真夜中のモンスターハンター

本日のまとめ
・田舎には都会にない恐怖がひそんでいる
・兄弟愛は素晴らしい
・近所に迷惑をかけてでも殺意を優先させる時がある

僕の故郷はとてつもなく田舎だ。
そして農家だった。ばあちゃんに、朝ごはんは目玉焼きとほうれん草が食べたい。
というと「卵は鳥小屋だ。ほうれん草は目の前の畑にあるから抜いてこい。」
と、言われるぐらいの田舎だった。
だから僕は毎朝、鶏小屋に顔を突っ込み畑でブチブチッとほうれん草を引っこ抜く生活を少しの間続けていた。
最後の方になると、ほうれん草が過剰に育ってしまい自分の身長くらいになった。『食べるな』と言われたけど、人の言う事が昔から全然聞けない。
言う事を聞かず、ほうれん草を食べたらクソ不味くて眠気が吹っ飛んだ思い出がある。 雑草みたいな味がした。

僕には弟が1人いる。しかし、とても嫌われている。理由は簡単だ。兄貴というのはどこの家族でもそうだと思うが、95%は弟の100倍くらいバカが多いと思う。悲しいかな僕はその95%側だった。

ビックリマンシールが入っているウエハースを、シールごと食べてしまったり。
弟のゲームのセーブデータを書き換えたり。
一緒に夜のプールに付き合わせたり。帰りに「兄ちゃんだって全裸なんだからオメーも一緒に全裸で帰るぞ!」と2人で全裸でチャリに乗って家まで帰ったり。

『これはリンゴジュースだよ飲んでみる?』と自分のションベンをコップに入れて飲ませようとしたり。
(バレないようにしっかり冷やしたがバレた)
ジャンプを買いにパシらせたり。
弟の車を勝手にフルスモークにしたりなどなど、、、そんなこんなで弟が16歳くらいになる頃には、弟は僕を見ると生ゴミを見るような目になっていた。だから僕はその頃の弟がちょっと怖かった。

弟の部屋と僕のお部屋は仕切りの無い一つのお部屋だった。だから、何をするにも丸聞こえだった。

それは静かな夜だった。僕は『ガラスの仮面』を読んで涙ぐんでいた。読み終えた所で眠くなったので、電気を消して寝始めた。ちなみに弟はもうその時はぐーぐー寝ていた。
文字通り、本当にぐーぐーといびきをかくのでうざかった。
夢の世界に行こうとした所だった。

「うわああああああああああああああああぁぁ!!!!!!兄ちゃああああああああああんんんんんん!!!!!」

びっくりしてションベンを漏らしそうになった。
弟の絶叫と、僕にSOSを求める事に本気でびっくりした。

「なんだああああ!!!!!!ドラゴンアッシュ系かああああ!!!!???」
寝起きで口が回らなかったのと、半分夢見がちだったので訳の分からない事を口走っていたのを覚えている。

「兄ちゃあああああああん!!!ベンジョコウロギだよ!!ヤべええええええええええええええ!!!どっか行っちゃったよー!!!!怖いよおおおお!!!」

ベンジョコウロギとは別名カマドウマの事だ。
かの有名な漂流教室にも、進化したデッカいのが出て来ていた気がする。

僕はその名前を聞いた瞬間に背中に冷や汗をかいた。
ゴキブリよりも、、、、怖い。
奴らのジャンプ力はハンパないのだ。僕は寝起きのノリと元々の頭の悪さから、部屋に戻り洋服が入っているクリアケースの一つを一気にひっくり返し、空にした。

「うわああああああ!!!兄ちゃん!!!いたよおおおおお!!!!!殺して!!!ぶっ殺してよおおおぉ!!」

「うおおおおおおおおおぶっ殺してやるうううううぅぅぅっっっっっ!!!」

近所の人が聞いたら、確実にあの家の兄弟は頭にばい菌が入って狂ったと思うだろう。

「ちぇえええええええええつつつつ!!!!!」

ラグビー選手がトライするかのように、引き出しのクリアケースをカマドウマがいる場所にトライした。

「すげえよ兄ちゃん!!閉じ込めたよ!!」

「バカヤロウ!!安心すんな!!まだ殺してねぇ!!まだ生きてる!!」

「早くトドメを刺してよ!!殺してえええええ!!!」

繰り返すが時間は午前2:00を過ぎている頃だった。外で他の人に聞かれていたら確実に警察に通報されてもおかしくない。

「うるせえええええ!!!僕だって怖いんだよ!!チクショウ!どうやって殺せば良いんだ!?」

「、、、そーだ、兄ちゃん!!監禁だよ監禁!ここにいれば食料もないからコイツを餓死させられるよ!」

「おいおい、、、流石は僕の弟だな!!頭良過ぎだろ!!」

「まあね。あとさ兄ちゃん、息とかもしづらいようクリアケースの周りをガムテープで、しっかり隙間なく貼っちゃおうよ」

「なるほど!!」

こう思い出して書いてみると、、どうやら弟も少し頭がオカシかったのかもしれない。

そしてその日から、カマドウマと2人の兄弟の奇妙な共同生活が始まった。

弟は、学校が終わるとすぐにクリアケースのカマドウマを確認するようになった。
僕も弟同様に、バイトが終わるとすぐに家に帰りカマドウマを確認していた。
そして早くカマドウマが死ぬようにクリアケースをバンバン叩いたり、XJAPANの『紅』を大音量で流し2人で「紅だあー!」にちなんで「カマドウマだあー!!」と叫んで日々カマドウマにストレスを与えていた。
そんな日々を3日ほど繰り返すと僕らの祈りが通じたのかカマドウマを殺す事ができた。

悲しいかなカマドウマが死んだ後は、以前の様に話さなくなってしまったが、たまに軽トラックに乗って真夜中のドライブに行ってコンビニで2人でブリトーの食べ比べをしながらゲラゲラとバカ話をするように買った。

共有した気持ちは殺意だったが、カマドウマは仲の悪い兄弟にちょっとだけ仲良くなる魔法をかけたのかもしれない。

そして気がつけばお互い一人暮らしが始まり、かれこれ1年程会ってない。

今度は、ゴキブリでも一緒に捕まえようかな。

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