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成功体験に囚われず、変わっていく勇気を持つ

失敗から学んだり、自分の力で努力して得た技術や経験は尊い。それは安心と安定をもたらしてくれる。

しかし、ずっと環境が変わらない人はいないし、変革のときというのは大なり小なり誰にでも必ず訪れる。意図的なものでも、強制的なものでも。

だから安定した価値観や成功体験も、それが次のステージに進むために重荷になるなら、勇気を持って手放さなきゃいけないこともある。

わたしはこの一年で、過去の人間関係の傷の再体験をしてきた。

引きこもっていた三年間、一切新しい出会いがなかった。ひたすら自分と向き合い続けた、さなぎのような時期だった。

さなぎから羽化するように、改めて人と出会う機会が訪れた昨年の晩秋から一年間、わたしはまったく生まれ変わったような柔らかで無垢な心で出会った人たちを受け入れた。

そして不思議なことに、皆初対面にもかかわらず、過去の人間関係トラブルの再演のようなことが次々と起こった。そのたびに傷つき、心がぐしゃぐしゃになり、それでもなんとか乗り越えてきた。もちろん、そうでない出会いもあった。

それらはわたしの中に確かな「経験」として積み重なっていった。そのおかげで、ずっと求めていた「基本的信頼感」というものが、少しは育ってきた。

生まれてはじめて手にしたそれは、わたしが目指す境地にはまだまだ足りない、揺らぎやすく折れやすい、実践の伴わない不確かな理論だったけれど、わたしの中でようやく育った灯火で、まさに「成功体験」と呼ぶにふさわしかった。

これは自分で勝ち得たのだ、自分の力でやってきたのだ、という自負はわたしの心を強くした。

しかしある時、自分はその「成功体験」にしがみついてしまい、防衛的になっていることに気付いた。本当は目指す場所に辿り着くためには「まだ足りない」ということを認める勇気がなかなか持てず、足踏みをした。

「ここ」は居心地がよかった。だから離れられなかった。安心できる場所、人との繋がり、受け入れてもらえたという実感があった。

でも、人はいつまでも母親の腕に抱かれてはいられない。雛がいずれ巣立つように、いつかは外の世界と関わっていかなくてはならないのだ。

もちろん、安心の経験なくしては今に至れなかった。だから本当に感謝している。けれど私にとっては「ここ」が最終目的地ではないから、手放さなくちゃいけない。


人にはそれぞれキャパシティがある。わたしはよく「器」と呼んでいる。

ものも、人の縁も、愛情も。入り切らないものは持てないし、無理に入れれば壊れてしまう。だからもういらなくなった古いものや、本当は必要のないものをずっと持っていると、新しいものと巡り合うチャンスを逃してしまう。

それは目に見えないものも、見えるものも同じ。部屋は心の反映とよく言うように、片付けや掃除、断捨離をするのも、カウンセリングやヒーリングで心の掃除をするのも、すべては繋がっている。

わたしはこの数ヶ月、人間関係の再演の中で、何度も「自分の器が思っていたより小さい」ということを思い知らされた。だからそれが成功体験であっても、かつて尊んだ価値観であっても、今わたしの器に必要かどうかを見極めて、必要がないなら手放さなくちゃいけないのだと思った。

それはとても勇気がいることだけど、本当に大切なものを守るためには必要なことだと思う。それは大切な伴侶、友、そして何より自分自身。

そして、何かを手放すべき節目の時というのは「手放す」「離れる」というエネルギーが否応なく働くとき。だから何かしらは手放さなくちゃいけない。

そういう時、魂の成長の観点から見れば手放すべき古い習慣を、不安などから手放せずにいると、本当は守るべきだった大事な人が離れて行ったり、大切なものを手放さざるを得なくなったりする。

もちろんそれは無理に手放せば後で後悔したりすることもあるので、不安が悪いと言いたい訳ではない。むしろそれは、不安から目を背けずに向き合いなさいというサインでもあるのだから。

それはさておき、どうせ何かしら離れていくのなら。変わらなくちゃいけないのなら。自分にとって次の未来に必要なものが手元に残るように選びたいと思うのだ。

求めていたと思える出会いもあったし、報われたと思えた瞬間もあった。そして、それらすべてが水泡に帰すこともあった。そのせいで何度も心が折れて死にたくなる日もあった。死のうとしたことも。けれど手の中に残ったものは確実にある。

どれだけ苦しくても、魂の目的に向かおうとする限り、人は何度でも生きながらにして生まれ変われるし、そのたびに成長できる。この一年間でわたしはそう学んだ。失敗もまだ少し怖いけど、過ぎたものは長い目で見れば魂の成長に必要な経験だと思えるようになった。停滞の時期も、今思えば休憩のようなものだったのかもしれない。

だから、次のステージに必要なものを見極めて、勇気を持って手放していく。それがあたたかな愛に満ちた成功体験であっても。

それは悲しいことではない。

暗闇の渦中では、まるで癒着した皮膚を引き剥がすように思えるかもしれないが、実際は繋いでいる手を放すだけ……ということだったりもする。それにもし本当に必要なら、また巡り会うこともあるだろう。

人生に向き合うための、しなやかな強さが育ってきているのを感じる。視野が前より広いし、呼吸もずっとしやすい。

まだまだこれから長い道のりが待っている。安定することもあるかもしれないが、少なくとも今は変革の時。どうせ時代に振り回されるなら、乗りこなすような気概で未来を切り開いていきたい。

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