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Jun Yamamoto 音楽を語る(2)

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クラシック音楽のいいとこどりをして語ります。
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#音楽理論

3-voice (Octave) Canon in A dur

半音進行を主体にした、オクターブずつ下がってくるカノンだが、かなり奇態なものになってしまった。orz

Mozart Requiem To be written Amen Fugue, completed by 5 Successors

モーツァルトがおそらくは計画していた、レクイエムのラクリモサにつづくアーメンコーラス。残されたスケッチ14小節から、5人の補作を集めている動画があったので聞いてみた。

いずれ劣らぬ力作だとは思うが、個人的にはDruce版の終わり方がかっこいいと思う。

1. Duncan Druce 1981

2. Robert Levin 1987

3. Richard Maunder 1993

4.

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Chausson "Poem"

ショーソンの「詩曲」冒頭。

全体がショーソンの発明といってもいいと思うが、基本的にはEb minorの上に、Ebm → Cb7 とか D7 → B7 とかの属七和音で三度平行移動するというアイデアが頻出している。属七の5度下方変位(7b5) や 短七和音の5度下方変位(m7b5)も使われているが、各声部がなめらかに動くことで魅力的な和声的背景を作り出している。

Faure Requiem "Offertoire"

フォーレの愛すべきレクイエムから奉献唱の一部を。

フォーレの和声マジック。要は偶成和音なのですが、D A7と来て次がF7になるという不思議な進行であります。本来の調性のD Major であれば C# E F# であるはずの音が、ひっくり返ってC Eb F になってしまい、しかもAはそのままなので連続性が保たれる。一瞬長三度下のBb Majorに行っていると解釈できるでしょうか。F7 はさらにひろ

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Barry Mann/Cynthia Weil "Just Once " in The Dude by Quincy Jones

Quincy Jonesの The Dude に入っている "Just Once" であります。ポップスの作法のお手本みたいな曲で、ここでもお約束のIV度へのII-Vが出てくるのでご紹介します。

14小節目がサビ頭の印象的なリズムですが、直後(15小節目)にIV度へのII-Vが出てきます。ここではベースが変わった動きをしてさらに効果を強めます。(クラシック的には増4度ないし減5度の跳躍であまり歓

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Mirror Canon

「題名のない音楽会」で言及されていた「鏡のカノン」。むしろ対面カノンと言った方が正確かと思うが、要は五線譜を普通に見た形とさかさまに見た形を同時に演奏して曲が成り立つというカノンである。

KM先生の例をヒントにでっち上げてみた。ここでは、普通向きはト音記号として、反対向きはヘ音記号として読むという約束に拠っている。

これは普通の逆行カノン(遡行カノン)より難しい。ト音記号のドの音はひっくり返す

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Yumi Matsutoya "so long long ago"

"so long long ago"(松任谷由美)の「或る朝空をふと見上げた時」の部分のコード進行。Gm7 Dm7/Bb7 Ebmaj7 Abmaj7 (Bb major: vi iii/I7 IV VIb)なのだが、これもIV度へのii-V(Im7-I7-IV)の応用であることがわかる。普通なら、Gm7 Fm7/Bb7 といくところをFm7(Vm7)の代わりにIIIm7を持ってきたところが工夫で

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Chopin Piano Concerto No.1 Movt. 1

ショパンのピアノコンチェルト第1番、ピアノの入る直前の部分である。ショパンのオーケストラ書法はなってないという批判もわかる。声部の処理がゆるゆるで、必然性がない。弦主体だから目立たないが、管楽器でやるとつぎはぎだらけになってしまう。逆に言うと、ショパンには音楽がこう聞こえていたのだろうという推測が成り立つ。対旋律は好き勝手に鳴り始める。全体として和音構成音が足りていればよし、足りなければ足せばよろ

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Erik Satie "Vexations"

譜面にもある通り、バスのテーマは二回繰り返す。かつ、ソプラノとアルトは一回目と二回目で上下逆になって繰り返している。構造は至極簡単だ。

和音を調べてみるとほとんど減三和音だが2番目が増三和音、12番目が増6度の和音(形としては属七の5音除きと同じ)になっている。ちょっとしたフックですね。バスが繰り返しているので、3種類の減三和音は同じ順番で繰り返す。減七の和音は3種類しかないが、減三和音であるの

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David Cope氏のEMIによる「バッハ様式のフーガ」を添削する

デイヴィッド・コープ(平田圭二・監訳)「人工知能が音楽を創る」の中に、コラールだけでなく、イ短調のフーガがまるっと入っていたので見てみた。ざっと聞く分には「人工知能がこれを創ったのはすごいなぁ」と思うのだが、コープの手法はあくまで過去のデータからその組み合わせで創り出して「人工知能が創造性を持ち得るか」というところに興味があるためだろう、よく見るとこれはフーガとしては残念な出来と言わざるを得ない。

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David Cope氏のEMIによる「バッハ様式のコラール」を添削する

David Cope 「人工知能が音楽を創る」の中に、コンピューター生成されたバッハ・スタイルのコラールがまるっと一曲収録されている。音楽的な喜びがない(あるいは少ない)といった高度な話は置いておいて、少なくとも音の間違いが多い。思わず添削してしまいました。間違いが多いといっても添削しようかという気になる程度だからまずまずよくできているのは間違いないが…。

上の大譜表がコンピューターによる「作曲

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Rachmaninoff Piano Concerto No.2 Movt.1

冒頭に出てくるピアノの低音域でのアルペジオ。ちょっとしたことなのだが、ところどころに倚音をはさみ込むことで一筋縄ではいかない響きになっている。

落語「寝床」によせて

落語の「寝床」はいろいろなヒントを含んだ噺である。江戸時代、あるいは明治・大正・昭和もはじめごろですかな、経済的余裕とヒマのある旦那衆、時によってはその辺の有象無象まで稽古事をやる。中には女のお師匠さん目当てで通ったりする。いわゆる「檀那芸」であるからそんなにいいものではない。ちょっとお師匠さんが厳しいことをいうと「そういわれても私ら玄人じゃないんですから、そんな風にはできない。じゃぁもう面倒だか

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