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【ネタバレなし】生きているのが辛いなら『Fate/stay night』をやってくれ

ついでにファンディスク『Fate/hollow ataraxia』もネ!

※この記事にネタバレはありません。未プレイ、アニメ未視聴でも安心して読めます。

私は人生のどん底で「Fate/stay night」を始めとした奈須きのこ作品に救われた。だから生きづらさを抱えてる人や、生きづらさと向き合った経験がある人にオススメしたい。

一部ホラーやグロテスクな描写もあるけど、それがメインの作品じゃないし、そういうのが平気なら全力でプッシュする。

ちなみに先日、Fateシリーズの入門記事を書いたけど、その中で「こんな人には超刺さる」と書いたけど、実はあれは全て私のことだ。

「Fate」に価値観を揺さぶられ救われた

「Fate/stay night」は、人間の強さや美しさをこれでもかと見せつけてきて、歪な主人公が「叶わないと、間違っていると知ってなお、その理想を目指してはいけないのか」と問いかけてくる。

「Fate/hollow ataraxia」は、人間の弱さ醜さをこれでもかと見せつけてくるのに、「足掻きながらでも生きろ。その醜さこそが美しい」と人間に酷い目に遭わされた側が肯定してくる。

かつて私は、自分の求める……もとい親から植え付けられた「正しさ」と、現状の自分の乖離に苦しんでいた。次第にそのエラーは致命的になり、私の心は一度粉々に壊れた。

壊れた自分を再構築しようという最中で、私はこのFateという物語に出会い、沼にハマり、そして大きく救われた。

「正しくなければ生きている価値がない」と自己否定をしていた私は、この物語に「正しさ」の価値観を大きく揺さぶられ、「歪なままでも、正しくなくても、生きていてもいい」と物語に肯定され、私は、私を苦しめていた価値観から解放されたのだ。

奥深い「奈須きのこ」の世界

奈須きのこ作品の文章は難解だ。言葉の意味は、言葉通りじゃないことがあるし、わかりづらい。古くから追っているファンからすれば「Fate」はだいぶ洗練されているらしいけれど、それでも慎重に読まないと意味を見誤る。

けれど、難解な以上に美しく、そして奥が深いし、芯がブレない。それが魅力だと思う。理解すればするほど、もう何度も読んだストーリーの見え方が変わり、その度に楽しめる。

ファンになってまる四年経った今でもそのキャラ造形やストーリーのテーマについて真剣に考えてしまう。

奈須きのこの作品は割とテーマが一貫しているので、きのこ物語に触れるなら別にゲームじゃなくともよくて小説「空の境界」あたりもオススメだ。

それでも私が「Fate/stay night」「Fate/hollow ataraxia」を推す理由は、グラフィック、キャラクターボイス、音楽、ゲームシステムとリンクするプレイ体験など、物語の面白さを補強する仕組みがあるからだ。

アニメ版も手軽でいいと思うけど、今回はゲーム版ついて語る。

クソ長くてもやる価値がある

前の記事は劇場版オススメ記事だったので原作については「原作長いからアニメ見て」とバッサリいったけど、ここではあえて原作ゲームのオススメポイントを語る。

一番はもちろんストーリーなんだけど、あえてゲームを推す理由は、「ゲームシステムと感情がリンクする」と言う点だ。

「Fate/stay night」および「Fate/hollow ataraxia」は、ストーリーのテーマと、ゲームシステムをリンクさせているのだ。そのため没入しやすい、疑似体験しやすい仕組みになっている。

「Fate/stay night」では、プレイヤーは選択肢を選ぶことによって話を進めていき、結末が変わる。そして、この話の主人公である衛宮士郎も、各ルートそれぞれに異なる選択をする。衛宮士郎が選ぶ道を、プレイヤーがその都度見守ることになる。

その選択を通して士郎が見るもの、結末、それぞれがどれも美しく、大団円とは言えないが、歪な士郎の歪な選択が、プレイヤーの価値観を大きく揺さぶってくる。

そして、この点がより秀逸なのはファンディスクにあたる「Fate/hollow ataraxia」だ。Fate/stay nightの半年後が舞台の作品で、続編というよりは裏面にあたる作品。前作をクリアした人のためのご褒美のような側面もある。新しいキャラクターも出てきて、魅力的なストーリーが紡がれる。

こちらは少しゲームシステムが異なり、一本道のストーリーではなく、プレイヤーが読むシナリオを選べると言う仕組みになっている。

ネタバレのない範囲で簡単に説明すると、ある理由から「同じ四日間を繰り返す」ことになった主人公・衛宮士郎が、その中で色々な出来事を体験しながら、繰り返される四日間の謎を解くことで、ループは解消される、という仕様だ。

これがとにかくすごくよくできている。

この四日間に起こる出来事は、本編とは打って変わって平和的な日常と、夜のシリアスパートがある。

日常パートはとにかく楽しい。凄惨な本編からすれば、夢のような日々だ。楽しいけれど、日常パートのシナリオはあまりに物量が多く、だんだんと飽きてくる。しかし、日常に飽きてくる頃に、並行していた夜のシリアスパートが核心に近づきどんどん面白くなってくる。

けれど終わる間際になって、主人公はこの日常を終わらせたくないと、名残惜しむ。
プレイヤーも、そのループの原因を知るにつれ、日常の尊さを知り、名残惜しむ。

キャラクターとプレイヤーの感情が見事にリンクするのだ。

つまり、飽きることさえ織り込み済みな上、「いつまでも続けていたい」「結末が早く見たい」という葛藤をさせられる。悔しい。でも楽しい。

これはゲームでなければできない体験だ。だから、ぜひ味わってほしい。
そして、葛藤の末に主人公が見出した答えを見届けてほしい。

「Fate/stay night」「Fate/hollow ataraxia」をプレイするには

「Fate/stay night」は、スマホ版でルート一本無料。全年齢版は、PS2、PSVita版がある。18禁のPC版は入手難易度が高いので、まずはスマホ版をおすすめする。

「Fate/hollow ataraxia」はPSVitaとPC版のみ。

ちなみに私はスマホ版の「Fate/stay night」の無料ルート→PSVitaの「Fate/stay night」DL版購入→Vita版の「Fate/hollow ataraxia」の順でプレイした。

PSVitaがあれば、おまけゲームの花札や、外伝のEXTRAシリーズもプレイできるので割とオススメ。

生きることが苦しい人、苦しみながらも笑えることの尊さを知る人にこそやってほしい

余談として、冒頭にした私の話をもう少し詳しく語ってまとめとする。

私は、生まれた時から理由もなく「自分は生きていてはいけない」と思っていた。今でも時々思う。そして、私は己の弱さが故に多くの人を傷つけ、一番大切な人に大きなトラウマを残した。その罪は、誰に裁けるものでもなかった。そして、生来の罪悪感に加え、取り返しのつかないことをしたという事実は、私に重くのしかかった。「自分は生きていてはいけない」という思いが、漠然とした思い込みではなく、強度のある実感として目の前に迫ってきた。

しかし現実は、私一人が死んでも何も変わらない。傷つけた人の傷は癒えないし、失ったものは戻らない。そして、それでも生きろと、生きていてほしいと、傷付けた大切な人にこそ望まれた。私は今すぐ死にたかったのに、もはや八方塞がりだ。

だから私は苦しくても生きていく事を選んだ。それしかできなかったから。でもその時はまだ「多くの人を傷つけた分、苦しまなくてはいけない」と思っていた。それが私にとっての罰だと。けれどそれでは自分はボロボロになるばかりで、大事な人を悲しませた。

そして上にも書いた通り、心は壊れてしまった。それが四年前。心が死んで、職も失って、それでも死ねなかった私は、自責の念に駆られながらも自分を再構築しようとしはじめした。

そんな中、ひょんなことからFateのアニメにハマり、原作である「Fate/stay night」をはじめとしたシリーズをプレイした。

そして奈須きのこの作品に触れることを通して、自分の存在を肯定することができたのだ。

「罪を背負っていても、正しくなくても、人間は生きていていい。価値がなくても、意味がなくても、矛盾していても。それでも生きようとすることこそが美しい」と。

私は罪を背負っているけど、大切な人を幸せにしたい。しかし、大切な人の幸せは、自分の幸せでもある。それなら罪を背負ったままでも、自分と自分の手の届く範囲の人を大切にして生きていかなくては。

自分を苦しめるのではなく、もう二度と同じ過ちは繰り返さないと誓い、幸せになろうと足掻く。自責の念、罪の意識に苛まれながらも。それこそが私の罰であり、償いだと「Fate」を通して思い直すことができた。

だから、生きていくのが辛かったり、もしくは辛かった経験がある人には特に「Fate/stay night」や「空の境界」をはじめとした奈須きのこ作品をオススメしたいと思う。

◼︎関連記事:ネタバレにならない程度に名言集のようなもの(Fate関連作品からの引用多め)


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