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BtoBの受発注をDXする秘訣は「やさしいテクノロジー」CO-NECT 田口雄介氏と岡本彰彦が対談

CO-NECT株式会社(読み:コネクト)はHeadline Asiaが出資している、BtoB受発注システムを提供するスタートアップです。

いまだにアナログなやりとりが当たり前の受発注業務。CO-NECTはFAXや電話での発注業務に追われる発注者と注文書の処理に悩む受注者、双方の課題を解決するWeb受発注システムを提供しています。ミスなし・手間なしの受発注システムで業務負担を軽減し、昨年夏にはCO-NECTの流通商品数が累計1,500万点を突破。

そんなCO-NECT代表の田口雄介さんにHeadline Asia パートナーの岡本彰彦が話を伺いました。

CO-NECT発足から現在までの軌跡、サービスについて、そして気になる今後まで余すことなく語っていただきました。ぜひお読みください!

CO-NECT株式会社代表取締役の田口さん

BtoB受発注サービスの起点

岡本:CO-NECTのサービスをまだよく知らない人も多いと思うので、あらためてサービスについてご説明いただけますか?

田口:一言でいうと、BtoB受発注システムです。今までFAXや電話、メールなどの比較的アナログな手段で受発注されていた企業間の取引を、簡単にデジタル化できるシステムとなっています。

【発注CO-NECT】デモ動画

岡本:元々HIDEOUT CLUBという社名だったと思うのですが、今のCO-NECTという社名に変わった転機についてもお話しいただけますか?

田口:元々、バーやウイスキー好きが集まるコミュニティアプリを運営していました。その時バー・飲食店・小売店の方とお話をする機会が多く、発注をまだFAXで行っていて、「結構手間がかかる」「面倒くさい」という話を聞いたんです。FAXってIT業界にいるとあまり馴染みがないのですが、意外と世の中ではまだ使われているんだなと気づきました。

そこを我々がデジタル化すれば、より会社としてのグロースも可能だなと考えるようになりました。さらに、社会的な変化が非常に大きいことも参入を決めた背景です。

岡本:HIDEOUT CLUBとCO-NECTは全く異なる性質のものですよね。それでも、デジタル化が進んでいない領域にニーズがあると思い、競合もいるかもしれないけれど、その市場を取りに行こういう感じだったのですか?

田口:そうですね。参入前に競合について調べたのですが、強いところがたくさんいるという感じではなく、まだまだホワイトスペースがたくさんあるなと思いました。それで「これはチャンスだ」と思い参入したという背景です。ただ、我々と同じことを考えていた人もいて、同じタイミングで何社か新しい競合も出てきました。(笑)

岡本:参入当初は、FAXをデジタル化していく、もしくはFAXを使いながらデジタルに対応する感じだったと思います。その後プロダクトも進化していますし、客層も広がってきていますよね。現在はお客さんのどういった課題を解決していきたいと考えていらっしゃるのですか?

田口:アナログな受発注によって生まれている本来必要なかった業務をなくしていきたいと思っています。CO-NECTのプロダクトが目指す先としては、企業間の取引をよりスピード感を持ってスムーズにできる、そんなプロダクトです。

企業間のやりとりは、モノの受発注だけではなく、その前後にもコミュニケーションが発生します。さらにお金のやりとりもありますが、そういった部分がまだアナログな手段であるがゆえに結構時間かかるんですね。そして手間もかかる。そんな問題があります。そこをWeb化することで、スピード感を持たせたいと思っています。

優れたUIとカスタマイズ性

岡本:今までデジタルに慣れていなかった人が、デジタルプロダクトを業務として触っていくためにも、かなりUI・UXを簡素化しなければいけないですよね。

田口:そうですね。我々のプロダクトでクライアント様から一番喜んでもらえる部分はUIです。特徴としてシンプルな見た目をしているものの、裏側には機能がたくさんあり、それをクライアント自身が取捨選択して使えるようにしています。

クライアントにとって本当に使いたい機能をシンプルに使えるよう、カスタマイズ性を上げることで多くの機能とシンプルなUIを両立させる仕組みになっています。

岡本:カスタマイズもある程度知識がなくても簡単にできるように設計されてるので、どんなインダストリーであっても非常に使いやすいということですね。

田口:おっしゃる通りです。csvの出力の項目ひとつとっても、クライアントが順番や、どの項目を出力させるかを選択できるようにしています。

商品情報も、あるインダストリーではこの項目が必要だけれど、別のインダストリーでは必要ない項目があり、そこもクライアント側で増やしたり減らしたり、項目名をカスタマイズできたりできるようにしています。

自己増殖型・ネットワークエフェクトの効くサービス

岡本:最初は中小企業や小規模事業者向けのプロジェクトだったと思います。事業を始められてから顧客数も伸びてきていると思うのですが、導入クライアントの企業規模に変化はありますか?

田口:まだまだSMBが多いですが、大きめの企業様にも少しずつ参画していただいています。

岡本:CO-NECTのサービスの良いところは、自己増殖型のプロダクトである点ですよね。CO-NECTのサービスにはネットワークエフェクトが効くと思いますが、いわゆる大企業が使い始めたというのは、取引先の中小企業がCO-NECTを使っているから大企業が使い始めた、という展開が多いのですか?

田口:はい。取引先が使っていることでお問い合わせいただくケースは増えてきています。実際に契約に至っているケースも出てきていますし、問い合わせもどんどん増えてきている状況です。

基本的にはインバウンドでお問い合わせいただくケースがほとんどなので、そこに対して着々と対応をしている状況です。

CO-NECTのHP

「やさしいテクノロジーで社会をアップデートをする」

岡本:会社としてのミッション・ビジョン・バリューはつくられていますか?

田口:はい。2019年につくりました。

「やさしいテクノロジーで社会をアップデートをする」というのが我々のミッションです。受発注システム自体は20年以上前から世の中にはあったのですが、まだまだ世の中の3割ぐらいの受発注しかデジタルで行われていない状況です。

それには様々な要因がありますが、「使い勝手」や「導入のしやすさ」が足りていないということは間違いなくあると思っています。そこでCO-NECTではただのシステムではなく、導入のしやすさや使いやすさなどにこだわった「やさしいテクノロジー」で社会を良くしていこうという考えでミッションを作りました。

岡本:「やさしい」ってとても良い言葉ですね。プロダクト開発でそのミッションが反映されると思うのですが、今はどのような体制でミッションである「やさしいテクノロジー」を実装されていますか?

田口:自社の内製で開発しています。開発案件として、我々が戦略的に作りたい機能と、クライアントやクライアント候補の方からこういう機能があったら嬉しいというニーズがある機能の両方が存在するので、両方に柔軟に対応できるような体制にしています。

前者は、我々の目指すプロダクトの方向性に則って、こんなことがあると世の中的に受発注がより便利になるという観点で作っています。

後者のクライアントからのリクエストに関しては、1社のみのリクエストを全て実装しているとプロダクト自体が肥大化してしまいます。そのため、他の企業も使いたいのか、どれだけのクライアントがそれを欲しているのか、お金を払ってでもその機能によって解決したい課題があるのかを判断し、みんなが使いやすいようカスタマイズ性を含めて作っています。

岡本:最終的にはやさしいプロダクトに繋がるような。

田口:はい、このミッションは社員全員気に入ってますし、自分も気に入ってます。とても良いミッションなのではないかなと思います。

岡本:素晴らしいなと思って。なかなかないですよね。

田口:私が考えました。(笑)

社員合宿をしたとき、みんなの大事にしている想いなど、色々なことをディスカッションして、その中で出てきたキーワードを自分に預けてもらい、最終的に決めたという形です。

岡本:映画の名前は忘れたのですが、日本の映画で「正しさは対立するが、優しさはぶつからない」という台詞があって。国や地域、文化、宗教などにおいて価値観や正しさはそれぞれで異なるので対立してしまうこともある。でも、やさしさはぶつからないって言うのはその通りで。

田口:我々がホリゾンタルにやっている理由でもあるのですが、会社を起業した経緯として、この世の中の新しいスタンダードになるサービスを作りたいという思いがあります。

受発注のデジタル化は全ての業界でテーマになっていますが、我々のプロダクトは全ての業界の方に使ってもらえる、そんなプロダクトに仕上がっています。マーケティング的に対象を狭めていくことはありますが、基本的に目指す先は全ての企業様の取引に使ってもらえるプロダクトです。それでこそ新しいスタンダードかなと思っていますし、それには「やさしさ」が重要だと考えています。

コミュニケーションが顧客のニーズを引き出す

岡本:『グランズウェル』という古い本に、昔セールスフォースが機能開発や機能改善を行うとき、SNSのようなユーザーグループを作って、そこで顧客に機能改善案を出してもらったり、開発の優先順位を投票してもらったりしていたと書いてありました。CO-NECTではどういった形でお客さんとコミュニケーションをとっていますか?

田口:現在はカスタマーサクセスのメンバーが定期的にクライアントとコミュニケーションをとって、その情報を社内のNotionにストックしています。また、セールスのメンバーが商談をしてクライアントから受けたリクエストなどもNotionに入れています。

そのなかでどの内容を反映すると多くの人にとって便利なプロダクトになるかを週1のミーティングで話し合い、開発のスケジュールに落とし込んでいくというやり方をしています。

将来的にはセールスフォースさんみたいなやり方はやりたいよね、というのも社内では話し合っています。

岡本:なるほど、使いやすさの追求のために、顧客インタビューもされているのですか?

田口:そうですね。既にクライアントになっていただいた企業様とももちろんコミュニケーションをとりニーズをヒアリングするのですが、まだ契約前の企業様ともコミュニケーションをとりトライアルを使っていただき、ニーズを聞き出すことを常にやっています。
岡本:この機能性でいく、ここの機能をどうするなど、最後にプロダクトに魂を込める役割は田口さんですか?

田口:本当に最後の部分の決定は私がしたりしますが、プロダクトマネージャーやCTOと会話をしながら決めています。基本的にはクライアントが本当に欲しているかというファクトをベースに判断をしています。

まだまだ成長しなきゃいけない

岡本:HIDEOUT CLUBから今まで、色々なhard thingsがあったと思います。どんな困難があったか、それをどうやって乗り越えてこられましたか?

田口:経営していく中で、これはhard thingsだねという話も無くはないですし、おそらくあるのですが、そこまで思い込んだことがなくて。

岡本:解決できる範疇だったと?

田口:ピボットもしているので、前の事業が伸びてない中で、新しい事業に転換したときは本当にうまくいくかどうかわからないので、それもhard thingsだったと言えますし、過去、資金調達に苦労をした経験もあります。それぞれうまくいかなかったら会社が潰れるわけですけど、、

岡本:上手くいってきたと(笑)

田口:これがHard Things!っていうのは正直(笑)

岡本:HIDEOUT CLUBからCO-NECTへピボットするときに、今までのサービスと全く違う領域に飛び込んで、会社のリソースを全部つぎ込まないといけないわけですよね。会社のリソースを全部つぎ込むことに不安はなかったですか?

田口:そうですね。お客さんのニーズと、あとは明らかにマーケットがあるという確信がありました。うまくいくかわからないけれど、会社を立ち上げたときの思いにもマッチすると考えていたので迷いはありませんでした。これでいくぞという感じでした。

岡本:そこからはある程度順調に、思い描く通り成長ができていると?


田口:いえ、まだまだ成長しなければいけないと考えているので。思い通りにいっているかというと、足りないと思っています。

まだまだ今の組織でもやれることもあります。そこを改善することで、事業のスケールのスピードも早められますし、これまでも本当はもっと早められたのではないかと思っています。そこはもっともっと急成長できるように頑張っていきたいです。

先ほど世の中の新しいスタンダードという話をしましたが、どんな状況になればスタンダードになったと言えるのかと考えると、全然そこには遠いので。

世の中のBtoBの流通でEC化されているのが350兆円ほどだと言われています。まだEC化されているのは30%ほどで、残りの60、70%近くが紙で行われています。CO-NECTがスタンダードになることを見据えると、流通額を早く何兆円という規模にしていきたいです。この観点から見ても、もっと早くやらなければと思っています。

今後の展望

岡本:今後について、コアな部分として受発注があり、前工程としてのコミュニケーション、後工程としての決済がありました。受発注をコアとしながら、前工程/後工程に進出するタイムラインやマイルストーンはありますか?

田口:決済機能やコミュニケーション機能、帳票系の機能は既に用意しています。ただ、これはあくまで受発注を円滑化するための機能と位置づけています。そこから更に拡張するかというと、それぞれの機能に対しての顧客のニーズが膨らんできたタイミングで、より深くやっていくことを検討すると思います。

岡本:実装されている決済機能はどのようなものですか?

田口:CO-NECTのユーザーには発注者側と受注者側がいますが、発注事業者が発注をする際にECのようにクレジットカード情報を入力し、クレジットカードで決済できる、そんな仕組みです。

岡本:組み込み型金融や発注行為自体に決済や与信機能が組み込まれていることが当たり前の世界はすぐそこに来ています。

コアな受発注システムが強いからこそ、後工程でのエンベデッドファイナンスがより効果を発揮して、ユーザーにとってやさしい世界ができていく気がしています。

田口:そうですね。受発注のスピード感は、金融のシステムを入れることで間違いなく上がっていくのでどんどん取り入れて、クライアントにとって利便性の高いやさしいシステムにしていきたいと考えています。

岡本:最後に、今回の資金調達でHeadline Asiaから投資を受けようと思っていただいた理由を教えてください。

田口:Headline Asiaは海外への投資も多くされているファームで、海外の情報や事例もたくさんお持ちだと思いました。実際に岡本さんと以前お話したときも海外の事例を教えていただきました。こういったインプットをできる機会が増えることは我々にとって重要なことなので、ぜひご一緒にしたいと考えました。

岡本:ありがとうございます。将来的に海外展開は考えていらっしゃいますか。

田口:国によって課題感が違うと思うので、今のCO-NECTでの展開になるかはわかりませんが、海外も見据えた事業はやりたいと考えています。

Headline Asiaが投資を決めた理由

田口:逆にCO-NECTを評価していただいたポイントはどんなところにありますか?

岡本:自己増殖型のネットワークエフェクトがあるビジネスモデルになっていることがまず一つ目です。あるユーザーが使っていると、取引先にCO-NECTを使っていることがわかり、その利便性も分かり関心も高い。そうすると、マーケティングコストを極小化して自己増殖で伸びていく。指数関数的な成長をしていくためにはそういったネットワークエフェクトが必要だと思っているので、まずそれが大きなポイントでした。

二つ目が、CO-NECTの場合はどちらかの企業はFAXでも利用可能という点です。もし、FAX以外は受け取らないという取引先がいてもFAX対応できるので、デジタル×デジタルじゃないと使えませんということ。他のサービスは基本的にはデジタルサービスの提供ですよね。向こう側はアナログでも対応している点が、いち早くデジタル化を進める上で必要な大きな要素だと思いました。この2点が大きかったです。

田口:ありがとうございます。デジタル×デジタルにこだわり過ぎない、やさしいテクノロジーの文脈として、実はCO-NECTを通じてWeb受注した企業は、受注内容をCO-NECTから、自社のFAX機に改めてFAX送信できる機能もあります。

やはり今までFAXで受発注のオペレーションをされていたので、急にFAXを全部やめてWebに切り替えると現場のオペレーションが混乱するケースもあります。なので、まずは併用期間のように、Webで受注管理もできるけれど、現場の作業する人たちにはFAXでも情報が届く、という機能です。全部を強制的にWebでやってもらうというよりは、着々とやれるところからやってもらうという思想です。

岡本:やさしいですね。その思想がデジタル化の壁である中小企業の高いハードルを下げていて本当に素晴らしいですね。


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