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2024/03/21『「明日、春が来たら」を希望とともに口ずさむ』

まだ寒い。でも、着実に春が近づいている。
今の季節につい口ずさんでしまう歌、松たか子さんの「明日、春が来たら」だ。

当時私は三茶に住んでいて、真夜中に大きな通りを散歩するのが好きだった。家を出て246から世田谷通りをぐるりと歩く。好きだった…というより、寝る前のその行為で気持ちのバランスをとっていたのだと思う。振り返ると、仕事も恋も、何なら友人関係もいまいち全部が噛み合わない不安定な時期だった。ひとつぐらい上手くいっても良さそうなもんだけど、笑っちゃうくらい全滅だった、その頃は気づいていなかったけど…。
上京してバイト仲間とのキラキラした夜遊びの時間にも飽き、就職も上手く行かず、恵まれている部分には目を向けられず、学生時代の友達とは少し距離が出来て、都会に慣れたと錯覚して、田舎の両親には生意気な口をきいて…文字にすると八方塞がりの原因が若かった自分にあったことがよくわかる。本当に恥ずかしい…。

当時の散歩でよく口ずさんでいたのが「明日、春が来たら」だ。当時好きだった人が元野球部だったこともあり(当然振られた)、私も野球が好きだということもあり、歌詞が脳裡に描きやすいし何と言ってもノスタルジックな曲がその頃の私の心に優しく寄り添ってくれた。真夜中とは思えない都会の歩道を、冷たい空気に頬を固くしてうつむいて歩いていた頃を思い出して、胸がキュッとなる一曲だ。

翌年、松たか子さんは岩井俊二監督の「四月物語」に主演する。進学のために上京してきた少女をみずみずしく描いた作品だ。春は別れの季節でもあるけど、はじまりの季節のイメージの方が強い。
♪明日〜春が来たら〜と沈んだ気持ちで歌っていたあの頃の方がどうかしていたのだ。
「四月物語」の主人公のように、新しい季節の中で戸惑いながらも新鮮な好奇心をもって今年の春は迎えたい。


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