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2022年11月の歌 「待」


ジャックオーランタン

薄暗い玄関ポーチに菓子持ちて姫や幽霊ピカチューを待つ
待ちわびし規制緩和にはらからと桜の頃の再会誓う
筒井みさ子

いくたびか人と別れし切なさが消えて今なお人を待ちたし 
さわさわと囁くように風立ちてマヒマヒ通りをぬらしゆく雨  
原 葉

「いつまでも待つわ」と歌ったヒット曲 待つが生きがいになることもあり
十分で作れる料理というけれど準備にかかった三十五分
藤代敏江

花つきぬ母の日祝う花束のチューブローズの香のせ季節風       
オーキッドの心なごます紫に溢るる街にオハナとなりぬ        
三浦アンナ

返信を待つ親の気など知らぬらし既読スルーの娘のライン        銀色の荻の穂揺れつつ指す先に金色の鴟尾(しび)夕日に光る
森田郁代

晩秋の冷えに驚き夜具を替へ夫の退院待つ夜長かな
能面の内より響くシテの声心に刺さり奥歯噛み締む
山下ふみ子

風を背にスキップしたき散歩道ミニチュア柘榴がお辞儀して待つ
日没の素早き瞬間(とき)を逃さじとスマホ覗きて波を被れり
楽満眞美

傘を手にぽつんと一人我を待つ母を照らしたバスの窓明かり 
やすりかけ桜貝のごと艶を出し青味ピンクのネイル一刷毛 
六甲もこ

朝一番 胡瓜の葉っぱを掻き分けて「待ってました」と鋏を入れる 
神無月 真夏のごとき朝顔は夏のかけらの濃紫色
伊藤美枝子

古人とりもつ縁は和歌(うた)にあり愛国深めるルーツ「君が代」ぞ  「君が代」を歌えし人は一億も短歌に作曲の展開見たし        
今森貞夫

病院の待合室にかかる絵に検査を待つ身のしばし解(ほぐ)れる  
突然の大雨ようやく晴れ上がり溜まれる水に夕日輝く      
鵜川登旨

生まれたての孫の写真の送られて夜中に夫と何度も眺める 
天国のタグの付いてる嬰児(みどりご)に触れてみる日が待ち遠しくて 
大室やよい

三年(みとせ)ぶりにハワイに帰る娘(こ)を待ちてメニューを書き出す
 ポケ、マラサダと  
咲き誇るジニアの陰に潜みいる三角頭のカマキリ見つけぬ
岡まなみ

いい人は早死にだろうか 子と夫の三年半の結婚生活
あと数日誕生日までのやり残しをあれこれ思うつるべ落としの夕
小野貴子

忙しい医師を待つ間の控え室iPadにて病気を探る   
三時間待つこともある先生は時計を見ない親切な医師  
小島夢子

いつの日か待ち人来る時あるや金木犀の二度咲くやうに
笛の音の遠く流れる畦道に人待ちしことありしとおもふ
近藤秀子

神無月雨を待つ夜は星見えず独りごちして夢路をたどる
鳥たちは何を語るか会議中今朝の予定はいまだ決まらず
関本なつ

待つことの辛抱強さ人柄の本心見えるいざというとき
ありがたい感謝の気持ち習慣にいつも気分が心地いいのよ 
田中えり


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