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D2Cという幻想

最近D2Cモデルで起業準備中という方や、ピボットや新規事業として、D2Cブランド立ち上げるという話をよく聞くようになった。

D2Cは幻想だと言うつもりは無いけれど、若干ブームのような過熱感を感じていて、D2Cが成功のおまじないのように聞こえることがあるので、あえて自分への備忘メモとして書いてみようと思う。

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新しいモデルとして紹介されるようになったD2Cだけど、実は定義が曖昧だったりする。広義では、「自社で商品を企画・開発し、ユーザーに直接販売する事業」で、アパレル業界のSPAに近い。以前はSPAモデルをオンラインで行うモデルをD2Cと考えていたけれど、必ずしもオンラインに限定されない。むしろ、米国で成功しているといわれているD2Cブランドはオフラインの店舗を持っていることが多い。D2Cの定義だけでひとつブログが書けそうだけど、今はそれが目的では無いので、一旦「自社で商品を企画・開発し、ユーザーに直接販売する事業」を広義のD2Cと考えることにする。

最近D2Cでよく聞くのは、アパレルや化粧品、日用品、食領域などで、マスプロダクトでは満たされないニッチなニーズに対応したプロダクトを、インスタを中心としたブランディングによって立ち上げよう、というもの。
まさに”The D2C”という感じだけど、化粧品やサプリなど、この領域では以前からネットでオリジナルブランドを販売している事業者がかなり多い領域だったりする。インスタを使った今風?なブランディングではないが、北の達人コーポレーションなどは隠れた?優良企業だし、あのライザップ(健康コーポレーション)ももともとはおからクッキーをネットで売っていた。(北海道の企業は○○コーポレーションが多い?)

その他にも、ネットがメインチャネルの化粧品ブランドや、サプリメントは数え切れないほどある。

これを考えると日本においてもD2Cというモデル自体は決して新しくなく、これまでも普通に行なわれてきた。では、なぜこれほどまでに注目されているのか??


それは、WarbyParkerやHubbleをはじめとする、米国のブランドが成功事例として、取り上げられたためだ。Warbyのブランディングや、直販モデルが注目されて、抽象化されてD2Cモデルとして取り上げられるようになった。ただ、彼等はD2Cブランドを作ろうというモチベーションで会社を作ったのではない。
クソ高い眼鏡に憤りを感じ、安価に販売できるビジネスモデルを検討し、試行錯誤を経た結果、今の形にたどり着いた。Hubbleも同様だ。
つまり、D2Cで何か物を売ろうという発想ではなく、顧客(というか多くの場合、創業者自信)が必要なプロダクトを作っていたら、結果としてD2Cというモデルだった。D2Cというだけではなく、なにかしらの"新しい"ビジネスモデルを構築して、価格が大きく下がったり、品質が大きく改善したりしたため、成功のインパクトも大きかった。

どのくらいのインパクトかというと、


・ひげそりカテゴリでは、大手のジレットのシェアが2010の70%から、2016年には54%まで落ちた一方、DSCとHarry’sは2015年の7%シェアから2016年には12%にまで拡大
・マットレスカテゴリでは100-200のD2Cブランドが存在し、2016年からの1年でシェアが約2倍の10%に
・コンタクトレンズでは、J&Jの成長率が年8%なのに対して、Hubbleは”月"+20%で成長している。シェアも5%程度に


という規模感だ。

D2Cモデルが新しく出てきたね。というレベルではない。市場規模の5-10%を新興のD2Cスタートアップが獲得してしまっているのだ。米国では、D2Cがトレンドとかではなく、既存の業界に大きなインパクトを与えている。米国でD2Cが話題になるのも頷ける。

ひるがえって日本の状況をみてみると、、
・ニッチだけど、ニーズが強いオリジナルブランドをネットで直接ユーザーに販売する
・ブランディングやマーケはインスタなどのソーシャルを活用
というケースが多い気がする。
確かにユーザーにとっては価値のあるプロダクトで、あると嬉しいし、事業者としては売上がたつのだけど、米国のように業界にインパクトを与えるまではいっていないというのが実感だ。(当然、ブランディング次第では大きくインパクトを与えうるが。。←これについては米国でセレブを活用してスケールさせているD2Cブランドもあるので、別で書こうと思う。)

また、ShopifyやWooCommerceによって、これまで大手ECプラットフォームやハンドメイド系販売プラットフォームなどの上で販売していた事業者や個人事業主も、「自社で商品を企画・開発し、ユーザーに"自社サイトを通じて"直接販売する」ことが簡易になり、いわゆるD2Cの形態をとった事業者数は増えていくだろう。

さらに、webメデイアやインフルエンサーが”新しいマネタイズ手段”としてD2Cモデルでブランドを販売するという動きも増えていく。メディアやインフルエンサーの世界観を反映したプロダクトをつくるることができれば、読者やファンが購入してくれる。

つまり、D2Cモデルは参入障壁は低いので今後ますます数は増えていく(そういった意味でインパクトはある)。そうして、特に高単価・高粗利のプロダクトを持つ個人事業主やインフルエンサー、新しいマネタイズ手段を模索するメディアがD2Cモデルで持続可能な収益を上げることは可能になると思われる。
ただし、米国のD2Cモデルの企業のように、一社で業界に大きなインパクトを与えうる企業が日本でも生まれるかどうかはまだわからない。単に、ニッチなニーズに対応した商品を販売するだけでは、事業規模は限られてしまう。マスプロダクトで解決できないプロダクトを販売している以上、スケールが課題になる。(そういった意味で、プロダクトの横展開やアジア展開を志向する国内D2C企業は今後増えるだろう。)

当然、これから新しいモデルを構築したD2Cブランドが、既存の業界にインパクトを与える規模になることも十分にあると信じているし、スナックミーもそのような企業になりたいと考えているけれど、現時点ではまだその規模に達してるプレーヤーは日本ではあまりいない。

スタートアップにとって、D2Cモデルは参入障壁が低いし、収益も立てやすいため、ある程度の規模までは立ち上げることはできる。
ただし、
・どのくらいの規模を目指すのか?
・もし、中小事業者として回していける程度の収益を目指すのではなく、業界にインパクトを与えうる規模を目指す場合、なぜそのようなことが可能になるのか?

ということは常に意識しておきたいし、小さいブランドで終わらせないためにも、
・なぜ自分達がその事業をやるのか?
という問いと熱意もとても重要だ。せっかくのチャンスを幻想で終わらせないために。

こちらも
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hattori。食のスタートアップ「スナックミー」代表。コンサル→VC→スタートアップ起業。
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