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【小説】死にたがりちゃんとストーカーくん

 かなり昔に建てられたうちの学校の屋上の柵は、幸いにもわたしの胸ほどの高さしかなく、内履きの靴底の摩擦力を利用してよじ登ると、あっさりと向こう側に立つことができた。
 しかしいざ立ってみると、当然ながら人が立つことを想定されていない狭い足場と、地面までの距離を生々しく感じ、先程まで興奮気味だったわたしの心は一瞬で怯んでしまった。けれど頭は至極冷静で、背後の柵を掴んでいる手を離して、十五メートルほど下にあるアスファルトの舗装路に自分が打ち付けられる瞬間のことを他人事のようにイメージしていた。さあ、ここから一歩踏み出せば、見たことのない世界にきっと行ける。

「何してるの、こんなとこで」

 ふいに背後から声を掛けられた。優しく語りかけるような調子の、中性的な声。柵から手を離さないよう慎重に振り返ると、一人の男子生徒がそこに立っていた。声のイメージのままに、華奢で大人しそうな男の子だった。

 わたしは驚くと同時に落胆した。今日は創立記念日。誰にも邪魔されずに決行できるように学校に誰もいないこの日を選び、わざわざ屋上の鍵まで盗んだのに。わたし以外にもこんな日に登校するバカがいたなんて。しかもその男子は、目の前にこれから飛び降りようという人間がいるというのに、全く動じていない様子だった。それどころか、驚くほど柔和な笑みを湛えている。こちらに警戒心を抱かせないためなのかもしれないが、この状況ではそれが逆に怪しい。焦って止めようとするでしょ普通。それに、彼は「何してるの」と尋ねてはいるものの、まるでわたしがここで何をしようとしているか、最初から知っているかのようだった。

「……誰?」

 わたしが訝しげに言葉を返しても、彼は一切動じず笑顔のままだ。

「わからないの? ひどいなあ。同じクラスなのに」

 少し長めのやわらかそうな黒い前髪を指で整えながらそう言った。言葉に反して、その声はとても愉快そうだった。人の死に様を笑いに来たのか、と思ったけれど、そういう腹黒さは声からは伺えず、素直に受け止めるならわたしと話せることが心底嬉しそうな感じだった。しかしわたしは本当に、全く見覚えがない。クラスメイトの顔と名前はそれなりに把握しているつもりだけど、こんなやつ、いたっけ……?

「ああ、そうだ。これでわかるかな」

 男子生徒は、先程整えたばかりの前髪を無造作に下ろす。長い前髪はすだれのようになり、彼の目を覆い隠した。そしてさらに、胸ポケットに入れていた黒縁の眼鏡をかける。わたしはそれを見て思い出した。その姿は確かに見覚えがあった。一度も話したことはないけど。彼の名は、彩木くん。隅っこでいつも大人しそうにしている、ガリ勉っぽい男の子だった。

「あ!! 彩木くん……!?」

 わたしは目の前の彼と自分の記憶が一致したこと、そして普段のイメージとのギャップに驚き、不覚にも今の自分の立ち位置も忘れてフェンスから手を離してしまった。瞬間、重心がぐらつく。やばい、落ちる。いや、はじめから落ちるためにわたしはここに立っているのだからこれでいいのだけど。でもいくらこんなうっかりで死ぬのはいやだ。もっと明確な意思を持って、わたしはこの手を離すはずだったのに。焦る心に反して、わたしの中の冷静な部分は、それでも重力には逆らえないということを理解して、諦めていた。覚悟を決めて、思わずぎゅっと目をつむる。
 しかし何秒待っても、痛みも衝撃も、それどころか落下の浮遊感すらなく、わたしの身体は未だ屋上の縁に留まっていた。おそるおそる目を開けると、いつの間にか近寄ってきた彩木くんがわたしの手をしっかり掴んでいた。ひよわそうな体躯からは想像もつかないほど、力強かった。

「……あり、がと」

 ついさっきまで死のうとしていたことも忘れて、思わず礼を述べる。それを受けて、彩木くんがニコリと笑った。初めに彼が立っていた場所からは結構距離があったはずなのに、息一つ乱れていない。彼の長い前髪とメガネのレンズ越しに目が合う。近くで見ると、結構端正な顔立ちをしていた。心臓の音がうるさい。けれどこれは今落ちそうになったせいで、誓って、彼に一目惚れをしたとかそういうわけではない。

「やっぱ、自殺?」
 彩木くんは少し困ったような笑顔で聞いた。
「うん、まあ、そう」
 今さら否定しても仕方ないので正直に答える。
「でも、止めに来たなら無駄だから。離して」
 できるだけ冷たい声で告げ、手を引っ張る。しかし、びくともしない。
「ヤダ」
「なんでよ」
「君を死なせたくないんだ」
 変わらず、柔和な表情で言う。しかし、わたしはその距離感を無視した不躾な言葉に苛立って、思わず声を荒らげる。

「は? 友達でもない君に、そんなこと言われる筋合いなくない? そもそも、彩木くんにわたしの気持ちがわかるわけないでしょ」

 言って、少し言い過ぎたかなと後悔した。けれど怒るわたしを見ても、彩木くんは特に動揺せず、わたしの手をしっかり握ったまま挑戦的な笑顔で答えた。

「じゃあ交換条件。僕が君の死にたい理由を言い当てられたら、柵を乗り越えてこちらにもどってきて。それでどう?」
「なにそれ。できるものなら、どうぞ。無理だと思うけど」

 おかしなことを言う人だと思った。そもそも、わたしが死にたい理由なんて誰にも、家族にすら打ち明けていない。そして、誰に言っても理解されるようなものでもなかった。ましてや一度も話したことがないクラスメイトに、わかるわけない。どんな答えでも、絶対に当たらない自信があった。何故ならそれは、何か嫌なことがあったからとかそういうありきたりな理由などではなく、

「知的好奇心、でしょ」

知的こうきし…………え?

「なんで、わかるの……」

 絶対にわからないであろう理由を、あまりにもあっさり言い当てられてしまったわたしは、驚きのあまり、すぐに正解を認めてしまった。
 彩木くんは当然と言うような表情をしたあと、「それは秘密」と、小首を傾げて可愛らしく言った。その可愛らしさに反して、手を握る力は強く、相変わらずわたしの手はびくともしない。

「ほら、当てたよ。だからこっちへ来てよ」
「そんな、どうせ勘でしょ!?だいたい、そんな理由で死にたい人間なんているわけな」
「この状況で勘を言うなんて不実なこと、できるわけないでしょ」

 彩木くんの顔から笑顔が消え、真剣な表情に切り替わる。それは鋭く、重く、覚悟を秘めたものだった。わたしにはその覚悟の理由が皆目見当つかなかったけれど、その迫力に彼の言っていることが勘やデタラメではないと、無理矢理にでも納得させられた。

「……戻るから、ひとつだけ条件」
 気圧されながらも、なんとか言葉を絞り出す。「何?」彩木くんは優しく聞く。
「秘密、ってのはフェアじゃない。なんでわかったのか、ちゃんと教えて」
 わたしは彼の目をしっかり見据えて言う。
 彩木くんはすこし考えたあと、観念したように承諾した。
「いいよ。でも多分驚くと思う。それで落ちられたら元も子もないから、先に戻って欲しい」
 彩木くんの言い分は尤もだと思ったし、何よりすでにわたしは彼に負けている。わたしは素直に戻ることにした。
 一連の出来事で、情けなくも腰が抜けてしまったわたしは、彩木くんに向こう側に戻るのを手伝ってもらった。その時風が吹いて、パンツが見えてしまった。死ぬほど恥ずかしかったけど、パンツを晒したわたし以上に、それを見た彩木くんはそのきれいな顔を真っ赤にして恥ずかしがった。あんなに余裕ぶっていたくせに、パンツごときで顔を赤らめる彼が急に可愛く思えて、わたしは久しぶりに、心から笑った。


***


「僕、ストーカーなんだ。君の」

わたしたちは屋上にある校舎入口の壁を背にして隣合わせに座ると、彩木くんはニコニコと、悪びれもせず告げた。

「え、は? それはどういう……」
 突拍子がなさすぎて、思わず間抜けな声をあげてしまう。
「だから文字通り。君のことがとにかく大好きで、君のことをずっと見てるから、君のことならなんでも知ってる」
 状況を飲み込めず目を白黒させていると、彼は淡々と、自分が知っているわたしについての情報を話し始めた。

 生年月日から始まり、住所、家族構成、身長体重スリーサイズ、食べ物の好き嫌い、推しのアイドル、休日の過ごし方。他にも考え事をする時はシャープペンを口に当てる癖があるとか、実はノートの隅にオリジナルのゆるキャラを書いているとか、お母さんの作ったお弁当は彩りはいいけど冷凍食品ばかりだということを気にしていて、恥ずかしいから友達には手作りだということにしていることとか。そのどれも、間違っていない。あと、生理周期まで把握されていた。
 わたしは彼が言葉を紡ぐ度、背筋が寒くなった。「なんで」そういう言葉が何度も浮かんだ。彼のわたしに対する執着ぶりも心底気持ち悪かったけれど、それ以上に、それだけ見ていて気付かれない彼のストーキングスキルに心底恐怖した。
 そして本当に、わたしが死にたがっている理由と行動原理についてもピタリと言い当てた。

「ただ、なんとなく死んでみたいなって思ったんでしょ。佐倉さんはさ、好奇心旺盛で何にでも興味を持つけど、理解が早くてすぐ飽きちゃうんだよね。いつもそつなく、何に対しても楽しそうに振舞ってるけど、本当は心の底ではつまらないって思ってるとこがある。そんな佐倉さんだから、現実につまらないことばかりになったら、死に興味を持つのも自然な流れだと思うけど」

 わたしの動向を逐一チェックしていた彩木くんは、わたしが屋上の鍵をこっそり盗み出したことに気づき、何を考えているのか悟ったという。その時、何としてでも止めると誓ったらしい。対象には直接関わらず遠巻きに眺めるだけ、という彼なりのストーキングルールがあったそうだけど、それを破ってでも、今日ここでわたしを止めると。

 言葉が出なかった。これまで一度も、わたしの内側を言い当てたひとはいなかったから。誰も彼も、外側だけしか見ていなかった。わたしがつまらないということにすら、気付く人はいなかった。だから、わたしが死を考えていることに気付く人なんているわけないし、その理由を話しても誰にも理解されるわけもないと思っていたのに。話したこともない人に、こんなにピタリと言い当てられるなんて。けれどそれがストーカー行為の結果というのがあまりにも気持ち悪い、そう思っていたはずなのに、気が付くと、わたしの目からは涙がこぼれていた。

「え、なにこれ、わけわかんない……。彩木くんのやったこと、気持ち悪いし怖いのに、見ててもらえたのがこんなにも……」
「嬉しい?」
「自分で言うな」
「ごめん」

 泣いてしまったわたしを見て、彩木くんは嬉しいけど、わたしのためにそれを表に出すのを我慢しているような表情をしていた。けれどどこか、ほっとしたような雰囲気でもあった。

「ねえ、佐倉さん。まだ死にたい?」
「いや……なんかもう、色々ありすぎて……」

 いざ死んでみようと屋上の縁に立った時、怯んだ己の身体が憎かった。頭は至極冷静だったのに、身体は本気で怯えていた。わたしにとって知的好奇心とは、最上級の欲求だった。食欲よりも、性欲よりも、睡眠欲よりも。そう思って生きてきたのに、いざ絶対的な終わりを目の前にすると、こんなにも身体に抵抗されるのかと思った。けれどわたしは持ち前の強靭な理性を使って身体を上手く操ろうと、ていねいに糸をつないだ。なのに、その糸は次の瞬間、突然やってきたクラスメイトにぶった切られ、あまつさえその理性すら制御を失ってしまった。
 そして流されるままに中断させられたと思ったら、今度はその男子の特殊な性癖をカミングアウトされて、これまで秘めていた自分の中身まで見透かされて。いくらなんでも、情報量が多すぎる。わたしのキャパはとっくにオーバーしていた。
 しかしまたしても、彩木くんは予想外のことを口にした。

「佐倉さんさえよかったら、その命、僕にくれない?」
「え? 殺されろってこと?」
「君は頭の回転が早いだけで、割とバカだよね」
「なっ……」

 わたしの回答が相当に見当違いだったらしく、彩木くんは盛大に溜息をついた。違う、そうじゃない。普段のわたしだったらもう少しマシな返しができるはずだ。っていうか、誰のせいだと思ってる。わたしが弁解のための言葉を探していると、彼はおもむろに眼鏡を外し、すだれのようになっていた前髪を指で横に流した。目元が顕になり、視線がかち合う。髪の黒さに反して、その瞳は色素が薄く、きれいな飴色をしていた。彼の瞳に引き込まれ、身動きがとれなくなる。いつの間にか、地面についたわたしの手に、彩木くんの手が重ねられていた。彼は少しずつ距離を詰めてくる。思わず後ずさるも、背中は壁で逃げ場がない。じりじりと顔が近づき、今にも唇が触れそうな距離に、恥ずかしさでぎゅっと目を瞑ると、触れるか触れないかにある距離の肌の温度がより明確になった。自慢の理性はもうとっくに使い物にならず、頭の中には「ファーストキス、まだなのに」という単語が渦巻いている。

 しかし、唇には何も触れなかった。かわりに耳元で、彩木くんの甘い声が聞こえた。

「僕のものになって、ってこと」

 その言葉に、不覚にもどきりとしてしまった。心の底に抱えた思いを見抜かれたことで、かなり気持ちが傾きかけていた。
 しかしここで、わたしは相手の策にハマっていることに気づく。甘い雰囲気に飲み込まれそうになるギリギリのところで、彼のこれまでの行動に、持ち直した理性が全力で警鐘を鳴らす。

「まって」
 雰囲気に流されまいと、彩木くんの肩をぐっと押して距離を離す。今度は素直に引き下がってくれた。

「自分のした事棚に上げて、よくそんなこと言えるよね」
「棚になんか上げてないよ?僕は佐倉さんに、君のストーカーをしている僕を、好きになって欲しいと思ってる」
「は? ストーカーを好きになることなんてありえないって、普通思わない?」
「僕は普通じゃないからね」
「じゃあ、頭の中お花畑なの?」
「違うよ。僕は至って冷静に現実を見つめ、分析してるよ」

 棚に上げてないどころか、現実を見ている?考えていることが読めなすぎてさらに混乱してきた。頭が痛い。

「だって僕には、君が一瞬で頷く気になる殺し文句がわかるもの」

 またなんかおかしなことを言い出した、と思った。けれどこれまでの人生の中でここまでちゃんとわたしのことをほんとうの意味で「わかる」と口にする人はいなかった。それを堂々と確信を以て口にしてしまえる彼に、少なからず惹かれていた。だからわたしはうっかり「何?」と聞いてしまった。それが、最後の扉の鍵だとも知らずに。

「それはね」
 彩木くんは待ってましたと言わんばかりに満面の笑みになって、用意した台詞を読み上げるように朗々と言葉を発した。

「僕と付き合うことで、君はこの頭のおかしいストーカーの生い立ちや、裏に抱えた思いを知ることが出来る。つまり、僕自身が佐倉さんの知的好奇心を満たしてあげられる存在なんだ。君は犯罪心理学に興味がある。時々、サイコキラーや猟奇殺人者の生い立ちを調べてニヤニヤしてるでしょ」

 さすがストーカーさま、わたしのちょっと人に言えない趣味までご存知だなんて、ほんと引くわ。引くけど、どうしようもなく惹かれているのも、ごまかしようのない事実だった。彼に心の奥を暴かれるたび、わたしの心は恐怖と興奮がないまぜになったよくわからない感情でいっぱいになっていった。

 彩木くんはわたしが揺らいだのを見計らって、とどめの台詞を放った。

「僕は君の存在をもらう。代わりに、僕は君の全てを把握するから、君が望む通りの知的な刺激を提供しよう。もちろん飽きさせはしないよ。君のことなら、なんでも知ってるからね」

 これは罠かもしれない。いや、どこからどう見てもやばい男なのは明らかだ。けれど悲しいかな、知的好奇心から死にたがる女だって、じゅうぶんにおかしい。だからある意味、わたしたちはお似合いなのかもしれない。

 わたしなんかに執着をあらわにする彼に、すでにわたしは興味津々だった。未知への恐怖と興奮に、生唾をごくりと飲み込む。言いたいことを言い終えた彼は、少し迷っているわたしに忠告した。

「ああ、そう。頷くなら、相応の覚悟を持ってね。選択は慎重に。僕の愛は重いから」

 その目は「裏切りは許さない」と言っていた。わたしが頷いたら最後、わたしは本当に彼のものになってしまうのだと示していた。でも、それは卑怯だ。わたしが欲しくてたまらないものを示しておいて、その上で選択権を委ねるなんて。

「ここまで追い込んでおいて、選択は慎重に、なんてのはずるいよ。わたしが好奇心に勝てないのも、どうせお見通しのくせに」
「もちろん。……じゃあ、このゲームは、僕の勝ちでいいのかな」
「っ、ゲーム……!? まさか最初から、このつもりで」
「そりゃそうだ。僕にとっては君に接触するという禁忌を破るんだから、相応のリターンは見込んで行動する。けれど勘違いしないでほしい。僕に伊達や酔狂でこんなことをする器用さはないよ」

 執念深いのに合理的。狂ってるのに冷静。ドライなようでいてウェット。こんなタイプ、今まで見たことないし、意味がわからない。でも、その意味のわからない彼が、わたしには今とても魅力的に見える。これじゃ、全部彼の思い通りじゃないか。さっきまで警鐘を鳴らしていたわたしの理性も未知への誘惑にすっかり手懐けられている。わたしは腹を括った。理性の代わりにうるさく鳴る心臓の勢いのままに、少し震えた声で答える。

「……いいよ、命くらい。どうせ捨てるつもりだったし、君にあげる。その代わり、ちゃんと満足させてよね」
「ああ、約束する」

 彩木くんは心の底から嬉しそうに笑う。それはその日一番の、偽りのない笑顔だった。歪な執着心と理性を持った少年の、歪な契約のような告白を、わたしは受け取った。改めて差し出された手は、意外にも少しだけ震えていた。余裕ぶっていても、彼にとってわたしを落とすことは一世一代の賭けだったみたいだ。そう思うとその手の震えが途端に愛しくなり、わたしは思わず彼の手を両手で包み込むように握った。

 この日、わたしの命は失われた。けれど当初の予定のように誰のものにもならず宙を舞うのではなく、彩木くんのものとなった。わたしの心の奥の空虚だった部分は、このおかしな男の子、彩木くんへの興味で今はいっぱいだ。これが恋愛感情かどうかはわからない。恐怖も、不安もある。けれどこの人となら、世界は面白く感じられるかもしれないという予感がある。

 もしかしたら彩木くんなんてクラスメイトは最初からいなくて、実は悪魔に魂を売り渡したのかも、なんて荒唐無稽な妄想をする。けれどわたしを楽しませ、愛してくれる悪魔なら、魂を捧げるのも悪くないかも知れない。

(終)

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