スピリットサークル2巻を読んで

スピリットサークルを読んだ感想を書いています。

最終巻まで読んだ人以外は読まない方がいいです。

ネタバレしかありません。

少年画報社のマンガDX+というアプリで全話無料で読めるので、とてもおすすめです。


8輪目 ストナ

ヴァンが殺した魔女が実は村の流行り病のために薬を作っていた薬草師だと風太が聞かされて愕然とする話。

人は基本的に自分の視点しか持てない。だから目の前の人間がどんな思いで、何を背負って、どんな過程で今そこにいるのか知らない。

誰でも一生懸命生きている。自分なりに考え、判断し、良かれと思って行動している人がほとんどだろう。

自分の目には悪に見えた人が、実はそうではなかったという話は、相手の視点を知れば当たり前のこと。

スピリットサークルでは風太がコーコちゃんと過去世の擦り合わせをすることで、自分の知り得なかった相手の考えや体験を知ることができる。

神官としてのストナの苦労や努力を何も知らず、自分が死んだ後に村人によってストナも殺されていたことや、その血を自分の墓に捧げられたことを知って呆然とする風太。

風太にはショックだったろうが、これこそが『自分以外の視点』という知らねばならないことであり、他人の事情に思いを馳せる視野の広さの獲得に繋がる経験だ。

これは現実でもとても大切なことで、それを教えてくれるこの漫画は素晴らしいと思う。

知らねばならないというか、相手にも相手の事情があるということを考えられるだけで、争いを防ぐ強力な効果がある。

9輪目 夢

フォンの過去世のその後を聞いたショックで寝込んでしまった風太のもとに、クラスの友達がお見舞いに来る話。

ノノちゃんだけ私服なのはどうしてなのかと思っていたが、風太のことが好きだから少しでもかわいく見せたかったのかなと思うと、微笑ましい。

風太が過去世の関係者がやたら自分の周りに多いことについてルンに質問すると、

『今、関係のある人たちは皆、過去にも未来にも関係あります。大抵どこかで会ってるものですよ。それが縁です。』

と返ってくる。

これも大切な視点で、記憶がないので初対面にしか思えないが、今世で関わっている人が皆、どこかしらの人生で関わりのあった人だとすると、また見え方が変わってくるものだ。

様々な関係性を、人生をまたいで経験し合う仲間。

これについては最終巻まで丁寧に描写され続けており、読んでいてとても考えさせられる。

今、とても仲の悪いあの人も、今回はその関係性で学び合おうと約束した存在なのかもしれない、とかね。

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そして最後にはまさかの鉱子ちゃんがお見舞いに来てくれる場面。

風太のことを殺す殺すと言っている割に、心配してお見舞いに来てくれるかわいい面を初めて見せる。

風太が起きた時にルンと話してとても良い笑顔をしていたが、最後まで読んでから読み返すと、それもよくわかる話だ。

コーコはルンが大好きだったから、ルンと再び楽しく話せたこの時間は、とてつもなく素晴らしい時間だったのだろう。

スピリットサークルは、最後まで読んでから読み返すことで、キャラの表情や言動の裏にある感情に気づけて面白い。

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鉱子ちゃんとのやりとりを終えた最終ページで、『嘘のように熱が引いていた』と風太のモノローグがある。

過去世を知ることで処理不能になっていた感情や情報が、現世で鉱子ちゃんとやりとりすることで、無事昇華されたということなのだろうか。

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10輪目 フロウ1

2巻の前半にして3つ目の過去世フロウ編に入るスピード展開。

この展開の速さは心地よい。

6巻の表紙裏あとがきにあるが、作者はこのフロウの過去世を描きたくてスピリットサークルの連載を始めたらしいので、2巻にしてフロウが始まるのも当然といえば当然か。

ウミとノノはフォンの過去世では出番なく、ヴァンの過去世でも自分が死んだ後にレイと関わるだけ。しかしフロウの過去世では最初から出てくる。

この過去世からウミとノノも本格的に風太の過去世と関わってきて、学びの関係性を結んだのだなと思った。

最初の過去世フルトゥナではテツもダイキもウミもノノも登場しなかった。

2つ目の過去世フォンでも4人とも登場しない。

3つ目の過去世ヴァンでテツとダイキと深く関わり合い、ウミとノノとも縁が生まれた。

そして4つ目の過去世フロウではテツ(クティノス)、ダイキ(アルボル)、ウミ(リハネラ)、ノノ(ハラーラ)としっかり関わる。

こうして学び合う関係性が徐々に増え、現世でも続いている。

今、我々の周りにいる近しい人もそんな風に何度も同じ生を歩んできた仲間かもしれない。

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フロウ編での鉱子ちゃんの過去世はロカ。霊的な能力が高く、様々なサイキックが発動していて、聡明だ。

フロウとストナの時はストナがフロウを殺し、ヴァンと薬草師の時はヴァンが薬草師を殺している。

それを理解した上で、

『問題はどちらが悪いか正しいかではなく、生まれ変わっては殺し合うという行為を繰り返しているということ。

互いが互いの不幸の運び手になっていることなのよ。』とフロウに伝える。

これまたとんでもなく大切なことで、

正しいか悪いかは人によって変わるし、時代によっても容易にうつろうものであり、ぶっちゃけどうでもいい。

それよりも、特定の関係性の質が繰り返されるということに気づき、それを解除しようと試みることが大切だ。

ロカは今回それを試みたが、フロウの方に切迫感もリアリティも必要性もなかったため、特に進展なく終わってしまった。

もし、フロウの方にも『よし、一緒にこの関係性を終わらせよう』という決意があったなら、違う結果になったかもしれない。

・・・いや、多分それでもダメだっただろう。

関係性の質を終わらせるために必要なことは、次の方太朗の過去世で明らかになる。

相手を許すこと。執着を手放すこと。

僕は方太朗の過去世が一番好きだ。

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ロカは霊視能力を初めとする優れたサイキックだったが、それだけでは何も解決できなかった。

結局フロウが帰ったあと、器の小さい王のイチャもんで一族皆殺しになったのだから。

特別な能力は人生を救わない。

人生を救うのはいつも自分自身の魂の光だ。

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リハネラはクティノスに好意を寄せていたが、フロウと結婚することになり、クティノスはリハネラの元を去ってしまう。

この時、前回のヴァンの過去世では無関係だったテツとウミの魂が、関係性の学びを始めたことが見てとれる。

フロウの時に結ばれなかった2人は、次の方太朗の過去世篇で関係性を進化させる。

スピリットサークルはあくまで風太の視点に絞って話を描いているので、他の登場人物の視点はほとんどない。

しかし、ウミとテツの物語もちゃんと始まっており、関係性を変えたり深めたりしながら、魂の研鑽は進んでいることが見てとれる。

こういうところがとても好きなのだ。

『今回は物語の都合上語られることはないが、この人たちの物語もちゃんとあるんですよ』という感じがとても良い。

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過去世の記憶の最後、ベットで寝ている時に『あ、こりゃ死ぬな』とフロウが思うシーン。

最初に読んだ時になんかすごいリアリティあるなと思っていたが、6巻のあとがきを読んで理解した。

あの場面は作者が退行催眠を受けた時に自分自身が見た本当の場面だったのだ。

どうりでリアリティあるわけだ。

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フロウの過去世から戻り、鉱子ちゃんに一族みんな殺された事実を知らされてまたしても愕然とする風太。

本当に鉱子ちゃんは風太と縁ができたせいでひどい人生ばかりだ。

フォン編では村の人に殺されて、ヴァン編ではヴァンに殺されて、フロウ編では王様に殺される。ひどい。

だが最終巻まで読むとわかるが、鉱子ちゃんの最初の風太と縁ができたコーコの過去世では、フルトゥナに対して強い許せない気持ちを持っている。

ヴァン編の薬草師の過去世では、ヴァンを強く呪って死んでいる。

その結果、ひどい死に様を迎える羽目になったのではないだろうか。

風太のせいで縁ができたとはいえ、風太の魂に鉱子ちゃんを毎回ひどい死に様にする力などあるわけがない。

自分の人生の結末は常に自分の選択の結果だから、許さない・呪ってやる・嫌いだ、という執着を強く握り締めた結果、

毎回毎回ひどい死に様になったのかもしれない。

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鉱子ちゃんからみんなが殺された顛末を聞き、風太は紙粘土をかってきてネコスフィンクスを作り始める。

風太が「おれ達みんな…何のために生きてるんだ…?」と言うと

ルンが「きっと、何かいいことがあるんでしょうねぇ」と返す。

この返しはなんかいいなぁと感じた。

たとえ無惨に殺された過去世があったとしても、それで人生や生命が台無しになったとも限らない。

そもそも、魂は傷つきもしない。

再び仲間と同じ時代に生まれ落ちて、出会い、仲良くなったり、愛し合ったりできる。

生きてること自体が何らかの素晴らしいことが起こる可能性を常に秘めた状態であり続けているわけであり、

仮に死んでもまた生まれるだけだ。

ルンのこのセリフは最終巻で再び登場するが、本当に良い言葉だと思う。

何のために生きているのか?

きっと、何かいいことがあるんだよ。

いつもありがとうございます。 あなた様のあらゆる苦厄が取り除かれますように。 薬師如来真言唱えさせていただきます。 おんころころせんだりまとうぎそわか