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小山内貴哉コーチ紋別市派遣決定会見そして野々村芳和社長講演会

昨夜6時30分より紋別市文化会館多目的ホールで行われた野々村芳和北海道コンサドーレ札幌代表取締役社長CEOの講演会の模様をお伝えする。

コンサドーレに戻った小山内氏の初仕事

定刻より少し前に会場に到着すると、熱心なファンや市民が駆けつけていた。250人分ほどの座席は結構埋まっていた。私は事前に市役所に申し込みをしていたのですぐに会場に入れたが、当日申し込みの人はその場で住所氏名などの記入を求められていたようだ。チラッとその様子を見ると、結構な数の人の記入があったので、主催者はホッとしたことだろう。
後方に着席して壇上を見ると、4人ほど登壇してしゃべるような状態になっていて、パネルディスカッションでもやるのかと思ったが、定刻になり司会者の方から「講演会に先立ち、小山内貴哉氏紋別市派遣決定についての記者会見を行います」というアナウンスがあり、壇上に宮川良一紋別市長、長尾陽一コーチ、昨季はJFLのラインメール青森でプレーし現役引退した元コンサドーレの小山内貴哉氏、そして野々村芳和社長が姿を現した。

文字数にかぎりがあるのでツイッターに書き込んだ時は小山内氏の肩書きをコーチとしたが、この場がいわば現役引退発表の場でもあった。冒頭に宮川市長から小山内氏の就任が発表されるとともに、長尾コーチへの謝意が伝えられた。小山内氏は札幌U-12(札幌西小)-札幌U-15(札幌発寒中)-札幌U-18(札幌稲西高)と札幌の下部組織で育ち、2012年にトップ昇格。AC長野パルセイロや福島ユナイテッドFCへの期限付き移籍を経て、2017年から福島へ完全移籍し、昨季はJFLのラインメール青森に所属していた。
今後は一般社団法人コンサドーレ北海道スポーツクラブに所属となり、早速クラブは小山内氏を相互交流に関する協定を締結している紋別市に長尾陽一コーチの任期満了に伴い、サッカー指導者として派遣することを決めた。4月から紋別高サッカー部での指導を中心に、市内中学校や未就学児へのサッカー教室などを実施していくようだ。小山内氏は「自分を育ててくれたチーム、そして北海道に戻ってきて力になることが夢だった」と語り、新たなチャレンジに意欲を示した。
2年間紋別での指導に尽力してきた長尾陽一コーチは23歳からサッカーコーチとして活動してきた人物で、2010年から5シーズンに渡り海外での指導経験も持つ。「話すことを考えてきたが、緊張して忘れてしまった」と言うと、社長から「黙ったから感無量なのかと思った」と突っ込まれた。「フットサルでは道大会進出を果たせたが、11人制のほうではそれができなかったのが心残り」と話したが、「下地は作れたと思う」と後を小山内氏に託した。
記者会見だけあって質疑応答の時間もあった。地元紙の記者が手を挙げたが、質問を書いておいた紙がなかなか見つからず「私も緊張してしまって…」と苦笑するひと幕もあった。「紋別のイメージは?」と問われた小山内氏は「流氷ですね。あと、カニがおいしい」と答え、「カニ食べたいです」と紋別の食にも期待大の様子だった。

順位予想は「まあ当たらないもの」

その後、テーブルや椅子が片付けられ、トップの写真のようなスタイルで野々村社長の講演会が始まった。舞台の下手に立った野々村社長は、手元のスイッチでスライドの画面を切り替えながら、時々レーザーポインターを使って説明をしたりした。こういった形の講演会は何度もこなしているようで、非常に手慣れた印象だった。
まず、話題はシーズン開幕前の順位予想の話から。自身が評論家だった時のことを踏まえて「まあ当たらない」と。昨年の予想は平均16位くらいだったが終わってみれば4位。今年はどうかというと、野々村社長が見たなかでは3位と一番高く予想したのが岩本輝雄氏だったそう。練習試合で名古屋に勝ったのを観たかららしい。一番低くても10位で「そういう評価を受けているのは喜ばしい。なかなかうまくいっていると思う」と。しかし「そんなに簡単ではないと思ってほしい。昨シーズンだってそんなに相手を圧倒したわけではないから」とも。
その後、コンサドーレの歴史を振り返り、岡田武史氏やフッキなど主な外国人を紹介。エメルソンは来日時18歳ということだったが、夏に5歳の子供を連れてきて驚いたそうだ。ブラジルならそういうこともあるのかな…… と思ったそうだが、結局4歳サバ読んでいた。1、2歳若く言う選手はたまにいるらしいが。最近では小野の存在が大きいという。彼に刺激を受けて、彼の良さとは違うことで頑張って試合に出ようとハードワークを始めたのが荒野や深井だそうだ。
強化費はレッズの25億に対し、コンサドーレは12億とその半分程度。しかし、野々村氏が社長に就任した頃に比べて営業収益は3倍、強化費は5倍になったという。「昨年は2位になるチャンスもあったが、ならなくて6億損した。でも選手に損したとは言えない。強化費が違うから」。強化費を増やすためにはパートナーを増やさなければならないが、コンサドーレとパートナーになると何かメリットがあると思わせることが必要と。
イギリスのプレミアリーグとJリーグは、25年前はあまり変わらなかったが、アジアに積極的なプロモーションをかけて1000億もアジアから持っていったそうだ。

四方田⇒ミシャに迷いはなかった

監督を四方田さんからミシャさんに変えた時はかなり文句を言われたが、野々村社長には迷いはなかった。本当に目指すサッカーをやるためにはまずJ1にあがることが重要で、その点では四方田さんはいい仕事をしたと評価。その一方で、ミシャさんが浦和をクビになったらすぐ声をかけようと一昨年7月末くらいには思っていたそうだ。J1で他を圧倒するようなサッカーをしたい。そのためにはミシャさんの哲学が必要だったとした。四方田さんはコーチとして残留させたが、「彼にミシャさんの哲学がプラスされたら(指導者として)もう一段階上にいける」と。
試合形式の練習の場面で、点を取った選手をほめずに取られた選手を叱る守備目線のコーチングをすると、選手は守備を頑張れば評価されると思い、クリエイティブな部分がなくなってしまう。
そこは発想を変えないと選手は伸びない。「その点、ミシャさんは得点した選手にブラボー、アシストの選手にブラボー、攻撃の起点になった選手にブラボー。選手はクリエイティブになり、攻撃的になっていく」。もちろん「守備の大切さを忘れてもらっては困るから、そこは四方田やブルーノにお願いしている。リスクヘッジが大事。ミシャも守備のことも言う。ただ、みんなで守るサッカーは面白くない。簡単に入れられちゃうこともあるけど我慢してください。バルセロナでも1試合に1回は危ないこともあるんだから」。
スライドは「注目する選手」に変わったが、「昨年作った資料なので」トップは都倉だった。「何か言うとネットがうるさいので『頑張ってください』としか言えない」。GKのク・ソンユンはだいぶ上手くなったが兵役があるのが悩みどころ。代表になり好成績を挙げたりしたら免除されたりするが、彼は免除を受けていない。ソンユンは鹿島からオファーがあったが、「一緒に伸びていこう」と呼びかけたそうだ。幸い、クラブも彼も一緒に伸びているが、結構な年俸を払っているようだ。

終盤には河合CRC登壇のサプライズも

指導者の話に戻り、「哲学を持った人をミシャさんがいるうちに何人育てられるか。今トップにいる人材だけでなく、アカデミーのコーチも育てたい」と野々村社長。ここで予定終了時刻の8時が近くなり、「今日は河合CRCも来ている。せっかくだから上がってもらおう」と、会場の後ろの席で観ていた河合氏に呼びかけ、登壇が実現。観客との質疑応答に移った。
コンサドーレが改善されたと思う点について野々村社長は「コンサドーレをサポートすると、こういう効果、価値があるということを伝えられるようになった」と。また河合氏はプレーの面から「止まってプレーする選手が少なくなった。それを新加入選手に伝えて根付かせることが大事」と語った。また、選手のスカウトについて質問を受けて野々村社長は「選手に(コンサドーレに入れば)ステップアップさせてくれると思わせるようになり、ハイレベルな獲得競争でも勝てるようになってきている。そこはいい流れで来ていると思う」と胸を張った。
河合氏は青森山田から加入する檀崎について「いいものは持っているが、1、2年やってからのほうがいい。(例えると)インザーギのような選手。点を取れるストライカータイプ」と。野々村社長は「武田修宏よりは上手い」と話し、脱線して先日タイでの試合中に武田氏から「ラドーンで観てます」とLINEが来たエピソードを明かした。
今後の課題を挙げるとすれば何かと質問を受けた野々村社長は「昨シーズンは接戦が多かったが、毎試合2、3回ピンチがある。今季は4、5点取るというコンセプト」と言う。「2-1を2-0にするより4-2や4-3にしたい。失点が増えても上回る得点を取ればいい。まず長所を伸ばしていきたい」と攻撃重視の姿勢を明確にした。
最後に河合氏の引退試合についての質問になった。「自分で企画するように社長に言われてやっているが、サッカークラブはどういう仕事をしているのかを勉強するのに一番わかりやすい(のが引退試合の企画)。「全部一人ではできないのでみんなとやらせている」と野々村社長。河合氏は「年末は皆さんいろいろと忙しいだろうし」と、時期については考慮中のようだった。

予定を少しオーバーして8時15分頃に講演会は終了。レプリカユニフォームを着たサポーターをはじめ200人程度が集まった。会場は熱気があり河合CRCの登場というサプライズもあり、来てよかったと思った。いよいよ23日の湘南ベルマーレ戦から今季の戦いが始まる。熱い応援を続けていきたいと思う一方で、小山内氏のような形で北海道のサッカー発展を支える人々がいることも忘れてはならない。小山内氏の紋別市での指導の成功を祈るとともに、おいしいカニを腹一杯食べてもらいたい。

地元網走に帰ってきて5年半経ちました。元競馬専門紙編集部員。サッカーや野球、冬はカーリングなどスポーツ観戦が好き。もちろん、競馬も話題にしています。時事ネタや網走周辺の話題なども取り上げます。よろしければ、サポートもお願いいたします。