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これからの時代の働き方

昨日とある会社を訪問した。

実に4年ぶりの訪問になったその会社は
わが社の商品の加工を行ってくれている
いわゆる委託加工先である。

非常に規模は小さく、従業員数は社長を含め
7人という会社。

だが、非常にフレキシブルに対応してくれて
品質も安定しているので、
非常に助けられている会社でもある。

この会社には例の感染症が流行する前には
時々訪問していた。

立地的にわが社の最大手取引先に近く、
そこで商談がある際には顔を出して
試作品の進捗状況や新規の案件について
軽く話をしたものであるが、
それも感染症の拡大でできなくなった。

そうして足が遠のいていたのだが、
昨日実に4年ぶりに訪問することになった。

最寄り駅まで迎えに来てくださるということで、
駅前で少し待っていると
社長さんが運転する車が入ってきた。

もともと高齢ではあったため、4年も経つと
少し老けられた印象を受けたが、
相変わらずお元気な様子に安心し、車に乗り込んだ。

会社までは10分弱の道のり。
この4年間に街で変わったところを
教えてくれる社長さん。

正直私からすればあまり変わっていないように
見えたのだが、
住んでいる方からすれば大きな変化なのであろう。

ほどなくして、車が会社に到着。

早速応接室で今進めている案件について
打ち合わせが始まった。

その中で試作品の加工状況について
話題に出た際に、
実際に見てみることになり
すぐ隣に併設された加工場に行くことになった。

加工場の扉を開けると、
作業されている方がいたのだが、
私はその光景を見て驚いた。

4年前に私が訪問した際におられた方が
全く変わらず働いていたからである。

4年間で働く人が変わらないのは普通じゃないの?
と思われる方もいるかもしれないが、
ここで働いている方は正社員ではない。

あくまでパートで働いている方で、
全員が主婦の方である。

4年間も経てばライフスタイルが変化することも
考えられるし、それに伴い仕事をやめる人が
出てくるのも至って自然な話であろう。

ましてやこの4年間例の感染症があったので
作業をされている方は入れ替わっていると
私は勝手に想像していた。

だが、そこにいたのは4年前と何ら変わらない人と
加工場の様子であった。

早速そこで加工されていた試作品の様子を見て
応接室に戻った際に、
私は社長さんになぜ人が辞めないのかを尋ねた。

するとその答えは驚くものであった。

なんとこの会社で働く方は基本的に
完全フレックスタイム制なのだという。

要は好きな時に来て好きなだけ仕事をして
帰っていいというシステムらしい。

そんなやり方で本当に仕事が回るの?と
疑問に思われる方も多いと思うが、
実際この加工先に委託したものは
ちゃんと納期通り入ってきている。

完全フレックスタイム制でありながらも、
仕事の帳尻はそこで働く人が上手く合わせていて、
それでもうまく合わない場合には
面談している社長が自ら加工を行い
間に合わせる仕組みだという。

とはいえ、社長自らが動くようなケースは
この4年間でも1~2回だけとのことで、
実質ほとんどは作業者の方にお任せしておけば
仕事は納期通りに進んでいくそうである。

この働き方のスタイルはもともとこの社長が
考案したものではなく、
働いている方の意見を聞いて修正していった結果
このスタイルに行きついたらしいが、
私はこの働き方こそこれからの時代
必要になるものではないかと感じた。

これからの時代、我が国では深刻な労働力不足が
間違いなくやってくる。

というより、既にやってきている。

街のコンビニに行くと当たり前のように
外国人の方がレジを担当しているし、
飲食店でも外国の方がたくさん従事している。

方々では自動化が進み、無人で運営されるコンビニまで
世の中には出現しているのは
純粋に人手が足りないからに他ならない。

だが、昨日訪問した会社の加工は
簡単に自動化できるものではない。

大手ではないがゆえのフレキシブルさが
その会社のウリで、
良は少ないながらも加工に対応してほしいという
依頼が沢山来ているからである。

そうなると人手で作業をせざるをえないが、
人手不足の影響をもろに受けてしまう。

しかし、それを解決する方法こそが
この完全フレックスタイム制の働き方なのである。

先ほども書いたように働いている方は
全員が主婦の方である。

子供の習い事や行事があれば
早く帰ったり、休んだりしなくてはならない日が
必ず出てきてしまうであろう。

この会社ならばそれを全く気にすることがなく、
行事があるならばそれが終わってから
仕事に行けばいいし、早く帰ってもいい。

場所は提供するが、実質内職と変わらないような
仕事のスタイルなのである。

そして、このフレキシブルさ故に
これまで仕事をすることをあきらめていた主婦の方が
ここで喜んで働き、継続されているのだ。

もちろんこれまでもパートやアルバイトの仕事を
このような主婦の方が担当することは他の業種や
業種でもあっただろうが、
そのフレキシブルさはかなり限定されていた。

接客業などではパートタイムの仕事でも基本的には
決まった時間を働かなくてはならない。

なので、本当は働きたいのに、家族がいるからという理由で
仕事をすることをあきらめている主婦の方が
世の中には沢山いたのである。

これからますます人の採用が難しくなる中、
このように働きたかったけれど働けなかった方に
フォーカスしたような働き方は
非常に理にかなった戦略だと今回感じた。

これからの時代、これは私達にとっても
全く他人事ではない。

仕事を進めたくても人がいないがゆえに
進めることができないケースは
間違いなく出てくるだろう。

そうならないうちに、このような
働きたいと思っている方にフォーカスした
働き方を準備しておくことは
重要なのではないだろうか。

今の時代、在宅でできる仕事の幅は
以前に比べて格段に増えているし、
フレキシブルに働く働き方は増えつつある。

その中で人でが必要な製造業は
制度の見直しを渋っている場合ではない。

まさに待ったなしの状態にまで
危機は目前に迫っているのだ。

4年前から状況は変わっていなかったはずだが、
今回久々に訪問したことで
とても大事なことに気付かされた。

会社の仕組みを変えることは容易ではないだろうが
間違いなく、これは今後検討する価値のあるテーマである。

微力ながらも提案し、形を作るところまで
動いてみたいと思う。

何だかこのところ新しい気づきを得る度に
仕事が増えているような気がするが、
それも仕事の楽しみ方の一つであろう。

ちなみにこの会社は東海地方にあるので
社長さんと会話していると
「だもんで」というワードが頻出する。
滞在はほんの1時間ほどであったが
久々に対面して話をすると
何度も「だもんで」に遭遇した。

それも何だか懐かしいと思った一日であった。


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