David Cope氏のEMIによる「バッハ様式のフーガ」を添削する


デイヴィッド・コープ(平田圭二・監訳)「人工知能が音楽を創る」の中に、コラールだけでなく、イ短調のフーガがまるっと入っていたので見てみた。ざっと聞く分には「人工知能がこれを創ったのはすごいなぁ」と思うのだが、コープの手法はあくまで過去のデータからその組み合わせで創り出して「人工知能が創造性を持ち得るか」というところに興味があるためだろう、よく見るとこれはフーガとしては残念な出来と言わざるを得ない。逆に言うと、コープ先生あとからちょっと直すとかいうズルは一切しておられないのだろう。

まず、フーガの基本であるところのドミナントがない。いや、あるのだが扱いが軽すぎて、ドミナントからトニカに解決する大終始のカタルシスがまったくないのである。さらに調性の扱いが「無方針」に見える。ディベルティメントらしき部分がほぼそのまま繰り返されたり、曲としての体裁を成していない。

もちろん、この曲の音楽としての欠陥がすなわちコープ先生の研究に意味がないということではまったくなく、むしろ逆なのだろうと思うが、見ちゃうと気持ちわるくて、ついつい添削しちゃいましたよ(<ヒマ

上の大譜表がコープ=EMIのオリジナル(音はこちら)で、下段が不肖わたくしの添削後のもの(音はこちら)である。願わくは下段の方が多少なりとも音楽的に響きますように。

添削なので、なるべくもとの形を尊重して、繰り返しの部分は若干の変化を持たせるとか、ドミナントは属音の保続音を導入してバスにテーマの拡大形を出すとか、多少の工夫はしたつもりです。

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