日本一サッカーに詳しくない実況・解説者として【ニコ生公式アジアカップ】

明日、1月9日からついにアジアカップが始まります!!

森保一監督が率いる日本代表は、初期の頃は、森保(もりやす)一(はじめ)ではなく、森(もり)保一(ほいち)監督と報道されていましたが、その後は非常に順調にチームを作り上げてきています。

代表チームを作っていく過程というのは、単純なようで結構難しい話です。試合だけを見ていてあーだこーだ言うことは出来ますし、普段はサッカーを見ていない人も参戦できる敷居の低さがあります。

なぜそれが出来るのかというと正解がわからないからです。

リーグ戦を戦うクラブの場合には、毎週の試合に連続性があり、毎年の補強・強化、あるいは監督・コーチとの契約、さらにはユースでの育成戦略、クラブとしての地域密着への施策など、様々な要素が複合的に絡まり、総合的な判断が下されることで物事が進んでいきます。

そして、日本代表も、実は裏では色々なことが進行しているため、「表には言えないことを多数含むけど、総合的な判断で——」という言い方になることがあります。

「ただマリ戦、ウクライナ戦の後の期間において、選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきたということ。そして、今までの様々なことを総合的に評価してこの結論に達しました。」

【全文】日本サッカー協会、ハリル監督の解任に関する記者会見

何だか懐かしい言葉ですが、読むと当時の心情がフラッシュバックしてきますね。

合掌。

そう、このあたりのことを思い出すと原点に回帰できますが、サッカー界のことをサッカー界の人だけに任せていたら絶対に駄目だと強く思った切っ掛けが、ハリルホジッチ監督の解任でした。

ハリルホジッチが解任されたことで日本は勝った。大成功だった。と語る人もいる。

ベスト16は大成功なのか。それは、ハリルホジッチでは達成できなかったことなのか。ハリルホジッチではもっと上の順位になった可能性もあるのではないか。それまで、ハリルホジッチ監督の方針を真面目に聞いてきた選手が大損をしたのではないか。日本代表をとりまく出来事には、サッカーの競技内の力学よりも、ビジネスや政治の力学のほうが効いているのではないか。

色々な疑問が残る。すっきりしない。しかし、ワールドカップは楽しかった。あれほど楽しいワールドカップはなかった。

何なんだろうか、この競技は。競技じゃないんだろうな、サッカーは……。競技という文脈だけではとても理解できず、語りきれない。

ぼくが、サッカーについて理解しようとするとき、あるいは、語ろうとするときに背景にあるのは卒業論文を書いた宮沢賢治であり、修士論文を書いたアワビの行動学であるような気がしている。

つまり、サッカーについて考えるのに、サッカーの知識を使っていないのだ。

ワールドカップに続いて、アジアカップにおいても、ニコ生公式というウェッブ媒体では一番大きなところから、実況・解説のお仕事を頂いた。

ぼくだよ?

30歳からサッカーをはじめて、Jリーグを見始めたのも32歳くらいの時で、特に専門知識があるわけでも、現場の経験があるわけでもないぼくが、実況・解説ですよ?

最初は本当に出来るのかなと躊躇したところは正直あります。ぼくは専門的知識が足りないという意味で、日本一サッカーに詳しくない実況・解説者になってしまうからです。

ただ、ぼくには3つのお守りがありました。

1つは、チャンスを活かすこと。パスをもらえたら、必ずシュートまで持って行くようにしています。フリーランスとしてのキャリアのはじめの頃は、「今はタイミングではない」とか「自分には出来ない」などと躊躇することも正直多かったです。そのうちにチャンスの神様に逃げられたという反省点から、振られたらとりあえずやることにしています。

ただ、文章の依頼については、書けるもの、書けないもの、書きたいもの、書きたくないものについてはっきりしているので、お断りさせていただくこともあります。そういう意味でぼくは、生粋のライターではないんだろうなと思います。

2つめのお守りは、解説者の倉敷保雄さんです。この世で最もサッカーに詳しい人の一人であるクラッキーさんにお会いした時に「あなたみたいな方が解説したら面白いと思いますよ」と優しく言っていただきました。倉敷さんが言うのなら、ぼくがやる価値があるだろう!というのが活動の一つの根拠です。

そこから逆算して、今までの知識・経験からぼくだからこそ出来る実況・解説観を作り上げました。そして、それはニコ生だからこそ出来る双方向性というところに着地します。

ニコ生は出来た当初からよく知っているメディアだし、最初の頃は字幕職人の友達も多かったこともあって、流れてくる文字にとても愛着があります。だから、コメントも気合いを入れて取り上げるわけですが、その能力がニコ生さんから評価してもらっている理由の一つでもあります。

これこそが、インターネットの理想型の一つでもあります。

インターネットがこの世に現れた頃、テレビや新聞などの一方通行のメディアと違った、双方向性のあるメディアが現れたということで、思想・言論界は色めきだちました。しかし、双方向性が辿り着いた場所は、クソコメントが吹き荒れるインターネッツでした。なかなか理想には辿り着かない中、ワールドカップでの裏実況の体験は、「あ、これこそが、真のインターネッツだ!!」と確信しました。

裏実況というスタイルは、Youtubeでも出来ますが、双方向性を高いレベルで担保した実況・解説はいまのところニコ生でしか実現できません。中村慎太郎はニコ生だからこそ出来る実況・解説を突き詰めて行きたいと思います!!

そして、最後のお守りは五百蔵容さんです。困ったときの500さん。困ってなくても500さん。500さんの思考を引き出すだけではなく、なるだけ知識がゼロベースの人にもわかりやすく伝えるのが今回の仕事の肝になると思います。

過去記事や著作を読み直して勉強しようと思って時間を確保していたのですが、もしかしたらまったく読み直さないで、質問攻めにするほうが番組的にはいいかもしれないなと書きながら思いつきました。

どうしようかな。

サッカーを普段それほど追っていない方も見てくれる番組なので、入り口をわかりやすくし、見終わるところにはハイレベルなところまで理解できるようにするにはどうしたらいいか。サッカーを学びながらも、試合を楽しんでもらうにはどうしたらいいのか。残り1日!よく考えて詰めていこうと思います。

番組的にはキックオフの1時間前から、森保監督の戦い方を振り返って解説していきます。その上で、試合に臨みます。ここをどう使うかで、アジアカップとの向き合い方が変わってくると思います。

五百蔵さんの視点は明瞭で、戦術解釈的なアプローチで、森保監督の思考を読み解くことです。

ではぼくは?

やっぱりぼくは、日本一サッカーに詳しくない実況・解説者として、サッカーの知識がなくても楽しむことは出来ることを示していくべきなのかなと思っています。

ぼくの中で一番サッカー解説に近いイメージなのは海洋研究をしているときにフィールドに立ったときです。


船に乗って少し進んでダイビングポイントまで進む。

海の透明度は高い。複雑に切り立った岩礁が透けて見えて、アラメが繁茂している。キタムラサキウニが付着しているのが見える。魚類はあまり見えない。

スーツをつけて、どぼんと潜る。

冷たい!!

冬の東北は、水温が低く場合によっては4度以下になる。ドライスーツを着ていても肌がしんしんと冷えていく。

頭を下にして、頭の重さを使って沈んでいく。すると、世界が変わっていく。

音が変わる、視界が変わる。まったくの別世界へと侵入した。まずは、何が起こっているかを確認しよう。

ぼくが探しているのはエゾアワビの成貝であり、餌料となる大型褐藻類であった。しかし、おかしいな。何か変だ。

アラメという海藻は見つかるのだが、その周辺にはアワビが全然見つからない。いつもなら、海藻の周辺には大型の個体が陣取っているのに。

「五百蔵さん!!見える場所にアワビがいません!!これは、水温の低下の影響でしょうか。あるいは、トルクメニスタンの戦術に対して、森保監督の指示があったのでしょうか?それとも現場の判断だと思われますか?」

なかなか理解していただくのは難しいかもしれませんが、ぼくがやるべきことはこれです。自分の観測レーダーをフルに使って、今目の前で起こっていることを詳細に感じていきます。

そして感覚的におかしなことが見つかった時に、解説者に振るというやり方です。もちろん、ある程度は、「視聴者は違和感を感じるであろうポイント」を意識して話をすることはありますが、やはり一番大切なのは試合から違和感を見つけることです。

これは、生態学を学ぶ者として、あるいは野鳥観察者として、何度も何度もフィールドに出たことで身につけた能力です。サッカーというのは、一種の自然現象なので、そこにある違和感は何かの兆しであることが多いのです。

300羽近いカモメの群れで、違和感のある行動をしている個体を見つけたことがありました。飛び方が少し変なのです。そしたらそれはズグロカメモという珍しい種類のカモメでした。

ズグロカモメだとすると、この場所に何故いるのか、何をどうやって採食しているのか、繁殖地はどこなのか、冬羽なのか夏羽なのか、本来の分布の中心はどこなのか、今はどういう行動をしているのか、いつこの場を去るのか、ズグロが混ざることでユリカモメが中心の集団への影響はあるのか……。などなど。色々な疑問が湧いてきます。

それを五百蔵さんにぶつけるわけです。五百蔵さんもなければ一緒に考えます。そういうやり方が、知識がなくても楽しむ方法だと思っています。

逆に「サッカーってのは、こういうときはこういうもんなんだよ」という解説は、ぼくには出来ないし、やりたいものでもありません。

目の前で起こる現象に対して、フラットでオープンな視点を持ち、生じてきた疑問に対して向き合う形で、実況・解説をしていきたいと思っています。

(あと、ジュビロ磐田関係の展望と、Perfumeへの愛情のほうに敢えて話を持って行き、本筋から外れすぎないうちに撤退するのもぼくの仕事のうちです)

……

……

というわけでニコ生アジアカップの実況解説は明日から始まります!!

この放送はタイムシフト予約をすれば後から見返すことも出来ます。五百蔵さんによる冒頭の戦術解説や、試合後のマッチレビューなどはサッカーファン必見・必聴なので、後からでも見返せるように是非タイムシフト予約をポチッとしてください!

裏実況なので、試合はテレビ画面で見て、同時にニコ生を流すという方式になります。テレビとインターネッツをスタンバイして試合に臨んでください!

1月9日19時から!


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写真は、初戦のコロンビア戦の時。

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中村慎太郎

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