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薔薇を渡る彼の痛みを

 この三日間、先輩の実地試験であった。残念ながら一人の先輩は、今回は合格することができなかった。正直、悔しい。僕が悔しいがってもしゃあないが、悔しいものは悔しい。

なぜか。彼の重みが僕の情に訴えかけるからだ。ストレートに行ったわけではない、他の人より時間がかかっている、それでも全く諦めることなく進んでいる彼は尊敬に値する。人生を賭けているのだ。その重みを感じるからこそ、悔しいのだ。

 味わい深い人生とは、深みのある人生だ。深みは、時に痛みを伴う。それでも、なお進むからこそ価値が出てくるのだ。

 先輩とはもう一度一緒に訓練をすることになった。彼が諦めないのなら、僕は自分の人生の一部を惜しみなく捧げよう。まぁ、そう大層なことを言っても、今できるのは、コーヒー一本を差し出すぐらいのことなのだが。

コーヒー一本分の献身を。

コーヒーにコクを、人生にコクを。