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”顧客が求めるもの”がわからない企業

昨今色んなものの値段が上がっている。

スーパーに行くと以前は100円程度で買えたものが
150~200円程度で売られていることも多く、
レジで合計金額を見て驚くことも増えた。

日本円がかつてないほど弱いために
原材料を輸入に頼る加工食品メーカーは
値段を上げざるをえないだろうし、
仮に国産原材料を使っていたとしても
電気・ガスなどの光熱費の高騰、
国内物流費の高騰により
値段を上げざるをえない状況になっている。

だがこればかりは嘆いていても仕方ない。

企業である限り利益が出ないことには
存続することができないので
値上げという選択をすることは
ある意味で当たり前のことなのである。

この値上げのドミノ倒しがぐるっと回り
私達の給与が上がるところに反映されるまで
かなりのタイムラグはあるだろうが、
それまでは耐えるしかないのだろう。

まさに私が働く会社でもこのような問題に
直面している。

これまで何度かに渡って値上げ交渉を
顧客に対して行ってきて、
その都度値段は上げさせて頂いてきた。

しかし、当然ながら顧客もすんなりと
「あぁ、そうですか」と
値上げを受け入れるわけはない。

あれやこれやと交渉材料を持ってきて
私達に値上げさせまいと抗戦してくるのだ。

先ほど書いたようにこの値上げドミノは
いつか周り回って自分の給与に反映される日が
くるはずであるが、そこにはタイムラグがある。

そのタイムラグが大きくなる大きな理由こそが
この値上げに対する対応だと私は思っている。

ドミノ倒しをしている時に都度その流れを止めて
何とか次を倒すまいとしているので
いつまで経っても次に値上げの流れが
進んでいかない。

ちょうど先日春闘で各大手企業が
組合の提示額を満額合意したと華々しく報道されたが
大手企業はこのドミノ倒しの上流にある企業なので
そのようなことができるのだ。

私達が働く中小企業にこの賃上げの流れが
やってきたときには
もはや平均株価の上昇は止まり、
何か反動が起きてからに
なってしまうのではないか。

そんなことすら考えてしまう。

だが、そんなことを言っていても仕方ない。

自分たちにできる事は何かを考え、
それをやっていくしかない。

私はメーカーの商品開発をしているが、
本来の仕事は新しい商品を生み出して
変化し続けるニーズをそれらの新しい商品で
つかみ続けることである。

だが、このような状況では既存商品を
改良してスペックを変えずに
原材料コストを下げる方法などを
検討することも行っている。

商品開発は前に向かった仕事であるが、
どちらかというと後ろ向きな仕事である
このような仕事もやってみると
面白さがあるものである。

先日もとある主要原材料を違うメーカーから
購入した場合のコスト試算を行おうと
新しいメーカーにコンタクトをした。

私達の商品の主要原材料はあまり世の中に
沢山流通しているものではないので、
過去から既に候補先となる企業には
何度かアプローチしていたのだが、
あまり目立ったコストダウンにはならなかった。

しかし、こんな世の中なので
これまで大手企業向けに独占で加工をしていた
メーカー(大手企業の子会社)が他の仕事も受けるように
なったという情報を聞いたので
そのメーカーに問い合わせをしてみた。

そのメーカーの商品を検討したいと伝えると
Welcomeな回答が返ってきたので
心の中でガッツポーズをしながら、
ひとまずお互いにビジネスになりそうな
話なのかをすり合わせることにした。

話ばかりが進んで蓋を開けてみたら
箸にも棒にも掛からぬものであれば
そこまでかけた時間もコストも
完全に無駄になってしまうからである。

なので、まずは私達がどのような品質のものを
どのぐらいの量必要なのかを伝え、
それに対して概算のコストを算出して
土俵に乗りそうなら具体的な検討を
スタートすることで双方合意した。

先方の担当者からまず品質面の話が出てきたので
私はそれを取りまとめて先方に提出した。

それと合わせて必要な量を購買部から
情報を聞いて投げかけたので
後は概算見積もりが出るだけかと
思って待っていると、先方から返信が来た。

製品の要求品質欄に書かれていた項目の
管理内容についての質問である。

先方としても自分たちに実現不可能な
仕事は受けるわけにはいかないので
そこに対して質問しているのだろう。

そんな風に思いながら私はそれに返信をした。

ところがである。

それ以降も先方からは細かな点について
何度も何度もメールが送られてきたのである。

当然それを無視するわけにはいかないので
都度対応するのだが、
7~8回目の返信を書いている時にさすがに
私もウンザリしてきた。

先ほど書いたように私達が求めているのは
このような細かな情報ではない。

こちらとしてはコストダウンが最大の目的なので
概算コストが出てきて初めて
細かな調整をしたいと思っているのに
本来欲しいと思っている情報ではなく
先に細かなことに対する質問ばかりがやってくる。

正直この時点でこの会社と付き合っていくのを
やめたくなってしまった。

無論、これはビジネスなので
私の感情だけでそんなことはできない。

だが、あんなにハッキリとこちらが求めているものを
提示して合意に至ったにもかかわらず
こんなにもこちらが求めるものが出てこないのは
先方には”顧客の求めるもの”が見えないと
いうことではないかと思うのだ。

恐らくこれまで大手企業の子会社として
親会社からの仕事しか受けていなかったので
新規の顧客がどのようなものを求めているのか
手探り状態なのであろうが、
それにしてもあまりにこの対応は酷いと
私は思ってしまった。

これは裏返せば自分たちの思うように
話を持っていくことができる可能性があると
考えることもできる。

しかし、そこにはとんでもないほどの 
労力がかかることは火を見るよりも明らかである。

検討の入り口ですらこんなに
コミュニケーションコストがかかっているのに
それが実現する日には
世の中の流れは変わってしまうであろう。

今日もまた別の新規業者の方と
コストダウンについて検討を進めていく予定だが、
お願いだからコミュニケーションコストが
かからない相手が来てほしい。

商品を開発する前にパーマンに出てくる
コピーロボットを開発して、
私のコピーをコミュニケーションコストがかかる相手に
対応させる方が確実にコストダウンにつながるのではないか。

そんなことを考える金曜日の朝であった。

お読みいただいてわかるように
今日の記事は完全に私のモヤモヤを
発散するための記事である。

私のことを聖人君子の様に思ってくださる
読者の方も時々いらっしゃるが
私も結構モヤモヤを抱えている。

このモヤモヤに火をつけて
今日も仕事の成果につなげてやりたいと思う。

ある意味このモヤモヤは
仕事を進める最高の燃料なのかもしれない。



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