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【七転八倒エオルゼア】#7

このシリーズについて

ゲーム『ファイナルファンタジー14』における自機『Touka Watauchi』及びそのリテイナーキャラ『Mimino Mino』を主役とする不連続不定期短編企画です。ゲーム本編のメインクエストやサブクエスト、F.A.T.E.などの内容をもとにしたものが含まれます。また、各エピソードごとの時系列は前後する場合があります。

登場人物紹介

Touka Watauchi(綿打 灯火/トウカ):主人公。海を渡ってリムサにやってきたアウラ男性。リムサ渡航時点で20歳。ナナモ・ウル・ナモ女王陛下暗殺事件の冤罪を被せられたため、現在はイシュガルドにフォルタン伯爵の客人として滞在している。

Mimino Mino(ミミノ・ミノ/ミミノさん):Toukaが雇ったリテイナー。リムサにすっかり慣れたララフェル女性。年齢非公開。

【ああ、なんて不器用な……】

「その……どこから突っ込んだらいいの、トウカちゃん。髪型?その怪しい兜?それともその……得物?」
イシュガルド下層、旅籠「九つの雲」の一室。数週間ぶりに雇い主であるトウカと再会したミミノは、予想外の雇い主の変わりように愕然としていた。
「ちゃんと食べてる?睡眠は?運動は……そりゃしてるわね。その兜怪しいもんじゃない?カバンの中は?」
「ミミノさん、待って待って!」
「待ってはこっちの台詞よトウカちゃん!トウカちゃんが戦勝祝賀会行ってからウルダハは急に銅刃団が表をうろつくわ、ラウバーン局長と仲良かった人達がクリスタル何とかって人達に連れてかれるわ……もう大変だったのよ?それにトウカちゃんが女王暗殺に関わってるだなんて口さがないこという人たちもいるし……」

「ミミノさん。」
「う……うん?」
トウカはミミノに改めて向き直る。
「確かにナナモ陛下が倒れる直前まで、俺は陛下に招待されて二人で話してました。でも、俺……俺じゃない。あんな、周りの味方が少ない中でもしゃんと立ってウルダハの未来を見ている人を、なんで、どうして……なんでだよ……」

ウルダハの女王ナナモ・ウル・ナナモ陛下は眼前で倒れそのまま崩御。暁の血盟は盟主ミンフィリアを筆頭に主要メンバー5名が行方不明。ラウバーン局長は戦闘で左肘から先を失い目下収監中。砂蠍衆共和派への怒りと、たとえこの先どれほどの者を敵に回すとも必ずや反撃するという鉄の意志でここまで押し通してきたトウカにも、限界があった。
「トウカちゃん、あなた……」
まだ慣れた土地とは到底言い難いイシュガルド異国の地で、肩を震わせて涙をこぼす雇い主の姿に、ミミノもさすがに思うところがあった。彼でなければ、いつまでそうしているのだ、といいながら気合いを入れてやったかもしれない。トウカは違う。異郷からリムサに渡り、並の冒険者なら一生に一度とないような決戦を何度となく繰り返し、挙句自分の故郷ウルダハの陰謀に巻き込まれた。ここはひとつ、楽になるまで全部吐かせるべきだろう。

「いっかいイシュガルドティーでも飲みながら話す?さっき鞄に入ってたでしょ、茶葉」
「えぐっ、うっ、はい……」


◆◆◆◆◆◆

イシュガルドティーがトウカの心をほぐしたか、あるいはミミノ自身の話術か、トウカは要領を得ないなりに「変装」の経緯を話していた。
「つまりこんなふうに髪を染めて、フェイスペイントまで入れて、オマケにこの兜というか仮面まで被ってたのは……」
「ざっくり言えばバレないようにするためです。まぁ、バデロンさんには一発でバレましたが」
「ここまでやって気づくバデロンさんもだけど、トウカちゃんもトウカちゃんよ!」と言いながら、ミミノはリズミカルに鉄仮面を叩いている。
「せっかくあんなきれいな赤髪だったのに……って、あたしも染めてるから人のこと言えないけど」
「俺だってつらいですよ、お袋ゆずりの自慢の髪をこんなに染めるなんて……」

「仮面とったらいつもと髪型も髪色も変わってるんだもの、そりゃびっくりしたわよ!」

ミミノはウルダハで見たトウカの人相書きを思い出す。そもそも角と尻尾で目立つトウカだが、それ以上に『濃く』して欺こうとしたらしい。
「あと、この仮面はどうしたの?」
「先輩にもらいました。顔隠すならー、って」
「まさかそのままイシュガルド歩き回るなんてその先輩も考えてないと思うわよ?もう、全体的にやりすぎ!」

胡座をかいて低くなったトウカの頭を、ミミノはぺちりと叩く。
「やってないんでしょう!?なら、堂々となさいな!」
「ミミノさん達に累が及ばないように、と思って……」
「あたしならこれがあるから大丈夫よ!」と、ミミノは壁に立てかけた斧を見やる。ララフェルサイズだが切れ味は遜色ない。
「バカなこと考えないの!勝手なことふっかけてくるやつらなんか、トウカちゃんならどうとでもボコボコにできるでしょう?」
「そりゃまあ……。ただ、例えばリムサの街中で急に襲われて返すかたなで真っ二つ、なんてやったらシャレにならないので」
「更に心証悪くしないように、ってことね?」
「俺なりに考えて被ったつもりですよ、これ」
トウカはミミノが床に置き直した鉄仮面を見やる。自分に非のないことで顔を隠して逃げ回るなど、トウカ自身でも気に入らない。しかし、自らを捕縛しに来たクリスタルブレイブの面々と街中で切り合うことを考えると、できる手を打っておきたかったというのはあったのだ。

「こんな大事になるなんて、って思うことは流石にありますよ。でも、なった以上はやるしかないし、いつか故郷に帰る時大手を振って帰れるようにしたい。だからこそ、です」
「トウカちゃん……」
「まぁ、そういうわけなので……ミミノさん?」
「黒ずくめは怪しいとか考えなかったの!?」
「えっ」
「こんな絵に描いたような不審人物やることもないじゃない!もうちょい普通の色で染めるとかなかったの!?」
「ナナモ陛下の喪に服すところもあったので……」
「復讐も服喪も変装も全部いちどにやろうとしたの……?」
ミミノは改めて理解した。自分を雇ったこのアウラの若者は、自分の予想以上に情に厚く、意思が固く、生真面目で、不器用なのであると。
「あぁもう、ミラージュドレッサーの中身全部見せて!チョコボかばんも!この鉄仮面被るにしてももうちょい別のコーディネートがあるでしょう!」
「そういう話ですか!?」
「そういう話よ!身を隠すにしてももう少しやりようってものがあるわ!」

こうして唐突に始まった着せ替え大会が、トウカの心を多少ならずほぐしたことは……いうまでもない。

「ところでトウカちゃん、あの槍はどうしたの?まさか……」
「まさか?」
「戦士やめちゃったの?!」

(【七転八倒エオルゼア】#8に続く)

【今回の元ネタ(?)】

※今回は別の話をやる予定で前枠的トークをやってたら前枠から本編に昇格しました 多分全部1本にしてたら5000字越えるので前後編に分割です

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