線路に飛び込む

noteをはじめて、そろそろ一か月。

それまで、適当にやってた

Facebookと違うなあって思うのは、
Facebookは、とりあえずリア充アピールありきが多い。

実名と顔写真を公開する仕様上、これはいたしかたないだろう。

noteは、仮名OKで、
顔写真も出しても出さなくても良いようだ。

そうすると、内面を出しやすくなるのだろうから、
Facebookよりはテキストが多いって思う。

Facebookだと公開の段階もいろいろあるが、

noteだと誰でも読めてしまう。

非公開だと有料?

有料の内容も検討中ではあるけれど。

もちろん、それぞれ利点はあるのは認める。

まあ、noteは、そういう内省的な面を見せる仕様だと思うので、
せっかくなら、普通の人が体験しにくい経験を書いてみるのは
エンターテイメントっぽくていいのかも。


2000年代の初頭。

長く勤めていたコンピュータのオペレーターの仕事を辞めてからは、

仕事が本当にうまく行かず、
派遣社員をいくつか渡り歩きながらも
ちょっと仕事を覚えると、打ち切り、打ち切り、打ち切り・・・。

踏んだり蹴ったりの日々を過ごしていた。

そんな傍らで
独学でSEO(検索エンジン上位表示最適化)には、
興味があり、独自ドメインとレンタルサーバーを借りたりして
適当にHTMLの手打ち程度であれば、個人サイトは作れるようになる。


ちょっとしたキーワードなら上位に上げられるようになり
アフィリエイトの仕組みを覚えつつあった。

新しいスキルを身に着けようと

名古屋のとあるWEBデザインのスクールに通うものの、
30歳過ぎてから新しいスキルを身に着けるのはなかなか大変だった。

そんななか、スクールから

あるサービスを提供する企業から、
求人があるという事で、
応募することとなる。

そして、面接することとなり、
採用されて、派遣として働くこととなった。

あるサービスって?

出会えない、出会い系の運営会社だった・・・。

デザインも、まったくダメ。

写真やイラストも書けない。

それでも、採用されたのは、
素人に毛が生えた程度のSEOの知識だった。

不倫、愛人、援助・・・。

ふだんの私とまったく関連の無いキーワードを抜き出す。

これも生きていくためと割り切るしかなかった。

地元の著名な小説家 稲葉真弓さんも、
売れない頃は、アダルト系の作品を書いていらしたという。


不倫とは?不倫って?不倫はここで・・・。

1ページの中にやたら、キーワードを入れ込む。

1ページの中で、キーワードの検出率が高いと、
検索エンジンにアピールしやすいのだ。

<STRONG>不倫</STRONG>

<B>不倫</B>

<P>不倫</P>

こんなふうに、キーワードをHTMLのタグで装飾したりする。


日本人ってSEOが苦手だろうなって思う。

というのは、
国語の小論文で、主語は省いて書くって習ったように記憶している。

それもあって、小論文の授業っぽく、文章を書くと
不倫は・・・って、主語は省きたがるので、
SEOは、それとは反対にやたらと主語を入れ込むことになるのだ。

小論文で習った手法を否定しながら、文を考える業務・・・。

そして、「出会いはコチラ」って出会えない、出会い系サイトのURLに誘導リンクするための
HTMLサイトを手打ちで量産させられていた。

その業務のほかに、メールアドレスを集めるソフトもあり、
いろんな書き込みをされている掲示板から、メールアドレスを抜き取っていき
メールアドレスに向けて、
出会えない、出会い系ソフトに誘導するためのメールを送信する一助も担当させられた。

そういったメールの文章は、
冴えないおっさん達が、打ち合わせで書いていたものだった・・・。

勤め始めは、違和感だらけだったのに、
どんどん毒されていってしまい、いつしか見慣れてしまう自分。

出会えない、出会い系サイトの集客のほかに、
ライブチャット業務も立ち上げることとなった。

毎日、ちょっとやつれた30~40代と思しき女性が面接を受けに来られていた。

ライブチャットのオペレーターは

個人、個人で仕切られたテーブル、椅子。そして電話。

どんな会話がされていたかは知る由もないが、
おそらく、長く会話させれば通話料金を稼げるのだろうから話の長い方は優秀なのだろう。


出会えない、出会い系サイト運営会社らしく、
ここの会社のオーナーは、

ポルシェのカイエンに乗ってブイブイ言わせる。

ベンチャーらしく独善的であり、
朝令暮改の典型で、すぐにやること、
いうことコロコロ変わる。


どんどん、スタッフも入れ替わる。

その中に、私も含まれてしまい。
一か月半ほどで、ハイそれまでョ(植木等さんの口調で)

またしても、私は仕事を失った。

はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る

BY 石川啄木


意気消沈。


なんだか、生きるのって、めんどくさいな。

もう、生きるの休んでもいいよな。


仕事の最終日、12月中旬の寒い日。


いつもの駅で降り、ホームから改札口に向かおうと歩き出す。

目の前で中年男性が反対側の線路に向かって、
よろよろと近づいていた。

落ちそうだし危ないなあと思って見てたら、
線路に落ちてしまった。

私も相当に驚いたが、助けないとやばいので線路に飛び降りる。

すると、もうひとりの男性も飛び降りて、
この落ちた中年男性をうつ伏せになっているのを、仰向けにしてやる。
相当に酔っていて、携帯電話を線路に落としたとこで、
見つけようとして落ちてしまったと言っていた。

男性と私とで線路の付近を見渡したが、携帯など見つからない。

その様子を見ていた女性客が駅員を呼んできてくれて、
危ないので、男性と私を線路から出るように言われる。

調べたら酔い潰れていた男性の携帯は自分のポケットに入っていた。

その中年男性を、みんなでホームに引っ張り上げ、駅長室に運ぶ。

その後は、もう帰って良いですよと言われたので帰ったが。
それにしても線路に落ちる人なんて初めて見た。

線路に飛び込むと、
こんな気分になるのか。

自殺なら、世間に迷惑をかける不届き者。

人助けなら、善良な通行人Aさんとしてお礼を言われる。

線路から見る目の前の電車は、いつもより大きく見えた。

こんな物に体当たりされたら、一瞬ですべてが吹っ飛ばせる。


そう思いかけた自分を擬似体験させてくれたのかもしれない機会だった

と考えるようになった。


後日談。

出会えない、出会い系サイト運営会社のオーナー氏は
数年後に所得税法違反により在宅起訴されたそうだ。

私は、小さいなりにも経営者となった。

いろんな世界とリンクしましょう! Twitter @KAKOUTOMATO1 もフォローよろしくお願いします。