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「夜明けのすべて」派生、「月経前症候群」一般人Aの見解


「なんか女性専用車両とかレディースデイとか女の人ばっかずるいよな」と旦那がぼやくのを聞いて、わざわざ気にしたことなかったけど、確かに「女性」をキーワードに区分される名称が、男性を除け者にする感はあるなと思った。何をした訳でもないのに強調されることで、圧迫感を覚えることも想像に難くない。こと、旦那が不満を覚えたのは「スイーツ企画、レディースデイ食べ放題」的な案内だった。私より甘党の男は、自分が参加したとして、周りが全員女性だった時のリスクを危惧していた。

 映画作中、山添くんが藤沢さんに「えっ、重さの度合いが違いますよね?」と言う場面が出てくる。パニック障害とPMSを一緒にされても困るという。その病気の辛さはその人にしか分からない。だから生理を経験したことのない山添くんに罪はない。大事なのはそこから。山添くんは知ろうとした。PMSとは何か。生理のたびに一体女性の身に何が起こっているのか。本当はそれで充分だった。

 旦那は私の話を3割で聞く。たまに聞いてるアピールをするために、抑揚の頂点にきた単語を反芻することで、最低燃費で私の機嫌を取る(「そういう冷静な分析いいから」)
 今からする話は人によって関係ないことかもしれない。だから3割で聞いてくれればいい。そうして引っかかったワードだけ覚えていてほしい。それだけで傍にいる人にかける声が変わるかもしれないから。




 月経前症候群、PMS。これは黄体ホルモンの影響で不安感が増し、神経過敏の状態を指す。概ね問題視されるのはそこから発生する言動。このことを語る上で、まず女性という生き物の持つ背景から話を始める。

 中世ヨーロッパ、特に貴族階級の女性に多く見られた「ヒステリー」。ヒステリーと聞くと女性のイメージがあるのだが、その起源はこの辺りにある。イメージは窮鼠猫を噛む。じゃあ何故ヒステリーが起きるのか。
 当時、その多くが精神科にぶち込まれたというその症状は、「古く女性の遺伝子が虐げられた過去を記憶していて、その反動が出ている」説(フロイト)怒りという感情の噴出が2度目に起こるように、発露担当がたまたまその人だっただけで、必ずしもその人個人の問題ではなく、その人の血脈に問題の根がある可能性。

 年代変わって1980年頃、中国では一人っ子政策なるものがあった。増え過ぎた食い扶持を削るのが目的な訳だが、特に農村では力仕事メインのため、自然男児を望まれた。女児は生まれてもいなかったこととされたり、不遇な扱いを受けやすかった。

 そもそも女性という生態自体、早く動けるようにできていない。例えるなら、望んでもいないのに荷物の入った大きなバッグを常に持たされているイメージ。

 まず男性に比べて身体能力が低い(ゾロの幼なじみ「くいな」を思い出す)
 月の4分の1はPMS、生理による絶不調期がある。そうして月の半分くらいはホルモンの影響で精神不安定。無理が祟ればストレスで容易に体調を崩す。即戦力を求める側からしたら、全くもってコスパが悪い訳である。

 要はさるかに合戦のおにぎりと柿の種。
 おにぎりは男性。分かりやすい力。柿の種は女性。時間をかけて育てることで丸っと似たような生体を産む。ついでにもう一つ、
 男性の在り方もおにぎりと柿の種で表すことができる。
 ピンポイントの補給、その場限りの生き方。絶賛今飢餓状態の男性はおにぎりを求める。
 一方で明日、それ以降の見通しがなんとなくついていることで、今目の前にいる女性の背後に未来が見えた時、個人ではなく種として守るべき存在となる。だから同じ男性でも過去現代、国の貧富、教育の差によって行動が変化する。話を戻す。


 正直PMS関係なく、女性という生き物はめんどくさい。
 話が通じず、言っていることが二転三転し、感情のままに振る舞い、ほんで何とか不安定期を宥めすかしたかと思えば、けろんとした顔で「あのさー」と寄ってくる。非礼はすべて許されている前提で話の続きを始める。下手に拘泥したところで男性の側が損するのは目に見えているから実に厄介。ただ、
 女性は決して忘れない。やさしくされた記憶は絶対に消えたりなんかしない。何故なら自分が弱いとわかっているから。自分のパートナーのいいところを聞かれた時、女性は一様に「やさしいところ」と答える。それも全部わかっているからだ。

 私に関して言えば、気が荒れて暴走した後、まもなく生理がくる。同時に偏頭痛なんて来ようもんなら、もう動くことすらままならない。
 何とか家までたどり着いてカーペットに倒れ込むと、旦那は「はいはいはい」と頭の下にクッションを敷き、毛布をかけ、湯たんぽを足元に入れてくれる。朦朧とした意識の中、そんな時いつも「結婚して」と口にする。旦那は笑いながら「もうしてるつもりだったけど」と言う。辛い時、助けてくれる人は神だ。その時だけはディーンよりカッコよく見える。(「イチイチイラッとさせるね、君」)

 作中、PMSの発動は少々オーバーな表現の仕方をされる。けれどオーバーというのはあくまで一個人の主観で、その人にとっての病気はその人にしか分からない。同じ女性であっても生理の重さに差があるように、結局その人本人しか自分を守ることができない。
 だからあまねく「その可能性」を知っていてほしい。やさしさは想像力で補強される。

 3割でいい。あなたが今イラッとしたその言動は、必ずしもその人由来のものではないのかもしれない。PMS期真っ只中なのかもしれない。そうしてグッと堪えたものを、女性は忘れない。

 いつかきっと、けろんとした顔で恩返しにやって来る。














 余談ですが、
・夜明けのすべて感想文(基礎)
・夜明けのすべて派生(応用)が済んだので、
 次回は(発展)この作品から生み出された短編小説になります。今月以内には出したいと思っていますので、よろしければお付き合いください。



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