予(松山など)、南予(宇和島など)の3地域に分かれているのだが、それぞれ文化や人が異なっているのだそう。宇和島は南予なので、少し遠い文化圏なのだが、他県に比べればずっと近いという意味で、同郷の選手という扱いのようだ(このへんの感覚は外部の人間にはわかりづらい)。

ちなみに音楽ユニットSuperflyのヴォーカル、越智志帆さんと、ギターの多保孝一さんは今治市出身。Superflyと言えば、2010年FIFAW杯南アフリカ大会のNHKテーマソングとなった「タマシイレボリューション」が有名だ。

そして、今治出身のアーティストがいるとなった場合には、チャントにして歌うのがサポーターの美学というもの。

結果、生まれたのが名チャント


イマバリレボリューション!!


最高の語呂だと思う。イマバリがタマシイと同じ4文字だからこそ成立したチャントである。「飛田給」とか「多摩センター」とか「分倍河原」ではそうはいかない。

ブバイガワラレボリューション

というのも、それはそれで強そうではあるが。


ちなもに長谷川アーリアジャスールの獲得フラグも立っている。


閑話休題。

開始10分までは概ね今治のペースで試合が展開していた。昨年のリーグでは圧倒的な強さを誇ったHonda FCであるが、やはり今年の今治は違うと言うことなのだろうか。

シュートまでは結びつかないものの、ゴール前まで押し込んでいく。やはり駒野は、プレーの選択、判断の速さ、引き出しの多さ、キックやキープの技術が超一流で、そうそう止められるものではない。

そして、今治のベストプレイヤーの一人である有間が常にサポートしているのだ。Hondaとしては耐えしのぐしかない展開であった。

と思っていたのだが、Hondaも流石の試合巧者であった。


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中村慎太郎

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