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三田キャンパスが好きな理由

小さい頃から街とか建築物を観察するのが大好きな性格だし、こんな本を買って読んでみた。

三田キャンパスは慶應の総本山で、図書館旧館などの歴史的な建造物も多く残されている。このキャンパスの雰囲気が結構好きだ。なんで好きかというと難しいけど、何個か理由を挙げてみる。

一つ目に、都心キャンパス特有のコンパクトさ。文系4学部3・4年生の教育機能と研究機能が、あの端から端まで見渡せるような三田の山に収まってる。日吉では独立館から心理学教室まで10分近く歩かなければたどり着かないが、三田では移動がかなり楽。あのコンパクトな丘の上に、私立最高峰の頭脳が集積していると考えると、ワクワクする。

二つ目に、坂が多い。坂のない街並みは凄く退屈だと個人的に思っている。昔から人間は、集落近くの山のてっぺんに神社などを建てて、少しでも天の神様に近づこうとした。昔から、豪族などの金持ちは高い丘の上に住み、それが現在の高級住宅街への系譜となっている。麻布台・白金台などの高級住宅地はすべて台の上だ。坂は街にストーリーを生み出す不思議な力を持っていると思う。三田キャンも、坂の麓(門の外)は飲食店やオフィスが並ぶ俗世空間なのに対して、正門や東門の階段を登りきると、静かな学問の地へと雰囲気がガラリと変わる。坂が生み出す三田キャンの神秘性が、とても好きだ。

三つ目に、建造物の統一感。明治期に、国立大学とは異なり当時財政難であった慶應が、寄付金を集めて建設した悲願の大型図書館(=図書館旧館)は、今も慶應のシンボルだ。その外観に合わせて平成期に作られた東門とのゴシック建築のコラボは、キャンパス東側に統一感をもたらしている。塾監局と第一校舎の外壁は、ゴシック様式の図書館旧館とは趣向が異なるものの、これまた厳かで美しい。大学院校舎と槇文彦設計の図書館新館もこれらとの統一が図られており、薄オレンジ色のレンガ壁が中庭を取り囲む。

最後に、個人的に三田キャンの惜しいと思っている点を述べる。

一つ目に、大講堂が先の大戦で焼失してしまったことだ。東大の安田講堂や早稲田の大隈講堂など、都内の名門大学はシンボルとなる講堂を持っているが、慶應にはない。改築中の日吉記念館には少々期待がかかるが、こちらは本キャンではない上に都心から離れているため、大学のシンボルとしては力量不足だろう。戦前には、現在の西校舎のあたりに3000名程度を収用できる荘厳な大講堂があったといい、これが残っていたら三田キャンの雰囲気はもっと良くなっていただろうと思う。

二つ目に、南校舎の安っぽさだ。たしかに南校舎は新しくて綺麗だ。しかし、時代の流行に流されすぎて周りとの統一感を無視した建築は、数十年も経てばただのボロい建物へと変化する。主な例が西校舎だ。図書館旧館のようなゴシック様式の建造物は100年も愛され続けているし、そのデザインにならって約20年前に作られた東門も、悪い意味での古臭さは一切感じられない。もし正門にそびえたつ南校舎が図書館旧館のようなゴシック形式を踏襲して作られていれば、三田キャンの統一感は格段に上がったであろうし、今後数百年に渡って愛されていただろう。

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