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ありがとうをもらう時


「ありがとうね」
「ごめんねぇ」
「助かるわぁ」

介護職はよくこのような言葉をもらう。人からお礼を言われたり、感謝されたりするのは、人の根源的な欲求を満たすもので、これをやりがいとしている方も多いのではないだろうか。
感謝の言葉がほしくてやってるわけではない、もちろんそうだが、嬉しいことには変わりない。

だが、一つ考えてほしい。その言葉をもらった分だけ、渡した人がいることに。

入居しているお年寄りたちは、日常生活の中で、至る所で介助が必要だ。自分が何かをしようとした時、介助をしてもらう。その度に感謝の言葉を述べるのだ。
自分が何かをする度に、述べなければならないその言葉。渡すだけの存在になってしまったと思わないだろうか。

人は関係的な生き物だ。持ちつ持たれつ、お互い様と言えるような、それこそありがとうが「行き交う」ことが理想的な関係だ。
介護される側、という関係のみしかその人に存在しないとすると、それは辛い状況に置かれていることになるだろう。
どれだけ関係を相互的にするのかが、介護の世界に問われている。


「ここをこうやって…足はこの位置で…ブレーキをかけて…前かがみになってください!いきますよ!」

「お~…いけたか…」

「立てました!僕ほとんど力使ってないです!どうですか??」

「せやなぁ…楽やった、合格やわ…」

「やった!ありがとうございます!!」


新人の立ち上がりの介助の練習を引き受けてくれて、合格の判定をする。
たとえ介護されることになったとしても、ありがとうをもらえる関係。
介護する側がありがとうと言える関係。
現場での新人教育は、一方通行になりがちな関係性を打破する、まさに介護そのものだ。

「ともちゃんの指導がええからやで…」

悪戯な笑顔を見せるその顔は、とても嬉しそうだった。

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