見出し画像

KDP(Kindle出版)ロイヤリティと商業出版印税の比較

ここ1年ほどでKDP(Kindle出版)を新しく5冊発売した。おかげさまでコツコツながら毎月ロイヤリティ(印税)が発生している。

*たとえばこういったものを書いています↓

ちなみに過去には商業出版もしました↓

そこで本記事ではKDPのロイヤリティと商業出版の印税とでどう違うかを比較してみたい。

KDPのロイヤリティ

KDPのロイヤリティは二種類あり、どちらかを任意で選択する。

①他ストア併売可能方式:ロイヤリティ35%
②Kindleストア独占販売方式:ロイヤリティ70%+KENP収益

①の場合はKindleストア以外でも販売できるが、ロイヤリティは低くなる。またKindle Unlimited対象にはならないので、KENP(Kindle Unlimitedで読まれたページ数)の収益は当然入らない。

②の場合は反対に、ロイヤリティは高く、KENP収益(約1ページ0.5円)も得られるが、Kindleストア専売になるので、他ストアと併売はできない。

どちらにするかはその人の嗜好や戦略次第だが、僕は元々販売物をAmazonに集約したかったこともあり、②にしている。
また無名の著者だと、Kindle Unlimited対象(つまりKindle Unlimitedユーザーなら無料)でないとなかなか買われないのが実情だ。しかしKindle Unlimited対象だとダウンロードされるハードルは低くなるので、やはり②の方がいいことになる(実際僕のロイヤリティもほとんどがKENPによるものだ)。

商業出版の印税

商業出版の場合はまず紙書籍か電子書籍かで印税率や算出方法が変わってくる。

紙書籍はよく言われている通り、概ね「定価×発行部数×印税率」で印税額が出る。しかし中には発行部数ではなく実売部数で出す場合もあるようだ。印税率はやはり大体10%前後だろう。

これが電子書籍の場合だと概ね「定価×売上数×印税率」となる。つまり購入されないと印税は発生しない=実売印税だということだ。その代わり印税率は紙書籍より高く、大体20〜30%前後といったところだろう。

*ここで不透明なことがあって、Kindle Unlimitedのような読み放題サービスの印税がどうなるかだ(なんか説明があったような気もするが忘れてしまった)。これもまた「定価×売上×印税率」になるのだろうか。
となるとその「売上」は、「出版社に入るKindle Unlimitedの取り分」となって、そこに印税率をかけたものが作者の手取りとなるのだろうか。……謎だが、どのみち売れないと大して入らないため、あまり興味がないのでこの話題はここまでにしたい。

比較

では両者を比較してみよう。
条件は簡易的に、「定価500円」「発行部数1万部」「紙書籍印税率10%」「電子書籍印税率25%」「KDPロイヤリティ70%」「KENP1ページ0.5円」とする。

①紙書籍vsKDP(個別売上)

紙書籍の印税額は『500円×10000部×10%』なので、500000円となる。
これをKDPの個別売上で稼ぐとなると、『500000円÷500円×70%』となるから、約1428部売らなければならないということになる。
有名ならともかく、無名の著者でこの実売部数はしんどいと言わざるを得ない。それに紙書籍の場合は実際には売れなくても、印刷した部数分の印税は確約されている(実売印税でなければ)。
よって紙書籍の方が実入りはいいことだろう(紙書籍を出版する難易度はさておき)。

②電子書籍vsKDP(個別売上)

こちらは両者とも『定価×売上数×印税率』になるので、定価と売上数が同じなら印税率が3倍近いKDP(個別売上)の方が印税額が高くなる。
ただし商業出版の方が認知されやすいことから、大体の場合において商業出版の電子書籍の方が売れることだろう。
仮に電子書籍が1000部売れたとしたら、印税額は『500円×1000部×25%』で125000円。
この額をKDP(個別売上)で達成するとなると、『125000円÷0.7÷500円』で、約358部の売上が必要になる。
つまり商業で1000部売るのと、Kindleだけで358部売るのとで、どちらが容易いかという話になるが……これはちょっと甲乙つけがたい印象だ。

③紙書籍vsKDP(KENP)

紙書籍の印税額がやはり『500円×10000部×10%』で500000円とすると、これをKENPのみで同額得るには、1ページ0.5円なので、100万ページ読まれなければならないことになる。一冊100ページとしたら、10000部のダウンロードが必要だ。
紙書籍が10000部発行するとはいえ、実売部数はそれ以下(売れないと何分の1にもなる)であることを考えると、10000部のダウンロードは、たとえ無料とはいえなかなかハードルが高いと言わざるを得ない。

④電子書籍vsKDP(KENP)

電子書籍の印税額は、やはり1000部売れたとして、『500円×1000部×25%』で125000円とする。
これをKENPのみで同額得るには、1ページ0.5円なので、25万ページ読まれなければならない。一冊100ページとしたら、2500部のダウンロードが必要だ。
25万ページは案外想像つきやすい数字かもしれない。僕の場合も数冊合計ではあるが、累計すれば万単位の既読ページ数になるからだ。やはりKindle Unlimitedの読まれやすさは確実にあるのだと思う。
なのでこの比較はKDP(KENP)の方が優位とさせていただきたい。

まとめ

結論としては、収入的には紙書籍で商業出版できれば実入りがいいことは間違いない。また昨今であれば紙書籍で商業出版した場合はほぼ同時に電子書籍でも販売されるため二重取りとなる。

ただし商業出版にはそもそも出版までのハードルの高さがある。また実際に本が発売されるまでにはいくつもの工程があるため時間がかかる。
コンスタントに出版するには複数の出版社と並行して企画を進めていく必要があるだろう。そうでなければ一冊出すのに半年〜1年かかり、そして初版止まりとなれば印税を時給換算した場合悲惨なことになりかねない。そして売れないとなるとどんどん次作の出版が遠いのいていく……。
しかし売れれば次作の話が進むし、他社からも注目されるので新規企画が立ちやすい。
つまりここに「売れるためには売れなければならない(売れないとそもそも本が出版されないから)」というジレンマが生じるわけだ。

なのでこうして振り返ってみると、KDP、特にKENPのメリットは悪くないように思う。
自分一人で制作から販売まで完結できるので、自分のペース次第で出版数をコントロールできるし、Kindle Unlimitedの読まれやすさがあるから利益も出やすい。
もちろん(無名の)個人で商業並みに売上を出すのは難しいが……そもそもプロとしてやりたい人ばかりとは限らないので、KDPの方が合う人もいることだろう。そこは人それぞれだ。

以上、双方のメリットデメリットを個人的な所感ではあるが述べさせていただいた。興味関心のある人の参考になれば幸いだ。

その分活字を取り込んで吐き出します。