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「ヴィアティン三重、サポーターの一体感の秘密」と、桑名滞在記Part2

天皇杯でのヴィアティン三重の活躍を記念して、冒頭の無料部分に「ヴィアティン三重、サポーターの一体感の秘密」というミニコラムを書く。ミニコラムに続けて、三重県は桑名の滞在記Part2を書いていく。

Part1はこちら。

さて、ヴィアティン三重の躍進と共に、サポーターが注目される機会が多い。

……と、このようにいくつか引用させて頂いたのだが、三重のサポーターの特異性とは何だろうか。

数が多いわけではない。「おまえら死ぬ気で行くぞ」的な気合いが入っているわけでもない。色々なクラブのサポーターと話をしてきた身として思うのは、遠目にはまったくもって普通なのである。むしろ少し軟弱なくらいだ。

いわゆる原理主義的なサポーターはほとんどいない。というよりも恐らくながら一人もいないだろう。原理主義というのは、「サポーターとはこうあるべきだ」という原理を構築し、そこから外れる者に対して批判的な立場を取る者のことだ。

ロック総統が批判する「Jリーグ原理主義」とは、Jリーグに上がることを至上命題とすることで、上昇志向のないサポーターやクラブ、選手などを批判する者のことを指す。

原理主義者は、向上心のある見習うべきサポーターではなく、他者との軋轢を生むネガティブな存在となっていることが多い。

「サポーターはかくあるべき」という主張は、絶対的に間違っている。

というのも、サポーターの姿勢などというものは、そのクラブの状況や地域の文化、その時々の空気感などによって柔軟に変わっていくほうが望ましいからだ。もちろん、浦和レッズや鹿島アントラーズのように「常に優勝を目指せ」と言い切ってもいい立ち位置の古き強豪クラブについては例外的である。サポーターは常に上だけを見ていればいいのだ。

そして強豪クラブほど、成績が奮わないときは、サポーターとクラブに軋轢が生まれることも多いのはここで敢えて言う必要もあるまい。

さて、ここまでは一般的な話を書いたが、これに対してヴィアティン三重のサポーターはどういう状況なのだろうか。最も特異的なポイントは、コールリーダーが「育児パパ」であることだろう。

知りうる限りではあるが、「育児パパ」がコールリーダーを務めているケースはない。大抵は独身の男性がやっていることが多く、育児パパがいたとしてもサブリーダー的な立ち位置などサポートする位置にいることが多いのではないだろうか。

ぼく自身も「育児パパ」であることからわかるのだが、誰かのために奉仕するために時間やお金を割く余裕はないのである。

土日に家庭の用事を行う都合上、毎週末拘束され、かつ、遠征する必要もあり、サポーター仲間などとの打ち合わせにも時間を割く必要があるコールリーダーを「育児パパ」が行うのは困難なのである。

その困難なミッションを行っているのが、ヴィアティン三重のコールリーダーであるRYUJI氏である。これがどれくらい困難なのかは、育児パパ以外の方にはあまり思い当たらないかもしれない。世の中には、サッカー観戦に行くこと自体を「反・家族的行動」であると判断され「嫁ブロック」にあう現象も報告されている。

子供のために時間を使い、子供の将来のために貯蓄をする必要がある。そんな状況の中で、ヴィアティン三重のために時間と労力を使う。

これは覚悟だと思う。

実際に、RYUJI氏はPKまでもつれた長崎戦には行けなかった。

お辞儀した後の謎のにやつきを見て、ちょっとむかつくところまでが彼のYoutube芸である。本人はものすごくシャイなのだが、照れを出すと鬼のディレクターからリテイクを要求されるので、彼も必死である。

さて、何がRYUJI氏にコールリーダーとなる覚悟をさせたのかについては、色々なことを総合すると2つ原因があるようだ。一つは、2014年の天皇杯におけるセレッソ大阪との熱戦である。

この試合は、ヴィアティン三重(当時はヴィアティン桑名)を語る上で絶対に外せないものらしい。2014年のセレッソ大阪といえば、ディエゴ・フォルラン、南野拓実、柿谷曜一朗(7月に移籍)、山口蛍などを擁しながらも成績が奮わず、J2に降格した年であった。それでも、堂々たるJ1のクラブである。

金鳥スタジアムで行われた試合は、2−2の同点で延長戦へともつれ込む。セレッソの得点者は、杉本健勇と南野拓実であった。

延長戦の末、ヴィアティンは力尽き、4−2で敗れたのであったが、その時の興奮といったらなかったようだ。ヴィアティン三重のコアサポーターは、その試合を経験しているし、RYUJI氏もサポーターの中心にはいなかったが、どこかで観戦していたらしい。

そんなところから、地域のために出来ることとして、積極的にヴィアティンに関わることを選択したと聞いている。またその時の伝説を聞いてヴィアティンに関わるようになった者も多いようだ。そのため、相手が巨人であっても勝てるかもしれないという意識が常にあるのだろう。大試合においてサポーターの血が騒ぎ立ち、勝利を呼び寄せようとする。

ヴィアティン三重とは巨人殺しの遺伝子を持ったクラブなのである。

長崎や湘南でのサポーターの応援が賞賛された一因は、大試合へのポジティブなイメージというのが一つにはあるのだろうと推測している。

さて、「育児パパ」であるRYUJI氏がいることの要点はもう一つある。それはゴール裏における子供の声が大きいことだ。

ははぁ、そんなことか。うちのゴール裏だって応援している子供はいるぞ。という反論はあるだろう。確かに、チャントを覚えて大声で歌う子供のサポーターを見ることはある。しかし、ヴィアティン三重の場合は少し様子が異なっているのだ。

まず、ゴール裏に子供がいる場合には、自由に遊んでいる子供が多いということを示している。その中で何人かが応援に参加しているという状態が一般的なのではないだろうか。

ヴィアティン三重の場合には、ぼくが観戦した雨の試合においても、雨合羽を身につけ、1試合を通して声を上げ続けた子供が20人近くはいただろうか。雨の中、大きな声で「ヴィアティン三重!」という声を出し続ける、1試合を通して出し続けることは、大人にとっても楽ではない。ましてや、飽きっぽい小学校低学年の男女が、歌い続けることが出来るのはどうしてだろうか。

女の子達の可愛らしい声がずっと響いている様子は感動的ですらあった。


試合後の少年サポーター。コンクリートに足をかけたポーズは、ワールドクラス!


さて、あくまでもぼくの見立てではあるのだが、子供達の声援については、RYUJIパパの地道な活動が効いているのではないかと感じている。RYUJIパパは、ゴール裏に来た人みんなと話をしている。声をかけ、握手をして、ヴィアティン三重を応援しようと言い続けている。確か、全員と話をするようにしていると言っていた。

相手が子供であっても対等な目線で話しかけ「応援をよろしくお願いします」と言って握手する。それを毎試合毎試合繰り返す。子供達もYoutubeの動画などを見ながら、ヴィアティン三重を応援するという意味をそれぞれ考えるのだろう。

ヴィアティン三重のゴール裏にいる子供達には、自分たちの役割があり、目的意識があった。サポーターとしての居場所があり、必要とされていることも理解していたのだろう。

ヴィアティン三重。

他の地域でも見たことがあるような小さなクラブの小さな挑戦ではある。だけど、その内的な充足感は少し異なるように思えた。

これは、あくまでも一度訪れただけのぼくから見た推論ではあるのだが、三重のサポーターがどこか違うという雰囲気は感じて頂けたのではないだろうか。

三重にはまた訪れることになるだろう。

どうしてもまた行きたい理由があるからだ。

それは、スポーツツーリズムとしてサポーターが訪れる土地としての魅力に溢れていることがわかったからだ。まさか三重がそういった土地であるとは最初は想像もしていなかった。東海はもちろん、関東・関西の都市圏、距離の近さも相まって、三重はキングオブアウェーの称号を得ることも可能かもしれない。というと少し大げさだろうか。

この先に続ける紀行文(有料版含む)では、ヴィアティン三重と桑名の魅力について深掘りしていこうと思う。

以上、ミニコラム「ヴィアティン三重、サポーターの一体感の秘密」おしまい。

以下「時をかけるハマグリと14番目の戦士達 Part2」

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「ねぇねぇ、大変なの……」

ヴィアティン三重のボスことかずみさんから突然LINEが来た。彼女の熱烈なお誘いによって、ぼくは三重の地を訪れることになっていた——。

「え?どうしたの?」

「中村慎太郎さんにわざわざ来てもらうんだって、ヴィアティン三重サポーターに言ったんだけど……。

誰も知らないみたいなの


「……。まぁマイナーな人物だし、知らないほうが普通だと思うよ。」

「でも、せっかく中村さんに来てもらうのに、知らないなんて!!」

「そうだね……。ぼくは誰にも知られてなくてもまったく気にしないんだけど、気になるなら自己紹介文書こうか?」

「あ、そしたら、それをアナウンスします!!」

「はーい、当日はよろしくお願いします!」

というわけで、作家業をしていること、サポーターについて書いた本を出したことなどを短くまとめたものを送ったのであった。

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時は流れ、当日——。

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ヴィアティン三重コールリーダーRYUJIは大声を張り上げた。

「今日は、東京からスペシャルゲストが来てくれました!!!!YOUTUBEとかをやってる中村さんです!!!」




伝わってない!!!

伝わってないよ!!!

Youtubeもやってるけど、メインじゃないよ!!!


Youtuberと紹介されたことに若干ひるみつつも、少し嬉しくもあった。OWL magazineのチャンネルもだいぶ根付いてきた証拠だからだ。この時点では、単なるYoutuberだと思われていたということは忘れて、フットサル大会を楽しんだ。

FC東京ユニを着て撮った集合写真などもあるのだが、全員の許諾を取っていないので割愛。

だいぶ歩き回ったので身体はガタガタいっていたが、それなりに得点も取れたので良かったとしよう。


シャワーで汗を流した後は、桑名駅前の居酒屋へと向かった。

そして、とりあえずハマグリ。

桑名名物の焼きハマグリ。

やはりハマグリは美味しい。ぼくの原体験として、千葉の九十九里浜を訪れた時に食べた焼きハマグリがある。網の上でジュージュー焼いて醤油を垂らしたハマグリは、この世のものとも思えないくらい美味しかった。

思えば焼きハマグリを食べるのはそれ以来かもしれない。桑名の焼きハマグリも、弾力があり、噛みしめると味が溢れてくる。とても美味しいのだがつるりと食べ終わってしまうのが少し悔しい。

一般にハマグリを食べる機会はあまり多くない。そもそも漁獲量も流通量も多くないのだ。しかしそこは、流石の桑名であった。ハマグリといえば桑名、そして、桑名といえばハマグリなのである(九十九里も)。

桑名の大ハマグリは、国内でも最高のブランドの一つであり、スーパーにも1個あたり150円くらいで売っていた。

アジやらサバやらが1尾あたり100円程度でも売られていることを考えると、かなりのお値段である。焼き鳥一本あたり100〜150円という基準で考えても、原価だけで150円するのはなかなかだ。それでもスーパーで売っているからには、買う人も多いのだろう。

シジミ、サザエ、バイ貝、ホタテなど、ハマグリ以外の貝類も充実しているのが他の地域との明瞭な違いであった。種類が多いだけではなく、量も多かったことを付記しておく。生のバイ貝をスーパーで見たのは初めてのような気がする。

そして、これ。
赤こんにゃくみたいなやーつ。なんだっけな、これ。謎の食材。お味は、ちょっと濃厚なこんにゃくだったような気がする。

写真は撮っていないのだが、鳥刺しを食べる習慣もあるらしく、大変美味しかった。なんとかバクターとかは気にせず食べたいものを食べたいように食べるのである。

ヴィアティン三重のサポーターと話していると面白いことに気づいた。

生粋のヴィアティン三重サポーターは滅多にいないのだ。

と、書くと語弊があるかもしれない。こういう場合は何と言ったらいいのだろうか。他のクラブのサポーターから流れてきた人が非常に多いのだ。

名古屋グランパスや松本山雅が多かったのだが、中には横浜Fマリノスのガチサポもいた。たつゆきくんは23〜25歳くらい(推定)の若者なのだが、ヴィアティン三重サポーターというよりもマリノスサポーターとしての色合いの方が濃いような印象を受けた。

今でも三重から横浜まで通っているし、2014年のACLでは海外遠征もしたそうだ。コアサポの集団にいるようなので「石井和裕さんはご存じですか?」と聞いてみたところ「遠目には見たことがあるけど、恐れ多くて話しかけたことはない」と言っていた。

流石マリノスサポーターのレジェンド……。恐るべし。

すずやん 、なぽたん などの若手軍団(この人たちは未だにぼくのことをYoutuberだと思っている可能性もある)や、いとうさん、みー太郎さんなどの本を読んでくれていた方々(良かった!一部の方には物書きだと伝わっていた!)とも色々語り合って、1次会は終了。

なお、ハトトカというYoutubeチャンネルを一緒にやっているDDDさんも、岐阜からフットサル&飲み会に参戦してくれた。これからは三重も応援しますというような宣言をしていたけど、果たして公約は守られるか?!


そして、一行が二次会のために「鳥貴族」へと向かったどうかは内緒にしておく。



飲み終わると、RYUJI邸へと移動。

一泊させて頂いた。ここでのハイライトは、元気すぎるマリノスサポ(ヴィアティンサポ)のたつゆき氏がまったく寝なかったことと、奥様が花のように輝いていたことであった。お土産に持参した東京銘菓ひよこが好物だったらしい。

翌朝……。

気づいたらマルシェにいた。朝市である。三重県では、というか少なくともこのあたりでは、マルシェの文化が根付いているらしい。

駐車場に車を止めて歩き始めると、向こうの方から一台車がやってきて、乗っていたのはなんとFC今治サポーターであった。というか、今治紀行で散々登場した、二宮かまぼこの看板娘もぐ様であった。

どうやら今治から車でやってきたらしい。後ほどスタジアムでも、ナガノ先生と再会した。ぼくがサッカーと旅の魅力を力説したことに少し触発されたというような嬉しいことを言って下さった(ような記憶がある)。

いつもの場所で、いつもの人と交流するのも幸せのかたち。

いつもとは違う場所で、いつもとは違う人とすれ違うのも幸せのかたち。

旅は、人生に彩りを加えてくれる。

焼きハマグリに振りかけた一振りの胡椒のように。


というわけでマルシェでハマグリを購入。家族でやっている出店で、お子さんが注文を取ってくれた。

トッピングとして「ピリッと柚子七味」「ピリッと爽やか青柚子胡椒」「スパイシーブラックペッパー」の3種が選べるようになっている。同時に、ハマグリの汁物も頼んで一人ハマグリパーティー。

つるつるとハマグリを食べるのはとても幸せなことだ。一昔前に比べたらだいぶサイズも小さくなっているのだろうけど、アサリよりは大きいし、弾力もあり、味も濃い。アサリも美味しいけど、やはりハマグリは特別だ。

マルシェを出て、スタジアムへと向かう。

写真は多度大社の神馬。上げ馬と呼ばれる行事で、大社前の階段を駆け上がると聞いた気がする。気がするというのは、喋り続けるかずみボスから膨大な量の三重情報が入ってきたのだが、消化し切れていないところがある。


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中村慎太郎 旅とサッカーを紡ぐOWL magazine

作家・Youtuber。偏差値30からの大学受験を経て東京大学文科Ⅱ類(経済系)→文学部に進学(宮沢賢治の生命観)→大学院は理転して農学系(アワビ類の行動生態および繁殖生態の比較)→自主退学しスポーツ系の物書きに。著書『サポーターをめぐる冒険』がサッカー本大賞2015を受賞。

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