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「タクシー広告始めるBtoB企業が増えたけど本当に意味あるの?」への一回答

ヒラメ筋CMのベルフェイスでマーケティングをしている林です。

最近都内でタクシーに乗ると大抵の車両についているサイネージ広告。弊社も2018年の10月からCMを流していますが、不思議とBtoB(特にSaaS)企業のCMが多いですよね。toBでCMはマーケティング施策としてあまり行われない中で、タクシーはかなり異例な媒体になってきている気がします。

今すでにタクシー広告を出稿している企業もたくさんいますし、これから検討される方/今検討している方も増えていくことかと思いますが、一方でやはりオフライン広告は効果検証が難しいこともあったり、タクシーなんかは歴史がまだまだ短いことから、その有用性や特徴を情報収集しようとしても具体的なノウハウはそこらへんには落ちていません

そこで、まがりなりにも1年配信してきて、それなりに気づくこと・感じることも出てきたので、ここらへんで一度タクシー広告の知見をまとめて発信してみたいなと思いました。これから書くことは正解のないこと(もしくはまだ見つかってないこと)ばかりなので、必ずしも正しいことを書けるかというとそうではないかと思いますが、今後タクシー広告を考える方、今すでに配信されている方にとって、1つでも学ぶことがあればいいなと思っています。そして似たような知見を持っている方とディスカッションする場など持つことができたら非常に嬉しく思う次第です。

タクシー広告ってやったほうがいいの?

タクシー広告(もしくは交通広告)を検討される方が最も気になっているのは、「結局タクシー広告って本当に意味あるの?」というシンプルな疑問だと思います。

これに対してベルフェイスとしてはどうだったのかをお答えすると、「うちでは意味があった。やって正解だった」と考えています。(「私が」考えているというだけではなく、今日ちょうど社長がそのようなことを言ってました)

しかし、今SaaS系の企業のマーケターに「うちもタクシー広告やったほうがいいと思う?」と質問されたとしても「マーケティング目的でしかないならやらないほうがいいと思うよ」と答えると思います。

それはなぜでしょうか、というところから説明しようと思います。

そもそもマーケ施策として決して効率はよくない

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最近テレビなんかでもCMを配信するBtoB企業が増えてきていますが、それでもまだまだ少ないかと思います。

少ない理由は出稿金額がかなりかさむのでなかなか手を出せないというのもありつつ、そもそも対法人なので細かくターゲティングできないマス広告は向いていないというのがありますよね。

これは別にタクシー広告だって同じ話で、確かにテレビや電車に比べて、比較的収入多めな経営者・管理職の方が多く含まれているとは思いますが、結局はほぼノンターゲティングで広告を出していることにあまり変わりはありません。

先日弊社代表の中島がB Dash Camp2019 fallというイベントでタクシー広告の費用対効果は1.7倍だった、という話をしていました。(記事にもまとめていただいたようです)

億単位のかなり大きな投資をしてちゃんと1.7倍になって返ってくる想定なのはいいことなのかもしれませんが、SaaSにおいてはLTV/CAC>3が望ましいとされているので、1.7だとそれに全然届いていないんですね。

であれば、Web広告みたいになるべくターゲットとなる可能性が高い層にターゲティングできて、機械学習も走る媒体に出稿した方が、効率は当然もっと良くなります。実際Web広告の方がLTV/CACの値はだいぶいいですし、オフラインイベントはそれよりもはるかに高い数値になっています。

そういった結果を踏まえて、さっきマーケターにやったほうがいい?と聞かれても「やらないほうがいい」と答えると書いたわけです。Web広告やオフラインイベントに投資した方が効率よくリードが獲得できることは多く、マーケティング目的だけでタクシー広告に踏み切るのは、BtoBにおいてはあまり得策ではないと考えています。もちろん製品に寄るので、BtoBの中でもかなり幅広い層をターゲットとしている製品があれば、もちろんそれはマーケティング目的だけでも成立するとは思います。しかし、大抵のBtoB製品はそうではないかなというのが印象です。資金調達してお金があるから、何となくやってみたいから、というだけの理由で始めると痛い目を見ると思うので注意してください。

余談ですが、YouTubeのTrueview広告って意外とBtoBでも相性がよくて、ターゲティングしっかりやればBtoB広告の王道Facebook広告と同じくらいのCPAでリード取れたりします。マーケ目的なら同じ動画広告でもそっちのほうが取れるデータも多いですしオススメです。

ちなみに、この数字が高いのか低いのかは他社と比べたことがないので知りませんが、もちろんもっと高い数字を出している会社はいらっしゃるとお思います。LTV/CAC>3を実現できていて、効率よくタクシー広告等運用している会社もあるかもしれません。しかし、仮にそういう会社があったとしても(ベルフェイスがそうだったとしても)、それはすなわち「タクシー広告はやったほうがいい!」とはあまり言えない気がします。やはりデータが詳細にわからず失敗時のリカバリー案が立てにくいことや、1回1回制作するのに時間とコストがかかることなどからWeb広告と比べて圧倒的にPDCAが回しづらいというのがありますからね。

ではなぜベルフェイスでは「タクシー広告はやって正解だった」と考えているのでしょうか。

市場の啓蒙や採用など、様々なメリットがある

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それは、マーケティング以外の効果がたくさんあるからです。

そもそも、ベルフェイスがタクシー広告を始めた理由はマーケティング目的ではありません。カスタマーサクセス(≒市場の啓蒙)でした。

この話まで詳しくするとそれだけで1つのnoteくらいのボリュームになってしまうので、詳細は割愛しますが、要は日本の商慣習を変えないとベルフェイスって普及していかないよね、ということです。我々が接することができる直接のお客様に対しては、インサイドセールス(オンライン商談)やベルフェイスの魅力を伝える方法は様々ありますが、結局そのベルフェイスユーザーの皆様が相手にする営業先(ベルフェイスのカスタマーズカスタマー)が、ベルフェイスで商談が行われることを是とせずに「いや訪問しに来てよ」となったら、ベルフェイスは使われず何の価値も提供できないわけです。

ベルフェイスを使うことになる営業マンだけではなく、その先にいる営業を受ける可能性のある全ての人たちに対して、「インサイドセールス(オンライン商談)という営業手法があるんだよ」ということを伝えないと、ベルフェイスのお客様の成功にならない、そのように考えて始めたのがタクシー広告でした。そうすると「営業を受ける可能性のある全ての人」がCMのターゲットであり、さらには移動中の人に移動しない営業手法を伝えるという訴求の相性も感じたため、交通広告が適切だと考えました。

実際CMを打った直後ベルフェイスの接続数は伸びましたし、それを色々ロジックを立ててLTV換算もしました。さすがにそれはベルフェイス特有のロジックすぎるのでここでは説明しませんが、そういった方面でのリターンもあった、という点は紹介しておきます。

他にも採用応募がかなり増えたりとか、アウトバウンドで営業した際でも商談中に話題にしてもらえたりとか、CMきっかけで何かメディア取材が入ったりとか、様々な副次効果があったと聞いています。

結局、マーケティング施策単体としてみるとタクシー広告で宣伝するのはアプローチできる人のうちターゲットとなりうる人の割合が低すぎる(もちろん製品によりますが)ため効率が悪くなるものの、カスタマーサクセス・人事・広報などなどその他諸々の目的もあると考えた時にその割合をどれだけ高めて考えられるか、というのがタクシー広告をやるべきかどうかの判断軸になるのかなと思います。

「タクシー広告の費用対効果が1.7倍だ」というのは、1番わかりやすく計測できる新規受注に絞った話で、そこしか狙わず/そこだけを目的としてやる分には効率が悪いからオススメしないけど、その他の目的もあって広いターゲットにアプローチする上でタクシー広告が適切だと考えうるロジックがあるなら、ぜひやるべき、というのが僕の考える結論です。マーケティング部署ではなく、経営判断としてやるべきなのかなあと思います。

ちなみに1.7倍という数字はどうやって出しているかと言うと、単純な話で、インバウンドリードに対してインサイドセールスチームが架電をする際に聞いている「ベルフェイスを知ったきっかけは?」という質問に対して、「CM」「タクシー」等の返答があったのものをCM経由のリードとしてSalesforce上でカウントしています。そのリードが何社受注したかと、1社あたりのLTVをかけ合わせることで、最終的にCM経由の受注とみなし、それを費用で割ると1.7倍だった、という話です。

BtoBのCMというと、僕はSansanさんやビズリーチさんが真っ先に思い浮かびます。今は多くの企業が踏み込んでいるCMですが、昔からシリーズ化してたくさん配信していらっしゃるこの2社の製品は、やはり導入を意思決定する人は社内の特定の職種の人でありながらも、サービス自体はほぼすべてのビジネスマンが使い得るものですよね。

最近テレビCMを始められたクラウドサインさんも、認知向上がカスタマーサクセスにつながるから、と発信されていましたし、そのように新規契約につながるターゲット層へのアプローチのためだけではなく、それ以外の目的も持っている企業がCMを始めているケースが多いのではないかなと勝手に思っています。

決裁者が多いタクシーは確かにBtoB向き

ここまでの話はマス広告/交通広告すべてに当てはまる話なので、タクシーに限った話もできればと思っているのですが、タクシーの特徴は、それらオフライン広告の中でも決裁権者の割合が高い、という点がやはりあるかなと思います。

ちなみにベルフェイスでは1番最初交通広告の中でもJRとタクシーの2種類を試しました。確か当時の値段ですがJRのトレインチャンネルは1週間で約900万円、タクシーは日本交通で1週間約210万円。約4倍くらい差があります。

それぞれ2ヶ月近く配信した後に、ベルフェイスのCMを見たことがある方約400人にアンケートをとったところ、JRで見た方が約57%、タクシーで見た方が約17%と約3.3倍でした(ちなみに他はYouTubeなどのWeb広告)。

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つまり、数をとるならJRですが、タクシーの方が少しだけ費用対効果はよかったと見ています。ただ、LTV/CACの値はタクシーがJRの1.1倍だったので正直そこまでの差はありません。ほぼ同じだったと見てもよかったと考えています。値段設定って意外と合理的に緻密に作られてるのか、と驚いた記憶があります。

しかし、タクシー広告は明確に決裁者リードが多かったと、コールするインサイドセールスチームが言っていました。決裁者がCMを見て、部下に翌日資料請求させる、といった行動もありました。リードタイム的なこととかも考えると、タクシーの方が電車よりは良いのかなというのが所感です。

あと細かいですが電車の場合音声が出ないので、タクシーの方が伝えたいことは伝わりやすかったりするかもしれませんね。

ちなみに3ヶ月だけテレ東のWBSでテレビCMも試してみましたが、1億弱使っただけだとまだ全然足りないような印象を受けました。あまり検索数にもはねなかったです。

そういうこともあって、マス広告や交通広告にBtoB企業が手を出そうと考えるのであれば、今実際にそうなっているようにタクシー広告はとっつきやすくて比較的効率が良い媒体と言えるのかなと思っています。

あと全くもって成果には関係ない話なのですが、タクシーってやっぱり芸能人の方とかもよく乗るので、松本人志さん・千原ジュニアさん・ケンコバさん・千鳥さんあたりがテレビで弊社のCMを話題にしてくれていたりしました。こういうのって、何となく嬉しいですよね。

まとめると

・特定の職種や特定の業界がターゲット顧客となる大抵のBtoB製品が、マーケティング目的で使うにはタクシー(などのオフライン広告)は効率が悪い

・しかしサービスを利用する可能性がある人の利用促進、市場啓蒙、採用など多岐に渡る効果があるため、それらを目的にすえた上で、必要なフェーズと判断するなら実施すべき

・オフライン広告をやると判断したなら、タクシーは比較的決裁者が多めなので、BtoBに向いている

という感じです。他にも知りたいことあれば、まだまだ勉強中の身なので全てに答えられるかはわかりませんが、Twitter等で連絡いただければと思います!


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