メキシコ クステペック農園(と“グリーンコーヒー”について)

世の中、【健康と美容】というお題目が付くと珍妙なものがもてはやされていることがままある。コーヒーも例外ではなく、なにやらコーヒーの生豆をそのまま煎じて飲むという「グリーンコーヒー」なるものが存在するらしい。曰く、コーヒー生豆には入っているクロロゲン酸は加熱により失われるので生のまま取らなければならないそうだ。

コーヒーに少し知識がある方ならご存知と思うが、コーヒーらしい風味はコーヒー豆を焙煎することで(中の物質が化学変化を起こすことで)得られる。当然、生の豆を煎じたところでろくな風味はしない。正直、それでは何のために飲んでいるのかわからない。

百歩譲ってクロロゲン酸の健康・美容の作用があるとしよう。そうだとしても風味のない生豆をかじる必要はない。全日本コーヒー協会の調べでは、米国スペシャルティコーヒー業界で好まれる程度の浅煎り豆であれば、生豆の半分以上のクロロゲン酸類が含まれる[1]。従って、クロロゲン酸の健康効果を信じるのだとしても、いわゆるグルメコーヒーをグルメな浅煎りで飲めばよいということになる。

筆者はクロロゲン酸の健康効果など大して信じてはいないが、しかしながらこういう突っ込みをしているうちに浅煎りコーヒーが飲みたくなってきた。先日の早川コーヒーの被災もあって現在手元にある浅煎り向けのスペシャルティコーヒーがこのメキシコ・クステペック農園しかなかったためとりあえず浅煎りにしてみたが、そこそこ美味い。普通に煎ると酸味が弱くすっきり型の味だが、それゆえか酸味が勝ちがちな浅煎りでも味が大崩れしない(世の中には浅煎りにするとレモン汁のように酸っぱくなるものがあるのと比べれば)。

浅煎りはあまり膨らまないので、分量の測定時に嵩を2割ほど減らす必要がるのと、豆が硬いため手動ミルではいささか疲れるのが難点か。


[1] 全日本コーヒー協会. コーヒー中のクロロゲン酸類とポリフェノールについて. http://coffee.ajca.or.jp/news/othernews/5cqa



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