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最底辺嬢の下克上宣言

前回の続きです。大宮から戻ってきて色々な事に対して吹っ切れた私の気持ちは今までにないほど前向きでした。

遠く離れても自分を応援し続けてくれる存在がいて、彼もまた新たな道に踏み出して努力を重ねている。だから今度会えた時に彼に恥じない自分でありたいと思い、私は気持ちを入れ替えてA店で上を目指していこうと決めました。

No.1を目指すなら客からも周りからも一目置かれる存在にならなければと思い、店で接客の愚痴や客の悪口を言うのはやめ、いつ誰が店に来ても良い印象を与えられるように開店後は常に笑顔を心がけ"ここではいつでも天真爛漫で明るいれい嬢になるんだ!周りを楽しませる為にはまず自分も楽しまなきゃ!"という考えを大切にしました。

未経験の女の子も客との会話に入りやすいよう積極的に席での話題を考えて誰もが話しやすい雰囲気を作り、口数の少ない客からもいかにして話を引き出そうかと常に頭をフル回転させていました。

私はキャラ作りができるほど器用ではなかったので、見た目の雰囲気に近い明るさを(昔も今も中身はただのネクラ女なんですがw)前面に押し出して"れいはいつも笑顔で人当たりが良くて誰かに元気を与えられる太陽のような存在であるんだ"とアピールする事にしました。

れいと話してると小さい事で悩んだり落ち込んだりしてるのバカバカしくなってきた。

などと客に言わせる事ができたら満点。もともと患者から相談を受ける機会も多い医療従事者だったという事もあり、バリバリ色恋でもなくキャラ作りに徹するでもなく人を元気づけるタイプになろうと決めたのです。

そんなある日、フリー客を見送って店内がノーゲスになり、待機席でガールズトークを始めた直後にオーナーが店にやってきて私達に厳しい言葉をぶつけてきました。

「暇だからって気を抜くな。ここは女子会を開いて楽しむ場所じゃない。経験の浅いキャストも多い中で、上下関係を作らず雰囲気の良い店作りをしていく事は大事だ。ただ、そこで終わるのはプロじゃない。それをチームワークとして接客に生かせ。」

一緒に働く女の子との信頼関係を築いて良い店を作り上げていく事を考え、待機中もキャスト同士でコミュニケーションを取っていたつもりでしたが…確かに客の事や接客の悩みなどを真面目に打ち明ける機会はなく、ただお互いの髪型やネイルを褒めたり仕事に関係のない話題で盛り上がったりしてばかりいました(汗)。

その日は客入りも見込めず普段よりも早閉めとなり、それぞれがオーナーから送りの車を指定されて順番に店を出て行きました。「AとBは副店長の車乗って、Cはチーフの車で、それかられいは俺の車に乗れ。

…ヤバい。私一人だけオーナーの車に乗るという事は間違いなく説教食らう系だ。少し前まで意識が低すぎるゆえに怒られて当然な事ばかりしてたっていう自覚があり過ぎて怖い…どうしよう。車に乗ったら他の子もいないからもう逃げ場がない。ギャー!!(叫)

かくして店を出て、車に乗ってから5〜10分ほど沈黙が続き、その空気に耐えられず私は自分からオーナーに謝罪しました。

「先日は申し訳ありませんでした。いくら昼夜かけ持ちとは言え、店の看板を背負ってレギュラーで働くと決めた人間が営業中に寝てしまった事や、これまで努力する事から逃げてきたのは本当に私の自覚が足りませんでした…」

そんな私に対してオーナーは、その反省を通して仕事に対して今持っている自分の考えを自分の言葉で話せと言いました。

「私は周りの子達みたいに10代のうちからこの世界にいた訳でも、何か特別な魅力がある訳でもありません。ただ、私のような

一番下にいる人間は上に行くしかないので、下克上します。

正直、体力面でかなり厳しいので時給は下げて頂いて構いません。週4回の準レギュラーに切り替えます。でも、その分出勤した時にきっちり仕事をこなしていけるように気持ちを切り替えて臨みます。勝手な事ばかり言って本当に申し訳ありません。」

そう強気で言い切ったものの、また考えが甘いとかダメ出しされてしまうかもしれないと内心すごくビクビクしていました(死)。しかし、そんな私に対してオーナーは

「それが自分なりに考えて出した誰にも左右されないお前の意思なんだな。その気持ちを忘れずに突き進め。れいにはトップに立つ素質が備わっているんだから、このまま中途半端に終わらせるな。俺はお前にそのチャンスを与えたいと思って新店舗への移籍を勧めたんだ。」

と言いました。今でも私は水商売に向かないタイプだと思っているので、オーナーが私のどこに素質を感じたのかは分かりません。これだけはいくら思い返してみても答えが出ません。

それでも、こうして思い返すと一流のクラブ街でもない田舎のキャバクラでこの商売の奥深さを何度も教えて頂けたのは貴重な経験だったと思っています。田舎の小さな店だからこそ経営者とキャストの距離が近く、それでもアットホームさゆえに生ぬるい雰囲気になるだけではなく、折に触れてオーナーから直々に貴重な言葉を貰う事ができたのです。

これらは、私が大宮の店舗に移籍してからも関内で派遣ホステスを始めてからも長く長く自分の中で生かされてきました。

もしも地元に戻った時にまたオーナーと会う事ができたら、その時に改めてお礼の言葉を伝えたいと思います。ちなみに、A店に移籍する前に在籍していたV店は今でも同じ場所で店名を変えて存在し続けています。

***

今日はどの場所でも生かせるオーナー直伝(?)の良い話を綴りました。だけど私はずば抜けて仕事のできないダメ嬢だったので、きちんと真面目に努力を積み重ねている在籍キャストさんはこんな事言われなくても当たり前のように分かるのかな(笑)。

次回はれい嬢ついにNo.1になる?移籍後初めてのバースデーイベントの結果はいかに?

…の前に一旦小休止を置いて、現在派遣キャストとして働く中で日々感じる事(派遣あるあるみたいな?)を綴ってみたいと思います。

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