ボンベ

上手く泳げないボクは
足に重りをつけられ
暗い海の底の
ある一定の箇所を彷徨っっている
月末になると
翌月分の酸素ボンベが海の底へ降りてくる

月の中頃になると
来月分の酸素ボンベが今月も降りてくるのか不安になる

いっそのこと
今月で使い果たしてしまおうかと
よく思う

時折、木漏れ日の様な光が
暗い海底に注ぎ込む
海底の奥底に
まばゆい魚たちが戯れていたことに気づく
サンゴのベッドで寝ていたことに気づく

月末の29日
酸素ボンべは降りてこなかった
いよいよ かと思った
いよいよ 今月末でシカバネとなり
水面に浮上するのかと思った

腐り 朽ちた足元から重りが外れ
私は浮上する
いよいよ 今月末がその時かと思う
いよいよ浮上する

酸素ボンベが2個や3個
10個や100個でも持っていたのなら
月の中頃に訪れる不安なんぞには
出くわさずに済んでいたのだろう
逆にどうやって使い果たそうかと
苦難していたのかもしれない

不安は30日周期で訪れていた

深海 50m
だろうか
深海100m
だろうか

川のせせらぎも
木々のざわめく音も聞こえない
虫たちのハーモニーというものも
想像ができない

限られたボンベと
サンゴの見えない深海

重い重力で叩きつけられる世界
魚や貝は死なない限り浮上しない
重りが無ければ浮上してしまう世界
誰かが勝手に決める有限のボンベ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?