ZOZOマリンスタジアム、レフトスタンドに飛び込むソフトバンクのホームランはいつも劇的である。今宮健太が益田から決勝のホームラン。ソフトバンクがロッテに3連勝した。

今シーズンの今宮健太は打率を残している。ホームランを捨てた、という言い方は適切ではないかもしれない。確実性を高めるため、フルスイングを自重しているようだ。しかし今夜は同点の最終回、ツーアウト。これは狙っていいシチュエーションだ。

解説のG.G.佐藤が、今宮は一発狙っているスイングだと分析していた。今宮もヒーローインタビューで言っていた。三振してもいいからフルスイングした、と。

読み通り、変化球をとらえた今宮の技術は素晴らしい。だがもっと素晴らしいのは状況に合わせてやることを変えていること。そして変えてなお結果を出したことではなかろうか。

今自分に求められていることはなんだろう。下手したらそれすら気付けない人もいる。やりたいことを持つことはとても大事。だが組織にいる以上、求められたことに応えなければ評価はされない。やりたいこととやらねばならないことは、必ずしもイコールではない。今宮健太は打ちたい時もあったかもしれないが犠打を積み重ねてきたし、今シーズンはランナーを進めたりチャンスメイクに徹してバットを振り回したりはしていない。

そんな今宮に打席が回ってきた。10球粘り、ここで益田が耐えきれず四球になったり、今宮がヒットを打ったら価値があるなと思ったら、打球がスタンドに飛び込んだ。今宮は一塁を回りながら拳を握り、白い歯がこぼれた。そしてソフトバンクは勝った。

「多分、忘れんといかんですね。毒まんじゅうなんで」
日刊スポーツ記事には今宮のそんなコメントが紹介されていた。確かにそうだ。これに味をしめて今宮にやたらめったらバットを振り回されては困る。的確に、適切に。そうやって今シーズンは結果を残してきたのだから。

けれども。狙える時にはまた狙ってほしい。小技、チャンス拡大、そして一発。状況に応じた打撃ができる。さらに守備は一級品。今宮がこのまま調子を維持したら首位奪回はそう遠い話ではあるまい。今宮の首位追撃弾で、西武とのゲーム差は0.5に縮まった。