ハーマンの言葉メモ とりあえず「その1」

ヨハン・ゲオルグ・ハーマン(Johann Georg Hamann)という人物の言葉について, ちょっとばかしメモを残しておく. なお, 私とハーマンとの出会いにおけるきっかけは, 次の人のツイートである.

>自己責任論は変、と多くの人は思いますが、一番早い自己責任批判はハーマンによるカントへのものです。日本はカントへの信用強いので、カントをそこまで敵視は中々できない。この川中子義勝先生は、ルターとキルケゴールやバルトに挟まる思想家としてハーマン扱っていますhttp://www004.upp.so-net.ne.jp/kawanago/HMN15

>バーリンの『北方の博士ハーマン』が碩学だけあって面白い。がかなり重要な筈の神学性が薄すぎる。そこ込だと川中子の中級編『北の博士ハーマン』初級編『ハーマンの思想と生涯』。彼の弟子筋による『ハーマンの「へりくだり」の言語』は言語学比重高め。後、著作選は川中子が出してますが、希少本。

私はとりあえず, 『ハーマンの思想と生涯』と『北の博士・ハーマン』の2冊を, 前者から読み始めた. そして共に一読を終えたので, 気になった言葉を残しておく(とりあえず「その1」なので, どこまで続くかは不明)ことにする.

ハーマン「理性が君らに与えられているのは, 君らが賢くなるためではなく, 君らの愚かさと無知とを認識するためである」

ハーマン「総ての哲学の最終結末は人間の無知と弱さの観察・注目である」

ハーマン「神はできるかぎり人間の傾向や概念のもとに, それどころか人間の偏見や弱点にまでもへりくだられた」

ハーマン「我々の本性のいかなる秘密を, 我々は神の言の内に解き明かされて見出すことか. これを欠いては人間全体は土に他ならず, 形態なく虚しく, 深みの面を蔽う闇である」

ハーマン「我々憐れな人間は, 我々自身を自然に従って形作ることも, また自らを我々の被造物より救い出すことも出来なかった. しかし神はこの両方の奇跡と秘密をもって御自身を人間に示される. そしてイエス・キリストを信じる信仰によって, 我々にこの両者は与えられる」

ハーマン「神は再創造された人間の変貌した像を, 御子イエス・キリストにおいて人間のために備え, 人間にもたらさんとする目的で, 罪の深き眠りを用いられた. イエス・キリストは我々の肉の肉, 我々の骨の骨である」

ハーマン「我々の息の贈り物は神からのものであり, 彼の御手の内にある. その使用は我々の問題である」

ハーマン「自然学と歴史とは真の宗教の基づくところの二区分である」

ハーマン「神はその深慮を我々人間に隠され, 我々の救いに必要な限り, また我々の慰めに必要な限りを我々に明かすことを欲せられた. しかしそれは同時に, 世の賢き者, この世の主なる者を欺く仕方においてなされたのである. それゆえ神は, 使徒の述べるとおり, 取るに足らぬ者, 見下されている者, それどころか無なる者を, その秘密の配慮と隠された意志の道具とされたのであった」

ハーマン「こうして教えることは友情の目的ではない. それでは, 何がそれか. 愛すること, 感じること, 感受することである. しかし, 何が愛や, 感情, 情熱にかかわりつつ, 一人の友人を教えるのだろうか. 顔つき, 表情, 歓喜, 容姿, 語る行為, 戦術, 策略, そして熱狂, 対抗心, 勇気である」

ハーマン「異邦人や哲学者は, 神の大能, 聖性, 善性を認める. しかし, 彼の人間への愛, 謙虚さについては何も知らない」

ハーマン「類比こそはソクラテスの推論の魂であった」

ハーマン「将来のものが現在のものを規定し, 後者はまた過去のものを規定する. 意図が成り立ちを決定し, 使用が手段を決定するように」

ハーマン「信じていることは証明の必要はないし, 信じられることに勝る反駁の余地なき証明はない」

ハーマン「人間の知恵と理性の報いは憂いと不満である. 理性が遠くを見れば見る程, 迷宮は大きくなる」

ハーマン「神の業はことごとく, その本性の徴にして表現である. かくして物質的自然の全ては, 霊的世界の一表現, 一比喩であると思われる. 全て有限な被造物は, 真理や事物の本性をただ比喩においてのみ見ることができる」

ハーマン「創造の業が救済の業に基づき, また救済が創造に基づくように, 聖書中では, 全てがその前また後ろを見つめている」

ハーマン「我々の概念は, 過去は現在に先立っている. 神においては, 現在が過去と未来の根拠である」

ハーマン「聖書の物語(歴史)は皆, 世紀を問わず, また人の区別なく, いかなる魂の内にも成就される一つの預言である」

ハーマン「自然の書と歴史の書とは暗号に他ならぬ. すなわち, 聖書を解釈し, かつその霊感の意図をなす鍵をまさしく要する隠された徴に他ならぬ」

ハーマン「判明なる真理の誤った適用を余儀無くされる場合, むしろそれを覆う賢さが要求される」

ハーマン「詩は人類の母語である. 造園が耕地にー, 絵画が文字にー, 歌が朗読にー, 比喩が推論にー, 交換が取引に先立つように

Poesie ist die Muttersprache des Menschengeschlechts; wie der Gartenbau, alter als der Acker: Malerei,ーals Schrift: Gesang, ーals Deklamation: Gleichnisse,ーals Schlusse: Tausch,ーals Handel」

ハーマン「感覚と激情とが語り, かつ解するのは, 形象に他ならぬ. 形象にこそ人間の認識と至福の全ての富は存す」

ハーマン「<俺は人間だ>という言葉, これは常識にとって常に最も難き課題, 最も深き謎にとどまり続ける」

ハーマン「我々はこの地上ではパン屑によって生きる[マタイ十五・二七]. 我々の思考は断片に他ならず, まこと我々の知識は半端仕事である」

ハーマン「思い付きと疑い, これが我々の理性の最高善である」

ハーマン「詩人とは解釈者の解釈者なり」

ハーマン「ドイツの批評家には, 現代文学の趣味に関して, 善悪の識別の際に厳しい自制を期待しうる者はいない. それゆえ残るのは唯一つ, すなわち, ドイツ的公正においては避け難い不義を抜け目なく治める家令たれ, という要請のみである」

ハーマン「心の盲目と怠惰とは, 大抵の読者の患う疫病であり, 彼らに秘かな毒を盛るゆゆしさにおいて我らの如才なき批評家に勝る者はない. なぜなら, 彼らの告解料は, 読者の原罪と著作家におけるその公けの発現によって肥え太るのだから. それゆえ, 勘定を払い, 損な籤を引かざるを得ぬのは, つねに読者や著作家の側である」

ハーマン「美術から恣意と空想を除かんとする者は, 病の本性どころか, 己が規則にすら通ぜぬ藪医者である」

ハーマン「例外を全く作らない者は, 名作を生むことも決してない」

ハーマン「著作家と読者とは, 両者で一対をなし, 相互に関わる必要を持ち, 両者の合一という目的を共にする. その結び合うところ, 食と衣, 裸と肌の四つの輪であり, 一つの輪が他の輪の中にあって唯一の輪をなし, まひわの巣窟の瞳のごとく見える. なぜなら, 美しき自然の美学的秘密は, 牧人物語では賢者の石, 解剖学では恥部, 経験においては十字架と呼ばれるからだ」

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