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地獄の年末を迎えているのだ 1

12月28日、AM4:20。In すき家。なぜ年の瀬にこんなところにいるのか。地獄の最中だからだ。もうそれはそれは真っ最中だからなのだ。

地獄の始まりは、12月13ぐらいだったと思う。その日はバイトで客が本当に本当に帰らなくて、シフトは0時までだったのに結局深夜2時まで働いた。本来私は根が明るい人間でもないし、顔も華やかでないし、コミュニケーション能力も低いので「接客」に向いていない。だから普段1人で街を歩く時の顔を0とすると、バイト中はたとえ洗い物をしている時でも6ぐらいは最低で出力していなければならない。客と話す時はもう12ぐらいの顔をしている。だから普通にそこに「居る」だけでも相当疲れる。それが2時にまで及んだのだから、私はもう疲れを通り越してハイになっていた。帰り道、バイトが終わった開放感と、夜風の気持ちよさと、月の恐ろしいほどの美しさに自転車に乗っている体がふわふわしていた。そして段差に気がついた時にはもう色々遅かった。私はもちろん思い切りブレーキをかけた。前輪がすごい音を立てて、地面と擦れた。摩擦の力を私は舐めていた。次の瞬間、私の体は自転車と分離していた。ほぼ宇宙だった。しかしそこは宇宙は宇宙でも、重力がある宇宙だったので浮き上がったかのように思われた体はすぐに地面に叩きつけられた。顔から落ちたら終わる!!と思う暇もなく私は右手を思い切り地球に突き立てていた。

コンクリートの地面は私の右手を受け入れてはくれなかった。そのまま三回転。スピンする森光子。おい、笑ってる場合じゃないんだ。アーア、あーあ、嗚〜呼、と思った。これ、結構痛いやつ、です、よね。私は今日こんなに頑張って生きたのに、なんでこんなことが起こってしまうのだろう。運命とか神とか客とか色々ふざけるな!と思ったけど、普通に自分が悪かった。それが一番嫌だった。あのさあ、私の2023これからなんですけども。クリスマスも年末も、山にいるために去年勉強とかしてたんですけども。冬山に一週間入るために、夏、死ぬ思いでザックを背負い、狭いテントで寝られない夜を越え、朝また歩き出していたのですけれども!?!

100%自分のせいで怪我をして、12月から1月にかけての予定を全て白紙にした。これを地獄と言わず、何を地獄と呼べばいいのか。いくら星野源に地獄を肯定されようともう無理。私もう無理です、さよならありがとう、それでも世界は終わらないんだな、わかったよもう

同期が着実に冬山の実力をつけていくのを尻目に私は地元に帰ることにした。

山にいるつもりだったので、前日まで全く帰り方を考えていなかった。
まずは飛行機を調べた。は?片道38000?舐めてる?38時間労働の対価?無理すぎ!
まあそうなると、フェリーだよなーいや車ないと面倒なんだよなー仕方ないかー
とりあえず明日のフェリーに間に合うように、今日中に少し進んでおかないと行けなく、中途半端なところで一度夜を越さなければならないらしい。ここでホテルとかに泊まるのはやっぱりくやしい。どうせならどこまでも貧乏旅にしたい。言うても8時間くらいをどこかで潰せればいいのだ。

海を見に行くことにした。
日本海が一望できる展望台にのぼった。
冬、海、深夜、一人旅、これは身投げの役満なのでは?と寄せては返す波を見て思った。地球すげーというお粗末な感想が浮かんでは消え、なんだか自分が不憫になってきたので移動することにした。
次の目的地は歩いて30分ぐらいの大きめの公園。自販機で160円のココアを、全て10円玉で買ってみる、歩いてて見つけた橋の名称を決める会議を想像してみる、昔言われた嫌なことを改めて思い返して苦々しい顔を夜空に溶かす、右足の主体性を育てるためにいつもより右足に負荷をかけた歩き方をする、など本当に時間が有り余っている人にしか許されないことを徹底的にした。

わりと楽しくなってきて、「夜を使いはたしてfeat.PUNPEE」を口ずさみつつ、ニコニコしながら歩いていたらパトカーが近寄ってきて人生初の職務質問を受けた。神よ、ここまで私に試練を与えるか?!とも思ったが、よく考えてみたら私は神を信じていないし、職務質問に値する怪しすぎる行動・格好だった。私は、北の寒さにも対応できるように、おじいちゃんから受け継いだ革ジャンを身に纏い、スーツケースがあまり好きではないので60リットルのリュックサックに全ての荷物を入れて背負い、街灯もあまりない小さな街を練り歩いているのだ。警察の方の仕事を増やしてしまった。すみませんでした。

そんなこんなで今、この街唯一の24時間営業「すき家」で粘りに粘っている。もうすでに3時間滞在している。1時間に一回注文はしているが、死ぬほど迷惑なのは自覚している。本とか読み始めたら寝るのは確定していたので、これを書き始めた、この辺でやめておく、店員の視線も痛いし、お尻も痛いし、さあ私はこれから7時まで何をするのでしょうか!!乞わないご期待!!!

誰も待ってないけど、つづきます

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