群衆の中の孤独とサッカー旅について


この文章はProject OWLのコンセプトメイキングの際に、一つの参考として書いたものです。下書きとして眠っていたのですが、Project OWLの始動の前に公開します。

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新宿駅で京王線に乗り換える。調布まで進み、京王稲田堤のほうへと行かないように注意しながら電車を選び、飛田給駅で下車する。

いつもの風景。見慣れた景色。当たり前の日常。

飛田給駅の自動改札には人が押し寄せていく。そのほとんどが、青赤のユニフォームあるいはグッズを身に着けている。我らがFC東京のサポーターだ。

見渡す限りすべてが仲間だ。みんな青赤の魂を持っていて、青赤のクラブを応援するためだけに飛田給へと押し寄せている。

「ああ、みんな仲間だ。心強い。」

とは思わない。

これはぼくだけなのだろうか、そうは思えないのだ。

もちろん、飛田給から遠く離れた駅で、青赤のグッズをつけている人を見つけた時は飛び上がるほど嬉しくなった。近所のスーパー銭湯で青赤の手提げ袋を使っているご家族を見つけた時は、もう少しで声を掛けるところだった。

しかし、飛田給に大挙して押し寄せるサポーターの群れの中にいると、ぼくは孤独を感じる。これだけ人がいるのに誰も知らない。同じクラブを応援する仲間のはずなのに、顔もわからないし、話したこともない。

そして、この先に縁が生まれる可能性も低い。FC東京はとても大きいクラブで、観客は毎試合2万人近くになる。だから、知らない人がいるのは当たり前なのだ。理屈としてはわかる。

だけど、群衆の中の孤独に押しつぶされそうになることもある。誰か知っている人はいないかなとキョロキョロするのだが、滅多に会わない。50人くらいは知り合いがいるはずだし、時折会うことも確かにあるのだが、大抵は誰とも遭遇しない。

ぼくは誰とも約束せずにバックスタンドで観戦して一人で帰ることが多いので、サッカー観戦をする一日の間、一言も喋らないことも多い。

それはいいのだ。一人で観戦したいから一人で来ているのだから。だけど、試合に負けた時などは孤独を感じることもある。SNSを使えばいいというのもあるかもしれないが、チーム状況が不穏な時は、SNSも荒れ気味なので開きたくもなくなる。

しかし……。
どうして、こんなに多くの仲間に囲まれているのに、孤独を感じるのだろうか。

それは、周りを歩いている人々は、同じクラブを応援しているというだけで、ぼくの人生とはあまり関係がないからなのだろう。

もしかしたら、どこかの飲み会で出会ったら仲良くなるかもしれない。その先ずっとサッカーについて語り合う仲間になるかもしれない。属性は近いのだから、そうなる可能性は高い。しかし、その線は引かれることはない。

とても近くにいる、似た人たちのはずなのに――。
その間には目には見えない溝がある――。

どうやったら、この溝を埋めることが出来るのか、あるいは飛び越えることが出来るのかを考えたことがある。飲み会や観戦会も何度か開催した。そうすると実際に仲間は増える。いや、正確に言うと知人が増える。段々と顔見知りが増えていく。

だけど、それだけでは埋まらない何かがある。足りないものがある。だから、ぼくは青赤の群れの中で、しばしば孤独を感じるのだ。


そうか、自分の町では駄目なんだな。


生活している町、仕事をしている町。ここではあまり深く人と結び付けないのかもしれない。もう、この町で得られる人間関係は上限に達しているような気すらしてきた。


だから、ぼくは旅に出る。


きっと、そこには足りないものがあるはずだから。旅先での出会いは永遠のものだ。松本にはシンさんという大切な友達がいるのだが、年齢はだいぶ上だし、一緒に飲んだのも3回くらいのものだ。だけど、遠くの街に友達がいるのはとても嬉しいことだ。

鳥取には、のぞさんという友達がいて、1度しか会っていないし、一緒に過ごした時間も数時間に過ぎない。だけど、とても大切な友達のように感じている。なんでだろう。これが東京だったらこうはならなかったはずだ。


旅に出よう。


それが何だかはわからないが、自分の町では見つけられないものが見つかるような気がする。東京は生まれ育った大切な町だけど、本当に求めているものはここにはないのだ。いや、ここでは得られないものなのだ。

どうして旅に行くのかと言われても理由など答えることは出来ない。わざわざ遠くの街まで行ってサッカーを見る意義も説明できない。いや、スポーツツーリズムの教科書に書いてあることを読み上げることは出来る。しかし、それは理屈であって真実ではない。


仲間がほしいから行くというのも少し違う。人と触れ合いたいから行くというものでもない。


それでも、ぼくは旅に出る。


今までのサッカー旅は、ぼくを一度も裏切らなかった。つまらない旅など一度もなかった。


だから、再び旅に出る。


サッカーがなかったら、こう何度も旅に出ることはなかっただろう。とても不思議だが、この楽しみからは離れられそうにない。日本のJリーグ規格のスタジアムは30箇所くらいは回ったはずだ。それでもまだまだ行きたいところはある。


次はどこへ行こうかな。


This story is continued to Project OWL.

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