スタンフォード式_人生デザイン講座_帯

生産性を下げる5つのダメ思考――スタンフォードで学ぶ成功の秘訣

今日も生産性、上げていますか?

TODOリストをつくったりメールの書き方を変えたりと、仕事術を磨いて効率を上げれば、長時間残業が減るのは確かです。

でも、仕事術では対処できない、仕事を止めてしまう悩みもあるんです。

たとえば、「いまの仕事が合わない。夢の仕事がどこかで待っているはず」と求人サイトを覗いてばかりの人、いませんか? 作業が止まっていますよ? ほかにも「仕事は楽しくなくて当たり前」と自分に言い聞かせつつ、耐えきれずに消耗してしまって、効率が悪くなっている人は?

3人に2人が仕事に不満を抱えている」というアメリカの調査があります。さらには、15%の人々は、自分の仕事を嫌ってさえいるのだそうです。

また、いつまで経っても同じ問題で行きづまっている人もいますよね。そんな人が言う「問題は明らか」「解決の方法はわかってる」という言葉には要注意。そして上司に指摘されるたびに「やります」と答えながらも、1人で抱えて悩みつづけてしまうこともありませんか。

こうした思考は、仕事がはかどらなくなるだけでなく、やがては生活全般にまで悪影響を与えてしまいます。

スタンフォード大学デザインプログラムのエグゼクティブ・ディレクターであるビル・バーネット氏と同校講師のデイヴ・エヴァンス氏は、これらの思考を「行きづまり思考」と呼んでいます。両氏が創設したライフデザイン・ラボでは、「行きづまり思考」を突破して、人生で成功するための秘訣を教えています。

ここでは、5つの行きづまり思考をご紹介します。


①「夢の仕事がどこかで私を待っているはず」

次世代のグーグルやアップルになる新興企業で働きたい!」と思う人は多いでしょう。でも、そんな企業の仕事は、一般に知らされる前に埋まってしまいます。

「夢の仕事」と比べると、「私に合う仕事」というのは、控えめで現実的に見えます。

〈全米大学・雇用者協会〉の調査によれば、2014年の卒業生が就職活動で重視することの1位は「仕事の性質」でした。2位が給与、3位が職場の雰囲気。これらは、まったく当てにならない就活生の希望条件のトップ3です。

これのどこが問題なのでしょうか。まず、就職が決まる直前まで、その「仕事の性質」を知ることができないからです。わかるのはせいぜい、企業が外向けに見せる仕事内容だけ。でも、就職サイトの情報が実情と違うのは、よくご存じでしょう?

もう1つの問題点は、企業が求めるのは、働く人自身が自分に合うと思えるかどうかではないことです。面接で「この仕事は私の究極の天職です」と訴えても、雇う側の基準に合わなければ、お祈りメールが届くばかり。

じゃあ、求人情報に目を通し、自分がゲットできそうな仕事を手当たり次第に探すのがよいのでしょうか? でも、これは職探しの方法としては最悪で、いちばん成功率が低い。長い目で見れば満足できる見込みは薄いからです。

「今の仕事が楽しくないから、夢の仕事を探してしまう」という人は②の行きづまり解決策がおすすめです。

これから転職(就職)を考えている場合、相手(企業)が求める技能・性質に合わせることが重要だと覚えておきましょう。かといって、どんなことでも求められるままに働くのがいいわけではありません。矛盾するようですが、「私に合う」という基準はとても大事だからです。そこで、③で紹介するように、外からではわからない実情を知るために人脈をつくっていくことをすすめます。

38社に応募して全敗した学生が、バーネット氏らの助言をうけて7社からオファーを得るまでになった秘訣が、氏の著書『スタンフォード式 人生デザイン講座』で紹介されています。

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②「仕事は楽しくなくて当たり前。だからこそ仕事なのだ」

この思考の人は、仕事中に楽しかったり、熱中したりする瞬間に気づけていないのかもしれません。楽しさは自分に合った仕事を見つける大事な指針なのです。

そこで、数週間、仕事終わりに簡単な記録をつけてみましょう。一日の仕事で、「退屈」「落ち着かない」「疲れる」と感じたタイミングは? そのときどんな仕事をしていたでしょうか?

逆に、「ワクワクする」「集中している」「楽しい」と感じたタイミングは? そのときどんな仕事をしていたでしょうか?

記録するのは、自分が楽しんでいる瞬間に気づくためです。こうすれば自分自身の行動に着目し、うまくいっている部分を見つけることができるわけです。すると、次にやるべきこともわかってきます。うまくいっている仕事の機会を増やし、うまくいっていない仕事の機会を減らす方法を見つけましょう。

記録をつけても、楽しさや熱中を感じることがない?

『スタンフォード式 人生デザイン講座』にも、レンタカー会社の仕事に面白みを感じられない40代男性が登場します。そんな彼も、自分に合った楽しさを見つけることができました。

③「問題の解決策はわかっている」

こう言いながら、問題をずるずる引きずってしまった経験は、きっと多くの人にあると思います。考えられる原因は2つあります。(1)問題設定が不適切だから、(2)解決策が不可能だからです。

(1)問題設定が不適切というのは、たとえば「仕事があまり楽しくない。家で子どもと遊んでいるほうがいい」と思っているとします。そこで「もっといい仕事につく」のでは、この問題の解決にはなりませんよね。解決しようとしている問題がどれだけ立派でも、適切な問題でなければ意味がありません。夫婦生活の問題は職場では解決できないし、仕事の問題は新しい食事法では解決できないのです。

(2)不可能な解決策もよくあります。たとえば「今すぐ1億円用意する」や「35億人の男性をターゲットにした商品開発」など、それができれば問題は解決するかもしれないけれど、デカすぎて現実的でないアイデアのことです。

これは極端な例ですが、「2年間の猛勉強で医者になるには?」「芸術家として創作だけで食べていくには?」などのように、現実を大きく変える必要がある「解決策」に人はハマりがちです。

この両方を本当の本当に解決するには、問題を適切に捉えなおし、別の解決策を考える必要があります。「解決策がただ一つ」と思っているときは要注意。窮地に追い込まれたドラマの主人公とは違い、現実には他の解決策もあるのです。できるだけたくさんのアイデアを出してみましょう。

そして1人で悩むだけではなく、いろんな人とブレインストーミングをすることをおすすめします。


④「人脈づくりはずるい手段」

「人脈づくり」というと、嫌悪感を抱く人は多いものです。他人を操って漁夫の利を得ようとする自己中心的で口のうまい人物や、別の人に近づく道具にしようと誰かにすり寄るペテン師をイメージするからです。

でも、そう思い込む人は損をしています。仕事で成功したいならば、人脈づくりは、絶対に必要なプロセスなのです。

就職・転職をしようとするとき、職務記述書からは仕事の実情がわからないことがほとんど。実際にその仕事についている人に話を聞くのが一番です。

相手に聞くのは、「どうすれば御社で働けるでしょうか?」という物欲しげな質問ではなく、相手の仕事の内容やその会社でどのように働いているのかに集中しましょう。

また、一回会うだけで仕事が見つかると期待するのも禁物です。人脈づくりは、その仕事をしている人々のネットワークに参加することが目的なのです。そのネットワークに参加していればチャンスがめぐってきます。

そして、人脈づくりは、③のように問題を捉えなおしたり解決策を考えたりする場合にも効果があります。

そうはいっても抵抗がある人がいるかもしれません。そこで、人脈づくりは、ある仕事や専門分野について、道を尋ねるようなものだと思ってみましょう。

見知らぬ人に道を尋ねられたら、多くの人が道案内をするでしょう。道を尋ねた相手に対して「まんまと利用された」と思うでしょうか? 次の日にお礼の電話が来ないとか、フェイスブックで友人になってくれないとか、あなたの都合なんておかまいなしに最寄りのカフェにたどり着くことばかり考えていることについて、イラッと来るでしょうか?


⑤「幸せになるには、正解を選ばないと」

誰もが幸せになる方法を探しています。「そのためには正しい選択肢を選ばないと」と思う気持ちはよくわかります。でも、「失敗したくない」「今回こそは成功させなきゃ」と思うと、大きなプレッシャーがかかり、優柔不断になって、選べなくなってしまうこともありますよね。

バーネット氏らは、幸せは、正解を選んだかどうかで決まるわけではないと言います。幸せは、どう選択するか、そしてその選択に従ってどう生きるかによって決まるのです。

その選び方が下手だと、不幸せなコースへとまっしぐらに進んでしまうのです。「下手な選び方」というのは、不正解を選んでしまうということではありません。もちろん、それも一定のリスクですが、正直なところ大きなリスクではないし、普通はとり返しがききます。そうではなくて、「自分の選択は正しかったのか?」と悩むことなのです。

実は多くの人が、自分の選択に満足できないような選択モデルを用いています。ハーバード大学のダン・ギルバートは、人の決断と悩みに関する調査を行いました。

被験者にモネの絵を一位から五位まで好きな順に並べてもらった。実験者は、「たまたま三位と四位の絵が余っているので、どちらか一枚をどうぞおもち帰りください」と被験者に伝えた。当然、ほとんどのひとは三位と評価したほうをもち帰った。
おもしろいのはここからだ。実験者は一部の被験者に、「よければあとでもう一枚のほうの絵と交換することもできます」と伝えた。残りの被験者には、これが最終決定であとから交換はできないと伝えた。
数週間後、実験者は被験者にもういちど調査をおこなった。交換できると言われた被験者は、たとえ交換しなかったとしても、同じ絵を選んだが交換はできないと言われたひとと比べ、自分の選択への満足度が低かった。つまり、とり消しがきくことは、必ずしも自分の決断への満足にはつながらないということだ。どうやら、自分の決断を考えなおし、「選択肢を残しておく」機会を与えられただけで、わたしたちは疑心暗鬼になり、自分の選択を低く評価してしまうようだ。(『スタンフォード式 人生デザイン講座』p.258)

私たちが決断した後に迷ってしまうのは、すべての結果が出揃うまで、なにが最善の選択だったのかを知ることができないからです。

さらに悪いことに、自分が選ばなかった選択肢だけでなく、検討すらしなかった無数の選択肢があると知るだけでも、自分の選択に不満をいだいてしまうのです。

こうした迷いを断ち切るには、どうすればよいでしょう。

想像上の選択肢は実在しないも同然だ、とバーネット氏は言います。そういう選択肢は、そもそも選べないからです。私たちは空想の人生を送ろうとしているわけではありません。実際に生きられる現実の人生をデザインしようとしているのです。

バーネット氏らのライフデザインでは、無数の可能性があることは知りつつも、その事実に惑わされたりはしません。いくつかの可能性を探ったら、まずはひとつの選択肢を選んで行動をとる。行動をとってこそ、前進の道を築ける。自分の選択を心の底から受け入れ、その選択を最大限に活かそうと考えるのです。

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「行きづまり思考」はこれ以外にも(驚くほどに)たくさんあります。
バーネット氏らの著書『スタンフォード式 人生デザイン講座』では、あらゆる年齢、さまざまな職業の人々が抱えている悩みと解決法が記されています。
仕事にも人生にも問題は尽きません。行きづまったとき、スタンフォードのライフデザインが役に立ちます。理想のワーク・ライフ・バランスがきっとみつかるはずです。

【全国書店にて好評発売中】

スタンフォード式 人生デザイン講座』(ハヤカワ文庫)
ビル・バーネット&デイヴ・エヴァンス
訳/千葉敏生 訳
ISBN:9784150505462
価格:880 円(税込)

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