見出し画像

ペース走と速いjogは本当に必要なのか

陸上中長距離をやっている人なら必ず行ったことがあるペース走と速いjog。しかし、これらの練習法は世界のトラック種目トップランナーにとってトレンドな練習法ではなく、現在は過去の記事で紹介した閾値トレーニングが主流となっています。
本当にペース走と速いjogは必要な練習なのか。今回はこのテーマについて紐解いていこうと思います。

ペース走と速いjogとは

このnoteを読んでる方には、陸上競技をあまり知らない人もいらっしゃると思うので、まずペース走と速いjogについて説明します。

ペース走とは、一定の距離を一定のペースで走るトレーニングのことで、テンポ走とも呼ばれています。よく箱根駅伝などの特集で選手たちが集団で走っている姿を見かけると思いますが、あれも距離走という名のペース走です。
速いjogというのは、その名の通り普段のjog(jog=ジョギング)のスピードより速く走るjogのことです。選手のレベルによって速いjogの基準は違いますが、僕レベルだと1km3′40~4′00″辺りのペースが速いjogだと感じます。

ペース走に効果はあるのか

一般的にペース走を行うと高い状態でスピード維持能力が高まると言われていますが、いくつか問題点があります。

①負荷が思ったよりかからない
ペース走をやったことがある人なら分かると思いますが、ある程度走り続けると、ペース感覚とリズムを掴んできつさを感じず、楽に感じることがあると思います。つまり、ペース走のトレーニング効果というものは、曲線で表すと始めのうちは大きな上昇曲線をもたらしますが、少し経つとその効果も緩やかな曲線へと変わるということです。
モノを動かすために必要なのは止まっている状態から動きに入り、目的のペースに到達するまでの初動であり、そこにエネルギーが一番かかります。
途中から消費するエネルギー量が少なくなってしまうのであれば、当然負荷はかかりませんし、運動効果も薄れてしまうのです。

②レースに繋がりにくい、中途半端
ペース走を行う際はレースペースより遅めで長く走りますが、正直これがどのようにレースに繋がるのかが分からないところがあります。追い込むにしてはペースが遅いし、閾値にしては速いペースなので、悪く言えば中途半端。そのペースで一定に走れる力をつけたところで、メリットがあるのか正直疑問符がつくところです。それならば、レースペースを意識したインターバルや閾値強化につながるATインターバルを行った方が、設定タイムを上げて、本数を増やすことも可能になるので、これらのほうが間違いなく効果的だと思います。

速いjogに効果はあるのか

単刀直入に言うと、速いjogに効果はそこまで期待できません。理由としては、jogの効果を考えたときに、速く走る必要が全くないからです。

jogの目的は大きくまとめると、①有酸素能力向上、②ハードなスピード練習後の積極的休養を伴った回復の2点です。①の有酸素能力向上は、毛細血管を伸ばしたり、血管内への酸素を取り込む量を増やして、使えるエネルギー量を増やすことが目的で、②の積極的休養を伴った回復のjogは、損傷した筋肉の回復、そして超回復による筋肉の強化のためで、これが全く走らずに回復する完全休養ではなく、積極的休養の方が重要となる理由になります。

ここまで書くとお気づきの方がいるかもしれません。これら2点を目的とするjogという練習法は、速く走る必要がないと言うことです。
ペースが速いと毛細血管を末端までじっくり伸ばす効果が薄れてしまうし、回復するどころか更なる筋肉へのダメージを生み出してしまうなど、むしろ逆効果ばかりです。

一番良くないのは、jogなのにタイムの設定を決めて走っている人。その日によって調子や感覚も違うのに、走る前から「1km4′00″以内」や「1km4′30″以内」という風に行っている人は、jogの意味をあまり分かっていないと思います。

またしても”駅伝文化”が…

ここまでペース走と速いjogについて批判的に述べてきました。しかし、日本では多くの選手がこれらの練習を取り入れています。一体なぜなのでしょうか。

それは結局日本中長距離界全体がトラック種目ではなく、駅伝に重きを置いているからです。駅伝は如何にして自分のペースを維持して次の走者に襷を渡し、チーム全体の勝利に結びつけるかを重視する競技。そうなってくると、必要な練習法は一定の距離を一定のペースで走る練習法、つまりペース走になるというわけです。なので、ペース走を行う理由も概ね理解できます。

しかし、世界で主流なのはあくまでトラック種目。オリンピックや世界陸上で日本人選手が通用していない現状から考えると、やはり駅伝にアプローチした練習で世界と勝負することは不可能なのです。そうなるとやはり必要な練習法はペース走ではなく、世界のトップランナーが行っている閾値トレーニングであることは間違いないと思います。

おわりに

今回は1500~10000mなどのトラック種目を重点に置いたうえでペース走と速いjogを考察したので、駅伝やマラソンを中心に頑張っている人は「そんな意見もあるんだな~」という感じで聞いてもらえればと思います。
ただ、速いjogに関してはどう考えても全くメリットがよく分からないので、もし理論的に説明できる人がおられましたら、是非教えてください。
それではまた👋

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?