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BTSはなぜ努力し続けられるのか?

2月18日が「なんでもない日」から「特別な日」に変わって4年。私らしいソンムルを贈りたいと、これまで3年連続で“書き物”を捧げてきた。あまりに忙しく、今年は無理かも…とあきらめかけたが、私のプライドが許さない。自分との戦いに勝利し、今年も懲りずに私なりの考察を文字にして、大好きなホビへ贈ります。

はじめに

デビューを勝ち取る、1位をとる、賞をとる、大きな舞台でパフォーマンスする…。そうした軌跡を重ねて、彼らは押しも押されもしない世界的スターになった。これは一朝一夕で成し遂げられることではなく、誰にでもできることでもない。これを実現させたのは、彼らの努力以外の何ものでもないことを、ARMYのみならず、多くの人が知っている。私はBTSを好きになり、こんなにも超一流アスリートのような努力を重ねるアイドルがいるのかと驚いた。そして、この努力こそが彼らをスターにした要因なのだと理解した。

スターになった彼らは、地位や名誉に甘んじることなく、より良い姿を見せようと努力し続けている。もはや彼らがどんなパフォーマンスをしようが、無条件で支持するファンがいるにもかかわらず。そんな真摯なスタンスに心を打たれ、ファンはさらに彼らを愛し、誇りに思うのだ。

私は、彼らのたゆまぬ努力に尊敬のまなざしを向けると同時に、「なぜ努力をし続けられるのか?」という疑問を抱いた。努力をし続けられる人と、そうでない人の差は何なのだろう。その疑問を解消したくて手に取ったのが、『GRIT やり抜く力』(アンジェラ・ダックワース著/ダイヤモンド社/2016年)だ。心理学者である著者は、アメリカで重要視されている「グリット(=やり抜く力)」の研究の第一人者でもある。この本をガイドにしながら、BTSのメンバーのように、努力をし続けられる人の特徴やその理由をひも解いていきたい。

※ここでは、「努力し続けられる力」を、「やり抜く力」と解釈して考察を進めます。

才能だけでは、成功は手に入らない

著者は、多くの人は超一流アスリートやアーティストなどの成功者を見ると、「その人に才能があるからだという先入観を持ってしまう」と述べている。圧倒され、何も考えずにただ「生まれつき才能がある人」と決めつけてしまうのだと。しかし、ニーチェの次のような言葉を借りて、才能だけが成功の理由ではないと主張している。

天分だの、天賦の才だのと言って片づけないでほしい! 才能に恵まれていない人びとも、偉大な達人になるのだから。達人たちは努力によって偉業を成し遂げ、(世間の言う)天才になったのだ。彼らはみな、腕の立つ熟練工のごとき真剣さで、まずは一つひとつの部品を正確に組み立てる技術を身につける。そのうえでようやく思い切って、最後には壮大なものを創りあげる。それ以前の段階にじっくり時間をかけるのは、輝かしい完成の瞬間よりも、むしろ細部をおろそかにせず丁寧な仕事をすることに喜びをおぼえるからだ。

BTSは、メンバーが認めるダンス隊長のJ-HOPEを中心に、動きのタイミングや速さ、手足の角度、シルエットなど細かな部分にまで神経をとがらせ、何度も何度もやり直して、1つのパフォーマンスを作り上げている。そこには、ファンに完璧なものを見せたいという想いはもちろん、「細部をおろそかにせず丁寧な仕事をすることに喜びをおぼえる」という感覚があるからに違いない。根っからの職人気質のようなものを全員が持っていて、妥協を許さないことをチームの総意として共有できているのだろう。

著者は、「才能」「努力」「スキル」「達成」の関連性について、非常に納得感のある理論を主張している。その理論によると、「才能」から「達成」に至るまでの過程には、「努力」が2回影響するのだという。

『才能』とは、努力によってスキルが上達すること。いっぽう『達成』は、習得したスキルを活用することによって表れる成果のことだ。(中略)複数の人びとが同じ状況に置かれた場合、各人がどれだけのことを達成できるかは、『才能』と『努力』の2つにかかっているということだ。(中略)『スキル』は『努力』によって培われる。それと同時に、『スキル』は『努力』によって生産的になるのだ。

これをわかりやすく表すと、次のようになる。
1回目の努力「才能 × 努力 =スキル」
2回目の努力「スキル × 努力 =達成」

才能だけでは達成に至らないし、努力してスキルを身につけても、さらにそこから努力を重ねなければ達成にはたどり着けない。スキルを身につけて満足する人が多い中、それだけでは満足せずにスキルを磨こうとする人こそ、成功を手にできるということだ。この理論は、まさにBTSの成功の理由を示しているように思えてならない。

「やり抜く力」を持つ人の4つの共通点

こうなるとますます、努力し続けられる人とそうでない人との違いが気になってくる。著者は、研究を重ねる中で見えてきた、「やり抜く力」を持つ人たちに共通する4つの特徴を次のように挙げている。

1)興味
自分のやっていることを心から楽しんでこそ「情熱」が生まれる。「やり抜く力」がある人たちはいずれも、自分の仕事のなかで、あまり楽しいとは思えない部分をはっきりと認識しており、多くの人はちっとも楽しいと思えないことも、少なからず我慢していた。とはいえ全体的には、目標に向かって努力することに喜びや意義を感じていた。彼らは、尽きせぬ興味と子どものような好奇心をもって「この仕事が好きだ」と言う

2)練習
「粘り強さ」のひとつの表れは、「きのうよりも上手になるように」と、日々練習を怠らないことだ。だからこそ、ひとつの分野に深く興味を持ったら、わき目もふらずに打ち込んで、自分のスキルを上回る目標を設定してはそれをクリアする「練習」に励む必要がある。自分の弱点をはっきりと認識し、それを克服するための努力を日々繰り返し、何年も続けなければならない。
また、「やり抜く力」が強いということは、慢心しないことでもある。分野を問わず、どれほど道を究めていても、「やり抜く力」がある人たちは、まるで決まり文句のように「何が何でも、もっとうまくなりたい!」と口にする

3)目的
自分の仕事は重要だと確信してこそ、「情熱」が実を結ぶ。目的意識を感じないものに、興味を一生持ち続けるのは難しい。だからこそ、自分の仕事は個人的におもしろいだけでなく、ほかの人びとのためにも役立つと思えることが絶対に必要だ。
なかには、早くから目的意識に目覚める人もいるが、多くの場合は、ひとつのことに興味を持ち続け、何年も鍛錬を重ねたのちに、「人の役に立ちたい」という意識が強くなるようだ。「やり抜く力」を持つ人のなかでも、成熟を極めた人たちは、みな口を揃えて同じことを言った。「私の仕事は重要です。個人的にも、世の中にとっても」

4)希望
希望は困難に立ち向かうための粘り強さだ。希望は「やり抜く力」の最終段階だけでなく、あらゆる段階に欠かせない。最初の一歩を踏み出すときからやり遂げるときまで、ときには困難にぶつかり、不安になっても、ひたすら自分の道を歩み続ける姿勢は、はかり知れないほど重要だ。
私たちはときに大小さまざまな挫折を経験して、打ちのめされる。打ちのめされたままでは「やり抜く力」も失われてしまうが、立ち上がれば「やり抜く力」を発揮することができる。


読めば読むほど、これら4つがBTSのメンバー1人1人の特徴と合致していることにファンは気が付くはずだ。彼らにとっての興味は、ダンスであり、音楽であり、チームでのパフォーマンス。俳優志望だったJINはきっと、当初はこのどれにも興味があまりなかったかもしれない。けれど、メンバーたちと練習に打ち込む中でどんどんと興味が芽生えていったに違いない。ダンスだけ、音楽だけに興味があったメンバーたちも、チームでパフォーマンスを作り上げていくことに喜びを感じるようになり、「このメンバーでデビューしたい」「このメンバーで上に行きたい」という想いを抱くようになったのだろう。

目的意識が「天職」を生み出す

「やり抜く力」を持つ人の4つの共通点のうち、3つめの「目的」について、著者は次のように書いている。

「やり抜く力」の強い人びとは、普通の人に比べて、「意義のある生き方」「ほかの人びとに役立つ生き方」をしたい、というモチベーションが著しく高い。さらに「目的」のスコアが高いほど、「やり抜く力」のスコアも高いことがわかっている。
これはべつに、「やり抜く力」を持つ人たちはみな聖人だという意味ではない。「やり抜く力」のきわめて強い人は、自分にとっての究極の目標は、自分という枠を超えて、人びとと深くつながっていると考えている、ということだ。

そして、著者はさらに調査によって、自分の職業を『天職』だと思っている人はごくわずかで、そういう人はそれ以外の人に比べて「やり抜く力」が強いことを明らかにした。

私は去年の今日、『I’m your hope. 誰かの「希望」であることを「天職」と呼ぶ男、J-HOPE』と題して、「天職」をテーマにコラムを書いた。その中で、J-HOPEはファンの存在を生きる目的として、アイドルという仕事をしているのだと述べた。著者の主張はこのことと合致しており、私はJ-HOPEのみならずメンバー全員が、「天職」としてアイドルを、BTSのメンバーを全うしているのだと信じて疑わない。

また、「ほかの人びとに役立つ生き方をしたいというモチベーション」に関しては、3年前に書いた『BTSはなぜこんなにも愛されるのか?~メンバー全員「GIVER」説~』で取り上げた、GIVERの特性そのものである(詳しくは本編をお読みください)。「やり抜く力」をテーマに考察を進めながら、「天職」や「GIVER」との関連を見つけられたのは、これまで考えてきたことに間違いはないのだと思えて、とてもうれしい発見だった。

話を戻すが、「やり抜く力」と「目的」という2つの概念は、一見矛盾するように思える。なぜなら、「やり抜く力」は利己的な意味合いが強く、「目的」は利他的な意味合いが強いものだからだ。著者はこの点について、「どうしたら自分の最重要目標に集中しながら、広い視野を維持して、他人のことを気にかけることができるのだろうか?(中略)ほかの人びとが関わる余地は、いったいどこにあるのだろうか?」と、疑問を呈している。

そして、先に紹介した3年前のコラムで取り上げた『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』の著者、アダム・グラントの次の言葉を引用し、疑問に答えている。

ほとんどの人は、自己中心的な動機と利他的な動機は、ひとつのもの(動機)の両極端な姿であり、どちらか一方しかあり得ないと思っている。しかし実際には、このふたつは完全に別々のものであることが、これまでの研究において明らかになっている。つまり、どちらの動機もない場合もあれば、両方の動機が存在する場合もある。

これは「勝者を目指すと同時に、人助けを心がけることも可能」であることを示しており、彼らがスターとして君臨しながらも、多くの人の心を救っている事実と一致している。

また、著者は「目的」について、ある発達心理学者の言葉を借りて、次のように説明している。

『目的』を持つためには、もうひとつの『啓示』が必要となる。すなわち、『私ならきっと変化をもたらすことができる』という確固たる信念を持ち、行動を起こす覚悟が必要なのだ。

ここで述べられている「確固たる信念」は、言い換えれば「自信」なのだと思う。誰かの役に立ちたい(=ARMYの役に立ちたい)という「目的」を持つ彼らは、「私ならきっと変化をもたらすことができる」と堂々と言えるように、胸を張って舞台に立てるように、努力をし続けるのだ。彼らにとって、その「目的」を達成することは「希望」そのものなのだから。

「希望」が彼らを後押しし、さらに努力が積み重なる。この「努力」と「希望」のエンドレスループこそ、彼らが努力し続けている理由であり、彼らを成功へと導いた要因なのだろう。

おわりに

彼らの「努力」の継続に欠かすことができない「希望」を、その名に刻んで背負い続けている、我が推しJ-HOPE。あなたは本当にすごい人。今は天職のために努力ができない期間だから、もどかしく思う日もあるだろう。それでも私たちはわかっている。あなたがこれから先もずっと、J-HOPEとして努力し続けるということを。私たちの希望、誕生日おめでとう!!!

2024年2月18日


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