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【皐月賞予想】迷うのも自分、断ち切るのも自分。信頼と疑念の交差点にて

皐月賞馬とは。昔は速い馬と評されることがあった。内回りの芝2000mは速力と機動性が問われるからだ。今もなお、その格言は生きている。だが、昭和の格言が令和の世で生き残るには、ちょっとした変化を加えないといけない。時代とは元号では区切れない。時間を区切るのは便宜上のことであり、時は永遠に途切れることなく、刻まれていく。時の刻みは決して止まることも変わることもない。変わるとすれば、表現であったり、味付けの部分だろう。見せ方ひとつで古臭いものも斬新にみえる。表現ひとつで磨き上げられるものだ。角度を変えることもそのひとつ。たまには反対側から観察してみる。大事なことだが、案外みんな、動かない。主観を疑うことこそ、競馬が教える大切なことでもある。

近年の皐月賞は速いだけではなく、少し角度がついた速い馬にふさわしい。遠慮なく言えば、変態性を内包する王道から少しはみ出るぐらいがいい。今週はそんな馬を探すことにした。

そんな週の真ん中に悲しいことがあった。哀しみを振り払うためにも、今週はあえてドライにデータを並べてみる。逃げているかもしれない。仕方ない。逃げたくなるときもある。だが、逃げない。「そこに競馬がある限り」私は競馬の観戦者としてありつづける。9年前の春、そう固く誓った。

過去10年、皐月賞で前走1、2着馬【10-9-8-83】、3着以下【0-1-2-60】。直前のレースで2着以内に入っていないようでは、皐月賞で好走できない。トライアルでの激突が減り、横の比較が難しくなったとしても、ここは変わらない。直前に世代限定戦で好走できないと、皐月賞馬にふさわしくない。舞台がどうであれ、クラシックはトーナメントのような勝ち抜け戦なので、敗者復活はその後のステージに持ち越される。

前走1、2着のうち、前走上がり1、2位【7-6-4-53】。中山は決め手を問わない舞台でもあるが、やはり速い馬が勝つレースらしく、末脚の根拠は欠かせない。前走1、2着馬、前走上がり1、2位のうち、継続騎乗は【5-5-4-29】。さらに4枠から内だと【4-3-1-15】。確固たる末脚を繰り出し、2着以内に入るという力の根拠を示し、なおかつ同じ騎手が乗れば、多頭数の内枠に入っても、前走と同じパフォーマンスを引き出してもらえる。ごちゃつき、平静さを失わないなら、内枠は速く走るための最上の条件だ。4つあるコーナーごとにアドバンテージが加わってくる。

以上のデータに合致するのはミスタージーティー。共同通信杯7着、若葉S1着。王道を歩めなかった一連の戦歴はこの馬が皐月賞馬にふさわしい角度のついた馬である証拠だろう。若葉Sはラスト800m12.0-11.8-11.4-11.4。前半がスローだったのは事実も、阪神の直線11.4-11.4を差し切った脚力は見落とせない。ゴールまで一切、落ち込まず、逃げ込みを図るホウオウプロサンゲの優秀な粘りを断ち切った末脚はもっと評価されるべきではないか。ラストチャンスで覚醒したタイミングも絶妙で、滑り込めたのは、運ではなく、必然ではないか。

今週のできごとに引っ張られたわけじゃない。あの感情は馬券に昇華したくない。あれは切っておくべきだろうと、一時は取り下げも考えたが、データがあと押しするものを無視するのも自分の流儀ではない。私が皐月賞馬にふさわしい馬を導き出した結論が、ミスタージーティーなら、単勝を買うよりほかに選択肢はない。馬券とは主観を疑うことでもあるが、それを信じることも馬券だ。

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