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『コミック百合姫』歴代編集長インタビュー(聞き手:柴田勝家)

「ハヤカワ文庫の百合SFフェア」開催を記念して、完売御礼のSFマガジン2019年2月号百合特集からコラム企画を抜粋公開いたします。今回公開するのは、2018年秋に収録されたSF作家・柴田勝家氏による〈コミック百合姫〉の初代&現編集長インタビューです。

コミック百合姫(一迅社)毎月18日刊行

 柴田勝家(SF作家)
最新刊:『ヒト夜の永い夢』

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 今回の百合特集にあたり、今の「百合」というジャンルを牽引する雑誌〈コミック百合姫〉創刊時の編集長である中村成太郎氏と、現在の編集長である梅澤佳奈子氏のお二人にインタビューを行いました。
 ワシもまた百合を深く愛する身。その総本山ともいえる一迅社の〈百合姫〉編集部を訪れ、多くのことを聞いて参った次第。かくして百合とSFというジャンルについて意義深い話を聞くことができました。

■「百合」とはどんなジャンル?

柴田 ──まずは百合というジャンルに馴染みのない読者に向けて、どういった傾向の作品を指すのか教えてください。

中村 一言でいうのは非常に難しいのですが、「女性二人の関係を第三者視点で見て感じるもの」でしょうか。

梅澤 そうですね。女性同士ならではの関係性、もしくは片方がもう片方に抱く感情を、第三者視点から読みとるものという傾向があるかなと思います。とはいえ、どういうものを百合と捉えるかは〈百合姫〉の作家さんでも違いますし、読者もそれぞれ「これが百合」という考えを強く持っているので、そのあたりはあまり限定せず、各々の想像力に任せています。

柴田 SFと同じですね。SFもひとつに定義できないところがあり、「これはSFか」とか「ここにSFのマインドがある」みたいな議論も活発に行われてきました。

梅澤 SFって昔からの熱心なファンの方が多いイメージなんですけど、最近は若い読者もアニメやゲームから流入して増えているのかなという印象があります。そういった意味でも、百合のここ十年の流れともかなり近いのかなと。百合も昔はジャンルのコアなファンが限定的に楽しんでいて、そこからしばらく経って百合に対する共通認識が生まれ、ジャンルが成熟してきたという実感がありますね。

柴田 定義や近年の流れも含めて、百合とSFは似た歴史を持っている気がします。 続いて、百合ジャンルの歴史や代表的な作品などがあれば教えて下さい。

梅澤 百合の歴史でいえば、さかのぼっていくと吉屋信子から続いてきた少女小説の歴史があり、少女漫画のなかでも女性同士の恋愛はひとつのジャンルとしてありました。そうした女性がひそやかに楽しむ流れのなかで少女小説『マリア様がみてる』が生まれました。このころから、女性同士ならではの清らかな関係性に心をつかまれた男性が増えてきたと思います。

柴田 それまで外側から眺めてきた男性がファンとして表に出てきた形ですね。

中村 他に〈百合姫〉の流れを変えたこととしては、『ゆるゆり』のヒットがひとつの大きな突破口でした。百合だといわずに「かわいい子が出るギャグ漫画があるよ」と人に気軽に勧められて、そこから百合を見出す楽しみ方も広まったかなと。

柴田 作品に百合を見出すことについては各々きっかけがあると思います。ちなみにワシが百合好きになったのは、『アカイイト』というゲームがきっかけでした。続篇の『アオイシロ』の漫画版も〈百合姫〉さんで連載されていました。

梅澤 『アカイイト』は和風伝奇百合で、かなりガチですよね。

柴田 当時まだノベルゲームでも伝奇もののブームが残っていて。その中で百合というアプローチが受け入れられたのかなって思っています。まず別のジャンルのブームがあり、そこに百合という形式が繋がる。だから今の百合SFも、最近のSF全体の盛り上がりから生まれたのかな、と。

■〈百合姫〉の創刊時からの変化

柴田 主に女性向けで展開していた百合作品は、九〇年代後半から二〇〇〇年代にかけて男性にも受容されてきたように感じます。〈百合姫〉の前身である〈百合姉妹〉は二〇〇三年に創刊されましたが、どういった経緯で始まったのですか?

中村 最初のきっかけは実をいうと、私が『ノワール』というアニメに大ハマリしたことなんです。あのアニメを見て「これはいける!」と思い、〈百合姉妹〉の企画を提出しました。そのときは一度却下されてしまったのですが、その後『マリみて』が出てきたとき「このヴィジュアルならいけるだろう」と改めて企画して、創刊できることになりました。

柴田 〈百合姫〉の起源に、月村了衛さん原案・構成・脚本の『ノワール』があったとは……! そして生まれた〈百合姉妹〉ですが、当時の状況はいかがでしたか?

梅澤 最初は女性向けの漫画雑誌を目指していました。作家陣ももともと『セーラームーン』の同人誌で活躍されていた方や、BLで女性が描けそうな作家さんたちに声をかけていたので、当時のメイン読者層の七割は女性でしたね。

柴田 〈百合姉妹〉や〈百合姫〉の初期のころって、他ジャンルの小説やアニメからも「これは百合なんだ」という紹介コーナーもありましたね。ワシ、知ってます!

梅澤 ケータイ小説を無理やり百合だ、と言い張ったりもしていました(笑)。

柴田 初期の〈SFマガジン〉とそっくりですね。積極的に他ジャンルや他メディアの紹介もする。全国のファンがその雑誌に集まるので、読者投稿欄が活発で、同人誌なんかを宣伝するコーナーもあったり。

中村 はい。ただこれは唯一のジャンル誌というものの宿命だと思うんですが、一誌ですべての読者のニーズに応えることも求められてしまう。歓迎もされた反面「これは自分が求める百合じゃない」とか「あのころの〈百合姉妹〉がよかった」ということも、十五年間常に言われ続けています。

柴田 変化という意味だと、二〇一〇年に〈百合姫〉が隔月刊誌になった頃が、雑誌としての転換期だったように感じます。

梅澤 『ゆるゆり』のヒットから新規読者がどっと入ってきてくれたことで、男女比が7:3になるという逆転現象が起こったんです。女性が減ったのではなく、新たに男性読者が入ってきた。

柴田 多くの人々に認知されて、ジャンルとして定着した感じがします。

梅澤 以前は男性向けの百合、女性向けの百合と明確に分けていたんですけど、最近は性別を分けて売り方を考えること自体がわりとナンセンスになってきました。少女漫画も男性が楽しみますし、逆に男性向けのアニメ化した作品も女性が楽しみますし。あまり男女比というところを気にせずにやっていますね。

■ジャンルの広まりと近年の人気について

柴田 個人的な感覚ですが、二〇〇〇年代中盤から百合作品が増えてきて、ジャンルが認知されてきたと思います。百合業界の動向のようなものは変化しましたか?

中村 今でこそ百合というジャンルがあることを多くの方に知ってもらえていますが、当初は「百合」という言葉自体もよく伝わっていなかったので、まず幅広く作品を紹介して、ジャンルとしての百合を認知してもらえるようにしていました。

柴田 ジャンルを普及させるための活動は大事ですね。たとえばBLは百合とも対比されがちですが、こちらはファンの交流も文化として根強いものがあります。

中村 あらゆるものにBLを見出せるファンの感覚は凄いですね。百合はまだそこまでの妄想力はついていない気がしていて、「これが百合だよ」と提示されたものだけを百合として楽しんでいる。他の作品でも百合としてとらえることができるアニメや漫画はたくさんあるので、そういったものを誌面で取り上げて、勝手に妄想する力を読者につけてほしいと思ってます(笑)。

梅澤 BLはある程度読者も読み方を訓練されている素地があるのですが、百合は、こういうものが百合だ、という明確な位置づけがなかったのかもしれません。

柴田 少し話はそれますが、百合とBLの違いは意識されていますか?

梅澤 大きな違いは、BLはセックスから始まって恋愛のドラマは後からついてくることも多いんです。百合の場合、もちろん肉体描写を含む作品もありますけど、心がつながってからこそのセックスだったり、もしくは様々な葛藤があったうえで……という過程がしっかり描かれていないと、なかなかエモさを感じたり萌える気持ちにならないのかなという気がしています。百合は感情的な関係性が重要だと思いますね。

柴田 間違いないですね。そう考えると、感情的な関係性を見いだせるあらゆる作品から百合の感覚を鍛えられそうです。

梅澤 ここ数年は『ラブライブ!』『艦隊これくしょん』などの百合系の二次創作イラストをツイッターで目にするようになって、そこから妄想の楽しさが広がっているような空気を感じます。

中村 『けいおん!』のころから少しずつそういう傾向があるかなと。

柴田 男性オタクが好んだ作品に、まさに百合的な楽しみ方が増えた時期ですね。『東方Project』萌え四コマ漫画のブームがあって、さらに『魔法少女まどか☆マギカ』や数々のアイドルもの『ストライクウィッチーズ』『ガールズ&パンツァー』もそうですね。二〇一〇年代になってさらにブームが加速した気がします。
 他方、その流れの前身としての百合作品では、二〇〇九年に『ささめきこと』『青い花』のアニメ化などもありました。

梅澤 『青い花』は外せない作品ですね。

中村 原作者の志村貴子さんの作家性が凄いですよね。七〇年代少女漫画が育んできた王道を全て詰め込んでいるのに、志村さんの個性で新しい百合になっていた。

柴田 ブームの前に、王道作品が受け入れられる素地も生まれていたわけですね。

中村 最近だと『citrus』という作品がアニメ化しました。百合をメインテーマにした作品はなかなかアニメにできないところがあったんですけど、ジャンルが認知されたことで男女ともに読者が入ってきてくれました。あと今クール(二〇一八年秋)は『やがて君になる』が放送中ですね。

梅澤 〈電撃大王〉さんの作品ですね。他社から百合をメインテーマにした長期連載でヒット作が出たというのも、ジャンルとして一般的に認知されたということかと。

中村 しかも『やが君』ははっきりと百合を押しだしているので、そう言えるようになったのはすごいことだと思います。

柴田 〈百合姫〉からも、最近はアニメ化が続いていますね。

梅澤 ありがたいことにタイミングが重なっていまして、一月からも『私に天使が舞い降りた!』という日常系の作品がアニメで放送開始します。

柴田 この流れで、現在の〈百合姫〉誌面についてお聞きできればと思います。まず今後に向けた方針はいかがですか?

梅澤 月刊化した当初は、まだ百合という言葉が浸透しておらず、目標としては一般コミック誌と勝負していく、というところでした。百合に興味がない読者の方でも、プラスアルファの部分で興味をもってもらえるように。それはある程度は成功したと思っていて、今度は逆に、しっかり王道の百合作品を柱に据えて、作品を供給できる専門誌に立ち戻らないといけないと思っています。また一方で、漫画だけではなく、コラムや小説連載、アニメとの連動など、もう少し雑誌としての読み応えがあるものにしていきたいです。

柴田 百合というジャンルが広く認知されたからこそ、今度は原点に戻る時期でもあるのですね。連載中の作品ですと、人気のものはありますか?

梅澤 『ゆるゆり』はもちろん、他には『私の百合はお仕事です!』という作品が、百合をテーマにしたコンセプトカフェのお話で人気ですね。

柴田 ワシも大好きです!

梅澤 百合、スール制を模した姉妹制度がカフェのなかで繰り広げられているという話で、百合に興味がなくても楽しめますが、女の子の外面と内面の違いや、女の子同士の関係性にしっかりと百合を感じとれる作品です。

柴田 個人的にメイド喫茶が大好きなのですが、女の子同士で仲良くしている姿は最高ですね。ワシは作中のお客さんのように見ています。「んん~」と思いながら。

梅澤 ありがとうございます。この作品は男性ももちろんですが、女性からも人気が高いんです。百合のポイントも押さえつつ友情をきちんと描いているところに魅力があるのかなと思います。

中村 あと『徒然日和』はどうでしょう。

柴田 ああー! 好きですね!

梅澤 『徒然日和』は女の子同士の群像劇で、明確な恋愛感情は基本的に描かれないんですけど、女の子四人の青春の一ページを切り取ったような日常のやり取りが尊い作品です。百合の入門篇としても。

柴田 日常の中で交わされる、感情のやり取りがいいんですよね。

梅澤 今お話しした二作品は爽やかな方向性なんですけど『たとえとどかぬ糸だとしても』という漫画はちょっとビターです。お兄さんの奥さんになった幼なじみの女性に恋をしてしまう女子高生の切ない感情を描いた物語。かなりつっこんだ黒い感情もふくめ、女性同士ならではの関係性がしっかりと描写された作品です。

柴田 あの作品の緊張感、好きです!

梅澤 あとは、あおのなちさんの『きみが死ぬまで恋をしたい』も。これは〈百合姫〉の中では異色で、魔法を使える少年少女が兵器として学園で育てられているという世界観の話です。平凡な存在である女の子が、特殊な能力を持った謎の女の子と共同生活を送り、戦場に駆り出されて死ぬかもしれない、そうした日常の中で育まれる感情が描かれています。〈百合姫〉のなかでは人が実際に死ぬ作品というのはかなり異色なんですけど、その新境地に切り込みつつ、感動させることのできる筆力のある作家さんだと思います。〈百合姫〉としても推していきたい作品です。

■百合とSF、豊穣の時代

柴田 ここで百合とSFについて伺います。最近、SF読者には宮澤伊織さんの『裏世界ピクニック』が百合として受け入れられています。あとは草野原々さんの『最後にして最初のアイドル』もあり。

梅澤 〈百合姫〉編集部にも『最後にして最初のアイドル』が好きだという者がいます(笑)。

柴田 去年あたりから、作家さん同士で「百合SF書きたいね」と話すことも増えました。ジャンルの境界から、さらに良作が出てくるのではと思っています。漫画でも『イヴとイヴ』などがありますよね。

中村 『少女終末旅行』もそうですね。

梅澤 個人的にSFが好きなんですが、SFは世界の認知のしかたを感じとれる点が魅力だと思います。最近の百合SFって、かなりディストピア的だったり、ポストアポカリプスな世界で──『少女終末旅行』はまさにそうだと思うんですけど──世界が終わった中で、女の子二人だけがいるというものが多い気がしています。そこが私の読んでいたころのSFとちょっと違う、いまの書き手や読者が求めるものなのかなと感じたのですが、どうでしょうか。

柴田 書き手の側から言いますと、SFってもともと世界を拡げること、人間が進化していくことを考えて書いてきたんです。ですが、これはワシ個人の感覚であるものの、どこかでそれだけで立ち行かなくなる瞬間があったんです。そこで、人間は世界の中でどう生きていくか、という風に書き方が変わった。個人の関係性にまで焦点を合わせるようになったんです。百合でいえば、「あなたとわたし」という二人の関係性にテーマが行きつきやすくなった。昔「セカイ系」という言葉もありましたけど、人間同士の関係性に落とし込んで、その背景に大きな世界を描く小説の書き方があるなと思っています。

梅澤 SFのテーマとして、世界だけでなく、人の心のありようを探るものがあると思います。長谷敏司さんの『あなたのための物語』や、コニー・ウィリス『航路』などが個人的に読んできたなかで挙げられる作品ですが……もともと個人と世界の関係性であったものが、二人を描くようになったというのが最近の流れなんでしょうか。

中村 少女二人だけのシチュエーションにしやすい、と。SFではないですが先程の『ノワール』の話ですと、あの主人公二人って周りの社会から隔絶されていて、本当に二人だけの世界なんですよね。

柴田 二人の人間というのは一番小さな社会ですからね。大事なものは人間同士の関係性、それが生まれる社会にある。社会を描くというのはSFの一つの側面なので、すごくマッチしているのかなと。
 今年は伊藤計劃さんの『ハーモニー』の刊行から十周年です。これがSFファンの前に現れた一番大きな百合SFだったんじゃないかなと。世界そのものを少女たちの関係性に落とし込んで物語を動かす。伊藤さん本人はそこまで百合に対して強い目線があったわけではないと思いますが、受け止めた側は強い百合作品として語り継いでいったところがあると思います。

梅澤 女の子二人が世界を変えて、かつ世界を捨てる物語ですよね。百合をメインテーマにして、SFとしての完成度としても結びついているという点で、これ以上の作品を私は拝読したことがありません。

柴田 一つの突破口だったのは確かです。SF作家やファンたちの百合に対する目線はどう感じますか?

梅澤 宮澤伊織さんのインタビュー「百合が俺を人間にしてくれた」は素晴らしいですね(笑)。実際にご自身でバーチャルYouTuberをやってみるというフットワークの軽さも参考になります。バーチャルYouTuberはずっと女の子二人でダべっているだけの配信もあって、それだけでとても百合を感じる瞬間がありますから。

柴田 百合好きとして話題になると、それだけで観測してくれる人が増えます。SFも百合も作家と読者の距離が近くて、その交流で盛り上がりが生まれるのかなと。

梅澤 作家さん自身も百合に対しての思い入れがすごく強くて、そこも読者に伝わって、相互に作用しているのかなという印象があります。しばらく前まではライトノベルでも、なかなか百合をメインテーマにするのは厳しい状況でした。それが今、『安達としまむら』がヒットしているのも素晴らしい状況だなと思います。昔は百合をテーマにした小説は瑞智士記さんの『幽霊列車とこんぺい糖』森田季節さんの作品とか、数えるほどしかなくて。『不動カリンは一切動ぜず』も百合SFですよね。最近増えてきたというのはいいなと思います。

柴田 数年前に同期作家の伏見完さんと、ハヤカワSFコンテストの贈賞式で「伏見くん、いつか百合SFが流行るといいね」と話したんですが、それから数年経って今の状況があります。伏見くん! 見ているかい……。本当にうれしいですね。

■さらなる未来へと

柴田 百合SFの展望について伺います。ここまでの話で、百合とSFというジャンルは発展の仕方に似通った部分がありました。SF界隈では「浸透と拡散」という言葉の通り、ジャンルが一般化することで、あえてSFだとは言わない、大衆的な作品が増えました。もしかしたら今の百合の状況も近いのでは、と思います。これは明らかに百合なんだけど、百合と受け止めないまま楽しんでもらえる作品が増えてきている……といった具合に。

中村 ヒット作の多くはそうですね。

梅澤 『私に天使が舞い降りた!』も百合を感じずとも面白くて、その一方でおねロリ的な要素もあります。

中村 『ノワール』も百合として観なくても楽しめますし、『少女終末旅行』も別にSFと思わなくても、もしくは百合と思わなくても楽しめる。ジャンルを意識せずに楽しめるということなのかなと。

柴田 作品をさらに深く楽しむ目線として百合やSFのマインドを感じてもらえるといいですね。その導入としてジャンル同士が交われば、ワシも嬉しいです。

梅澤 そうですね。相互に刺激しあって拡がっていくのかなと。

柴田 〈百合姫〉と〈SFマガジン〉で育った書き手も出てくるかもしれません。五年後を見据えていきましょう。
 ここ数年で百合というジャンルは大きく発展したと思います。肌感覚として作家や作品が増えてきた実感はありますか?

梅澤 じょじょにというより、何かしらの起爆剤や転機があったのだと思います。百合姫に限って言えば『ゆるゆり』がそうですね。王道の百合でというと、『やがて君になる』が昨今は大きい気がしています。

柴田 アニメや映画、アンソロジーもたくさん出ました。SFでも、草野さんや宮澤さんなど矢面に立ってくれる人が次々と。

梅澤 書き手の方が百合の前面に出てくれるというのは大きいですよね。百合について語るのはすごく勇気があることで、先陣を切って語って下さる作家の方がいらっしゃるととてもありがたいです。

柴田 ワシも今度から言います。宮澤さんに続いて戦場に出なくては。最後に何か、今後の告知はありますでしょうか。

梅澤 〈コミック百合姫〉二月号が十二月十八日発売です。『citrus』が十巻で完結しましたが、そちらのスピンオフの『citrus+』の連載が始まります。そして『私に天使が舞い降りた!』のアニメが一月から始まります。

柴田 楽しみにしています。貴重なお話をありがとうございました!

(二〇一八年十一月十六日 於・一迅社)

「ハヤカワ文庫の百合SFフェア」6月下旬より順次開催

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