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趣味がポールダンスのおたくが劇場版ポールプリンセス!!を観た

趣味でポールダンスをやっている。ちょくちょく長めのブランクを挟んでいるので通算でどのくらい嗜んでいるか正確なところはわからないが、初めてポールを触ってからなら7年ほどは経っているだろうか。
そして私はアニメ・漫画のいわゆるおたくでもある。だから常々、ポールダンスが題材の作品が観て・読んでみたいと思っていた。痛みに耐えて(ポールダンスは物理的な痛みを伴うアクティビティなのである)筋力を鍛え、柔軟性を高め、反復練習によって身体に技を覚えさせ、さらにそれをより美しく魅せられるよう修練を積む過程は、スポ根もののそれと極めて相性がよいからだ。ないかな〜、絶対面白いのに、だれか書いてくれないかな、でもダンサーには書き手いなさそう…なんて考えていた、それは2023年11月24日のことだった。

何の気なしにTwi…もとい、Xの「トレンド」を開いた私の目に飛び込んできた、「ポールダンス」の6文字。
現在ほぼ毎週レッスンに通っている私にしてみれば基本的に年中無休でトレンドのワードだが、最近人口が増加中とはいえ、普段SNSでトレンド入りするようなことばではない。何かあったのかな?とタップしてみたところ、目に入ったのはこんなツイ…もとい、ポストだった。

あるんじゃん。めっちゃあるんじゃん!!

しかも制作はあのプリティシリーズのスタッフ。以前noteに書いた通り、私は1週間に10回プリパラの映画を観る程度にはプリティシリーズのファンである。え、監修はKAORI先生?あの?TRANSFORMの?大物中の大物、ポールダンス界の重鎮ではないか。こんなの、絶対いいに決まっている。YouTubeアニメもあるじゃん!なんでもっと早く教えてくれなかったの???

…などと拗ねていても仕方ない。すぐにでも観に行きたい。が、行ける時間に上映をやっているのはドアトゥードアで片道1時間半の劇場のみ、しかも翌日からは二泊三日の韓国旅行を控えており、起床予定時刻は朝の4時台。流石に無茶、と断念、帰国翌日も疲れで諦め、やっと昨夜観に行くことが叶った。
ちなみに、こんなにも気持ちが逸っていたのは高まりまくっている期待値のためでもあるが、私は経験上知っている。このくらいの規模感のアニメ映画は長くは上映しないし、続くとしても行ける範囲で新宿バルト9だけ、しかも「お前の終電ねーから」みたいな時間にブチ込まれがちなのである(プリパラ映画で学びました)。

さて、期待値が高まっている、と書いたが、それは単に私がプリティシリーズのファンで、監修がすごい先生だから、というだけではない。プリティシリーズのスタッフには、ポールダンス経験者をして期待せしめるだけの「実績」がすでにあるからだ。
それは、『KING OF PRISM -PRIDE the HERO』(通称キンプラ)の、ルヰくんのプリズムショーのシーン。この中に、ポールダンスの振り付けが取り入れられている。わずか数十秒のシーンではあるが、これが素晴らしかったのである。所作の正確さといい、実際に実現可能な構成といい、「ルヰくん“らしさ”」を表現するトリック(技)のチョイスといい、短いシーンではあるけれど、しっかりポールダンスのことを研究して作られていることがよくわかった。一緒に観に行ったのがポールダンス経験者の知人だったので、鑑賞後に大興奮でルヰくんのポールダンスよかった!バタフライ(ポールダンスのシーンの最後のトリックの名称)大正解!と語り合ったものだ。
公式のコメントによれば、「ポルプリ」はこのシーンを敷衍させた作品のようだ。これは期待しないわけにはいかない。

前振りがずいぶん長くなってしまったが、そういうわけでついにこの目で見てきたポルプリであるが、めっちゃよかった。めっっちゃよかった。

最初に言っておくと、ポールダンスシーンについて思うところがないわけではない。「脇が抜けてる」「膝がかかってない」「その衣装だとキープ(体勢維持のこと)は無理では…」というような印象を受けるシーンはちょくちょくあった。

けれどそれはノイズというものだ。
まず、生身の人間(これもまた素晴らしいダンサー陣)からモーションを撮っているとはいえ、アニメのバランスで作られた3Dモデルでポールとの絡みを忠実にやろうとすれば、時間的・経済的に膨大なリソースがかかるだろう。
衣装にしても、リアリティラインをギリギリまで見極めた結果なのがよくわかった。そもそもポールダンスは、主として皮膚の摩擦を利用してトリックを繰り出すものだから、必然的に衣装の露出度は高くなりがちだ(そのほうがトリックの選択肢が増えるから)。でもそれをやろうとすると、全員下着か水着スレスレの衣装になってしまって、「ポルプリ」の世界観にそぐわないものになるだろう。かといって、完全にその現実を捨てる方向に振り切ったのでもない。例えばリリアとスバルのダブルスの衣装は採用されたトリックに照らして無理がなく、かつアクティブで可愛らしいデザインだったし、御子白ユカリのサイハイブーツは実際のダンサーもよくショーで身につけるものだ。レザーやエナメルの素材なら着衣でも演技ができる。

ちなみに日本刀が生えたり羽が生えたりするのは全然問題なかった。こちとら尻から蜂蜜とか腹筋爆発とか壊れたライブ会場の再建とかを見てきているので(キンプリとキンプラを観てください)。

「プリリズ」のプリズムショーがフィギュアスケートとは似て非なるものであるように、「ポルプリ」のポールダンスショーと実際のポールダンスにも違うところが、つまりファンタジーの介入がいくつもある。まずダンサーはふつう歌わないし。
けれど先にも言った通り、それは問題ではないのだ。「ポルプリ」は、ポールダンスがこんなにも美しく、格好良く、なにより面白いものであるということを、愛すべきキャラクターたちと、とびきりかわいい衣装と演出とで見せてくれた。このことに対して、感謝以外の何があるだろうか。

ポールダンスは、いわゆる「夜」の文化だ。近年では私のように趣味として楽しむ人も増えているし、NHKで晩ご飯の時間帯に特集されたりもするけれど、実際にポールダンスのショーが行われるのは多くはショーパブやクラブやバーだ。アイドルのステージではない。振り付けも、それに呼応してセクシーさを強調するものが多く採用されがちだ。それはそれで美しいけれど、私はずっと歯痒かった。妖艶なだけではない、ときに可愛らしく、あるいはスタイリッシュで、またあるときは神秘的ですらありうるポールダンスというものの魅力を、もっと多くの人が気軽に楽しめたらよいのに、そう思っていた。

「ポルプリ」が、それをやってくれたのだ。
公園にポールがあって、観客がペンライトを振り、煌びやかなステージで、ポールダンスをエンターテイメントとして当たり前に受け入れている世界を、私が思い描く世界を、見せてくれた。

そういえば、エンドロールの謝辞にあった「すべてのポールダンサーのみなさん」という文字列で私は涙ぐんでしまった。もちろん私はダンサーではないけれど、今までポールダンスという文化を作り上げてきた人々に対する敬意がまちがいなくそこにあった、ということが嬉しかったのだと思う。
とりあえず一回観ただけで満足できるわけもないので、応援上映に照準をあてて次の鑑賞計画を練っている。

つうか御子白ユカリよお〜……なんなんだよおエルダンジュ……あのいびつなのに揺るがないトライアングル…なんなんだ…御子白のポールダンス毎日見てえよライブ全通してえ……

次回予告

ポルプリを観てポールダンスに興味を持ってくださったあなたへ捧ぐ!ポールダンスをやって&見てみよう完全(?)ガイド!待て更新!
【12/1 追記】
書きました↓


お小遣いください。アイス買います。