グラデーション

1 自分は〇〇中毒者ではない,という虚妄

人間は生きている限り,何らかの中毒者である。自分が何に対しても中毒ではないということを言えるのであれば,それはもはや人間の所業ではない。それはもはや人間という生き物ではない。神にでも成り上がっているつもりの拙い愚かな動物である。間違えることなかれ。

2 自分は〇〇信者ではない,という虚妄

人間は生きている限り,何らかの信者である。自分が何に対しても信者ではないということを言えるのであれば,それはもはや人間の所業ではない。それはもはや人間という生き物ではない。神にでも成り上がっているつもりの拙い愚かな動物である。間違えることなかれ。

3 自分は〇〇主義者ではない,という虚妄

人間は生きている限り,何らかへの主義者である。自分が何に対しても主義者ではないということを言えるのであれば,それはもはや人間の所業ではない。それはもはや人間という生き物ではない。神にでも成り上がっているつもりの拙い愚かな動物である。間違えることなかれ。

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4 へりくだり

人間が人間に対して,あるいは人間以外の環境や生き物に対して,どこまでへりくだることができるのだろうか。あるいは,人間は人間にそなわる力をもってして,へりくだることは可能なのだろうか。libenter homines id quod volunt credunt. 「人間は自分が信じたいことを喜んで信じるものだ」(カエサル『ガリア戦記』第三巻18)

5 おもいやり

人間が人間に対して,あるいは人間以外の環境や生き物に対して,どこまでおもいやることができるのだろうか。あるいは,人間は人間にそなわる力をもってして,おもいやることは可能なのだろうか。omnia vincit Amor et nos cedamus Amori.「愛はすべてのものを支配する。さればわれらも愛に従おう」(ウェルギリウス『牧歌』第十番69)

6 あいがたり

人間が人間に対して,あるいは人間以外の環境や生き物に対して,どこまであいがたることができるのだろうか。あるいは,人間は人間にそなわる力をもってして,あいがたることは可能なのだろうか。consuetudine quasi alteram quandam naturam effici.「習慣によって,いわば第二の天性が作られる」(キケロ『善と悪の究極について』第五巻25. 74)




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