「連ちゃんパパ」小間切れ雑感

(5月ぐらいに書いた文ですが、いまさらあえてのっけてみます)

ツッコミどころか鬱展開だとかで話題の漫画「連ちゃんパパ」を一気読みした。

「30代の高校教師・日ノ本進は妻雅子と息子の浩司と3人で普通の家庭を築いていたが、ある日雅子が蒸発。直後やってきた闇金OKローンのヤクザから、雅子がパチンコに家計つぎ込んでつくった借金300万円を返せと突き付けられ…」

(以下、ネタバレ多々含む小間切れ雑感です)

・43巻、ってなっていて「えっ」と思われる方も多いかもしれないが1話で1巻、1話につき20P。しかも話のテンポはよいのでスイスイ読み進めることができる。

・そして読み進めていくと…出発点では進は完全な巻き込まれ被害者なのだが、そこから回転して「堕落」していく。雅子を追いかける過程で、大阪で頼った友人がパチプロで手伝っているうち中途半端に稼いでしまった、あとからみればこの時点で既にポイントオブノーリターンだったというのが怖い。

・進は教師であったので話に説得力があり、地頭機転も利いて胆力決断力も持ち合わせているんだが、それを悪用するとろくでもない方向に向かう。周囲を巻き込んでものすごい害をもたらすことになる。また、悪用する際には逡巡迷いがない。それがサイコサイコといわれるゆえんだろう。

・輪をかけて、雅子のよくわからないバイタリティが恐ろしい。逃避行でも男がとぎれずいっときのあぶく銭でも大金せしめて借金返したりできてしまっているのが。また彼女もマメに働くことはでき、いっときはパチンカスになった進を説教するぐらいにはなっていたりするのだが、はずみで自分がふたたびパチンコ依存に借金つくって逃げる、また進に保険金かけてフィリピンで闇金ヤー公に殺させようとするスキームは思いつくなどクズっぷりが半端ない。

・闇金のヤー公。浩司を自分に重ねて情にほだされて世話するなど主人公夫婦がど外道に突っ走る中真っ当にみえてしまうことがあるのだが、おでんがうまいと涙した相手をフィリピンでぶっ殺そうと決断はできるのでやはりヤー公である。それを豪運と機転で大逆転してしまう進もより恐ろしいのだが。

・そしてそんな両親や闇金のおじさんをみて育ったかっこうの浩司。基本は父譲りのそれなりの正義感、機転をもった子なのだが、やはり進をパチンカスにした一押しをした子でもあり、パチンカスの才能はありそうではある。ただその前に両親を愛しながら相当憎んでそうでその方面の爆発がないのかとは心配になる。

・最後のオーラスのオチ、「やっとこパチンコ依存をやめて田舎で立ち直れそうだと思ったらヤー公がいていい(土地ころがししたいので)といった土地はそうするだけあって高速インター予定地の近傍であり、ただの畑だと思ってた隣には交通便利になるのでパチンコ出店されそう」って、一瞬はブラックなオチとは思ったんですけど、ふた騒動ぐらい起こしながらきっちり生き延びるんじゃないかなとは思わせる(そのぐらい彼らのバイタリティを読者はこれでもかと思い知らされている)ある種「ハッピーエンド」かなと。浩司と、双子の娘の将来は心配ではあるが。

・まあこれ、ほんとパチンコ自粛閉店期間中にバズったのが幸いでしたね…

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